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庭師の仕事内容と、庭師になるためには?

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住まいに華やかな彩りを与えてくれる「庭」

庭と言うのは強い日差しと周囲の雑路を避け、ゆっくりとくつろぐ場所として非常に重要です。

住宅地の小さな空間に設けられる庭を「坪庭(つぼにわ)」、本格的で規模の大きいものは「庭園(ていえん)」と呼ばれることがあります。

現代においては屋根のある庭や、室内庭園、まったく植物を用いない庭(平庭)なども存在しています。

また庭は四季折々の表情を見せ、わたしたちの心のよりどころにもなっています。

そんなわたしたちの暮らしにぴったりと寄り添う「庭」。その庭を造ることを生業とし、人々に憩いの場を提供してくれる職人たちがいます。

それが「庭師」です。

彼らの卓越した技術によってなんの変哲もない、無機質な庭もそれは見事な庭に造り変えることができます。

今回は純和風な庭から洋風な庭まで幅広く手掛け、植物の繊細な部分まで知り尽くしている「庭師」についてスポットを当て、庭師の仕事内容とどうすれば庭師になることができるのかをご紹介していきましょう。

庭師とは


庭師は造園師とも呼ばれ、古くは園丁(えんてい)ガーデナーとも呼ばれていました。

庭石、樹木、水路などを含めて、庭を一つの空間として設計から施工までを担う人のことを言います。

また、その樹木の維持管理などのメンテナンスも行い、いわば庭造りのプロフェッショナルです。

庭師は、樹木の知識、地形土壌の知識、石の知識、そしてなによりも空間をデザインできる技術とセンスが問われる職業です。

一言で庭と言っても、個人住宅の庭だけでなく、公園やゴルフ場、公共空間など庭師の仕事場は多岐にわたります。

よく庭師のことを「植木屋」と呼ぶこともありますが、植木屋は庭師の業務内容のひとつである「剪定(せんてい)」のみを限定して行う職人のことで、庭師のように庭全体を造ったり、庭の総合的な施工を請け負ったりすることはありません。

裏を返すと庭師は植木屋も兼ねていると言うことになります。

庭師は、庭の設計から施工まで行い、庭の図面も作成します。

このことから仕事が多岐にわたるため、案件によっては建築などの専門家などとチームやタッグを組むことも少なくありません。

このように他業種の職人がひとつの案件を共同で扱う時に、現場監督として指揮をするのも庭師の仕事のひとつです。

庭師の仕事内容


庭師は、庭造りと樹木の手入れなどを維持管理する仕事です。

庭師の仕事の範囲は非常に多岐にわたって存在します。

庭師の仕事は個人住宅はもとより、公園やオフィス街、ゴルフ場などの公共空間の景観造りも行います。

庭師はただ依頼通りの仕事をするだけではありません。

専門家としてどのような樹木などを活用したらよいのか、草木の特性や土の状態、日当たりや水の流れなどを総合的に考えてその案件ごとに適切な庭づくりのアドバイスもしなければなりません。

庭師はどれも自然が相手の仕事ですので、それに対する深い知識や理解がなければできない仕事となっています。

また、庭木だけでなく生け垣や池、照明なども手掛け、庭廻りのすべての空間における構築を担当します。

よって自然を充分熟知したうえで、見るものを感動させる美しさや豊かさを備えた空間づくりが求められます。

そのために高度な技術や美的センスも必要となってきます。

では、このような高度な技術を必要とされる庭師は具体的にどのような業務があるのか。詳しく見ていきましょう。

【庭師の業務内容】

〇依頼主とのヒアリング

庭師の仕事の中で最もその力が発揮されるのは庭造りです。

依頼主から依頼を受けて新しい庭を造ります。

まず依頼を受けると専門家として、日当たりや樹木の特性、草花などの特徴などを考慮して依頼主に適した庭造りを提案していきます。

提案する際には、依頼主からのヒアリングがとても重要で、依頼主のイメージやコンセプトを事細かく聞き出す必要があります。

そしてそれらをある程度固めたら設計し、図面を起こします。

庭師によっては依頼主が図面だけではイメージできないときのために、模型やパソコンで完成予想図を作り提案することもあります。

そうすることで依頼主が完成イメージを想像しやすいようにします。

庭造りのために依頼主の世界にたったひとつしかない庭を、庭師の持っている知識や技術を駆使して表現できるように努めます。

〇草引き・掃除

依頼主との打ち合わせで庭の設計に合意が得られれば実際に作業に入っていきます。

まずは庭を綺麗にすることから始めます。

竹ぼうきや熊手など、場所に応じて大きいものと小さいものを使い分けます。

また「箕(み)」というゴミを集めるちりとりのような道具を使って下に落ちている細かい枝などを集めていきます。

この箕はゴミを集めるだけでなく砂利なども運搬できるため非常に重宝されています。

掃除は庭造りに入る前の作業だけではなく、庭造りをした後も細かい剪定した木の枝などを掃除しなければならないので掃除道具は欠かせないツールとなっています。

〇庭造り

庭造りには樹木の他に石を運んで並べたりする作業もあります。

庭造りにかかるまえに、まず道具を準備します。庭師は道具に対して非常にこだわりを持っていて、自分自身の体の一部として大切に使っています。

大きさや重さ、使いやすさや機能など、自分だけの道具を選んでいきます。

主な道具は「腰道具」と呼ばれるもので、剪定ばさみや木ばさみ、のこぎりといった基本3点の道具で施工していきます。

しかし、時と場合によっては左官のようなしごともあるので、そのときのための道具も用意しておきます。

道具が揃ったら庭造りを行っていきます。

樹木の植え付けから剪定をしながら土の状態や日当たりの状態、傾斜の角度など様々な自然要件に目を配りながら作業を行い、依頼主の希望に沿った庭造りを進めていきます。

そのためには作業の途中にも依頼者との連絡を密に取り合って、詳細な説明も怠らずに仕事を進めていきます。

庭師の仕事は、日が出ている時間が勝負と言われています。とはいえあまり早い時間から作業を始めてしまうと迷惑がかかるため、概ね午前8時ごろから作業を開始します。

なにぶん屋外での施工が多いため天候に左右されるのも特徴のひとつです。

雨の日には作業をすることができないので、工期が思うようにはかどらず遅れてしまうこともあります。

〇庭の維持管理

庭師は庭を造ったらその仕事が終わりというわけではありません。その庭には維持管理が必要になってきます。

そうした維持管理を行うのも庭師の大事な役割です。

樹木に生い茂った雑草の処理や肥料の追加、害虫の駆除などの作業も行っていきます。

庭師がその知識と技術を施すだけで草木は生き生きとし、美しい庭を何年も維持することができます。

上記の内容が基本的な庭師の業務内容になりますが、すべてにおいて共通するものは、依頼主にとってたった一つしかない庭をいかに要望通りに表現や再現をしていくのか。

それを再現するためにはどのような樹木を使ってどのような草花を使っていくのか。

庭師の知識と技術を総動員させて依頼主が満足してくれる庭を造っていくことだと思います。

では、その庭師になるためにはどうしたら良いのでしょうか。次に庭師になるための資格や適性などをご紹介していきます。

庭師になるための資格


結論から先に言うと、庭師になるための資格や年齢などの制限はありません。

造園関係に携わっていればだれでも庭師を名乗ることができます。

しかし、造園関係の国家資格は存在し、また民間資格も存在します。

やはり就職をするときや、自分の技術者としての証明をするには持っておいた方が有利になる資格ではあります。では、どのような資格が存在するのか下記に示していきます。

【造園技能士】

造園技能士は、国家資格である技能士検定制度のひとつで、都道府県知事が実施しています。

役割としては、住宅庭園の造園や庭木の手入れ、公園、街路樹、公共施設などありとあらゆる条件において必要となってくる資格で、造園技能士の資格を持っていないと造園技能士を名乗ることはできません

造園技能士には、1級、2級、3級があり、それぞれ受験資格が異なってきます。

1級…実務経験7年以上
2級…実務経験2年以上
3級…実務経験1年以上

とあり、それぞれ実務経験のないものが受験することはできません。

出題形式は学科試験と実技試験があり、それぞれ合格基準は100点満点中65点以上となっており、合格率はおおよそですが、1級…25パーセント程度、2級…40パーセント程度と言われています。

【造園施工管理技士】

造園施工管理技士は、施工管理技士の国家資格のうちのひとつで、国土交通省が管轄しています。

造園施工管理技士には1級と2級があり、長年、施工管理技士の中では一番簡単な資格と言われてきましたが、合格率で見てみると近年では施工管理技士のうちで最難関の資格と言われています。

1級は、営業所ごとに置かなければならない専任技術者や工事現場ごとに置かなければならない主任技術者、監理技術者として従事することができ、公園や緑地、遊園地などの造園工事の施工計画、現場の工程管理、資材などの品質管理、作業の安全管理などの業務を行うことができます。

2級では、建設業法による一般建設業の営業所において専任技術者や主任技術者になることができます。

先にも述べましたが、数ある施工管理技士の中で最難関と言われる資格で、平成29年度の1級造園施工管理技士の合格率は17.4パーセントと非常に低くなっています。

【樹木医】

樹木医は、民間資格のひとつで、かつては農林水産大臣認定の資格でしたが、平成8年の閣議決定によって認定された政府の公約規制緩和の方針によって、その事業を一般社団法人日本緑化センターが引き継いでいます。

樹木医になるためには、樹木の診断や治療などに関する業務経験が7年以上、あるいは樹木医補の資格を持っている場合には認定後の1年以上の経験者が受験できる資格となっています。

また、試験も第1次の筆記試験、第2次の2週間にわたる研修など、資格取得が難しいのも特徴のひとつです。

樹木医は、樹木などの診断や治療を行うことや、街路樹における倒木事故の危険性を評価する仕事など、樹木に関する仕事は多岐にわたります。

【エクステリアプランナー】

エクステリアプランナーは、公益社団法人日本エクステリア建設業協会(JPEX)が定めた民間資格です。

1級と2級に分かれていて、1級は一般住宅の建物廻り(外構)全般の設計や工事監理を任せられるだけの専門知識と技術を有している人に与えられる称号です。

2級はその設計に関して従事する基本的知識を有している人に与えられるものです。

受験資格は、2級は誰でも受験できますが、1級は建築コンクリート工事士や木造建築士、給水装置工事主任技術者など、建築や土木関係の資格を持っている人が受験できます。

【土木施工管理技士】

土木施工管理技士は、日本の施工管理技士国家資格のうちのひとつで、国土交通省が管轄しています。

公共工事で必須となる主任技術者や、監理技術者になるために必須な資格で、東日本大震災以降の除染工事や造成工事などの復興工事において需要が高まってきている資格です。

区分は1級と2級に分かれていて、1級は河川、道路、橋梁、鉄道、上下水道などの土木工事において主任技術者や監理技術者として施工計画を作成し、現場での工程管理や安全管理などの管理業務を行うことができます。

2級は、土木、鋼構造物塗装、薬液注入に分かれていて、それぞれの種で河川、道路、橋梁、港湾、鉄道、上下水道などの土木工事で主任技術者として施工計画を作成し、現場での工程管理や安全管理などの管理業務を行うことができます。

これらの資格を取得することで、転職する際や、フリーランスで独立する場合にも能力を証明するのに資格は有利にはたらくこともあり、庭師の人は積極的に資格の取得に努めています。

庭師になるためのやりがいや適性


庭師のやりがいと言えばやはり達成感を味わいながら依頼主の喜ぶ顔を見ることでしょう。

庭師の仕事は、自分が施工した庭を見た目で結果を確認できる仕事です。

そして、その多くは長い間、形となって残り続けます。

自分の造った庭が長年その場所で生き続けるわけです。完成した瞬間に大きな喜びを感じるだけでなく、その後の庭が時間と共に成長していく姿を見る楽しみもあります。

反面、この仕事は非常にセンスを求められる仕事でもあります。

自分だけのセンスだけではいけませんし、細かいところまで細心の注意を払って技術を注ぎ込む仕事になってきます。

しかし、ひとつの庭を芸術作品として仕上げた時の感動はひとしおです。そのような達成感を深く味わえることが庭師のやりがいと言えるところでしょう。

庭師には確かな技術力と知識が求められますが、一方でとても大切なことは「体力」です。

夏は炎天下で、冬は極寒の環境の下で仕事をすることになります。また天候にも負けない根気も必要になってきます。

岩や木の枝など重いものを運ぶのも日常茶飯事で、そうした肉体労働に耐えられる体力が必要なのです。

その過酷な労働条件に耐えられてこそ庭師として働くことができ、また先に述べたやりがいを感じることができるのです。

もちろん初めから筋力や体力を兼ね備えている人は少ないので、そのような力は就職してから身につければ大丈夫です。

まとめ


庭師は高い技術力と知識、そして体力を必要とする職業です。

しかしその分、自分の手がけた庭が完成したときの達成感は言葉では言い表せないものがあります。

そして依頼主の喜ぶ顔を見ることがなによりのやりがいではないでしょうか。

庭師は特別な資格は必要ないため門戸は広いですが、とてもきつい環境での仕事であることは言うまでもありませんが、そのやりがいを求めて少しでもこの庭師を目指してくれる方が現れることを願っています。

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