建築業界への就職、転職を考える際、どの業種を選ぶのかによって働き方は大きく変わります。
建築業界の中でもとくに有名なのがハウスメーカーです。
ですがハウスメーカーのように家作りをおこなう業種として工務店やビルダーなどがあります。
ハウスメーカーの仕事内容を確認すると同時に、これらの業種との違いも確認しましょう。人によってはハウスメーカーよりも工務店やビルダーの方が向いている可能性もあります。
ハウスメーカーの定義を確認
まずはハウスメーカーの定義を見てみましょう。
ハウスメーカーに明確な定義はありませんが、一般的に住宅の建築を継続的に一定以上おこなっている、住宅に関する法律や制約などを守り、住宅建築のパイオニアとして活躍している企業をハウスメーカーと呼びます。
それぞれの詳しい内容について解説します。
住宅の建築をおこなう
ハウスメーカーは住宅の建築をメインにおこなう会社です。
ハウスメーカーは全国チェーンのメーカーも多く、その対応エリアは非常に広いです。日本国内だけでなく海外に進出しているハウスメーカーもあります。
小規模のハウスメーカーであっても、首都圏や近畿圏、中部圏といった日本の拠点となるような場所で家作りをおこなっているメーカーがほとんどです。
チェーンのハウスメーカーはマニュアルや基本的な設計を各店舗の共有できるため、全国各地のどこで依頼しても同じクオリティの家を建てられるというメリットがあります。
さらに、ハウスメーカーは家作りからおこなう会社のことで、すでに建てられている家のみを売る場合はハウスメーカーとは呼びません。
一定以上の住宅を継続的に建築している
一般社団法人プレハブ建築協会が定めるところによると、ハウスメーカーとは年間で300件以上の家作りに携わっていることが条件とされています。
さらに床面積は30000平方メートル以上であることも条件です。
これに該当しない会社はハウスメーカーとは呼ばないこともあります。
住宅に関する政策を守りパイオニアとして活躍する
家作りはただデザイン性や快適性を追い求めるだけでは成り立ちません。
耐火性、耐震性といった、その家で安心して暮らすために必要な条件はたくさんあります。法律で定められた基準をクリアしなければその家は違法建築物件となり、発覚した際は会社が営業停止になったり法的な罰則を受けることもあります。
さらに近年ではただ生活ができるだけでなく、その家庭のニーズに合う暮らし方を提案する努力も必要になってきています。
これまでの既存の価値観に囚われず、さまざまな間取りや空間作りを提案していく力もハウスメーカーには求められています。
また、耐火性や耐久性の強い素材、耐震性の高い構造などを日々研究するのもハウスメーカーの役割です。
ハウスメーカーはどんな仕事をする?
ハウスメーカーは実際にはどんな仕事をしているのかチェックしてみましょう。
ハウスメーカーに就職、転職するといってもその働き方はさまざまです。自分がどんな仕事をしたいのか、自分にはどんな仕事が向いているのかをよく考えておきましょう。
住宅の設計やプレゼン
まずは住宅の設計です。
建築士や設計士などはこの設計の仕事をおこなうことも多いです。
多くの人が暮らしやすい家作りを考えるだけでなく、注文住宅の場合はクライアントの要望をしっかり聞き入れた上でそれを実現するための設計をしなければなりません。
設計と聞くとデスクでひたすら図面を作成するというイメージがありますが、実際には少し違います。
クライアントとの打ち合わせを重ねたり、実際の設計図を用いてクライアントに説明をしたり、さらに業者に素材や価格の交渉などをすることもあります。
設計の仕事は建築に関する高い技術が必要なだけでなく、交渉力や決断力、コミュニケーション能力も求められる非常に大変な仕事の一つです。
工事の施工管理
現場での施工管理もハウスメーカーの仕事です。
仕上がった設計図を元に、正確に建築業務を進めていきます。
現場を管理するのはハウスメーカーの仕事ですが、実際に建築をおこなうのは別の会社の職人であることも多いです。
職人に正確に指示を出し、怪我や事故のないように安全管理をおこなうことも大切な仕事です。
また、スケジュールの少しの遅れは全体の大きな遅れにもつながります。屋外での作業であるため天候によってはスムーズに作業が進まないときもありますが、そんなときでも臨機応変にスケジュールを変更し、てきぱきと現場を管理しなければなりません。
ヒアリングや営業
ハウスメーカーでは営業は非常に大切な仕事です。
クライアントにそのハウスメーカーの家やコンセプト、安全管理などを気に入ってもらえなければ契約につながらず、他のスタッフの仕事がストップしてしまいます。
家作りは一生に一度あるかないかの重要な決断です。複数のメーカーに相談しているクライアントも多く、どのメーカーよりも優れていることをきちんとアピールしなければなりません。
そのためには営業スタッフの人柄ももちろんですが、そのハウスメーカーならではの工夫や仕組みも大切です。
建築についての知識がないクライアントに対してもわかりやすく、丁寧に説明し、明確なデータを用いて解説する必要もあります。
そのハウスメーカーについて何を聞かれてもすぐに答えられるようにあらゆる知識を頭に詰め込み、建築業界の最新の情報などもキャッチする力が求められます。
事務などバックアップ業務
ハウスメーカーにも事務の仕事はあります。
建築業界ならではの複雑な書類や資料を作成したり、お金の管理をしたり、電話での対応や書類の送付などが主な仕事です。
一般的な事務とそう変わりませんが、やはり建築についてのある程度の知識があるとスムーズに仕事を覚えられます。
国家資格や建築について詳しく知らなくてもできる仕事ではありますが、少しのミスがクライアントや他のスタッフに大きく影響することもある大切な仕事です。
有名な各ハウスメーカーの特徴
ハウスメーカーは全国各地に多数ありますが、中には全国チェーンの有名店も多いです。
テレビCMなどで有名なハウスメーカーにはどんな種類があるのか、そしてそれぞれにどんな特徴を持っているのかをチェックしてみましょう。
セキスイハイム
セキスイハイムは1947年に設立されたハウスメーカーです。
鉄骨住宅も木造住宅も対応しており、各部位ごとに工場で大量生産することでコストを抑えるという手法を取っています。
高い技術があるだけでなく、エコで最新の建築方法を取り入れるための研究も怠りません。
近年はただ暮らしやすい家だけでなく、断熱性が高い、耐震性が高い家などに注目が集まっています。
積水ハイムではそのような世間のニーズに応えるための工夫がたくさんされています。
トヨタホーム
トヨタホームは2003年に設立されたばかりのハウスメーカーです。
日本を代表する自動車メーカーのトヨタグループが運営していることでも有名です。
トヨタは高品質な車作りが世界的にも高く評価されていますが、その技術を家作りにも反映したのがトヨタホームです。
一戸建ての住宅だけでなく賃貸アパートやマンション、リフォームなどにも対応しています。
また、家づくりだけでなく町づくりに貢献しているという特徴もあります。トヨタグループの傘下であるため、このような大規模な施工にも対応しています。
住友林業
1948年に設立された住友林業は、その名の通りもともとは植林事業をおこなう会社でした。
そのため木材について豊富な知識と経験があり、仕入れコストも大幅に削減できるという強みがあります。
木造の住宅は、素材にこだわることで夏は涼しく、冬は暖かく暮らすことができます。住友林業のような、木材にこだわりを持っているメーカーだからこその住み心地のいい住宅を多く提案しています。
森林を伐採するだけでなくさらに植林して、地球環境にも貢献しているというクリーンな一面もあります。
ダイワハウス
ダイワハウスは1955年に設立されたハウスメーカーです。
戸建ての住宅だけでなくマンションやアパート、リゾートホテルなどの大規模な建築にも携わっています。
ハウスメーカーの中でも大手に分類され、知名度からダイワハウスを選ぶ人も多いです。
就職先としても非常に人気が高いですがその分ライバルも多く、学歴や経歴が勝負の要となることも多いです。
ダイワハウスはこれまでの建築業界にはなかったさまざまな技術を開発しており、まさに建築業界のパイオニア的な存在です。
土地開発に特化した部門があり、各地域に応じた家作りの提案がスムーズにできるというのもダイワハウスの大きな強みの一つです。
三井ホーム
三井ホームは他のハウスメーカーと比べるとやや知名度は劣りますが、他にはないデザイン性の高い住宅を数多く提案していることで人気です。
長く住み続けられる時代に適したデザインであったり、クライアント一人一人の要望を叶えるフルオーダーメイドを受け付けていたり、どんな人であっても満足のいく家作りができるでしょう。
さらにジョブローテーション制度を取り入れているという特徴もあります。社員にさまざまな仕事をさせることで適正を見極め、一人ひとりが得意なことを活かせるようにしています。
自分の強みを生かして働きたいという方には三井ホームは働きやすい環境が整っているでしょう。
工務店のメリット・デメリット
ハウスメーカーと似た業種に工務店があります。
工務店は年間に建築に携わる住宅の数が20以下という定義があります。
これに該当する工務店は全国で30000件以上あるとされています。
ハウスメーカーのようにチェーン店であるところは少なく、多くは地域密着型です。
ハウスメーカーと工務店はどう違うのかを、工務店のメリット、デメリットから見てみましょう。
オーダーメイドの住宅作りが可能
工務店は地域密着型で経営しており、その建築技術や設計の技術にも大きな違いがあります。
ハウスメーカーのように均一の工事をおこなうわけではないので、より細かい要望が通りやすいというメリットがあります。
また、工務店はただ依頼が少ないというわけではなく、あえて年間の依頼を受け付ける数を少なくして一棟一棟に丁寧に向き合っているというところも多いです。
こだわりの家作りをしたい、言われただけの仕事をするのではなく自分から研究したり提案したりしたいという方には工務店の方が向いていることもあります。
建築以外の業務が苦手な場合も
工務店は主に建築をおこなっています。
そのため、デザイン性の高い設計はできなかったり、土地探しやローンについての相談は受け付けていなかったりといったこともあります。
その場合は別途自分で土地を探したり、ローンについて調べたりしなければなりません。
また、工務店はハウスメーカーとは違い家族経営などで成り立っているところも多いです。工務店によって家作りに対する考え方や技術力が大きく違いますので、選ぶ際は実績やコンセプトなどをしっかり確認する必要があります。
親しみやすくわがままを伝えやすいというのが工務店のメリットですが、一方でチェーンのハウスメーカーのような高いクオリティかどうかは見分けにくいというデメリットもあります。
ビルダーのメリット・デメリット
ハウスメーカー、工務店とも違うのがビルダーという業種です。
ビルダーは一般的に年間の建築の依頼数が数百件件以下とされていますが、その他にもセミオーダー、フルオーダーまで対応、融通が利きやすいといった特徴があります。
こちらもメリットとデメリットを紹介していきます。
小規模でニーズに応えやすい
ビルダーはハウスメーカーよりは小規模、工務店よりはやや規模が大きいといった中間地点の存在です。
工務店と同じく地域密着型の店舗が多いですが、独自に展示会場を持っていたり展示会に出展しているビルダーもあります。
建築まで自社でおこなっているため作業がスムーズで、実際に作業が始まってから完成までがスピーディーというメリットもあります。
地域によっては全国規模のハウスメーカーよりも一つのビルダーの方が人気が高い、シェア率が高いということもあります。知名度が低くても、口コミなどで評判が広がるケースは多いです。
対応できない仕様もある
ビルダーはハウスメーカーと工務店の中間に位置する存在ではありますが、ハウスメーカーほどの幅広い対応ができないこともあります。
ハウスメーカーは全国規模なのでその分資材を安く仕入れられたり、最新技術を共有したりできます。
ですがビルダーではそのような工夫ができないため、どうしてもできる対応に限度があります。
デザイン事務所のメリット・デメリット
ハウスメーカー、工務店、ビルダーの違いについて解説しました。さらにもう一つ、デザイン事務所についても紹介します。
デザイン事務所はその名の通り建築物のデザイン、設計をおこなう会社のことです。
デザイン会社を利用することでどんなメリットがあるのか、デメリットは何なのかについて確認しましょう。
デザインにこだわった家作りが可能
デザイン会社では多くのデザイナーが勤務しています。もちろん建築についての知識もあるデザイナーばかりです。
そのため、他の一般的な住宅とはまったく違う新しい形の家作りの提案が可能です。
おしゃれな家に住みたい、家族一人ひとりのニーズに合う空間を作りたい、長く暮らせるよう間取りを変えられる家を作りたい、理想の別荘を作りたいといった要望があれば、デザイン事務所で叶えることができるでしょう。
家だけでなく店舗やオフィスのデザインを手掛けているデザイン事務所も多く、これまでに多くのコンテストで入賞したなどの実績が必要でもあります。
固定概念に囚われない家作りがしたい、自分のセンスを活かした建築をしたいという方にはデザイン事務所がおすすめです。
建築などは他の業者を探さなければならない
デザイン事務所はデザインに特化した会社です。
土地探しはもちろん、ローンの相談や実際の施工などには対応していません。
そのため、デザイン事務所に設計図を作成してもらってから別に工務店やビルダーに依頼して施工してもらう必要があります。
当然デザイン料と施工の依頼料は別々に支払わなければならないので費用は高額になります。
それでもこだわりの詰まった家に住みたいという方であれば問題ありませんが、ハウスメーカーやビルダーの注文住宅で叶えられる範囲である場合はデザイン事務所を使うメリットはほとんどないでしょう。
ハウスメーカーで理想の働き方を見つけよう
ハウスメーカーの仕事内容や工務店、ビルダーなどとの違いについて解説しました。
ハウスメーカーは家作りを多くおこなう会社のことで、全国各地どこで依頼しても一定のクオリティが確約されているという安心感があります。
その分ハウスメーカーで働くためには常に新しい技術を学び続ける力や、ブランドバリューに甘えず技術を磨くことなどが求められます。
営業や事務といった仕事もあり、そのすべてがハウスメーカーの成長につながっています。
自分はハウスメーカーの仕事に向いているのか、どんな仕事をしたいのかなどをよく考え、さらに各ハウスメーカーの特徴をチェックして、転職や就職に役立てましょう。