建築業をおこなうためにはさまざまな許可が必要です。今回はその中でも、建設業許可証について解説します。
独立する際や、より大きな規模の工事を受けたいと考えている業者にとって建設業許可証は重要な許可です。
建設業許可証を取得するための条件、似ている書類との違い、建設業許可証を得るメリットなどを紹介します。
建設業許可証の概要
500万円以上の請負金が発生する規模の大きな工事を請けるためには、建設業の許可が必要です。
建設業許可証は正式名称ではありませんが、高額な依頼を請ける際などに建設業許可証を提出しなければなりません。その際にどの許可証を求められているのかを明確に判断し、適切な書類を用意する必要があります。
何の書類がどのようなシーンで必要なのかを見極めて、いつでもきちんと提出できるように建設業許可証を管理しましょう。
建設業許可証の種類
建設業許可証は正式名称ではなく、さまざまな種類があります。
今回はその中でも似ている名称の建設業許可通知書、建設業許可票、建設業許可証明書の3種類の違いを解説します。
それぞれの特徴や違いを把握して、適切な書類はどれなのかをすぐに判断できるようにしましょう。
建設業許可通知書
建設業許可は新規に取得するだけでなく定期的に更新しなければなりません。
その際に交付されるのが建設業許可通知書です。
この建設業許可通知書には許可番号、許可が下りている期間が記載されています。
この建設業許可通知書は無くすとどんなケースであれ再発行をしてもらえません。
建築業許可を得ていることを証明できなくなってしまうので、かならず次の更新まで無くさないようにしてください。
建設業許可票
建設業許可票は店舗や事業所などで、誰にでも見える場所に提示しなければならない書類です。
どこかから正確に交付されるというものではなく、業者に作成してもらったり自分で作ったりするものです。
建設業許可票には一般建設業なのか特定建設業なのか、いつ許可を得たのか、許可番号、その業者の称号や名称、さらに代表者の氏名を記載する必要があります。
この記載内容を満たしていればどんな形式でも構いません。
建設業許可票を誰でも見える場所に展示していないことが発覚した場合には法律で処罰される可能性もあるので注意してください。
建設業許可証明書
建設業の許可を得ていることを証明するために提出するのが建設業許可証明書です。
建設業では、高額な工事を請け負う際や公共事業の入札をおこなう際にこの建設業許可証明書を提出しなければなりません。
この建設業許可証明書も勝手に送ってこられるものではなく、業者が申請するものです。
この建設業許可証明書は通知書とは違い、有効期限などの条件はなく一度発行すればずっと使い続けられます。
建設業許可証を取得するための条件
建設業許可証を取得するためにはさまざまな条件を満たす必要があります。
下記の条件を満たさない場合は建設業許可証を取得できず、途中で発覚した場合許可の取り消しにつながることもあります。
管理責任者が常勤すること
500万円以上の請負金が発生する工事を請ける業者は、よりきちんとした経営体系が求められます。
そのため、管理責任者が常勤している事業所でなければ建設業許可を得られません。
管理責任者は経営の能力があることはもちろん求められますが、この基準は随時法律で変動しているので注意してください。
現時点では、5年以上経営業務の責任者であったことやそれと同じくらいのスキルがあると証明できることが条件です。
管理責任者が一人しかいない場合、複数人配置する場合などによって微妙に条件は変わるので事業所の規模によって適切な条件を満たすようにしてください。
専任技術者が一人以上いること
専任技術者とは、建設業の専門的な知識を経験がある人に認められるものです。
建築士などの国家資格が必要で、一定以上の勤続年数が求められます。大学や専門学校で指定の科目を履修していることなども条件です。
専任技術者にもさまざまな種類があり、一定の建設業か特定の建設業かによって、それぞれの許可を得なければなりません。
自己資本金がある程度あること
高額な工事を請け負う際は資材や人材、重機などを用意するために資本金が必要です。
そのため、自己資本金がある程度あることやすぐに動かせる資金が潤沢であることなども建設業許可証を取得するための条件です。
一般建設業の場合いは自己資本金が500万円以上あることが条件です。500万円をすぐに調達できるかといった点もこれまでの経営体制から判断されます。
特定建設業の場合は自己資本金が4000万円以上で、資本金が2000万円あることが条件です。さらに流動比率なども明確に定められています。
過去に違法行為をおこなっていないこと
これまでの経営で詐欺、横領、脅迫などの詐欺行為があった場合は建設業許可証を取得できません。
工事を請け負う際に不正な行為がおこなわれることを未然に防ぐためです。
社会的に信頼される業者であることを証明できなければ建設業の許可を得た上での営業ができないので、許可を得るまでにも正しいおこないを意識しましょう。
虚偽の申請をおこなっていないこと
虚偽の申告をした場合や書類に不備があった場合などは建設業許可証を取得できません。
過去に営業停止命令を受けた、破産手続きをおこなった、違法行為をしたといった場合も許可を取得できません。
失格条件にはさまざまな内容があります。許可の申請書類を作成する際は誠実にすべて記載するようにしてください。
建設業許可証を取得するメリット
建設業許可証を取得するとさまざまなメリットがあります。
業務内容に役立つだけでなく社会的信頼度を上げることで依頼を請けやすくなる、長く経営を続けられるといったメリットにも注目してみましょう。
高額な工事を請け負える
建設業許可証を取得すると500万円以上の高額な工事を請け負えます。
少額な工事だけを請け負う場合は建設業許可証は必要ありませんが、高額な工事を依頼できるようになればより業績をアップできる、事業規模を拡大できるといったメリットがあります。
建築業界は不景気が続きますが、少しでもよい条件の依頼を請けるためにも建設業許可証は必要です。
社会的信頼度が上がる
建設業許可証がある業者とない業者であれば、同じ内容の工事を依頼するのでも許可を取得している業者の方が安心感があります。
公的に認められている業者かどうかは、クライアントにとって重要な判断材料です。
少しでも多くの依頼を請けるためにも建設業許可証は早めに取得しておいた方がいいでしょう。
公共工事に入札できる
公共工事に入札するためには建設業許可証の提出が必要です。
公共工事は大規模かつ高額なものが多く、きちんとした経営体制や工事の実績がある業者でなければ関わることができません。
さらに、公共工事に関わると大きな実績として提示でき、クライアントからの信頼にもつながります。
建設業許可証を取得する準備を進めよう
建設業に必要な許可証の種類や取得の条件、取得するメリットなどを紹介しました。
大規模な工事の依頼を請けるためだけでなく、信頼される業者を目指すため、クライアントから依頼を請けやすくするためなどに建設業許可証は必要です。
取得のための条件を満たすにはさまざまな準備が必要です。独立や事業規模の拡大を目指すのであれば、早めにしっかり準備を進めましょう。
建築業許可証など、建築業に関するさまざまな書類は、いつでも提出できる、いつでも確認できるようしっかり保管しておかなければなりません。ですがどうしても多くの書類の中に埋もれてしまう、管理するのが大変というケースも多いです。そんなときは、電子書類への申請をおこなうことも可能です。建築業はさまざまな理由から他業界よりも電子化やデジタル化が遅れています。若い人材を確保しやすくするためにも、デジタル化することの大切さ、建築業界のデジタル化が遅れている理由などを下記記事でチェックしてみてください。