「庭の工事を業者に依頼したい……」と思い、インターネットなどで検索をすると、”造園”、”外構”、”エクステリア”など、様々な呼び名が出てきて困惑することはありませんか?
いずれも庭の施工に関連するものですが、その内容は似て非なるものです。
ここでは、各工事の意味・特徴や、就職に関することなどを様々にご紹介していきたいと思います。
各工事の主な特徴
造園とは
造園とは、庭園などの空間を造ることです。
庭園・ガーデニング・ウッドデッキ・花壇など、庭を飾るための要素を追加し、癒しの空間……そして美しい景色を演出していきます。
和風住宅が中心だった時代から和風の庭や生け垣などの植栽は存在しており、それらを剪定する「庭師」が数多くいました。
この庭師が請け負う仕事のことを「造園業」といい、造園工事会社などが専門となって事業に取り組んでいるのです。
また、住宅などの私的な空間だけでなく、公共的な空間も造園業の対象となります。
例えば、テーマパークなどの施設や、自然風景地の整備、集落や都市などの環境改善などです。
特に現代は地球温暖化の影響もあり、自然環境の保全保護や都市部の緑化施策などが取り組まれています。
こういった観点から、造園に関わる仕事は今後も無くなることのない重要な仕事の一つと言えるでしょう。
外構工事とは
外構工事というのは、住宅の敷地内で行われる工事のことです。
造園が”庭を彩る空間を造るもの”だったのに対し、外構工事は”プライバシーやセキュリティを守るための施工”となります。
例えば、外から庭や自宅の様子が見えてしまうと、防犯という意味で家を守る力が弱くなってしまいます。
そこで、門扉・塀・フェンスなどを設置して防犯対策を高めたり、生垣を植えて防風/防音/防災……そして景観の保護や環境保全などを行うのです。
外構の種類は大きく3つ存在します。
外構の種類 | 特徴 | メリット・デメリット |
クローズド外構 | 門や塀などで、道路と敷地が完全に区切られているもの | ・プライバシーを重視した造り
・高級感を演出できる ・閉鎖的なイメージが出る ・費用が高い |
オープン外構 | 塀や門などを設置せず、開放的でオープンなもの | ・外構物の設置が少なく、敷地の利用範囲が広がる
・防犯、プライバシー対策が必要 |
セミクローズド外構 | 上記2つの中間にあたり、それぞれの利点をミックスさせたもの | ・オープンエリア、クローズエリアなどを必要に応じて設定できる |
現在の住宅は、セミクローズド外構が最も人気で広く取り入れられています。
クローズド外構とオープン外構の良いところを自由に設定できるため、安全面やプライバシー保護を高めつつ開放感も得ることができます。
また、草木を塀の代わりにすることもでき、ガーデニング的な要素を楽しむことも可能です。
エクステリアとは
エクステリアは、インテリアの対義語です。
インテリアは”建物内部の空間全般”を表すのに対し、エクステリアは”建物外部の空間全般”のことを表しています。
現在、外構とエクステリアはどちらも同じ意味合いで使われることが多くなっていますが、外構は門やフェンスなどの”構造物そのもの”のことを指し、エクステリアは室外の”空間”そのものを指しています。
つまり、「外構」という構造物が合わさって、「エクステリア」という空間となるのです。
各工事について
造園工事
造園工事は、個人宅から公共施設まで幅広い工事が存在し、建設業の業種の一つに位置付けられています。
建設業で造園工事に含まれるものは、下記の種類が存在します。
造園工事の種類 | 内容 |
植栽工事 | ・樹木を植栽する工事
土壌改良などの植栽基盤整備工事や植栽復元工事も含まれる |
地被工事 | ・芝生やコケなどの「地被植物」と呼ばれるものを植える工事 |
景石工事 | ・日本庭園などで「景石」を設置する工事 |
地ごしらえ工事 | ・木の伐採作業後に、残された木や雑草などを綺麗に整える工事
新たな苗木を植える場所を確保・苗木に栄養を与えたり、 表層土の流出・土壌の乾燥・霜柱の発生などを抑制する効果もある |
公園設備工事 | ・公園内に、下記のような施設を設ける工事
修景施設(花壇や噴水など) 休養施設(休憩所やベンチなど) 遊戯施設(遊具など) 便益施設(売店など) |
広場工事 | ・芝生広場や運動広場など、広場を造る工事 |
園路工事 | ・公園内に、緑道や遊歩道を設ける工事 |
水景工事 | ・滝、池、ビオトープといった水景を造る工事
水質を維持するための、ろ過装置や殺菌装置の設置も含まれる |
屋上等緑化工事 | ・屋上や壁面などの緑化を行う工事 |
緑地育成工事 | ・植物を育てるための、土壌改良や支柱の設置を行う工事 |
尚、建設業の一種であることから建設業の許可を得る必要があります(軽微な工事は除く)。
また、建設業の許可は有効期間が5年なので、終了する30日前までに更新手続きを行う必要があります。
もし更新手続きを行わない場合は、失効してしまいます。
外構工事
個人宅の室外にて行われる外構工事は、それぞれの家に合わせてオーダーメイドで行われます。
仕事を依頼する顧客自身が土地や家の形状を把握し、「どんな庭にしたいのか」というイメージをしっかりと固めておく必要があります。
外構工事は、設計からスタートします。
もし依頼者が何のイメージも持たずに工事会社に依頼してしまうと、打ち合わせ段階から多くの時間を要してしまい、下手をすると自分好みの仕上がりにならない場合もあります。
最低限、上述でお伝えした外構の基本方針(オープン・クローズ・セミクローズ)のイメージは固めておいて、施工会社に具体的な内容を伝えることが大切です。
尚、外構工事を専門とする施工会社が建設業の登録を行う際、下記のどれか、もしくは全てを取得する必要があります。
建築工事業 | カーポート、門、塀など |
土木工事業 | 宅地造成、擁壁の設置工事など |
造園工事業 | 植栽、庭石など |
それぞれで専門性が異なるので、実際に工事を手掛ける際は別の施工会社になることもあります。
外構工事を請け負う会社は、
・外構工事専門施工会社
・リフォーム専門会社
・他業種のリフォーム部門
など、様々に存在します。
それぞれに一長一短があるため、理想は複数の会社から見積もりを取り、適正価格を把握することです。
不明な点は質問をし、その際の対応にて良質な会社かどうかを選択することも重要かと思います。
仕事をする上で必要な資格
次に、それぞれの仕事を行うに当たって、取得すべき代表的な資格についてお話します。
尚、造園・外構・エクステリアは行う工事内容こそ違うものの、全て関連性がある仕事です。
務める会社の業態にもよりますが、自身のキャリアアップのためにも関心のあるものは積極的に取得していくといいでしょう。
造園に関する資格
造園工事に携わる人が目指す資格として「造園施工管理技士」という国家資格があります。
これは、造園工事に関する監督業務に携われるようになる資格で、施工計画の作成や工程・品質・安全管理などが行えるようになります。
等級は1級と2級が存在し、受験資格を得るには”一定の学歴と実務経験”が必要です。
【1級の場合】
学歴の種類 | 指定学科卒業後 | 指定学科以外の卒業後 |
大学、専門学校(高度専門士) | 3年以上 | 4年6か月以上 |
短期大学、高等専門学校、
専門学校(専門士) |
5年以上 | 7年6か月以上 |
高校、中等教育学校、
専門学校(上記以外) |
10年以上 | 11年6か月以上 |
【2級の場合】
学歴の種類 | 指定学科卒業後 | 指定学科以外の卒業後 |
大学、専門学校(高度専門士) | 1年以上 | 1年6か月以上 |
短期大学、高等専門学校、
専門学校(専門士) |
2年以上 | 3年以上 |
高校、中等教育学校、
専門学校(上記以外) |
3年以上 | 4年6か月以上 |
尚、指定学科というのは、土木工学・園芸学・林学・都市工学・交通工学・建築学に関する学科のことです。
いずれも一定の現場経験が必要ではありますが、学歴に応じて必要な実務期間は大きく異なります。
もし、「造園関連の仕事に就きたい」や「造園施工管理技士の資格を取りたい」という将来性が明確に見えている学生であれば、進学先もしっかり考慮した方がいいでしょう。
外構に関する資格
外構工事を行う際に必要な国家資格というものはなく、職に就く際に必須となる資格もありません。
ただし、自身のスキルアップのために取得しておいて損のないものは複数存在します。これらは実際に現場を経験しながら取得を目指す人が多いです。
また、会社によっては”資格取得支援”として、資格取得の費用を会社側が負担してくれるケースも存在します。
そして、取得して役に立つ資格として「技能士資格」(全127種類)が挙げられます。
例えば、「左官技能士」の資格を取得すれば、左官・タイル張り・レンガ積みなどができるようになります。
他にも、造園工事にも関連する「造園施工管理技士/建築施工管理技士/土木施工管理技士」や「建築コンクリートブロック工事士」や「ブロック診断士」などの資格も外構工事の際に役に立つ資格と言えるでしょう。
また、業務内容によっては「小型移動式のクレーン/車両建設機械/フォークリフト」などの運転免許が必要となる場合もあります。
エクステリアに関する資格
エクステリアに関する資格として「エクステリアプランナー」というものがあります。
これは、外構全般の設計および工事管理に関する、専門知識と技術を所持していることを証明する資格です。
等級は1級と2級が存在します。
1級を受験するための条件(資格)として下記の資格を必要とします。
・木造建築士(1級・2級)
・建築施工管理技士(1級・2級)
・土木施工管理技士(1級・2級)
・給水装置工事主任技術者
・2級エクステリアプランナー(ただし、3年以上の実務経験が必要となります)
尚、2級に関しては受験資格はなく、誰でも受けることができます。
また、1級・2級ともに登録有効期間が5年間であり、期間中に申請を行わなかった場合は登録するための権利が失効してしまいます。
このエクステリアプランナーは”任意の民間資格”であり、エクステリア工事に関わる人であっても資格を所持していない人は大勢います。
ただし、エクステリアに関する知識と技術を証明できることから、”実績を補う有力な資格”として重宝する場合があります。
例えば、独立して新しい会社を立ち上げる場合などです。
国家資格のように、資格の有無が公的に問われることはありませんが、自身の実力を証明するために資格取得を目指すのもいいでしょう。
仕事の需要と将来性
建設業界は業者数が減少傾向にあり、加えて”職人の高齢化”という点で若手の育成が課題となる会社が増えています。
これは、造園・外構の工事会社も同様です。
また、近年は一戸建てではなくマンションに住む人が増えていることや、経済状況の悪化・人口減少の点から、新設住宅やリフォームの着工戸数も減少しているのが現状です。
しかし、この仕事が無くなるということはありません。
環境保護意識の高まりから、各公共施設はもちろん高層ビルやマンションなどで緑化対策が行われるケースが増えているからです。
“緑豊かなまちづくり”を実現するために必要不可欠な仕事であり、災害が多発している昨今では環境保全のための需要も伸び続けています。
就職について
就職先の注意点
造園・外構業を手掛ける企業は数多く存在しますが、事業内容は会社によって様々に存在します。
例えば、主に個人顧客を対象としている会社もあれば、公共の造園工事・大型不動産開発などを対象としている会社などです。
また、会社の規模も様々です。
個人経営の小さな会社の場合、福利厚生が不十分であったり、労働環境があまり良くない……という場合もあります。
もしこの業界への就職をお考えの方がいれば、下記を意識して仕事先を探してみるのもいいでしょう。
・給与、勤務時間、休日などの条件
・福利厚生は充実しているか
・資格取得支援など、安心してスキルアップができる環境かどうか
実際に就職してみないと分からないこともありますが、事前にどのような会社かを調べたり・面接の際などにお話を伺うことで見えてくるものもあります。
後は、”自分自身が将来どうなりたいか”という点も大切です。
将来のことも見据えて、そのために何を経験し・何を学ぶべきなのか……そこから就職すべき会社を選択することも必要なことだと思います。
フリーランスとしての道
独立して会社を立ち上げる人の中には、”一人親方”としてフリーランスで生計を立てている人もいます。
例えば、「庭師」として個人宅や法人オフィスなどの庭の設計施工や維持管理をしたり、建設会社の下請けで仕事をするケースです。
会社に属さないことから、案件を取った分だけ収入は増加します。
ただし、知識・技術……なにより”実績”が必要不可欠であり、案件を取ることから現場での作業・確定申告など全てを自分一人で行っていかなくてはなりません。
慣れるまでが大変ではありますが、やりがいを感じて長く続けている人も多くいます。
独立を目指している人は、フリーランスという道を視野にいれてみるのもいいかもしれません。
まとめ
造園・外構・エクステリアは、人が生活をする中でなくてはない工事のため、今後も長く必要とされる業態です。
職人の手によって造られた庭などの外観は、芸術と言われるほどに美しいものも多数存在します。
時代のニーズに合わせ変化を続けており、非常に奥が深い職種でもあるので、興味を持たれた方は色々と調べてみて下さい。