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「舗装」「浚渫」って何? 工事の特徴や種類について

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道路の”舗装”、河川や港湾などの水底の”浚渫(しゅんせつ)”

これらは、陸や海の安全な道を造る(整備する)ために必要不可欠な工事です。

舗装と聞くと、アスファルトやコンクリートで舗装された道路を思い浮かべる人も多いかと思いますが、舗装には他にも様々な種類が存在します。

浚渫は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、河川や海の道の安全を守るためには欠かせないものです。

この記事では、そんな舗装や浚渫について詳しくお話をしていきたいと思います。

舗装とは

概要


これは、道路の耐久力を増すために行う工事のことで、表面を『アスファルト/コンクリート/砂利/石』などで敷き固めることをいいます。

道路の断面の多くは、表面から順に下記の層で構成されています。

表層
基層
路盤(上層路盤、下層路盤)
路床(構築路床、原地盤)
路体


出典:一般社団法人 日本アスファルト協会-アスファルト基礎知識

表層はアスファルト混合物やアスファルトコンクリートが使用されることが多いですが、環境に配慮した遊歩道や道路の場合は「インターロッキングブロック」が使用される例もあります。

尚、舗装の役割や機能は下記の通りです。

1.雨天時の泥濘化により、晴天時に車両が通行する際に砂塵が巻き上げられる……この周囲環境への汚染防止
2.路面を平坦にし、適切な摩擦抵抗を持たせることで、歩行・走行時の快適性や安全性が向上する
3.道路の耐久性そのものを高める

舗装の歴史

舗装の歴史は非常に古く、日本最古は”縄文時代後期”の舗装道路の遺構が発見されています。

これは道の両側に平たい石を置き、その間に砂利を敷き詰めたもので、日常生活のために造られたものではないかと推測されています。

また、日本で初めてのアスファルト舗装は、明治時代の下記と言われています。

東京都千代田区神田の「昌平橋」で施工されたもの
長崎の「グラパー邸」通路の、瀝青材料を使用したもの

ただし、明治時代はほどんどの道路が非舗装という状態であり、舗装そのものも簡易舗装にも劣る質の悪いものとされていました。

その後、大正時代になり近代舗装が開始され、昭和時代でアスファルトが国産化されるようになり、徐々に舗装の割合が増加していくこととなります。

尚、古くは馬車や自動車を対象とした舗装が主でしたが、1958年の道路構造令改正に合わせて歩道に対する舗装も実施されていきました。

舗装の種類

現在の塗装は、石や砂利を敷き詰めただけというものはほとんど存在しません。

施工をはじめる前に、その地域の交通量や温度などの環境条件を考慮し「耐久性はどのくらい必要か?」を考えながら、環境に合った舗装を選択していくのです。

そのため、舗装の種類は多種多様に存在します。

下表にて、よく使用される舗装の種類や特徴をご紹介していきます。

種類 特徴
アスファルト系混合物舗装 最も一般的な舗装で、特に車道で利用されることが多い
透水性アスファルト系

混合物舗装

・街路樹の保護、育成

・雨水を地中に還元する

・雨水流出量の低減が可能

などの利点があり、都市部の道路や歩道に使用されることが多い

コンクリート系舗装 アスファルト系と同じく幅広く利用されており、

特に車道・空港の滑走路などに用いられることが多い

樹脂系混合物舗装 路床の上に、アスファルトやコンクリート舗装などの基層となる部分を作成し、樹脂系混合物を用いて表層を施すもの

樹脂であることから強度が弱く、主に歩道に利用される

ブロック系舗装 表層部分に下記が使用される

・コンクリート平版舗装

・インターロッキングブロック舗装

空間に合わせた舗装を造ることができ、景観や周辺環境に適したブロックを組み立てることが可能

2層構造系舗装 表層に、タイルや天然石などを「モルタル」という建築材料で貼り付け、施工するもの

「タイル舗装」や「天然石舗装」と言われることもある

土系舗装 主原料に自然土などを利用した、天然材料にて構成される

弾力性・衝撃吸収性を備えており歩きやすく、自然観も演出できるため、人が通る園路や公園に多く使用される

木質系舗装 ・ウッドチップ舗装

・土塊舗装

上記2種類があり、木材を活かした景観を演出できる

主に森林をテーマにした公園や施設で使用される

常温塗布式舗装 樹脂系結合材料を利用した常温混合物による

“着色塗装”を施工するもの

・道路の白線

・車いすのマークの駐車場

・自転車ゾーンのエリア

など、色分けをする際に利用される

日本の舗装率

日本の舗装は、下記2つに区分されています。

「本舗装」 ;主に、国道や都市部の幹線道路で建設される
「簡易舗装」:主に、末端の生活道路で建設される

日本の道路舗装率は、簡易舗装を含めた国道や都道府県道で約97%と非常に高い舗装率を誇っています。

ただし、全ての道路を含めた場合の舗装率は、約80%となります。

また、日本の舗装率には地域差があり、全国的にみて”西日本の方が東日本よりも舗装率が高い”というデータ結果が出ています。

例えば、舗装率90%以上の都道府県は、東日本が神奈川県だけなのに対し、西日本は10府県(滋賀県/大阪府/鳥取県/広島県/山口県/香川県/佐賀県/長崎県/熊本県/大分県)です。

特に、佐賀県の舗装率は96.5%と日本一の数字です。

反対に、80%未満の都道府県は、東日本が11道県あるのに対し、西日本には該当する地域はありません。

ただし、これはあくまで現時点での話であり、舗装工事は常に各地で行われています。

現在舗装されている地域のメンテナンスはもちろんのこと、舗装率は今後もさらに上昇していくと言えます。

人々が生活をしていく中で、この工事は必ず必要となるため、今後も発展を続けていく業態といっても差し支えありません。

浚渫とは

概要


これは、港湾や河川・運河などの”水底の土砂を取り去る”土木工事のことです。

また、この作業を行う際に使用する船舶を「浚渫船(しゅんせつせん)」といいます。

この工事は、下記の理由により取り行われます。

【治水のため】
河川部は、水源からの堆積土砂により川底が浅くなり、河川の流量が確保できなくなる場合があります。
そのままにしておくと、水害や土砂災害などが発生する原因にも繋がるため、この浚渫工事を行うのです。

【船舶の航路を確保するため】
船が通る道のことを「航路」、岸壁に着くもしくは向きを変えたりする場所を「泊地」といいます。
これらの水深が足りないと、船の腹の部分が海底にぶつかる危険性があるため、工事を行い十分な深さの航路や泊地を整えるのです。
特に近年では船の大型化が進んでいるため、この工事の重要度は増しています。

他にも、

  • ダムの貯水量を確保する (沈殿物を取り去る)
  • 汚泥・底質汚染を除去する
  • 埋め立てのための土砂を確保する

などの理由で工事が行われる場合もあります。

工事の種類

この工事には、主に「ポンプ浚渫」「グラブ浚渫」という2つの方法から選択し、取り行われます。

簡単にそれぞれの方法をご紹介します。

【ポンプ浚渫】


出典:国土交通省 東北地方整備局 秋田港湾事務所-浚渫工事ってなんだろう?

これは、吸水管の先端に付いているカッターで土砂を掘削……その後、吸水管で土砂と海水をまとめて吸い上げ、海底を掘り下げていく工事のことです。

土砂と海水を同時に圧送するため、それを堆積する土地と海水を受け入れる排砂池が必要となります。

【グラブ浚渫】


出典:国土交通省 東北地方整備局 秋田港湾事務所-浚渫工事ってなんだろう?

これは、船の先端に付いた「グラブバケット」を使い、海底の土砂をつかみ取って掘り下げていく作業のことをいいます。

ポンプ浚渫船よりも固い土に対応ができ、岸壁などの構造物の周辺や狭い場所においても作業が可能という利点があります。

つかみ取られた土砂は、「土運船」という船に積み込んで埋め立て地へ運ばれます。

浚渫工事は、定期的に行われる

河川や港などの土砂が流入する場所は、時が経つにつれ次第に水深が浅くなります。

そのため定期的にこの工事を行い、海底を浚う(さらう)必要があります。

尚、浚渫船は、工事する”土質/水深/地形”などで使い分けがされ、以下の種類が存在します。

ドラグサクション浚渫船
ポンプ(サクション)浚渫船
カッターレス ポンプ(サクション)浚渫船
マイクロポンプ浚渫船
バケット浚渫船
ディッパー浚渫船
バックホウ浚渫船
グラブ浚渫船
軟泥浚渫船

また、取り除いた土砂は、新しい土地を造る際の埋め立て用の土砂として再利用されます。

仕事を行う際に必要な資格

舗装工事

舗装工事は、建設業法に示される29の工業業種の一つで、建設工事に該当します。

そして、工事を行う際に取得しておくべき資格として「舗装施工管理技術者」があります。

等級は1級と2級があり、受験資格はどちらも一定の実務経験を必要とします。

【1級舗装施工管理技術者】

※「指導監督的実務経験」が1年以上必要※

以下の学校を卒業 実務経験
大学の指定学科 3年以上
大学の指定学科以外 4年6か月以上
短期大学・高等専門学校(5年生)の指定学科 5年以上
短期大学・高等専門学校(5年生)の指定学科以外 7年6か月以上
高等学校の指定学科 10年以上
高等学校の指定学科以外 11年6か月以上
上記以外は15年以上

 

資格 実務経験
・技術士二次試験(建設部門)

・1級土木施工

・1級建設機械施工合格者

・2級舗装施工管理

・2級土木施工管理

・2級建設機械施工合格者

実務経験5年以上
※上記の実務経験が5年未満の場合※ ・高等学校の指定学科卒業後9年以上

・高等専門学校の指定学科以外を卒業後、10年6か月以上

・上記以外は14年以上

※専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある場合※

資格 実務経験
・2級舗装施工管理

・2級土木施工管理

・2級建設機械施工

上記合格者で3年以上の者

合格後、1年以上の「専任の主任技術者経験」を含む

3年以上

上記合格者で3年未満の者 ・短期大学・高等専門学校(5年生)の指定学科以外を卒業後、7年以上

・高等学校の指定学科を卒業後、7年以上

・高等学校の指定学科以外を卒業後、8年6か月以上

・その他で12年以上の実務経験

上記以外の者 高等学校の指定学科を卒業後、8年以上
高等学校の指定学科以外を卒業後、11年以上
上記以外は、その他で13年以上

【専門級2級舗装施工管理技術者】

以下の学校を卒業 実務経験
大学の指定学科 1年以上
大学の指定学科以外 1年6か月以上
短期大学、高等専門学校(5年生)の指定学科 2年以上
短期大学、高等専門学校(5年生)の指定学科以外 3年以上
高等学校の指定学科 4年6か月以上
上記以外は8年以上
資格 実務経験
・技術士二次試験(建設部門)

・1級、2級土木施工管理

・1級、2級建設機械施工合格者

・2級舗装施工管理

実務経験を有すること

試験は、1級の方が取得難度が高く、2015年の合格率は16.4%でした。
また、技術進歩に対応するため、5年1度の登録更新が求められています。もし更新手続きを行わない場合は登録が失効され、再登録には技術講習の受講が必要です。

浚渫工事

浚渫工事は、建設業法に示される29の工業業種の一つで、土木工事に該当します。

専任技術者には「一般建設業」「特定建設業」の2つがあり、それぞれで取得条件が異なります。

【一般建設業】

資格で申請を行う場合は、下記が必要です。

  1. 一級土木施工管理技士
  2. 二級土木施工管理技士
  3. 建設・総合技術管理(建設)、技術試験合格者
  4. 建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術管理(建設「鋼構造及びコンクリート」)、技術士試験合格者
  5. 水産「水産土木」・総合技術管理(水産「水産土木」)、技術士試験合格者
  6. 登録海上起重基幹技能者

また、上記資格を所持してなくても、「土木工学」「機械工学」のどちらかの学科を卒業し、

  • 高卒:5年以上
  • 大卒、高専卒:3年以上

上記の浚渫工事に関する実務経験があれば、一般建設業における浚渫工事の専任技術者になることが可能です。

尚、実務経験のみでも専任技術者になることは可能ですが、浚渫工事の実務経験が10年以上必要となります。

【特定建設業】

資格で申請を行う場合、上記①③④⑤の資格を所持していれば、資格のみで特定建設業の専任技術者となることが可能です。

また、一般建設業の専任技術者になるための要件しか満たしていない場合であっても、4500万円以上の浚渫工事の請負工事を”2年以上”指導監督した実務経験があれば、専任(もしくは管理)技術者になることができます。

まとめ

舗装・浚渫工事は、どちらも人が安全に生活をしていく上で欠かせない作業です。

現在は、AIの発展の影響で、様々なところで多様化が求められる時代になっています。

これは建設や土木の業界でも同じです。

特に近年は環境問題も課題の一つになっており、特に舗装に関してはデザインや機能性だけでなく、環境にも優しい舗装をより求められるようになっています。

また、港湾は輸出入貨物の90%以上を取り扱っており、人々の生活・経済・産業を支える大事な社会資本の一つです。

大型船の航行には、浚渫による水深や水域の確保が必要不可欠ですし、これらの仕事は今後も無くなることは早々ありません。

加えて、機械化が発達していく中でも、これら全ての作業が機械に取って代わられることもありません。

時代とともに進化・変化を続けている業態ではありますが、今後も長きに渡り発展を続けていく仕事です。

興味を持たれた方は、さらに業界に関する知見を広げてみて下さい。

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