建築現場に欠かせない存在が施工管理の仕事です。
施工管理の資格には建築機械、建築、施工、電気工事、管工事、造園といった種類がありますが、いずれの施工管理でもおこなう4つの管理は同じです。
施工管理がおこなう4つの管理、工程、品質、予算、安全の中から、今回は安全管理について解説します。
建築現場で安全に工事を進めるために大切な安全管理について理解していきましょう。
安全管理の内容
施工管理の業務の一つ、安全管理についてその業務内容を解説します。
安全管理は作業員の健康管理はもちろん、機械の点検や構法の確認、日々変動する天候や気候に応じた対策などを考えていかなければなりません。
それぞれの特徴や大切なポイントを確認してみてください。
作業員の健康管理
作業員の健康管理、体調チェックは安全管理の基本的な業務です。
体調が優れないまま作業をすると、建築現場では思わぬ事故やトラブルにつながります。
建築の仕事は肉体労働であり長時間の労働、休日労働も少なくないのが現状です。しっかり休めていない状態で働き続けている作業員がいないかを確認しましょう。
また、新型コロナウイルスの陽性者がいれば現場がクラスターになってしまう可能性もあります。
感染症対策を徹底し、日々作業員の検温、消毒をおこなって感染を防ぎ、安全な環境にすることが大切です。
定期的な機械の点検
機械に不備があったり故障したりしていると、いつも通りの作業をしていても思わぬ事故を引き起こしてしまいます。
不備や故障を未然に防ぐためには日々の点検が大切です。毎日のように機械はきちんと点検した上で作業に取り掛かるようにしましょう。
始業前、終業後はもちろん、雨や雪が降ったあと、台風や強風のあと、地震のあとなどもしっかり点検をおこなってください。
常に屋外に設置されたままの機械は、雨や雪、砂ぼこり、地震による揺れの影響を受けやすいです。いきなり使うと思わぬ故障を引き起こすかもしれません。
機械の故障は事故だけでなく納期の遅れや余計なコストがかかる原因にもなりますので注意しましょう。
落下物による事故の防止
2階以上の部分の工事をおこなう際は、落下物による事故を防止しなければなりません。
資材や機械を吊り上げる際は下に作業員や通行人を近づけさせないようにする、風の影響が考えられる場合は周辺の通行止めをおこなうなども安全管理の一つです。
目で見て判断することも大切ですが、別の作業に集中していると落下物の危険に気が付かないこともあります。そんなときのために警報機を設置して音からも危険を察知させる工夫も必要です。
上下作業の安全管理
上下作業とは2階部分で作業をしつつ並行して1階部分でも作業をするといった作業内容です。
資材や工具などが落下することで階下で作業している作業員が怪我をしたり、事故を招く可能性が非常に高い危険な作業です。安全管理の観点からこの上下作業を全面的に禁止にすることも可能です。
納期の都合などでどうしても上下作業をしなければならない場合は、落下物に注意するよう作業員全員に呼びかける、安全に作業をできる明るい時間のみにするなどの工夫を考える必要があります。
工法の確認
建築にはさまざまな工法がありますが、その現場で取り入れるべき工法をきちんと取り入れているかを常に確認しなければなりません。
工法が間違っていたり手を抜いた作業をしていると結果的に現場での事故やトラブルを防ぐだけでなく、完成後にその建築物を利用した人が被害に遭ってしまいます。
そして定められた工法を守っていなかったことが発覚すれば責任を負わなければなりません。
後々のリスクを考えても、日々工法の確認を徹底することは非常に大切です。
従業員への呼びかけ
作業現場の安全管理は施工管一人だけで成り立つものではありません。
作業員全員がしっかり危機意識を持って作業に挑むことで、日々の作業の安全は守られます。
作業員に危機意識を持たせるためには日頃からの呼びかけが大切です。毎朝朝礼で安全管理に関する呼びかけをおこなう、作業中もその都度声をかけて気を引き締めさせるなどの工夫を忘れないようにしてください。
また、作業員同士の声かけも作業の安全を守る上では大切です。そのためには日頃から作業員同士でコミュニケーションを取る機会も増やす必要があります。
朝礼で交代であいさつをさせる、複数人で休憩を取らせるなど、日頃から会話が生まれやすい現場を目指しましょう。
「5S」の徹底
建築現場における「5S」とは、しつけ、清掃、整理、整頓、清潔の5つのSのことです。
建築現場は一つの業者だけでなく複数の業者がさまざまな作業をおこないます。自分が所属している業者がこの5Sを徹底することで安全に作業できる環境を維持できるだけでなく、他の業者の作業員の安全も守ることができます。
一つの業者が5Sをしっかり守っていれば他の業者も整理整頓や清掃などを意識するようになり、常に綺麗な環境を維持しやすくなります。
こちらも施工管理の担当者だけが意識していても意味のないことですので、作業員に日々の清掃や整理整頓などをしっかり呼びかけるようにしましょう。
天候や気候による変化への対策
建築現場は屋外での作業が非常に多いです。どんなに安全管理を徹底しても、天候やその地域特有の気候による影響は避けられません。
雨や雪がひどいときは作業を中止しなければなりませんが、雨が上がった後、前日に雪が降ったあとなどは通常通り作業をします。足元が滑りやすくなっているだけでなく、機械に異常が出たり思うように動かせなかったりする可能性があるので注意しましょう。
風が強い地域、潮風の影響を受けやすい地域の場合は機械をカバーで覆う、工具がサビないように注意するなどの対策も必要です。
また、暑い時期は作業員の熱中症対策も徹底しなければなりません。熱中症により判断力や集中力が低下すると、危険な作業の多い建築現場では思わぬ大事故、トラブルが発生してしまいます。
こまめに休憩を挟む、水分補給を徹底する、空調服や冷却スプレーの配布など、酷暑の中でも安全に作業できるアイテムも取り入れましょう。
作業員からの意見を聞く
実際に現場で働く作業員の意見も聞き入れることも大切です。
安全管理は上辺だけを徹底していても、結局事故やトラブルを引き起こしてしまいます。
こんな点に不安がある、この対策は無駄にしかならないなど、作業をしている側だからこそ気づく安全管理もあります。
業務の効率を悪くするだけの安全管理の指示を出していないか、その指示によって本当に現場や作業員の安全は守られているのかなどを確認し、より徹底的に安全を管理するために、定期的に作業員からの意見も取り入れましょう。
自分の方法が正しいと決めつけず、そして作業員の意見を否定せず、別の視点からの発見をすることが大切です。
安全に作業を続けられる環境を提供しよう
施工管理の仕事の中でも安全管理は、現場で働く従業員の命を守る非常に大切な仕事です。
事故が起きると作業全体がストップしてしまい、スケジュールに遅れが出る、余計な費用がかかるなどの問題もあります。
安全管理の方法にはさまざまなものがありますが、日々の点検、声掛けなどを怠らず、危機感を持って作業に挑む姿勢が大切です。
この作業にはどんな危険があるのか、今日の天気ではどんな事故が起こりえるのかなど考え、それぞれに応じた安全管理を徹底しましょう。