街中を歩いていると、時々大規模な土木工事に遭遇します。そのとき、非常に大きく棒のようなものが高いところまで伸びた機械を目にすることはありませんか?
この機械っていったいなんなのでしょうか。実はこれ、杭を打つために必要な機械なのです。「杭?」と思われる方も多いかもしれません。
建物を建てる際に場合によっては杭が必要になってくるのです。
今回はその「杭」について詳しく解説いていきたいと思います。
杭とは何のことなのか?
一言で「杭」と言ってもその用途や種類はさまざまで、土地の境界を決める杭や、紐やロープなどを固定するアンカー的な存在の杭。
今回は建築に使用される杭についてご説明したいと思います。
杭は、主にその場の地盤だけでは構築物や建物などを支えることができない軟弱な地盤の時などに用いられます。
杭には、支持杭と摩擦杭とに分けられていて、支持杭は杭を支持層まで到達させて、杭の先端にかかる荷重を先端支持力によって支えます。
一方摩擦杭というのは、主に地盤がかなり深いところにあり、杭が届きにくい場合に用いられる工法で、先端の支持力で支える支持杭とは違い、先端を支持層まで到達させることはなく、杭の側面と地中との間に働く摩擦力によって荷重を支えます。
なぜ杭打ち工事が必要なのか?
ところで、杭打ち工事ってなんで必要なのでしょうか?
通常家を建てる時、基礎を打ってその上に建物を建てますが、その家の地盤が極めて弱いとき、またはその地盤が建物の重さに耐えられない場合などに杭が必要になってきます。
そうすると、家の基礎は杭の上に造られるため、地震などが起きても建物の崩壊や損壊などを逃れることができます。
杭は建物に対して非常に有効な耐震技術と言えます。
基本的に日本の地盤は軟弱なため、場所によっては杭の施工が必要な場合が多々あります。
これは、日本の主要都市がほとんど河川下流に存在しているので、土地の水分量が比較的高く、その他の地域の地盤と比べた場合極めて軟弱な地盤だからです。
さらに日本は地震大国です。全世界の20%の地震がこの日本で発生しているとまで言われています。それは日本が複数の大陸プレートのはざまに存在しているからです。
杭の種類には何があるのか?
杭の種類においては主に2種類に分類されます。
木杭
木杭とは木製の杭のことで、歴史的には非常に古く、紀元前5000年とされています。このときには杭上居住という形で使われていました。
ちなみに世界遺産として登録されている「アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群」などがあります。
一般に木材というのは金属や石材に比べて腐食に弱いイメージがありますが、地下水の水面より下に埋まっている遺跡から、古代の木製品が比較的良い状態で発掘されることは珍しくありません。よって基礎としての木杭も、きちんと適切なところに使用するのであれば、その機能は十分発揮できます。
コンクリート杭
コンクリート杭は、大きく2種類に分類されます。
「既製コンクリート杭」と呼ばれる工場などで作られた杭を回転圧入式やハンマーなどで打ち込むものと、「場所うちコンクリート杭」という予め掘削したところにコンクリートを流し込む工法があります。
またさらに、その中に鉄筋を持つのかどうかによって「無筋コンクリート杭と鉄筋コンクリート杭」とに分けられます。
既製コンクリート杭の特徴は、運搬に長さ制限があるため、支持層の深い場所での杭打ちでは、途中で継ぎ手を使用して打ち込まなければなりません。
鋼管杭
鋼管杭は、鋼製の杭のことで、鉛直・水平方向に大きな耐力を持つために、ビルなどの建築物の基礎や地滑りの多いところなどの抑制に用いられています。
資材搬入や打ち込みの都合などから約2メートル程度の短いものを溶接しながら地中へ打ち込むことが多いのが特徴です。
施工後には鋼管の中にコンクリートを注入します。
基礎杭の工法
基礎杭の工法には先にも述べたように大きく2種類あります。その中でもさらに細分化されているので、その工法を一部ご紹介していきましょう。
既製杭工法
埋め込み工法
杭の長さの所定のところまで掘削し、そこへ既製杭を建て込み、挿入する工法です。
打ち込み工法
既製杭を打撃で打ち込み、所定の深さまで入れる工法です。
鋼管回転圧入工法
鋼管の先端部分に羽をつけた杭を回転させながら地中に埋め込んでいく工法です。この工法は廃土が出ないのが特徴となっています。
場所打ち杭工法
アースドリル工法
一般的な場所打ち杭工法のひとつで、ドリリングバケットを回転させて掘削・廃土する工法です。
オールケーシング工法
主に固い地盤に用いられる工法で、呪医の全長にわたってケーシングチューブを圧入。地盤の崩壊を防ぎながら掘削・廃土していく工法です。
リバースサーキュレーションドリル工法
スタンドパイプというものを建て込み、孔内に水を満たすことで孔壁に対して圧力をかけ、孔壁の崩壊を防ぎながら土砂と水を吸い上げながら排出する工法です。
杭打ちの仕事の流れ
では、杭を打ち込むための手順とはいったいどういったものなのでしょうか。
今回は、「回転杭工法」を例に挙げてご説明したいと思います。
試験杭の位置を確認する
設計図やボーリングデータ、設計深度、杭頭高さの確認を入念に行いながら、ボーリング調査地点に最も近いところで行います。
杭の回転貫入開始から深度到達までに得られた値を管理装置で計測。本杭の打設するときの打止め管理地を決定していきます。
杭打機設置
誘導員の指示のもと、重機の移動や設置を行います。
設置する場所には、周りに干渉物はないか、安定した場所に機械を設置できるかどうか。などを入念に確認しながら設置していきます。
このとき、作業範囲内には立ち入り禁止措置などの安全確保対策を万全に執り行います。
杭の芯へ杭を位置決めする
誘導員の指示のもとに、杭の芯の位置へ打設する杭に誤差が生じないように逃杭を打っていきます。
杭を確実に杭芯までもっていき、杭に水準器などをあてて鉛直を確認しながら杭を地面に着地させ、振れ止めで確実に固定します。
貫入
貫入時の鉛直確認を行いながら、杭を打ち込んでいきます。
1回転あたりの深さや、ボーリングデータをと計測値を確認しながらゆっくりと杭を貫入していきます。
上杭の位置決めと溶接(杭をつなぐ場合)
杭をつないで打ち込む場合には、接続部の状態や鉛直の管理を十分行いながら溶接を行っていきます。
貫入
溶接で杭同士の結合が終わったら、管理装置による計測値とボーリングデータなどと照合しながらふたたび貫入していきます。
設計深度付近での確認
設計深度付近まで杭が到達した場合、負荷力の変化に伴って貫入地が変化していきます。
このときに、その負荷力の影響によって杭自体がねじったりしていないかを細心の注意を払いながら設計深度まで貫入していきます。
貫入打ち止め
設計損度付近で得た計測値とボーリングデータとの変化傾向を確認・照合し合致したら貫入を止め、管理値の設定をします。
まとめ
杭打ちというのは地震大国の日本にとって極めて重要で必要な施工方法です。
軟弱な地盤に直接基礎だけで建物を建ててしまうと、地震が起きた時に建物が簡単に崩壊してしまいます。
建物を建てる際にはそこの地盤はどれくらいの強度があるのか。杭は必要なのかどうか。などを事前に調査業者に依頼して確認するのもいいかもしれません。
家は基本的に自分が長きにわたり居住する場所です。しっかりその土地の事前調査を行って地震にも耐えうる強度を持った家にしたいものです。