建築業界は不景気が続いており、長い目で見ると今後も回復の兆しは見えません。
現状のまま仕事を続けていると、突然仕事を失ってしまう可能性もあります。
ミドル世代になると異業種への転職も難しくなりますが、もしものときに備えて自身のキャリアについてはよく考えておきましょう。
建築業界で生き残るためのキャリアの考え方について解説します。
建築業界の現状を確認しよう
建築業界でどのように生き残るかを考えるためには、現状を冷静に把握する必要があります。
コロナによる昨今の影響だけでなく、人材不足の問題や労働環境の問題などにも目を向けましょう。
現状を把握することで、今後どのようにキャリアを考えていけばいいのかが見えてきます。
コロナによる仕事量の低下とコスト負担
新型コロナウイルスはさまざまな業界に影響を及ぼしました。観光業や宿泊業、飲食業への被害が大々的に取り上げられていますが、建築業も例外ではありません。
建築業界は東京オリンピックで一時的に景気が回復しましたが、その後の新型コロナウイルスの感染拡大により大きな打撃を受けました。
観光施設、宿泊施設、商業施設などの建築の依頼が減少し、さらに収入が減った世帯が増えたことで新築住宅の建築の依頼も減少傾向にあります。
また、建築業はリモートワークが難しく、現場で作業を続けなければなりません。そのための従業員の体調管理や感染者が出た際の対応、納期の遅れなどのコストを負担しなければならないという点も大きな損失につながっています。
大きな依頼が多い大企業を覗き、中小規模の建築会社の中には経営が立ち行かず倒産してしまった会社も少なくありません。
高齢化問題と長期的に働ける人材の不足
建築業界は長く人材不足の状況が続いています。
少ない人材の中、その3分の1が55歳以上と高齢者の割合も多く、今後10年以内にその大半が現役を引退してしまいます。
若手の人材が建築業界を目指したとしても、少ない人材でギリギリの状態で仕事を回しているためハードな仕事が続き、体力や精神力が持たずに異業種へ転職してしまうというケースも少なくありません。
建築業界の高齢化と人材不足を解消するためにはさまざまな課題があり、簡単には解決できない問題でもあります。
今後もこの問題は深刻化していくことが予想され、どのようにして若手の人材を増やすか、高齢の人材のケアをするかが課題となっています。
労働環境の改善や賃金問題
建築業界は「きつい、汚い、危険」といったイメージが強いですが、実際に現場の仕事は危険を伴うことも多く、残業や休日出勤も珍しくないきつい環境が当たり前という風潮があります。
年間休日日数も他の業界と比べると非常に少なく、そのハードさがうかがえます。
働き方改革が建築業界にも取り入れられ、徐々にではありますが残業や休日の規定が厳しくなりつつあります。ですが中小企業ではいまだに解決できていない問題も多く、今後どのように改善していくかがカギとなっています。
建築現場は日給制の仕事も多く、年間休日日数を増やすことで収入が激減してしまうという人もいます。異業種への転職を防ぐためには、このような人たちに対してどのように賃金を保障していくかも重要なポイントです。
建築業界で生き残るためのポイント
建築業界は上記のように、深刻な問題が山積みの状態です。
今与えられた仕事を淡々とこなしているだけでは、将来的に仕事を失ったり、自分のやりたい仕事ではない仕事ばかりを押しつけられてしまう可能性もあります。
建築業界で自分のやりたい仕事をやりつつ厳しい現状を生き残るためにはどんな点を意識しながら働くべきなのかを考えていきましょう。
建築のトレンドを見極める
建築と言ってもその種類は多岐に渡ります。今だけでなく将来、どんな建築に需要が増加するのかを見極めてそちらに舵を切ることは大切です。
例えば、大きな地震や台風などの天災があった場合は住宅や建物の復旧の仕事が多くなります。
東京オリンピックや大阪万博の際は宿泊施設や大規模な会場の建築の仕事が多くなります。
長い目で見れば、今後少子高齢化が進む日本においては新築住宅よりも既存住宅のリフォームやリノベーションの仕事が増えるでしょう。
今請け負っている仕事に執着するのではなく、今後どのような需要が増えるかを見極めてそれに対して準備をしておくことで、建築業界で仕事を得続けることができるでしょう。
新しいことにチャレンジし続ける
建築業界はトレンドだけでなく技術も日々進歩しています。
日本は災害に強い構造などの研究が進んでいますが、自宅のインテリアにこだわりたい、家族が暮らしやすい家にしたいといったこだわりを持つ人も増えてきているため、従来にはなかったような新しいデザインを提案する力も求められます。
少子化が続き働き手が不足している日本では、海外からの労働者の受け入れも進んでいます。海外で暮らしてきた人たちが暮らしやすいような住宅を考えるのも大切な仕事です。
また、現状で満足せずに新しい仕事ができるような資格を取得したり、今よりも規模の大きい建築にチャレンジしたりと、前向きに建築の仕事に取り組む努力も必須です。
同年代のキャリアアップ事例も確認する
建築業界で生き残るために何をすればいいのかわからないという方は、同年代でキャリアアップした人の行動も確認しましょう。
建築業だけでなく異業種の成功者の行動は非常に参考になるものが多いです。
今の自分には何が欠けているのかを客観的に把握し、成功者の行動の中からできることを取り入れていきましょう。
キャリアアップに直接関係のないことのように見えても、意外なことがキャリアアップにつながることもあります。
建築は技術を磨くことを優先しがちですが、感性やコミュニケーションスキルを磨くことも成功につながります。
転職に有利な実績を重ねておく
今後建築業界において、安定した働き方というものはありません。
仕事がAIに取って代わられる可能性もあり、依頼数が激減すれば仕事を失う可能性もあります。
そうなると転職を余儀なくされますが、建築の専門スキルは異業種への転職にはあまり役に立ちません。
同業種で転職をする際によりよい待遇の企業に入社するためには、豊富な実績が必要になります。
自分は即戦力になること、過去に大きな建築を手掛けた経験があることなど、転職の際に有利になるような実績をコツコツと積み重ねておきましょう。
独立や別の職種への転職も視野に入れる
建築に関連する国家資格は一生涯役に立つものが多いです。その資格を活かして独立するという方法もあります。
独立しても建築業界の厳しい波にもまれなければならないことに変わりはありませんが、自分の思うように仕事内容を変えていけるので、時代やトレンドに合わせて臨機応変に動きやすいです。
また、施工管理から営業販売など、同じ建築の中で別の職種への転職を検討するのもおすすめです。今後どのような仕事の需要が高まるのかを予想しつつ、自分の経験を活かせる職種を探してみましょう。
建築業界で生き残るための戦略を考えよう
建築業界は厳しい状況が続いており、生き残るためには自身のキャリアをしっかり考える必要があります。
どのような点が問題なのかを判断し、それを踏まえた上で自分にできる行動を考えましょう。
とくにミドル世代は転職しにくいという問題がありますが、新しいことを学び続ける姿勢を持ち続けることが大切です。