住宅、アパート、ビルなどの屋上は一般的に平面的であり、防水工事をきちんとしていないと雨水が溜まってしまいます。そのまま放置すると屋上のダメージが進み、腐食、害虫の発生、雨水などの原因になります。
このようなトラブルを避けるためには屋上の防水工事が大切です。防水工事は一度おこなえば終わりではなく、耐用年数を守り定期的にメンテナンスをおこなうことも大切です。
これから新築で建物を建てる方だけでなく、長く同じ住宅に住んでいる、ビルを所有しているという方は、屋上の防水工事を検討してみてください。
屋上の防水工事の種類
まずは屋上の防水工事の種類を4つ紹介します。
屋上の防水工事はウレタン防水、FRP防水、シート防水、アスファルト防水の4種類がメインです。それぞれに効果や費用、耐用年数などが違います。
屋上の特徴や予算、目的などに応じて適切な工事内容を選ぶことが大切です。
ウレタン防水工事
屋上の防水工事の中でも主流なのがこのウレタン防水工事です。ウレタン樹脂を屋上全体に流し込むことで防水の層を作り、乾かしていきます。弾力があり柔らかな仕上がりになるのが特徴です。
室外機などが多い屋上や複雑な形状の屋上、小さな屋上から大きな屋上まえ幅広く対応しているため、とくに問題がない場合はこのウレタン防水工事を選んでいいでしょう。
ウレタン防水工事は価格も安く、それでいて耐久性も高いというメリットがあります。一度施工すれば10年から14年程度は防水効果を維持してくれるので、頻繁にメンテナンスを繰り返す必要がありません。
デメリットとしては、ウレタン樹脂が乾くまでに4日から5日かかってしまうということです。工期が長くなるため、その間は屋上を利用することができません。屋上に駐車スペースがある、屋上で洗濯物を干しているなどの使い方をしている場合はその間屋上を使わずにどう対応するかを考える必要があります。
FRP防水工事
FRP防水工事は工事方法自体はウレタン防水工事とほぼ同じです。樹脂を流す前にFRPというガラス繊維由来のマットを敷き、その上で樹脂を流し込み、防水効果を高めていきます。
FRPのマットを屋上と樹脂の間に挟むことで乾くのが早くなり、ウレタン防水工事のデメリットを解消してくれます。
さらに重いもの、熱いものへの耐久性も高いため、屋上を駐車スペースにしている場合などに特におすすめです。
一方でガラス繊維は揺れによってひび割れてしまう可能性が高いです。地震などの影響でマットにヒビが入り、防水効果が弱まってしまうかもしれません。そのため面積が広い屋上に利用するには不向きです。耐用年数もウレタン樹脂の防水工事を比べると12年程度と短めになっています。
ある程度コンパクトな屋上で、重みや熱に耐える必要がある場合ならこのFRP防水工事はおすすめですが、そうでないのなら無理にこの工事を選ぶ必要はありません。
シート防水工事
ゴム製や塩化ビニール製の防水シートを屋上に敷き詰めるだけの簡単な工事です。
屋上に下地を敷き詰めた上でシートを接着する方法と、通気シートを敷き詰めた上で専用の道具を用いてシートを固定する方法があります。
シートを敷くだけで工事が完了するため、スピーディーに工事を済ませたい方に人気があります。防水シートは価格も安く、耐久性も高いです。そのためウレタン防水工事が人気になるまでは屋上の防水工事の中でも主流の工事方法でした。
ですがシート防水は防水シートのすき間から雨水が侵入してしまう、防水シートが強風や飛来物によって剥がれてしまう、ウレタン樹脂などに比べると耐久性が低いなどといったデメリットが多く、見た目のデザイン性も悪くなってしまいます。
今でもシート防水工事を選ぶ方もいますが、その場合はゴム製のシートよりもやや耐久性が高い塩化ビニールシートが選ばれることが多いです。
アスファルト防水工事
規模の大きなビルの屋上などに利用されるのがアスファルト防水工事です。
アスファルト防水工事にはさまざまな方法がありますが、近年はトーチ工法、熱工法が人気です。
トーチ工法はアスファルトでコーティングされているシートを屋上に敷き詰めていく方法です。バーナーでシートを熱しながら敷き詰め、アスファルトを敷き詰めていきます。匂いが発生せずスムーズに工事を進められるため、オフィスビルでも日中に作業を依頼できます。
もう一つは熱工法です。熱したアスファルトを屋上に塗布し、乾く前に防水シートを敷き詰めていき、固めるという方法です。トーチ工法とは違いアスファルトの匂いが発生しやすいため、日中の作業や住宅街での作業には不向きです。
アスファルト防水工事は屋上の防水工事の中でも費用が高いですが、一度施工すれば15年から25年程度防水効果を維持してくれます。そのためコストパフォーマンスを求める方にはとくにおすすめの工事方法です。
アスファルトを塗布したりシートを敷き詰めたり熱したりといった作業工程が多いため、複雑な形状の屋上には不向きです。匂いが発生するため、住宅の屋上にも不向きでしょう。工事期間は7日間程度かかります。スピーディーに工事を終わらせてほしい場合にもアスファルト防水工事は不向きなので注意してください。
屋上の形によって最適な工事を選ぼう
屋上の防水工事の種類について紹介しました。種類がありすぎてどれを選べばいいかわからないという方のために、屋上の形状や使用用途別のおすすめの工事方法を紹介します。
住宅などのコンパクトな屋上、複雑な形状の屋上、大きなスペースのある屋上、さらに人通りや車の往来が多い屋上など、防水工事をしたい屋上に合う工事内容を選びましょう。
コンパクトな建物の屋上
住宅などのコンパクトな建物の屋上の場合はウレタン防水工事がおすすめです。ウレタン防水工事はウレタン樹脂が乾くまでに時間がかかるというデメリットがありますが、小さな屋上であれば比較的すぐに乾きます。乾燥する前に異物が入り込む、形が変形してしまうという心配もありません。
一般的な住宅の屋上の防水工事、10平方メートル未満の屋上の防水工事ならウレタン防水を選んでおけば問題ないでしょう。
複雑な形の屋上
複雑な形状をしている屋上の場合、シートを敷き詰めるタイプの防水工事は不向きです。シートをその屋上の形状にぴったり合わせることが難しく、余計な費用がかかったりシートにすき間ができて雨水が浸水したりしてしまいます。
そのため、複雑な作業をしなくても防水ができるウレタン防水工事がおすすめです。樹脂を敷き詰めるだけで複雑な形状の屋上でも簡単に防水効果を高められます。
シートのつなぎ目がなく見た目も美しいので、デザイン性を重視する屋上にもおすすめです。建物の構造上屋上の形が複雑になってしまっている場合だけでなく、デザイン性の高いビルの屋上の防水工事としてもウレタン防水は最適と言えるでしょう。
広くて大きな建物の屋上
マンションやビル、学校、病院などの大きな建物の場合、シート防水工事がおすすめです。
シートを敷き詰めるだけで防水工事が完了する、シートを複雑な形に切り取る必要がないなどの理由からスピーディーに、安価に工事を完了させられます。
屋上の貯水タンクがある、多くの室外機を設置しているなどの場合はその部分だけ別の防水工事をしなければならない、すべて撤去した上でシート防水工事をしなければならないなどの問題もあります。
不安な場合は一度業者に見積もりを依頼して、どんな作業が必要なのかを教えてもらうといいでしょう。
駐車スペースなどがある屋上
屋上を駐車スペースとしているビルや商業施設、病院などの大型施設は多いです。そんな場合にはアスファルト防水工事をおすすめします。
アスファルトは防水性が高いだけでなく車などの重みにも十分耐えられる耐久性を持っています。
アスファルト防水工事はアスファルトやアスファルトを溶かす機械、乾かす機械などさまざまなアイテム、工程が必要です。屋上にもそれらを保管するスペースが必要ですので、一般住宅など面積の小さい屋上での施工は現実的ではありません。
あくまでも面積が広く、駐車スペースとして使っている、重たい機械などを保管しているという場合のみにおすすめできる工法です。
屋上の防水工事の費用相場
屋上の防水工事にはどれくらいの費用がかかるのかについて見ていきましょう。
屋上の防水工事はそれぞれに費用がまったく違います。ですがその分耐用年数や対応している広さ、メリット、デメリットも違います。
費用だけで選ぶのではなく、コストパフォーマンスやその建物に最適な工事方法も考慮した上で選ぶようにしましょう。
ウレタン防水工事
屋上の防水工事の中でも主流であるウレタン防水工事の費用は、1平方メートルあたり4000円から7000円程度です。
コンパクトな屋上から広い屋上、複雑な形状の屋上にまで対応しており、耐用年数は10年から15年程度とコストパフォーマンスも十分です。
FRP防水工事
FRP防水工事の費用相場は1平方メートルあたり5000円から8000円程度です。ウレタン防水工事よりやや高額になるケースが多く、それでいて耐用年数は同じくらいです。
固めの仕上がりにする必要がある、簡単な形状の屋上である、コンパクトな屋上であるという場合にはおすすめです。
シート防水工事
シート防水工事の場合は、ゴムシートを選ぶか塩化ビニールシートを選ぶかによって費用が変動します。
ゴムシートの場合は1平方メートルあたり4000円から5000円程度で済みます。屋上の防水工事を安く済ませたいという方にはとくにおすすめです。
塩化ビニールシートの場合は4000円から7000円程度です。屋上に接着する工法を選べば安くなりますし、特別な機械を使用して屋上を傷つけずに設置する場合はやや高額になります。
シート防水工事の耐用年数は10年から15年程度で、一度設置するとメンテナンスの手間がかかりません。ですが暴風などでシートが剥がれてしまった場合は速やかに工事のやり直しを依頼する必要があります。
アスファルト防水工事
アスファルト防水工事の費用は1平方メートルあたり5000円から9000円程度です。他の防水工事と比較するとやや高額になるケースが多いです。
ですが一度施工すると耐用年数は15年から25年と非常に長く、コストパフォーマンスは優れています。
広くて障害物のない屋上など、施工できる屋上がある程度限定されているものの、条件に合う屋上であればアスファルト防水工事を選んでもいいでしょう。
費用が高くなるケース
屋上の防水工事は1平方メートルあたりの費用だけでなく、さまざまな費用がかかるケースもあります。
アスファルト防水工事などは機材の使用料や人件費が高くなります。工期が長くなればそれだけ費用がかかります。
その他、足場を組み立てる必要がある場合は足場代、養生代も必要です。
室外機を取り外したり設置し直したりといった、防水工事以外の作業が必要な場合もその費用を請求されます。
見積もりの段階でこれらの費用も提示してくれる業者ならいいですが、そうでない場合は工事が終わってから見積もり以上の金額を請求されてトラブルになる可能性もあります。
屋上の防水工事を依頼できる業者
屋上の防水工事はどんな業者に依頼すればいいのかを紹介します。
屋上の防水工事の実績が多い、または防水工事を専門としている業者なら技術が高く信頼できます。
さらにその中から複数の業者に見積もりを依頼し、適切な見積もりを出してくれる業者を選ぶことがおすすめです。
防水工事の実績が多い
まずはその業者の防水工事の実績をチェックしましょう。リフォームや新築住宅の実績が豊富でも、防水工事が得意だとは限りません。
普段は下請け業者に依頼しているようなハウスメーカーや工務店に依頼してしまうと満足な防水工事をしてもらえない可能性があります。
防水工事の中でも屋上、ひいては自分が依頼したい規模や種類の防水工事を多く手掛けているかどうかを確認してください。
防水工事の専門である
防水工事の実績がある業者を利用するのもいいですが、より高い技術を期待するのであれば防水の工事を専門としている業者を選ぶのがおすすめです。
屋上やベランダの防水工事を専門としている業者は意外とたくさんあります。専門性を高めた分防水加工の技術が高い職人が集まっており、防水工事の知識も豊富です。
どの工事を選べばいいかわからない場合も相談に乗ってくれたり、より低価格でスピーディーに工事が終わる最新の工事方法、塗料なども提示してくれたりします。
防水工事を初めて依頼する、過去に防水工事業者を適当に依頼して後悔したことがあるという方は、防水工事の専門業者を選びましょう。
相見積もりを取る
防水工事に特化した業者にいきなり依頼するのではなく、まずは複数ピックアップしてみてください。
対応エリア内の防水工事業者に工事の見積もりを依頼しましょう。それぞれの業者の見積もりを比較することで、より信頼できる業者を見極められます。
見積もりの金額だけでなくその内訳もチェックしてください。安すぎる場合はあとから作業にかかった金額を請求される可能性が高いです。また、不明な金額が追加されている場合も注意しましょう。
丁寧な業者の場合は見積もりの段階で必要な費用をすべてわかりやすく計上してくれています。安ければいいというわけではありませんので注意してください。
また、工事費用は工事の種類によっても変動します。事前に工事の種類を決めて、同じ工事を依頼した場合に費用にどれくらいの差が出るのかを比較してみてください。
アフターフォローも確認
屋上の防水工事の種類を決め、費用相場を確認したら、その業者のアフターフォローも確認してください。
屋上の防水工事は一度施工したら終わりという工事ではありません。
シートが剥がれてしまったり、樹脂が歪んだまま固まってしまったり異物が入ってしまったり、さらにアスファルトがひび割れてしまったりと、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
そんなときに迅速に対応してくれるか、無料でメンテナンスをしてくれるかなどを確認してください。
アフターフォローの期間が長い、定期的にメンテナンスをしてくれることも大切です。
ですがアフターフォローの期間が長く設定されていても、業者自体が倒産してしまう可能性も十分にあります。建築業界は今後も景気が低迷していくことが予想されています。長く営業を続けている、ある程度大手の会社が運営しているなど、長くフォローしてくれるような業者を選ぶことも忘れないようにしてください。
屋上の防水工事を考えよう
屋上の防水工事の種類や費用相場、業者の選び方などについて紹介しました。
屋上は常に雨風にさらされている場所です。きちんと防水加工をしないと屋上がダメージを受け、ひいては建物全体のダメージにもつながります。
ウレタン、FRP、シート、アスファルトなど、それぞれの工事のメリットとデメリットを比較し、自分の依頼したい建物にぴったりの工事を選びましょう。
業者の選び方も重要です。複数の業者を比較して、信頼して工事を任せられる業者を見つけてください。