室内の温度調整だけでなく空気をきれいにしてくれる空調は、現代の生活にはなくはならない存在です。
家庭だけでなく店舗やオフィス、工場、倉庫など、さまざまな場所に空調は使われています。
そんな空調が故障したときや、新たに空調を設置したいときにおこなわれるのが空調設備工事です。空調設備工事とは具体的にどんな仕事をするものなのかについて知っていきましょう。
また、建設関連、工事関連の仕事に就きたいとお考えの方のために、空調設備工事に役立つ資格や転職のコツについても紹介します。
空調設備工事の仕事内容
まずは空調設備工事の仕事内容について確認しましょう。
空調設備と一口に言っても、熱源設備、熱運送設備、空気調和設備といった種類があります。
熱源設備とはボイラーやヒートポンプといった熱を生む機械のこと。主に工場などに取り入れられます。
熱運送設備は配管やダクト、送風機といった、熱を運ぶ設備のことです。
そして空気調和設備は加湿器、加熱コイル、冷却コイルなどの熱を中和して使いやすくする機械のことです。
空調設備の仕事は、これらの設備に関するさまざまな業務をおこないます。
空調設備の設置業務
新築の家、新しい商業施設や工場、改装された建物などに新しい空調設備を設置します。
空調そのものを設置する業務、空調で作った空気を指定の場所まで運ぶ配管を設置する業務などがあります。
一度設置すると簡単には変えられないため、建物の構造を理解した上えより効率的で安全な配置を考えなければなりません。
空調設備のメンテナンス業務
設置した空調設備のメンテナンスをおこなうこともあります。
空調設備は現代には欠かせない存在です。生活をしやすくするだけでなく製造業に欠かせなかったり、商品の品質を一定に保ったり、さまざまな役割を果たしています。
そんな空調設備が故障すると日常生活に支障が出るだけでなく、企業や工場によっては生産効率が下がる、品質維持ができなくなるなどの障害が出てしまいます。
空調設備は定期的にメンテナンスをする必要があり、その対応をすることもあります。
また、万が一のトラブルの際はどこに故障の原因があるのかを見極め、スピーディーに直さなければなりません。
一般的な家庭の場合は日中に、企業や工場の場合は営業時間外の深夜に仕事をすることもあります。
予算やスケジュールの管理
空調設備設置にあたり、予算やスケジュールの管理をするのも仕事の一つです。
とくに空調設備の工事は建築の工事の中でも後回しになりやすいです。基本的な建築工事ができていなければ空調を設置することができないため、どうしても工事の中でも最後になってしまいます。
そのため、スケジュール管理が非常に重要です。限られた時間の中で納期を守る必要があるだけでなく、他の建築工事が遅れた場合にも臨機応変に対応しなければなりません。
予算によってできる工事とできない工事、設置できる設備とできない設備などがあります。クライアントとよく相談し、最適な設備を提案するのも空調設備工事の仕事の一つです。
空調設備工事にあると役立つ資格
空調設備工事をおこなうのに必須の資格というものはありません。ですが、空調設備会社に合格するには自分のスキルや経験をしっかりアピールする必要があります。その際に証明となってくれるのが資格です。
空調設備工事に役立つ国家資格はたくさんあります。どんな資格があると有利なのか、難易度はどれくらいなのかなどを確認しましょう。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は建築業界において専門的な知識を持っていることを証明できる国家資格です。
空調設備工事の内、ダクト工事など配管に関する作業をおこないます。施工のスケジュールを作成し管理する、品質を管理する、さらに安全管理もおこなうための知識がなければなりません。
管工事施工管理技士には1級と2級がありますが、どちらの合格を目指すためにも実務経験が必要です。
2級に合格すると専任技術者、主任技術者として働くことができます。
1級に合格すると専任技術者と主任技術者、さらに監理技術者としてすべての資格が与えられます。
即戦力を求める工事会社の場合管工事施工管理技士1級の資格保持者の採用を優先させることもありますが、働きながら資格を取得できる会社も多いです。
電気工事施工管理技士
空調設備の設置には配管工事だけでなく電気工事も必須です。その際に役立つのがこの電気工事施工管理技士の資格です。
電気工事のスケジュールや品質、安全面を管理することができるようになり、建築の現場で電気工事をおこなう際はこの電気工事施工管理技士の資格所持者がいなければなりません。
空調設備だけでなくさまざまな建築の現場で需要が高い資格ですので、所持しておいて損はないでしょう。
この電気工事施工管理技士は国家資格ですので、合格した際には国土交通省から合格証書が付与されます。
電気工事施工管理技士も管工事施工管理技士と同じように1級と2級があります。
2級は専任技術者と主任技術者として、1級の場合は専任技術者、主任技術者、監理技術者として働くことができます。
電気工事士
管工事施工管理技士や電気工事施工管理技士のように実務経験がなくても合格を目指せるのが電気工事士です。
電気工事士には2級と1級があり、2級は筆記試験と技能試験に合格すれば取得できます。いずれも60%から70%の合格率ですのでそれほど難しい試験ではありません。
ですが1級に昇格するためには5年以上の実務経験がなければなりません。
転職のためにまずは2級を取得し、働きながら1級の取得を目指すのが一般的です。
認定電気工事従事者
認定電気工事従事者は試験を受けずに認定書をもらえるという少し特殊な資格です。
資格の取得には第二種電気工事士、電気主任技術者の資格が必要ですが、この資格を持っていれば講習を受けるだけで認定電気工事従事者の認定書を受け取ることができます。
認定電気工事従事者の資格があると最大電力500キロワット以下、電圧600ボルト以下の電気工作物の工事ができるようになります。
空調設備工事会社の中でさらにキャリアアップをしたい、転職に役立てたいという経験者におすすめの資格です。
冷凍機械責任者
冷凍機械責任者は冷凍設備の保守、点検、資格所有者がいない場合の監督業務などをおこなえる国家資格です。
冷凍機械責任者には第一種と第二種と第三種があり、第三種は工業高校の修了程度の知識で合格可能です。第二種は専門学校の修了程度の知識が必要があり、第一種になると大学の工学部修了時点程度の知識が必要になります。
受験のための条件はありませんが、この資格を所持した上で責任者として働くためにはそれぞれの種類が定める業務を一定期間おこなわなければなりません。
冷凍機械責任者になるための講習会なども開催されているので、必要であれば受講してから試験に挑んでもいいでしょう。
空調設備工事の年収は?
空調設備工事に携わる職業の年収は420万円程度です。
初任給でも20万円程度が相場であり、賞与もある会社が多いです。
建築業界は年収が高い場合が多いですが空調設備工事の場合も高い年収を期待できるでしょう。
所持している資格によって対応できる仕事が変わってくるので、より上位の資格を所持している方が年収も高くなる傾向にあります。
例えば管工事施工管理技士の場合、2級所持者よりも1級所持者の方が年収は高くなります。
求人ページに資格の所持によって待遇が変わる、昇給制度があるなどの記載があればキャリアアップ、年収アップも目指せるでしょう。
年齢に関わらず高収入を期待できる仕事ですが、資格の中には一定以上の実務経験があることが条件に定められているものもあります。
空調設備工事の転職のポイント3つ
空調設備工事関連の仕事をしたい、今の会社、業界から転職したいと思ったときにチェックしてほしい会社のポイントを紹介します。
やみくもに年収や条件だけで応募してしまうと働いてから後悔することになるかもしれません。自分と相性がいいか、自分の理想の働き方ができるかはきちんと確認しておきましょう。
研修をきちんとおこなっているか
研修制度が整っているか、どんな研修をおこなっているかは事前に確認する必要があります。
経験者を優遇している求人であっても、それぞれの会社によって業務内容や細かい決まり事は違います。
研修を受けないままいきなり現場に出ると社内でトラブルになるだけでなく、クライアントや別の建築会社との行き違いから大きなミスを起こしてしまう可能性もあります。
きちんと基礎を教わらない内に現場に出されるような会社に就職してしまうと仕事内容に追いつけず、すぐに離職してしまうかもしれません。
研修は2か月程度が目安とされています。とくに未経験から空調設備工事にまつわる仕事を始めるなら、研修についてはきちんと確認しておきましょう。
残業や就業時間を確認
空調設備工事は夜間に仕事をすることも多いです。
学校や商業施設、工場など、日中営業をしている場所での工事は従業員や利用者のいない夜間におこないます。
夜勤がある場合は夜勤手当てが出る会社がほとんどですが、夜勤によって体調やメンタル面の健康を崩してしまう場合もあります。体力に自信がない、過去に夜勤で体を壊した経験があるという方は、夜勤のない会社を選ばなければなりません。
また、空調設備工事はスケジュールとの戦いである面も大きいので残業はどうしても付き物です。
残業代はどれくらい出るのか、月の残業はどれくらいなのかを確認しておくことも大切です。
長く働き続けるためには無理のない働き方ができる会社を選ぶことは欠かせません。
キャリアアップができるか
資格の取得によって給料がアップしたり、昇進するシステムが整っていたりと、キャリアアップできる仕組みが整っている会社を選びましょう。
空調設備工事は現場の仕事がメインですが、その現場でも所持している資格によってできることとできないことがあります。
転職の際は所持している資格や前職での経験をしっかりアピールし、必要であれば給料の交渉などをおこないましょう。
空調設備工事のやりがいや将来性
空調設備工事にはどんなやりがいがあるのか、将来性は高いのか、働き続ける上でどんな問題があるのかをチェックしてみましょう。
今後も長く働き続けられるか、どこにどんな需要があるのかなどを確認してみてください。
空調設備のニーズは常に高い
一般家庭だけでなく学校、病院、会社、工場、商業施設など、空調設備は生活に欠かせないものです。
そのため人がいる場所には常に空調設備工事のニーズがあります。
少子高齢化が進んでいますが、一般家庭からのニーズが減少してもその他の施設からの需要が下がることはありません。
長く安定して働き続けられる職業と言えるでしょう。
上記で紹介したような資格を取得すれば転職にも役立ち、より条件のいい会社に転職したり、別の業種に転職したりすることも可能です。
働きながら資格取得を目指せるというのも空調設備工事会社で働くメリットの一つです。
さまざまな施設の裏側が見られる
空調設備を導入する際、空調設備で作った空気をより効率的に運ぶためには配管の配置が重要です。
施設の設計図からどのような配管が必要かを考えるため、普段は見えない施設の裏側を知ることもできます。
建築に興味がある、建築の経験がある方であれば楽しみながら配管について考えることもできるでしょう。
建築が好きな方にとってはやりがいのある仕事と言えます。
高収入の会社が多い
建築業界は他の業種と比較しても高収入の会社が多いです。
空調設備工事は夜勤がることも多く、その分給料も高めに設定されています。
また、現場で活躍するにはさまざまな専門性の高い国家資格が必要です。国家資格の取得には多くの条件があり、中には取得が難しいものもあります。
そのため空調設備工事会社としては一人でも多く人材を確保したいところ。人材確保のためにも給料や賞与の体制はきちんと整っている会社が多いです。
反対に給料に不満がある、業務内容と給料が見合わないと感じている方でも所持している資格によっては待遇のいい会社に転職しやすいです。
激務になりやすいので注意
空調設備工事は建築業の中でも激務になりやすいので注意しましょう。
建物ができるまでは、まず地面の工事である土木工事から始まります。
さらに建物の工事が進み、空調や水道などの設備は最終的な段階でのスタートです。
他の工事が遅れているとその分スタートが遅くなってしまい、納期ギリギリになってしまうことも珍しくありません。
建築業の中でもとくにしわ寄せが多くなりやすい部分ですので残業が増える、夜勤が増えるなどの可能性もあります。
体力に自信がない、夜勤の経験がない方は就職の際は慎重にならなければなりません。
「建築の仕事が好き」という気持ちだけでは乗り切れないこともありますので、せっかく就職できたのにすぐに辞職してしまった…ということのないようにしましょう。
空調設備工事の仕事に就こう
空調設備工事の仕事内容や必要な資格、やりがいや年収などについて紹介しました。
空調設備は現代にとって欠かせないアイテムです。そんな空調を設備する仕事は新しい施設に空調を導入する、古くなった空調を整備する、トラブルのあった空調のメンテナンスをするなど、多くの人に感謝される仕事でもあります。
今後もそのニーズが減少する可能性は低く、資格を取得したり知識や経験を積み重ねることで長く働き続けることができるでしょう。
空調設備工事に役立つ資格もチェックして、転職に役立ててください。