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「シーリング工事」とは?「防水」の重要性や種類、必要な資格について

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大切な住まいを守り、いつまでも快適に過ごすためには「防水」は欠かせない工事の一つです。

「防水工事」と聞くと、水道まわりの工事のことと勘違いする方もいらっしゃいますが、建築物における防水工事とはそうではありません。

今回は、「防水」に関する知識や工事方法、仕事をするために必要なことについてお話をしていきましょう。

「防水」について

防水工事とは?

建築物においての「防水」とは、雨や生活用水などを遮断し、漏水を防ぐことを目的としています。

生活の中で発生する”防ぐべき水”と、”関係する部位”は概ね下記が存在します。

防ぐべき水 関係する部位
降雨水 :雨や雪など 屋根、屋上、ベランダ、バルコニー、外壁、窓枠など
生活用水:上下水道、風呂水、洗濯水、

調理用水など

浴室、台所、便所、受水槽など

どんな家であっても年数が経つほどに建物は劣化し、水漏れが発生する恐れがあります。

特に、日本は雨や雪が降りやすい気候のため、住まいの快適さを維持するためには建物を水から守ることは重要なのです。

尚、建物外部の水が室内に侵入するための条件は、

・水が存在すること
・水が通過する”隙間”があること
・水を移動させる”力”あること

があり、この中のどれか1つを取り除くことで水の侵入を防ぐことができます。

この”隙間””移動する力”を防ぐために、防水工事が行われるのです。

放っておくとどうなる?

建物の劣化部分を放置しておくと、当然ながら建物の寿命を縮める原因となってしまいます。

例えば、雨水の侵入は建物の骨格を支える柱・梁を腐朽させ、鉄筋の錆などに繋がります。

他にも、浴室やキッチンの水漏れを放っておくと悪臭や腐食が発生する恐れがありますし、カビやダニなどの発生による健康被害の影響も出てきます。

このことから、建物の内外は定期的に観察し、状況に応じて工事を行っていく必要があるのです。

防水の種類

防水には、形状により「メンブレン防水」「シーリング防水」の2つに大別できます。

メンブレン防水

「メンブレン」の意味は”膜”であり、不透水性の膜を防水が必要な場所に形成することをいいます。

施工形態により、いくつかの工法が存在します。

工法 用途 種類
塗膜防水工法 ・液状の樹脂類を使用するもの

・細かい作業が必要な、屋根やベランダなどの”歩行”を伴う場所に有効

・ウレタンゴム系防水層

・ゴムアスファルト系防水層

・FRP系防水層

・アクリルゴム系防水層

・セメント系防水層

アスファルト防水工法 ・膜状のものを液状のもので隙    間なく張り合わせるもの

・水密性、耐久性が高く、施工の

不具合が出にくい

・アスファルト系防水層
シート防水工法 ・予め膜状となっているものを現場で貼り付けるもの

・ゴムや塩科ビニルでできたシートを下地に貼るため、扱い易い

・合成ゴム系防水層

・塩化ビニル系防水層

・ポリオレフィン系防水層

・エチレン酢酸ビニル樹脂系防水層

シーリング防水

「シーリング」は”遮蔽物・遮蔽工作物”のことであり、外壁と窓枠、もしくはプレキャストコンクリート相互間などを目地状に塞ぐことをいいます。


これは「シーリング工事」を防水に応用したもので、上画像のように隙間や目地を埋めて水分の侵入を防ぐ防水手段となります。
使用される材質は下記2つです。

材料 特徴 種類
不定形シーリング材 ・形状が定まっていない、ペースト状のものを充填して仕上げるもの。

詰めた後、しばらく経つとゴム状に変化し、一般的にはこちらが”シーリング材”と呼ばれる

・シリコーン系

・変成シリコーン系

・ポリイソブチレン系

・ポリサルファイド系

・ポリウレタン系

・アクリルウレタン系

・アクリル系

・プチル系

定型シーリング材 ・予め成形されたものをはめ込むもの

「ガスケット」とも呼ばれる

・シリコーンゴム

・エチレンプロピレンゴム

・クロロプレンゴム

・塩化ビニル

・サーモプラスチックエラストマー

その他の防水

【浸透性防水】
これは、主に建物の地下・下水道や貯水池などの水処理施設・橋梁や港湾施設などの土木分野における”コンクリート建造物”を対象としています。

防水材をコンクリート混練時に混入し水密性を高めたり、躰体に防水材を塗布浸透させることで内部をより緻密化することができます。

【金属防水】
これは、カラー鋼板やトタン板などの強度が大きく耐久性に優れた材料を使用する工法で、耐水性・耐食性・対候性に優れ、かつ軽量で強靭という特徴があります。

主に木造住宅やバルコニー、屋上などの防水に使用されています。

シーリング工事について


これは、外壁ボード間のつなぎ目や外壁とサッシの隙間などに、シーリング材を埋める工事のことです。

建物の隙間から侵入する雨水を防ぐ“防水性”、地震や強風が発生した際に目地の動きに合わせて伸縮し建物を守る“耐震性”が主な役割となります。

シーリング材は、紫外線など常に外部の環境に晒されることから、時が経つにつれ徐々に劣化していきます。

それを放置しておくと、最終的にひび割れ・肉やせ・はく離などの原因となり、建物全体の寿命を一気に加速させる要因となってしまいます。


尚、シーリング材は「可塑剤」という形を変えやすい柔らかい素材が入っており、この可塑剤の量が多いシーリングほど硬くなりやすいという特徴があります。

また、耐久性はJIS(日本工業規格)によって区分されており、それぞれで耐久性が異なります。

環境によりけりではありますが、一般的に5年前後がシーリングの劣化が始まるタイミングと言われています。

外壁の種類

一軒家の外壁は大きく「塗り壁」「サイディング」の2種類に分けられます。

塗り壁

「塗り壁」は古くから存在しており、水・土・植物などの身近な天然素材を原料とした壁材です。

下地の上に、荒塗り・中塗り・上塗りと何層にも塗って仕上げるため、耐久性や安全性が高く独特の風合いを出せるのが特徴となります。


ただしこれは、左官職人による手作業で行われるため、職人の腕により個人差が出ることがあります。

また塗り作業・手作業であることから、メンテナンス(塗りなおし)の際には費用が高くなる傾向があります。

サイディング

「サイディング」は建物の外壁に貼る仕上げ用の板材のことで、既に完成している外装材を貼り合わせていきます。


塗り壁は現場にて手作業で行われますが、サイディングは工場などで既に作られた壁材を張り付けていく作業のため、”工事費用が安く済み・職人による個人差が出ず(仕上がりが均一)・施工時間が短縮できる”という特徴があります。

また、耐水性や耐天候性に優れ、デザインや種類も豊富、工場で生産するため品質が安定しているといったメリットもあります。

サイディングの種類は、大きく下記の4つが存在します。

種類 特徴
窯業系サイディング セメント質と繊維質を混ぜ合わせて作られた板

・地震に強い

・耐火性に優れている

・デザインが豊富に存在する

・価格帯が比較的安価

金属系サイディング アルミニウムやステンレスなどの鋼板が使用されたもの

・金属のため防水性、耐天候性が高い

・長期間メンテナンスが不要

・価格は高いものが多い

木質系サイディング 木を材料としており、天然の木に塗装をするもの

・本物の木を使用するため、個性があり温かみのある外壁になる

・水に弱く、こまめなメンテナンスが必要

・価格は高いものが多い

樹脂系サイディング 樹脂成型されたもの

・窯業系サイディングの約1/10の軽さを誇る

・樹脂成型されているため、耐天候性に優れる

・目地の補修が不要

・軽く、薄く設計されていることから遮音性は劣る

現在はサイディングにより建てられる家が多く、特に日本は窯業系サイディングが主流となっています。

しかし、アメリカでは樹脂系サイディングの方が広く利用されており、外壁材全体の50%を超えるシェアを誇っています。

シーリング工事の流れ

工事の種類と費用

次に、シーリング工事がどのような流れで行われていくのかを説明していきます。

まず、シーリング工事には「打ち替え工事」「打ち増し工事」というものが存在します。

・打ち替え工事:既存のシーリングを全て取り除き、新しいシーリング材を埋めること
・打ち増し工事:既存のシーリング材の上に、新たなシーリング材を加えること

打ち増し工事は、既存の材質の劣化が進み切っていない場合の予防措置のようなものであり、既存のシーリング材を撤去する作業ないために価格を抑えることができます。

費用に関しては、施工方法や使用する材料によって変動します。

他にも、高所で作業する場合もあるため、工事内容によっては足場設置の費用もかかります。

工事の流れ

工事の作業手順は下記の流れで進めていきます。

1.既存シーリング材の除去

まずは既存のシーリング材を取り除く作業からです。

ただし、これは打ち替え工事の場合のみです。

2.清掃

新しいシーリング材を使う前に、古いシーリング材があった箇所を綺麗に掃除します。

3.バックアップ材もしくはボンドブレーカーの取り付け

「バックアップ材」は目地の深さを調節し三面接着を防ぐもので、「ボンドブレーカー」は継ぎ目が浅い時などバックアップ材を入れることができない場合に使用される部材のことです。

基本的に外壁のシーリング工事は二面接着であり、三面接着だとシーリング材が自由に機能しなくなります。

これら部材を取り付けることにより、建物のゆがみや動きにシーリング材がついていけるようになるのです。

4.養生

作業時に使用する薬剤が余分な場所に付着しないように、マスキングテープなどで保護します。

5.プライマーの塗布

「プライマー」とは、端的にいうと”下塗り用の接着剤”のことです。

シーリングを行う箇所にサビやホコリがなく、乾燥していることが確認できたら、このプライマーを塗布していきます。

6.シーリング材を充填する

「コーキングガン」という器具を使い、目地にシーリング材を充填していきます。

  • どの材質のものを使うか?
  • コーキングガンのノズルのサイズや形は合っているか?
  • 気泡は入っていないか?

など、作業を行う職人の判断や技能が重要となってくる作業です。

7.ヘラでならす

充填したシーリング材を、ヘラを使用しならしていきます。

圧着させることにより、密着性の向上・余分なシーリング材の除去・表面を整えることができます。

8.工事完了

シーリング材が乾ききる前にマスキングテープを剥がし、作業は終了です。

防水工事に必要な資格

「防水施工技能士」

まず、防水工事の職に就く上で必須となる資格はありません。

ただし、防水施工に関する技術を証明する手段として「防水施工技能士」の資格を取得する人は多いです。

防水施工技能士は、国家資格である技能検定制度の一種であり、防水施工に関する学科・実技試験の両方に合格をする必要があります。

等級や受験資格は、以下に分かれています。

等級 位置づけ 受験資格
1級 上級技能者 実務経験7年以上
2級 中級技能者 実務経験2年以上

尚、必要な実務経験は、職業訓練歴や学歴によって異なります。

実務経験を必要とすることから、まずは防水工事を行っている会社に就職し、見習いとして現場を経験していく必要があります。

その上で技術を身に着け、資格を取得し、自身のキャリアアップに繋げていくのです。

中には、これら経験を経て確かな技術を身につけ、独立して会社を立ち上げる人もいます。

その時に、防水施工技能士の資格は、技術を証明する”証”として重要となります。

シーリング工事に関する資格

シーリング工事に関する資格は、下記2種類があります。
 

・シーリング管理士
・シーリング防水施工技能士

この2つの違いは”管理・指導を行う””現場で作業をする”か、です。

【シーリング管理士】

「シーリング管理士」は、顧客や工事関係者との打ち合わせ・施工管理・現場作業員の指導などを行い、工事が円滑に進むように段取りを組んでいきます。

毎年1回、検定講習会と検定試験が行われており、講習カリキュラムの中にはシーリング防水や最新技術・知識も含まれています。

また、シーリング管理士の資格は4年ごとに更新の手続きが必要となります。

【シーリング防水施工技能士】

対して、「シーリング防水施工技能士」は現場で作業を行う人が対象となる資格です。

上記で記載した「防水施工技能士」の1つであり、施工技術の確保・工場を目的としたものになります(詳細は、防水施工技能士と同じです)。

どちらも技術を証明できる重要な資格であることから、これら2つの資格所有者が在籍する施工店であれば、安心して仕事を任せることができます。

自身のキャリアアップはもちろん、独立の際に所持しておいて損のない資格となります。

まとめ

建物を、長く・大切に使っていくために「防水工事」は欠かせない作業の一つです。

簡単な確認や修繕であればそこに住まう人にも可能ではありますが、建物内部の劣化を見極めたり建物全体の修繕をするのであれば、プロの技術は必要不可欠なものとなります。

また、防水工事は住宅だけでなく、ビルや大型商業施設・病院・橋など社会環境の中でも必ず必要な技術なので、今後もこの仕事が無くなるということはありません。

将来的なニーズも十分にある仕事なので、関心を持たれた方は是非とも知見を広げ、防水工事の世界に一歩踏み出してみて下さい。

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