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建築業界も働き方改革!どんな点が変わっているのか?

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長時間の労働や低賃金での労働により従業員が怪我をしたり事故を起こしたり、さらに精神疾患を患う、最悪の場合過労死してしまうといった問題がどの業界でも起きています。

働きすぎや企業による搾取を防ぐために日本では働き方改革が進んでいますが、建築業界にも徐々にその兆しが見えてきています。

業務形態からなかなか労働環境の改善が難しいという問題がありますが、実際にはどのような改革が進んでいるのか見てみましょう。

今後の建築業界の課題やどのような改革を進めていくべきなのかなども紹介します。

建築業界の働き方改革が進みにくい理由

働き方改革は多くの企業で導入されています。中には厳しくルールを定めているものもあります。

ですが建築業界は働き方改革を進めにくい業界であることが問題視されています。

どのような点が問題となっているのかをチェックしましょう。これらを踏まえてどんな工夫ができるのかを考えることも、企業の人間、経営者にとって重要な課題です。

現場の仕事は残業を減らしにくい

建築現場の仕事はそもそも残業を減らしにくいです。

スケジュールを組んでいても天候や事故、別の業者の都合によって遅れてしまうことはよくあります。

そして近年は建築会社同士での仕事の取り合いも苛烈になっており、中には現場にしわ寄せが来る無理なスケジュールで契約を取ってしまう企業もあります。

予定されている完成日までに仕上げるには夜間まで働かなければならない、休日も出勤しなければならないということも珍しくありません。

業務を効率化するという方法もありますが、その前にまず無理なスケジュールを組まないこと、取引先や企業の上層部からの理解が必要です。

中小企業は資金や人材が不足

大企業はシステムを導入したりシフトの融通を利かせたりといった工夫で働き方改革を取り入れやすいですが、従業員の数が少ない中小企業の場合はこのような工夫をしにくいです。

システムを導入する資金がない、従業員を十分の確保しにくいといった理由から働き方改革が進めにくい、そもそも進められる状況にないケースも多いです。

働き方改革が進まず労働環境が悪いままで従業員が離職してしまいさらに労働環境が悪化するという悪循環に陥っている企業も少なくありません。

テレワークなどをしにくい

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、多くの企業ではテレワークの導入が進みました。これは働き方改革にも役立っており、残業の防止や従業員のストレスの緩和などにも効果があります。

ですが建築業界は現場の仕事がメインですのでテレワークがしにくいです。

実際に現場に出向かなければならないためその移動時間も従業員は拘束されていることになります。取引先や他の業者、顧客とも直接やり取りをしなければならない仕事も多いです。

労働時間を短くすることや各々で仕事を進めることが難しく、スムーズに労働環境の改善は進めにくいでしょう。

建築業界で働き方改革が進み始めた理由

働き方改革を進めるのが難しいとされている建築業界ですが、それでも徐々に改革が進んでいます。

どのような理由で働き方改革が進んでいるのか、その理由をチェックしてみましょう。

労働時間の上限が規制されるため

国は建設業に対して2019年から労働時間の改善などを求めており、2024年4月までには大企業だけでなく中小企業を含むすべての建設業の労働環境を改めなければなりません。

大企業は2019年ですが、中小企業はシステムの導入や人材の確保に時間や資金がかかるため5年間の猶予期間が設けられました。それが2024年4月です。

それ以降は労働時間は1日8時間、週に40時間以内という規制がかかります。

労働組合と協定を組むことで従業員に残業をさせることも可能ですが、その場合も月に45時間まで、年間では360時間までです。

その他休日や休日労働についても細かい規則が決められています。

これに反して従業員を残業させると企業は罰則を受けることになります。

有能な人材の確保のため

少子高齢化により若年層の働き手不足はどの業界でも深刻化しています。

とくに建築業界は将来性が低く、現場の厳しい作業や上下関係を嫌煙する人も多いです。

実際に建築業界で働き始めても残業の多さや労働環境の悪さを理由に離職してしまったり、より良い条件の企業に転職してしまうというケースもあります。

働き方改革をしなければ数少ない有能な人材を確保しにくくなっているというのが建築業界の現状です。

労働時間や休日、給与など、多くの面で有能な人材が魅力に感じる、この企業で働きたいと感じるような環境を整えなければなりません。

長時間労働が問題となっているため

建築業はとくに残業が多いことが問題となっています。

現場での仕事は先ほど解説したように残業を減らしにくいという問題もありますが、それでも長時間労働が続くと従業員の心身に悪影響を及ぼします。

建築業界に興味があっても長時間労働を懸念して就職、転職できないという人材も少なくないでしょう。

労働時間を改善することにより従業員の作業効率もアップするだけでなく、新しい人材の確保も期待できます。

そのような点からも労働時間の改善は早急に対応しなければならない問題です。

労働環境が不安定なため

建築業界では雇用保険や健康保険、厚生年金といった保険に加入している従業員の割合が低いことも問題視されています。

下請けや現場での仕事になると給与が低水準で、保険に加入する余裕がないという人が多いためです。

ですが建築業は怪我や事故が頻発しやすい環境でもあります。保険に加入しないことでかえって従業員の負担になってしまう可能性も低くありません。怪我の治療が長引き働けず、さらに収入が減って保険料を支払えなくなる…といった悪循環にも陥りやすいです。

そのような不安定な労働環境を改善し、従業員の日々の安全を守るためにも、保険の加入率アップを目指す必要があります。

建築業界が取り組むべき3つの働き方改革

国の働き方改革として、建築業界ではとくに下記の3つを取り入れなければなりません。

これらは詳しく規定されているものもあります。無視し続けていることが発覚した場合には厳しい罰則や罰金、業務停止命令などが下る可能性もあります。

国土交通省が発行している建設業働き方改革加速化プログラムも参考にしてください。

労働時間の緩和

建築業界では現場の従業員の長時間の労働が問題となっています。

週休二日制の企業も少ないですが、働き方改革では週休二日制を取り入れることを推奨しています。

労働時間、残業時間についても厳しく規定があり、これらのルールを守っている企業を優先的に高く評価するといった仕組みも出来上がりつつあります。

従業員にしわ寄せのこない工期の設定も推奨しており、ガイドラインや現段階の建築業界の実情を踏まえたスケジュール作成が求められます。依頼主が無理なオーダーをすることで工期が短くなってしまうケースもあり、企業側だけでなく依頼主の理解も必要です。

保険への加入・給与の見直し

中小企業、下請け企業に対しても各種保険への加入を義務付ける動きもあります。

とくに社会保険に関しては、加入していない企業に対して営業許可を与えない、許可を更新させないといった仕組みを作ろうとしています。

給与面においては不公平なジャッジにならないようキャリアアップシステムを導入し、公平な評価のもと適正な給与を支払うことが推奨されています。

資格や経験によって手当てを出すことも大切ですが、従業員全体の賃金の水準を上げることも大切です。

とくに下請け企業は賃金が安くなることが多いため人材不足も深刻になりがちです。問題解決のためにも給与面はとくに意識しなければならない問題です。

作業の効率化

作業を効率化するための工夫も求められています。

各資料や書類の電子化によって手書きの負担を減らしたり、ITシステムの導入、新技術の導入なども取り入れるべきとされています。

建築業界の人材不足はすぐに解決する問題ではありません。そのため、今いる従業員が快適に働ける、無駄な作業を減らして効率的に働ける仕組みを作る必要があります。

他にも、下請けの段階が増えれば増えるほど最下層の業者の賃金が低下すること、労働環境が悪化すること、作業効率が悪くなることを踏まえ、下請けの数を減らす取り組みも求められています。

建築業界で始まっている働き方改革

建築業界では徐々に働き方改革が進んでいます。

大企業はすでに労働時間の規制などが始まっており、そのためにさまざまな工夫をされています。

実際にはどんな方法で働き方改革を取り入れているのか、そして今後どのような工夫が必要なのかについて見ていきましょう。

残業をしにくい環境作り

建築業界で問題となっている長時間労働を是正するためには、まず残業をしにくい環境作りをしなければなりません。

ですがスケジュールは現状のまま残業をむやみに禁止しても問題は改善されません。中にはタイムカードを切らせてその後も働かせるといった悪質な企業があることも問題となっています。

企業全体でノー残業デーを作る、上層部が率先して残業をしない姿勢を見せるなど、企業全体での意識の改革が求められています。

日本では残業をした方がえらい、上司からのイメージアップにつながるといった風潮がいまだに強く残っていますが、そのような考え方を根本から変えていく必要があるでしょう。

施行スケジュールの緩和

従業員の長時間労働は、無理な施工スケジュールに原因があることが多いです。

改善策としてまず施工スケジュールの緩和が挙げられます。

無理のない余裕を持ったスケジュールを組むことで、残業や休日労働を減らすことができます。

他の企業との仕事の取り合いのために無理なスケジュールを組んでしまう企業も多いですが、従業員のことを考えたスケジュールを組める企業の方が長い目で見れば信頼ができます。

依頼主の中にはこのようなスケジュールの緩和に寛容的な個人や企業も増えてきています。

ですが中小企業になると一つでも多くの契約を取るために従業員に無理をさせてしまっている場合も多いです。

2024年の中小企業に対する猶予期間が終わる前に、これらの問題を改善しなければなりません。

保険加入者を増やす

下請け業者や現場での作業員の保険加入率の低さを改善するために、保険加入者を増やす取り組みも始まっています。

従業員を保険に加入させない企業に対しては営業許可を与えないなど厳しいルールも始まっています。

ですが低賃金で働く従業員にとって毎月保険料を引かれると生活が成り立たなくなるという声も少なくありません。このような環境を改善するためには基本の賃金をアップする取り組みも進める必要があります。

ITを導入した業務効率化

ITを導入して作業を効率化し、従業員一人一人の作業の負担を軽減する取り組みも進んでいます。

ITを導入することで、限られた人材を効率的に配置して働き続けられます。

これまでの建築業界では手書きの設計図や書類なども多かったですが、システムの導入によりスムーズに設計図を描けたり、外部に委託したりできるようになりました。

資料を直接送付するのではなくメールなどで送信することで通信にかかる時間も短縮できます。

ただやみくもに人材を増やすだけでは作業効率はアップせず、無駄に人件費を払ってしまうことになります。このような工夫次第で最低限の人材で負担をかけずに作業を進められますので、人材を確保できない場合は別の道も探してみましょう。

スキルに見合う給与形態

大手の建築会社は給与が比較的高いですが、中小企業や下請け企業になると非常に水準が低くなっているのが現状です。

これが人材不足の原因や、保険加入率の低さの原因にもなっています。これらの問題を解決するにはスキルに見合う給与形態を考えることも大切です。

資格所持者に対して資格手当てを出す、スキルや経験に応じて相応の待遇を用意するなどの必要があります。

さらに各種保険への加入を任意ではなく最初からルールとして決めておく、そしてそのことを面接の段階で正しく伝えることなどが求められます。

給与アップは中小企業にとっては非常に難しい問題でもありますが、今後安定して経営を続けていくためにも見落とせないポイントとなっています。

女性も働きやすい環境作り

人材不足が深刻化する建築業界において、女性の活躍にも注目が集まっています。

建築士の国家資格を持つ女性は全体の四分の一と決して少なくなく、女性が働きにくい環境を放置していると貴重な人材を手放してしまうことになります。

産休、育休を取りやすい環境を作ることはもちろん、女性に対しても男性に対しても子育て世帯の労働時間を短くする、夜勤を入れないようにするなどの工夫も必要です。

女性が働きやすい環境を作るということは、転じて他のすべての従業員も働きやすくなるということでもあります。残業をしないから、シフトが優先されるからといった理由で子育て世帯が肩身の狭い思いをしないような環境を作っていくことが大切です。

建築業界での働き方改革に注目しよう

建築業界にも働き方改革の導入は進められています。

現場での仕事はどうしても残業が多くなりがちで、建築業界の人材不足も深刻な問題となっています。

すぐに改善される問題ではありませんが、労働環境が整えば徐々に仕事量や人材不足も緩和されていくでしょう。

大企業ではすでにこのような取り組みが始まっており、中小企業も2024年までには状況を改善しなければなりません。現在は猶予期間とされていますので、この期間にしっかりと働き方改革のルールをチェックして、それに則った経営ができるように準備を進めていきましょう。

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