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「消火・消防・防災」の違いとは? 設備の種類や重要性

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人々が生活をしていく中で、自然災害や火災などの”災害”は、どれだけ警戒をしていたとしても起こりうる可能性があるものです。

火災が起きた際の「消火」、防止するための「消防」、災害を予防するための「防災」など、対策方法はいくつか存在し、それぞれで意味合いが少々異なります。

ここでは、それぞれの特徴や該当する設備、この仕事に携わる職業についてをご紹介していきます。

「消火」「消防」「防災」について

消火とは


「消火」は、文字通り”火を消す”ことです。

火災は、最も身近に……そしていつ起こるか全く分からない災害です。

火災は、人々が火を扱う以上、必ず起こりうる可能性があります。

そして、もし火災が発生した場合、被害を最小限に抑えるために消火作業を行わなければいけません。

火というものは、“可燃物・酸素・温度”「燃焼の三要素」という3つの要素(もしくは”燃焼の連鎖反応”を含めて「燃焼の四要素」と言われる)が揃うことで、燃焼が継続します。

小規模な火は水をかけるなどで、自身で消火できる場合もあります。

しかし、大規模な火災が発生した場合、燃焼の三(四)要素を断ち切ることが困難となるため、消防士などが出動し消火作業を行います。

逆に考えると、上記の「燃焼の三要素」のうち、どれか一つでも断ち切ることができれば消火が可能となります。

可燃物を断ち切る方法は、下表の4つが存在します。

消火法 特徴 主な例
除去消火法 可燃物の供給を止める、もしくは周囲の可燃物を取り除く方法 ・爆風消火

・破壊消火

・都市ガスの栓を閉じる

・周囲の木を伐採する

窒息消火法 酸素の供給を止めたり、周囲の酸素濃度下げる方法 ・火に布を被せる

・火に砂をかける

・屋内などを密閉する

・密閉された屋内に不活性ガスを注入する

冷却消火法 可燃物の温度を燃焼に必要な温度以下に下げる方法 ・水をかける
負触媒消火法

(抑制消火法とも言う)

可燃物の原子を不活性化させ、燃焼の連鎖反応を抑制する方法 ・ハロゲンなどを使用する

表に記載している上記3点を合わせて「消火の三要素」といい、4点全てを合わせた場合は「消火の四要素」と呼ばれています。

消防とは


「消防」というのは、火災が発生した際に消火・鎮静活動を行ったり、要救助者の救助をすること。

そして、火災を”予防”する活動のことをいいます。

現在、この消火活動を行っているのは「消防署/消防団」であり、古くは「火消し」と呼ばれていました。

尚、この火災を予防する設備のことを「消防設備」といい、下記が該当します。

【消火設備】

火災が発生した際に、消火を行うための設備や器具のことです。

消火器、簡易消火用具
屋内消火栓設備
スプリンクラー設備
水噴霧消火設備
泡消火設備
不活性ガス消火設備
ハロゲン化合物消火設備
粉末消火設備
屋外消火設備
動力消防ポンプ設備

【警報設備】

火災の発生を感知し、知らせるための設備や器具のことです。

自動火災報知設備
ガス漏れ火災警報設備
漏電火災警報器
消防機関へ通報する火災報知設備
非常警報器具、非常ベル、自動式サイレン、放送設備

【避難設備】

火災が発生した際に、避難するために使用する設備や器具のことです。

滑り台
避難はしご
救助袋
緩降機
避難橋
誘導灯、誘導標式

尚、「消防設備」という用語は単独の用語としては使用されておらず、法律上は「消防”用”設備」として使用されています。

消防設備というのは、消防設備士という用語として用いられているだけです。

防災とは


「防災」というのは、火災や地震などの災害だけでなく、水害や風害といったあらゆる災害に対する防止および復旧を対象としています。

災害を未然に防ぐための”被害防止”、被害の拡大を防ぐための”被害軽減”

そして被災からの”復旧”、さらに地域防災計画など災害後の”街の復興”まで含まれることがあります。

災害の概念は非常に広く、自然災害だけでなく人為的災害への対応が含まれることもあります。

「消防」と「防災」の違い

上述をご覧いただければ分かる通り「消防」「防災」では、含まれる災害の対象に大きな違いがあります。

「消防」の第一の目的は”火災の予防”であり、「防災」はあらゆる災害が対象となっています。

しかし、近年ではこの2つが混同されて使用されていることもあるようで、「消防設備」という用語が「防災設備」と置き換えられるケースも見受けられます。

もちろん、消防であっても火災以外の災害に対応することもありますし、防災も火災が対象となることから間違っている訳ではありません。

火災はもちろんのこと、それ以外の災害も視野に入れて対策を用意されている設備のことを「防災設備」と認識するのがいいのかもしれません。

消防設備士について

特徴と資格の種類

上述でご紹介した「消防設備」の設置工事や点検整備を行う国家資格および業務を行っている作業員のことを「消防設備士」といいます。

これら工事や整備は、消防設備士でなければ行うことができません。

消防設備士の資格には「乙種」「甲種」の2つが存在します。

乙種:消防設備の点検・整備を行える
甲種:消防設備の点検・整備だけでなく、工事も行うことができる

両者の違いは、”工事ができるかどうか”です。

また、乙種は7種類・甲種は6種類の分類があり、下表の通り扱える機器はそれぞれで異なります。

【乙種】

分類 扱える設備(点検・整備のみ)
第一類 屋内消火栓、スプリンクラー、水噴霧消火、屋外消火栓
第二類 泡消火
第三類 不活性ガス消火、ハロゲン化物消火、粉末消火
第四類 自動火災報知、ガス漏れ火災警報、消防機関へ通報する火災報知
第五類 金属製避難はしご、救助袋、緩降機
第六類 消火器
第七類 漏電火災警報器

【甲種】

分類 扱える設備(点検・整備・工事)
第一類 乙種第一類と同じ
第二類 乙種第二類と同じ
第三類 乙種第三類と同じ
第四類 乙種第四類と同じ
第五類 乙種第五類と同じ
特類 特殊消防用設備など

尚、甲種に六・七類がないのは、下記のためです。

消火器はホームセンターなどで購入でき、設置も容易
漏電火災警報器を設置できるのは「電気工事士」のみ

ただし、点検や整備はしっかりと行う必要があるため、乙種にこの分類が存在します。

受験資格

【乙種】

こちらは、必須となる受験資格はありません。学歴・年齢・職歴に関係なく誰でも受験することが可能となります。

第一類から第七類まで存在する資格の中で人気があるのが「乙種第六類」です。

消火器は人々の生活の中でも目にする機会が多い消防設備であり、数多くある設備の中で最も設置台数が多いのです。

そのため、仕事の需要があり、まずは六類の資格取得を目指す人が多くなっています。

【甲種】

こちらの資格を取得するためには、受験資格が必要です。

大きく下記2種類に分けられます。

  • 国家資格
  • 学歴

《国家資格》

資格 条件
甲種消防設備士 受験する類以外の甲種消防設備士免状の交付を受けている者
乙種消防設備士 乙種消防設備士免状の交付を受けた後「2年以上」、

工事整備対象設置の整備経験を有している者

技術士 技術士第2次試験に合格している者
電気工事士 1.       電気工事士免状の交付を受けている者

2.       旧電気工事技術者検定合格証明書の所持者で、電気工事士免状の交付を受けているとみなされる者

電気主任技術者 第1種、第2種、第3種の、

電気主任技術者免状の交付を受けている

工事の補助 消防用設備などの工事の補助者として、

5年以上の実務経験を有している者

専門学校卒業程度検定

試験合格者

専門学校卒業程度検定試験の、機械・電気・工業化学・土木もしくは建築に関する部門の試験に合格している者
管工事施工管理技士 管工事施工管理の種目に係わる1級もしくは2級の技術検定に合格している者
工業高校の教員等 高等学校の工業教科について、普通免許状を有している者
無線従事者 無線従事者資格の免許を受けている者

※ただし、アマチュア無線技士は除く※

建築士 1級または2級建築士を有した者
配管技能士 配管の職種に係わる1級もしくは2級の試験に合格した者
ガス主任技術者 ガス主任技術者の交付を受けている者

※ただし、第4種消防設備士の受験に限る※

給水装置工事主任技術者 給水装置工事主任技術者免状の交付を受けている者
旧給水責任技術者 水道法第25条の5制定以前の、地者公共団体の水道条例

もしくは、これに基づく規定による給水責任技術者の資格を有する者

消防行政3年 消防行政に係わる事務のうち、消防用設備等に関する実務経験が3年以上ある者
実務経験3年 消防法施行規則の一部改正前において、消防用設備などの工事の実務経験が3年以上ある者
旧消防設備士 昭和41年10月1日以前の、東京都火災予防条例による消防設備士を有する者

《学歴》
学歴も、多様な受験資格が存在します。

◆以下学校において、機械・電気・工業化学・土木もしくは建築に関する学科または課程を修めて卒業した者
・大学、短期大学、高等専門学校(5年制)
・高等学校、中等教育学校
・旧制の大学、専門学校等
・外国の学校

◆以下学校において、機械・電気・工業化学・土木もしくは建築に関する授業項目を”履修”し、15単位以上修得した者
・大学
・高等専門学校
・専修学校
・各種学校
・大学、高等専門学校に置かれる専攻科
・防衛大学校
・防衛医科大学校
・職業能力開発総合大学校
・職業能力開発大学校
・職業訓練大学校
・前職業訓練大学校
・旧職業訓練大学校
・中央職業訓練所
・水産大学校
・海上保安大学校
・気象大学校

甲種の資格の中で、最も受験者数が多いのは「甲種第四類」です。

これは火災報知設備を扱えるようになり、消火器同様に設置台数が多いのです。

そのため、火災報知設備を扱う工事・メンテナンス会社からの需要が多く、転職の際にも有利となります。

もちろん、甲種の資格は他の分類であっても所持することで就職時に有利となります。

“工事ができる”という点で乙種よりも需要があります。

尚、消防設備士免状を有している人は、

  • 免状交付を受けた日以後、最初の4月1日から2年以内
  • その後は、受講日以後、最初の4月1日から5年以内ごと

上記それぞれで、都道府県知事もしくは総務大臣が指定する講習機関が行う講習に参加しなければいけません。

消防用設備の工事や整備に関する新しい知識を習得するためであり、仮に関連実務に就いていない場合であっても受講する義務が生じます。

他の資格について

消防設備士の資格を取得すると、以下の受講資格も得ることができます。

【防火管理技能者】
現代は、消防・防災設備が高度にシステム化され、建築物や防火・避難設備なども複雑化しています。

この資格は、防火管理者の業務を補助し、防火管理に関する高度で専門的な知識・技術を有した者……そして、それを証明するための資格となります。

【消防設備点検資格者】
これは、消火器や消火栓・スプリンクラーや誘導灯などが、正しく設置・維持管理されているかどうかを点検するためのもの。

そして、それを行うための知識を有する技術者であることを証明するための資格です。

この資格は、第1種・第2種・特殊の3つに分類されており、それぞれで点検できる種類が異なります。

【特殊建築物等調査資格者】
これは、甲種消防設備士としての実務経験が5年以上ある場合に、受験資格を得ることが可能です。

学校・オフィスビル・病院・診療所・映画館など、多くの人が出入りする特定建築物の敷地構造や建築設備を定期的に検査できるようになります。

尚、上記でお伝えした資格は、別の資格を取得するなど他の方法で受験資格を得ることもできます。

消防設備士の仕事に携わっていきたいと考える方はもちろん、他の関連する仕事であっても自身のキャリアアップに繋がります。

関心がある方は、詳細を調べてみて下さい。

消防設備士の現状と将来性

この仕事は、資格を所持していなければ、工事だけでなく点検や整備の業務も行うことができません。

また、災害は人が生活をする以上必ず起こりうる可能性があるものです。

それらを未然に対策する、被害を抑える、復興に助力するといった仕事は今後も無くなることはありません。

むしろ、以前より消防設備そのもののニーズが、全国的に高くなっているとも言えます。

そのため、今後も需要の高い仕事であると断言できます。

特に、工事まで行える「甲種」の資格者は、業界を問わず転職しやすいのが特徴です。

甲種の資格を複数所持している場合や「特類」を保有している方は、転職先も数多く存在します。

ただし、

資格を取得しなければ仕事を行えない(そもそも求人に応募ができない場合もある)
複数の資格を取得する場合、多くの勉強時間と経験を必要とする
体力的にハードな仕事
チームワークを必要とする仕事

といった点で、職に就く前から就いた後も、大変な仕事であると言えます。

この仕事に向いている人は、”学習意欲が高く、向上心がある方”です。

前向きに、長く様々なことを経験し勉強していきたいと考えている方は、手に職を付けて長く働けるチャンスと言えるかもしれません。

まとめ

災害に対する危機的意識が高まっていることから、今後もさらに発展を見込める業界です。

資格を取得した分だけキャリアアップを目指すこともでき、人によっては将来的に独立する場合もあります。

努力した分だけ自身に返ってくる魅力的な仕事でもありますので、関心がある方は「消防設備士」に対する知見を広げてみて下さい。

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