日本の建築業界には独自のシステムが構築されています。
アメリカを例にとり、日本との建築業界の違いをチェックしてみましょう。
アメリカの建築業化の働き方から学ぶべき点はたくさんあります。
現在の働き方に疑問を感じている方は、外資系企業への転職も検討しましょう。外資系建築企業ならではの特徴、働くメリット、求められている人材について、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
アメリカと日本の建築業界の違い
アメリカと日本の建築業界の違いを解説します。
アメリカの建築業界にはゼネコン会社がほとんどなく、施工と設計はそれぞれ分かれて仕事を請けます。
労働組合が充実しており労働者の意見が通りやすいという特徴もあります。
最新機器の導入も早く、業務の効率化、スピードアップのノウハウも豊富に持っています。
資金面などで叶わない点は多いですが、国内からではなくグローバルな視点で業界を見てみることも大切です。
ゼネコン会社がない
アメリカと日本の建築業界の大きな違いとして、ゼネコン会社の有無があります。
日本では、工事の案件をゼネコン会社が引き受け、それぞれの工程を下請けの業者に振り分けていく方法が浸透しています。
その分二次、三次と下請けが続きやすく、下になればなるほど待遇が悪くなるという問題を抱えています。
一方でアメリカにはゼネコン会社がほとんどありません。日本のスーパーゼネコンのような企業もありません。
そもそも工事の依頼の段階で設計、施工を分けて依頼するのでゼネコンが必要ないのです。
まったくゼネコン会社がないわけではありませんが、日本の建築業界のように多くのシェアをほこることはありません。
労働組合が充実している
アメリカの建築業界は労働組合が充実しているという点も日本とは大きく違います。
アメリカの建築業界の労働組合は、組合員が100万人以上もおり全国に広まっています。
建築会社とはその労働組合が協定を結んでいるので、労働組合のルールを厳密に守る必要があります。
基本的に土日は休みが当たり前ですし、労働時間も明確に定められています。
日本のように、休日が1日しかない、工事ごとに休日が変わるということもありません。
また、労働組合のルールに反した働き方をさせた場合、会社だけでなくその労働者も罰せられるという特徴があります。
しっかりと労働者の権利が守られているので、過酷な仕事ではあるものの比較的働きやすいでしょう。
最新機器の導入が早い
アメリカではさまざまな最新技術が日々取り入れられています。
代表的な例としてはBIM(Building Information Modeling)やICT(Information and Communication Technology)が有名です。
BIMとはコンピューターで3次元の設計をし、建設の人為的ミスを減らし、効率化するために役立ちます。
ICTは施行や設計、監理を効率化、高度化するために役立つシステムです。
もちろん日本でもこれらは取り入れられていますが、デジタル化の進み具合はアメリカに及んでいません。
日本は建築業界の労働者の人口減少が深刻です。今後も積極的に海外の最先端の技術を取り入れる必要性が高まっていくでしょう。
アメリカの建築業界から取り入れたいこと
アメリカの建築業界から取り入れるべきことはたくさんあります。
デジタル機器の導入や労働組合の強化、各作業の分業化など、今後の建築業界を考える上で大切な点を解説します。
デジタル機器の導入
日本国内でも建築業界のデジタル化は進みつつありますが、デジタルに弱い高齢の労働者が多い、そもそも教えられる人が少ないなどの理由から遅れているのが現状です。
デジタル機器やソフトを導入することで人為的なミスを大幅に削減できるだけでなく、労働者の負担が軽減して働きやすくなる、その分新しい業務に回せる、作業を効率化できるなど多くのメリットがあります。
デジタル化を進める上ではコスト面や教育面でさまざまな課題が残されていますが、今後労働人口の減少が続く日本においては真剣に向き合わなければならない問題です。
労働組合の強化
アメリカの労働組合は建築会社と労働者に対して非常に強い力を持っています。
この労働組合によって労働者の権利は守られています。
日本にも、日本建設組合連合がありますがアメリカほどの強力な力はありません。
加入者数も少ないのが現状です。
日本の建築業界は労働時間が長い、休日が少ない、保障が充分でないなど、労働者の扱いが悪い面も多いです。
悪い印象から建築業界に入りたがらない若者も多く、労働人口の減少に拍車をかけています。
建築業界の労働人口を維持し、働きやすい環境を作るためには、労働組合の強化も必要と言えるでしょう。
各作業の分業化
アメリカではゼネコン会社は日本ほど力を発揮しません。
依頼の段階で作業を割り振ってしまうためです。
各作業を明確に分業化することで、作業の効率化が期待できます。
少ないコストで作業に取り組めるため、中小企業でも仕事を続けやすくなるでしょう。
日本の建築業界の構造を一から変えるのは難しいですが、働き方の欧米化が進む昨今、いつ大きな変化が訪れるかわかりません。
世界の建築業界の規模は?
アメリカだけでなく世界の建築業界はどれくらいの規模なのかを見てみましょう。
規模の大きい順に、中国、アメリカ、日本の建築業界を解説します。
中国
今世界でもっとも建築業界の規模が大きいのは中国です。
中国の経済的な成長は留まるところを知らず、アメリカを抜いて単独で一位です。
中国は国土面積も大きいですが、人口も多いです。
そのため建築の需要が常に一定以上あり、仕事が豊富です。
都心部では大規模なビルや商業施設、宿泊施設の建設も進んでおり、世界中から最先端の技術を取り入れた建築をおこなっていまう。
一時期から中国の人口増加はストップしており、今後再び増えるかは不明です。
建築業界の規模拡大も期待されていましたが、長い目で見ると今後は減少していくことが予測されます。
アメリカ
アメリカは国土面積が広いものの人口では中国に及びません。
また、一部都市に建築の需要が集中しているため、規模を拡大しにくいです。
一方で、現在は中国にその規模を追い抜かされているものの、中国の経済成長のストップに合わせて今後再びアメリカが一位になる可能性は高いです。
世界中の技術が集まるアメリカは、やはり今後も建築の最先端を走っていくでしょう。
日本
日本は中国、アメリカに続いて三番目に建築の規模が大きいです。
二位のアメリカと比較するとその差は半分以下ですが、日本より下のインドや欧米諸国と比べると高い水準を維持しています。
バブルの時期に急速に建築需要が高まり、さまざまな場所でマンションやオフィスビル、リゾート施設の建設が進みました。
一時期は世界で一位の規模をほこっていましたが、現在は三位にとどまっています。
人口の減少や高齢化が進むにつれて今後も規模は縮小していくことが予想されます。
日本と世界の建築業界を比較してみよう
日本とアメリカ、世界の建築業界を比較してみました。
日本が悪い、アメリカが良いというわけではありませんが、よりグローバルな視点から建築業界を見つめることで課題もたくさん見つかるでしょう。
日本は地震や天災の被害に遭いやすく、その分高い建築技術を持っています。
取り入れるべき点は取り入れ、守るべき点は守り、日本の建築業界の発展を目指しましょう。