建築工事と聞くと、「住宅などを建てる工事」とイメージできる人は多いのですが、土木工事はどんな工事をするのかイメージがし辛いと感じる方が多いようです。
土木工事は、人々の生活に密接に関わる重要なものであり、その種類は多岐に渡ります。
今回は、土木工事の種類・特徴・仕事に携わる土木作業員について、ご紹介していきたいと思います。
土木工事とは
この工事は、建物以外の建設工事全般を対象とした工事のことをいいます。
建設業界における工事は、以下のように大きく3つに大別できます。
建築:住宅・ビルなどの建物関連
土木:建築以外の、建設物の全てが対象
つまり、「建設」という大きな枠の中に、土木・建築工事が存在するのです。
尚、人によっては”土木工事=肉体労働で汗水を垂らしながら働くもの”というイメージを持たれるかもしれません。
確かに体力を使う仕事ではありますが、この仕事は建機・重機など最先端技術が最も早く導入されるステージでもあります。
インターネットはもちろん、機械(AI)による自動化やドローンなどが利用されることもあり、高度な技術を求められる作業へと進化を続けています。
そもそも土木工事は先進国の象徴であり、都市をつくる重要な作業の一つです。
そして日本は、「世界に冠たる土木大国」とも言われているのです。
工事の種類
土木工事は、建築以外の建設工事全般が該当するため、その種類は数多く存在します。
加えて、対象は公共工事が多いことも特徴であり、日本の景気にも大きな影響を与えることがあります。
近年の代表例でいえば、2021年に開催予定の「東京2020オリンピック」などです。
以下に、土木工事の種類をいくつかピックアップしてご紹介します。
道路工事
これは、4つに分類されます。
道路構造物工事
道路築造工事
道路開設工事
道路の整備・改良・開設などを行います。
現代は人の通行だけでなく、車などの乗り物も常に走り続けています。
人々が安全な生活を送るために、道路の安全性や耐久力を高めることは非常に重要なものと言えるでしょう。
トンネル工事
山を削って、トンネルを開通・整備する工事です。
これは、
シールド工事
推進工事
に大別されます。
日本は特に山が多い国なので、道路や鉄道を造る上でもトンネルという存在は欠かせません。
尚、”山(自然)を削る”という作業であることから、他の土木工事以上に不確定要素が多い工事でもあります。
工事の終わりが中々予測できませんし、崩落などの危険性だってあります。
そのため、他工種よりも工事保険料が高いのも、一つの特徴となっています。
河川・海岸・ダム工事
河川改修工事
河川構造物工事
海岸工事
浚渫(しゅんせつ)工事
ダム建設工事
砂防ダム工事
貯水池ダム工事
などが該当します。
これらは、水害防止用の堤防を設置したり、大雨による河川の氾濫を防ぐためにダムを設置したり……など、主に水害に対する対策・安全性を高めるために行う作業です。
近年は台風や地震などの自然災害の被害も甚大であり、環境整備・保全・維持・修繕など、この工事の重要性は非常に高まっています。
橋梁工事
橋梁(きょうりょう)は、橋や高速道路などを造ったり・劣化を食い止めるために補修を行ったりする工事のことです。
PCロックシェード橋梁工事
コンクリート構造物での橋台工事
橋脚工事
などに分類されます。
橋・高速道路も、人々の日常になくてはならない重要なものです。
しかし、度重なる自然災害の影響により甚大な被害を受けた地域もあり、各地で復興作業が行われている状況です。
交通の利便性が大きく向上することから一日でも早く復旧させる必要はあるものの、耐久性・安全性もしっかりと考慮しなければいけません。
水道に関する工事
一般水道工事(自治体の公共
工事)
一般排水管工事
公共の水道工事に関連する工事が該当します。
ただし、水道工事会社であれば土木・建築どちらの工事にも対応していることが多く、また会社の規模によっては、複数の土木工事を扱う企業なども存在します。
その他
他にも、
土地区画整理工事
農業土木工事
砂防・地すべり等・急傾斜地崩壊防止施設工事
森林土木工事
など、実に数多くの工事が存在します。
これまでにご紹介した通り、そのどれもが人々の生活に密接に関係するものばかりです。
まさに、人々の生活を支える縁の下の力持ちと呼べる存在です。
そして、これら土木工事を行う作業員を「土木作業員」と呼んでいます。
次項からは、土木作業員について詳細をお話していきましょう。
土木作業員とは
概要
上記の通り、土木工事に関連する仕事を行う人を「土木作業員」と言います。
水道、ガス、通信などのインフラ整備
宅地の区画整理
農地の圃場整備
重機を利用した土地の掘削や造成
など、様々な仕事を担当します。
加えて、現場監督/施工管理業務を行うのも、土木作業員となります。
土木作業員になるには
まず、この仕事に就くために必須となる学歴や資格は必要ありません。
現場での作業(肉体労働)が基本となるため、経験を積み重ねて仕事を覚えていくことになります。
求人に関しては、経験者が優遇されることはもちろんではありますが、「未経験OK」としている会社も多く、やる気があれば採用される可能性もある仕事です。
ただし、未経験者の場合「見習い」として働き始めるため、最初のうちは給与が少なくなりがちです。
また、非正規社員として、パート・アルバイトなどで募集しているパターンも多く、当然こちらも収入は低く設定されることが多いです。
尚、非正規社員として職に就いたとしても、技術を高めたり・資格を取得したりと、頑張り次第で正社員になることは可能です。
また、会社によっては資格取得支援制度が用意されていることもあり、現場経験を積みながら資格所持に向けて勉強していくこともできます。
さらに、職業訓練校も用意されているため、土木や機械土木についての知識や技術を学ぶことも可能です。
職業訓練校は公的な施設であり、学費や教材費が安く、就職のあっせんも行われていることから、土木作業員を目指す人にとっては絶好の学びの場として活用することができます。
必要な資格
職に就くために必要な資格はありませんが、自身のキャリアアップのために取得すべき資格は数多く存在します。
というのも、土木工事は業務の幅が非常に広く、一定の業務に携わるためには、資格や免許を取得していく必要があるのです。
中でも土木工事に必要不可欠な「重機」は数多くの種類があり、現場によって利用されるものも変わってきます。
いくつか例に挙げるとすると、
小型車両系建設機械
クレーン・デリック
床下操作式クレーン
移動式クレーン
玉掛け
高所作業車
ゴンドラ
建設用リフト
などがあります。
尚、重機の扱いは危険を伴うものであり、重機オペレーターとして業務に携わる場合は、専用の資格が必須となります。
資格には「免許」「運転技能講習」「特別教育」という3つの種類があり、最も取得難度が高いのが「免許」です。
さらに、重機で公道を走る場合には、別途「大型免許」「大型特殊免許」なども必要とします。
そして、もし現場監督などの管理者になる場合は「土木施工管理技士」の資格も必要です。
受験資格に一定の実務経験が必要であり、取得難度も非常に高いものではありますが、取得できれば業務の幅は大きく広がります。
このように、各資格を取得することで仕事の幅が広がり、会社によっては資格手当が付く場合もあることから、収入アップも期待することができます。
自身が行っている仕事、携わりたいと思っている仕事をする上で、何の資格を取得すればいいのかをキッチリと把握し効率よく勉強していきましょう。
土木作業員の一日の流れ
この仕事は、配属先の現場や日ごとの工程によって、様々な作業をこなしていく必要があります。
しかし、基本的に日ごとの作業工程は事前に決まっており、一日のスケジュールというものもある程度固定化されています。
また、業務の関係上、現場が屋外となることがほとんどであることから、安全面や騒音問題などの関係があり、作業は基本的に日中の明るい内に行われます。
ただし、道路や鉄道工事などの交通が影響してくるものは、深夜帯に作業が行われることもあります。
土木作業員の基本的な勤務時間は「8時~17時」となることが大半です。
その間に、お昼休憩を含め適度に休憩を挟んでいきます。
この仕事は肉体労働が主であり、非常に体力を使います。
また、重機を扱うこともあり、集中力を切らして事故が発生した場合、人命に関わる危険性もはらんでいます。
その安全面を考慮するため、適度な休憩を行っていく必要があるのです。
ちなみに、現場監督として働く場合は、業務内容が大幅に……そしてより複雑になります。
作業員への指導・指示出し
クライアントなど外部業者との打ち合わせ
事務所での書類作成
など、現場以外でも複数の場所で仕事を行っていきます。
特に書類作成などのデスクワークは、現場が稼働している時間帯以外で行うことも多く、他の作業員より残業時間が長くなる傾向があります。
その分得られる収入は多くなりますが、時間管理の徹底は必要なスキルとなるでしょう。
仕事の需要と将来性
現状
まず、建築以外の多くの建設工事が業務範囲になることから、仕事の需要は数多く存在し、今後も早々にこの仕事がなくなるということはありません。
冒頭でもお伝えした「東京2020オリンピック」のような国が関連する工事、道路・トンネル・橋梁のような地方自治体が発注元となるインフラ関係の案件が中心となることから、景気などの影響を受け辛い……非常に底堅いという特徴もあります。
そのため、土木作業員の求人は非常に安定していると言って差し支えありません。
また、近年は雇用条件の見直しなど、労働環境の改善も積極的に取り組まれています。
この背景として、
若手の参入不足
という”人材不足”が原因の一つとして挙げられます。
近年の建設業界は機械化が進んでおり、以前に比べて体力的な厳しさが緩和されています。
加えて、安全管理の徹底もなされ、危険度も大きく減少しているのです。
このことから、働きやすい環境が整えられてきており、近年では女性の土木作業員(ドボジョ)も増えているなど、大きな変化を迎えています。
資格や免許を取得できればキャリアアップにも繋がりますし、どの企業からも必要とされる人材となります。
そのため、努力次第で、将来的にも安定した仕事を得ることができるでしょう。
機械化についての懸念
現在、多くの仕事が機械化の影響を受けていますが、土木工事も例外ではありません。
少しずつ機械による自動化が進んでおり、いずれはAIで行える作業範囲も拡大していく可能性もあります。
しかし、それはまだまだ先の話です。
現状は、機械の導入により以前より体力的な負担が減っていますし、上記の通り女性の土木作業員も増え、仕事そのものに携わりやすくなっています。
全てが機械に取って代わられるということも早々ありません。
また、仮に機械で作業のほとんどを賄えるようになったとしても、その機械を管理できる人材も必要となります。
これは、現場監督/施工管理者のような管理する立場の人が担当するかもしれませんし、別の専門技術者を配置することになるかもしれません。
加えて、人々の生活の中心にある施設が対象となることから、全てを機械に任せることも難しいでしょう。
職人だからこそ分かる現場の感覚というものも重要となってきます。
ただし、重機など工事に必要となる機械を扱えるようになる努力は、今後必要不可欠になってきます。
工事の効率を上げる機械は、これからも発展し続けます。それらを幅広く扱えるように、各資格や免許の取得は優先的に行っていった方がいいかと思います。
まとめ
仕事の幅は広く、中・長期的にも安定した需要があるのが土木工事の強みと言えます。
また、これまでの土木業界というのは、新しいものを造ることに重きが置かれ、高度経済成長期から多くのインフラが造り出されてきました。
しかし、その多くが老朽化してきており、今後はそれらのメンテナンスや修繕なども行っていかなくてはなりません。その際にも土木作業員は必要とされる存在となります。
ただし、当然のことながら時代の変化とともに求められる技術も変わってきます。
例えば、上記のメンテナンスや修繕工事の場合、機能しているインフラ設備を完全に止めて作業を行うことはできません(周辺住民に迷惑が掛かるため)。
そのため、その工事に精通した作業員でないと関わることが難しくなります。
また、重機など多くの機械を扱えるようになった方が自身の仕事の幅も広がりますし、そのための免許や資格を取得していかなくてはいけません。
今後新たな技術が導入された場合も、その技術を使いこなしていくための勉強も必要となるでしょう。
仕事としての将来性はありますが、それを活かして長く働けるかどうかは自分次第です。
状況に応じて臨機応変に対応し、様々な技術を磨いて仕事に役立ててみて下さい。