建築業界は男社会というイメージがありますが、近年徐々に女性が活躍する現場が増えてきています。
しかし女性が働きやすい環境が整っている会社はまだまだ少ないでしょう。
女性が働きやすい環境を作ることで、女性に長く働き続けてもらうことができます。結果技術者や経験者を手放すこともなくなり、より会社の成長につなげることもできるでしょう。
建築業界において女性が働きやすい環境を作るにはどうすればいいのか、また女性を採用することにどのようなメリットがあるのかについて紹介します。
建築業界で女性が働きにくいと感じる理由
まずは建築業界で女性が働きにくいと感じる理由をチェックしましょう。
そもそも女性が建築業界を目指す割合は低いですが、それでも一定数の女性は建築業界についての知識を学び、資格を取得しています。
女性だから採用しない、女性だから仕事を任せないといった古い考え方のままでは、今後立ち行かなくなってしまう可能性もあります。
女性を受け入れる体制を作るためにも現段階でどのような問題があるかを把握しておくことは大切です。
女性専用の設備の少なさ
建築業界は男性のものというイメージが強く、会社に一人も女性社員がいないという会社も珍しくありません。
そのため女性への配慮に欠けた会社設備のまま営業を続けているところも多いです。
よく問題として挙げられるのがトイレや更衣室、仮眠室です。女性専用のトイレがない、更衣室がないためトイレで着替えなければならないなどの問題があります。
そのような環境では女性の肩身が狭く、職場見学の段階で応募する候補から外されてしまいます。せっかく優秀な人材がいても逃してしまう可能性もあります。
現在女性社員がいない場合でも、男女を分けるべきスペースの配慮は考えましょう。
女性社員がいる場合は早急に女性社員が過ごしやすい環境を作るようにしてください。
女性への偏見
建築業界だけでなく、日本では女性は結婚と同時に仕事を辞めるものという偏見があります。実際には共働き世帯は増加しており、結婚をしても仕事を続けたいと思っている女性は多いです。
また、体力仕事は女性に任せられない、女性は現場に入るべきではないといった偏見を持つ職人も少なくありません。本人の能力を見ずに性別だけで決めつけられる苦しさを感じ、建築業界から遠のいてしまう女性もいます。
男性が多い職場では女性への理解が少なく、セクハラやパワハラも横行しやすいという問題もあります。
産休や育休への理解の無さ
女性は出産時には産休を取得しなければなりません。ですが女性が少ない会社では産休の制度が整っておらず、退職せざるを得ないというケースも。
育休は女性だけが取得するものではなく、男性にも取得する権利があります。
女性を受け入れる体制を整えるために産休や育休制度を完備することで既存の男性社員もより働きやすくなります。
中にはベビーシッター制度を取り入れたり、保育園と提携してより女性が働きやすい環境作りを進めている会社もあります。
建築会社が女性を採用するメリット
建築会社が女性を採用するメリットを紹介します。
働き方の多様化や男女平等の考え方が浸透しつつある現代において、女性を積極的に採用しようとする建築会社も増えてきています。
他の会社はどのような視点から女性の採用を考えているのかについて見てみましょう。
選択肢が豊富になる
女性も採用することで、男性のみを採用していたときよりも単純に選択肢が増えます。
資格所有者や現場経験者などを採用できれば、教育コストも省けて即戦力として会社の力になってくれます。
男性だから、女性だからという理由で選考するのではなく、今後どちらを採用した方が会社の成長につながるかを考えるようにしましょう。
女性を採用してもすぐに離職されるのではないかと心配する声もありますが、女性が働きやすい環境を整えればそのような悩みも軽減できます。
男女問わず働き方を選びやすくなる
女性を採用する、そして女性に長く働いてもらうためには、女性が働きやすい環境作りが大切です。
そのためには産休や育休制度を整える、フレックスタイム制を導入するなど、会社全体の働き方を変えていく必要があります。
とくに中小企業では大変なことではありますが、このような工夫をすることで女性だけでなく男性も働きやすい会社にしていくことができます。
建築業界はハードで離職率も高く、キャリアアップのために転職を考える方も多いです。
しかし会社自体が働きやすい場所であれば離職率を下げることもできるでしょう。
会社の成長や存続のためにも、男女ともに働きやすい会社を目指すことは大切です。
助成金を利用できる
建築業界は女性の社員の確保のためにさまざまな取り組みをおこなっています。
その中でも中小企業に対してはトライアル雇用助成金という制度があります。
35歳未満、または女性の労働者を採用した際、3か月間月額4万円が支給されるというものです。
女性が働きやすい環境作りのためにこれらの助成金を利用することができます。
他にも人材確保等支援助成金、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースの利用も可能です。
これらの助成金制度もしっかり利用して、有能な女性社員の確保を目指しましょう。
新たな視点で業務に取り組める
現状男性のみで会社の経営を続けている場合、なかなか問題点には気づきにくいです。
そんな中で女性が働くと新たな発見があるかもしれません。
作業の工程、安全管理、スケジュール管理といった建築の仕事だけでなく、事務作業やその他の雑務でも、これまでにない視点から業務を効率化したりより安全に作業を進められたりできるようになるでしょう。
業務の効率化を進められる
家庭を持っている女性を採用することで、残業をさせにくくなるなどの心配の声もあります。ですが現状で不必要な残業が多いという会社も少なくありません。
残業をさせにくい、他の社員に負担がかかるという考え方をやめて、残業を少なくするためにはどうすればいいのかという方向に考え方を変えてみましょう。
マニュアルを作成して社員全員が情報や進捗を確認できるようにする、システムを導入する、無駄な業務や時間を洗い出して他の仕事を進められるようにするなど、業務の効率化を進められます。
残業時間が減る、無駄な時間が減ることで社員のモチベーションを上げることもできます。自由になった時間で資格の取得を目指すなど、会社全体の成長も期待できるでしょう。
建築業界ができる女性も働きやすい環境作り
建築業界で女性が働きやすい環境を作るには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
会社に女性社員がいる場合は女性社員の声を取り入れるなどして、より従業員全員が働きやすい職場を目指しましょう。
女性専用の設備を取り入れる
現段階で女性専用のトイレや更衣室、ロッカールーム、シャワールーム、仮眠室などがない場合は女性専用の設備を導入する必要があります。
すでにこれらの対応をおこなっている建築会社は多く、設備が遅れているとそれだけで求人に応募してもらえる数が減ってしまう可能性があります。
女性のことを考えた設備が整っていない会社は女性の働き方に対しても理解が少ないのではないか、と懸念を持たれてしまいます。
設備に問題があると感じた場合は早い段階で新しくしましょう。
休暇や手当て、福利厚生を充実させる
育休や産休の取りにくさなどは女性の働きやすさに直接影響します。
産休が取れず退職を余儀なくされる場合、女性社員も再就職先を探さなければなりませんし、会社も再度求人募集をかけなければなりません。
このような負担を軽減するためにはやはり産休育休制度の充実が欠かせません。
他にも、フレックスタイム制など労働時間を融通する、福利厚生を充実させるなども大切です。
資格や能力に応じて手当てを出すような制度を整えれば、この会社で長く働きたいと多くの従業員に感じてもらうことができるでしょう。
業務を細分化する
業務の細分化をすることも、女性が働きやすい環境作りに役立ちます。
現場では体力仕事も多いですが、それ以外に管理や設計などデスクワークもたくさんあります。このようなデスクワークや管理の仕事を女性に依頼し、体力が必要な仕事は男性が請け負うなど作業を分担することで、お互いに得意を活かした仕事ができるようになります。
作業を分担することで女性が産休に入っても他の従業員に引き継しやすくなり、復帰する際もスムーズに仕事に戻れます。
復帰直後は時短勤務でもいいようにするなど、負担が少ない働き方を推奨できるよう環境を整えましょう。
進化している建築会社も増えてきている
建築業界は女性が働きにくい、差別やセクハラが横行しているといったイメージがありますが、進化している建築会社も増えてきています。
トイレなどの設備が充実しているだけでなく、産休や育休を取りやすい、保育園と提携している、育児手当が出るなど、女性の声を取り入れた環境作りが進んでいます。
今後少子高齢化が進むにつれて、優秀な人材の確保は今以上に難しくなっていくことが予想されます。
女性の離職の原因として多いライフステージの変化に対応できるようにすれば、離職のリスクを減らすことができるでしょう。
また、女性を受け入れる体制が整っている会社は仕事を探している女性からも人気があります。しっかり会社の魅力をアピールできるようにしておきましょう。
反対になかなか優秀な人材を集められないという場合、女性への配慮が足りていない可能性があります。設備や制度など、女性が働きにくそうと感じるポイントがないか、今一度企業全体を見直してみましょう。
女性が活躍しやすい建築業界の職種
建築業界は肉体労働だけではなく、さまざまなスキルが必要です。
女性が活躍しやすい建築業界の職種について紹介します。
これらの仕事は女性が長く働きやすいため、一度採用すれば会社の成長にも貢献してくれることでしょう。
建築士
建築士は建築業界の中では有名な国家資格です。
資格取得の難易度が高く、一級の資格を取得するには実務経験も必要です。
現在、建築士の資格を所有している男女比率は75:25程度と言われています。ですが女性の働きやすさを考える取り組みが進んでおり、今後建築士の資格を所有する女性は増えてくることが予想されます。
建築士は現場で活躍することも多く、建築業界の中でもハードな仕事ではあります。ですが男性でも離職率は高いため、男性だから、女性だからという理由で差をつけるのではなく長く働ける環境作りを考えた方が賢明です。
インテリアコーディネーター
一般の住宅からホテル、店舗、オフィスなどのインテリアを提案するインテリアコーディネーターの仕事も女性に人気があります。
活躍できる場面が多く、どのような規模のインテリア、内装工事をおこなっている会社に就職するかを慎重に考えなければなりません。
専門的な資格を所有していなくても働けるため建築業界にチャレンジしたいという方にも人気です。
お客様の要望に応じてインテリアの提案ができる、間取りや設計を考えられる、理想の家作りのお手伝いができるなど、やりがいを感じられる仕事でもあります。
建築業界の中でも残業などは少な目なので、小さい子どもがいる方でも働きやすいというメリットも。独立して個人でインテリアコーディネーターとして活躍している女性もいます。
CADオペレーター
CADオペレーターは設計士から受け取ったデータをもとにCADソフトを使って設計図を作成する仕事です。
設計士が手書きで設計図を作成する時間や手間、人為的ミスを省けるだけでなく、設計図作成に専念するCADオペレーターがいることで業務の効率化が可能です。
CADソフトさえ操作できれば誰でもチャレンジできる仕事ですので、女性でも活躍しやすい仕事と言えます。
また、近年ではリモートワークや在宅勤務が推奨されていますが、CADオペレーターは現場や会社にいなくてもおこないやすい仕事です。育児で忙しい女性を受け入れやすいだけでなく、多様な働き方を認められる会社を目指すことも可能です。
左官職人
左官職人とは塗装をおこなう職人のことです。
外壁、内装、天井、床などの塗装をおこなう他、タイルを貼りつける、レンガを積み上げるなどの作業もあります。
左官職人は体力を使う仕事ではありますが、一度身に着けた技は非常に重宝されます。出産などで女性職人が退職したからすぐに代わりを採用すればいいというものではなく、職人一人ひとりを大切に扱わなければなりません。
また、左官の仕事は残業が少ない、基本的に朝方の作業が多いという点から、育児などで残業しにくい、働ける時間が限られている女性でも働きやすいメリットもあります。
建築事務
ライフワークバランスを重視する女性に人気なのが建築事務です。残業が少なく、出社時間やルーティーンがある程度決まっているため、育児などで日々忙しくしている女性でも働きやすいです。正社員だけでなくアルバイトや派遣など、さまざまな雇用形態から自分に合う働き方を探しやすいのも魅力的なポイントです。
建築は現場仕事ばかりではなく、総務や経理、書類作成、書類整理などのさまざまな作業が必要です。そのような事務作業は体力仕事をしにくい女性でもチャレンジしやすく、業界未経験であっても事務の経験があれば採用しやすいです。
中には建築業界ならではの事務作業、会計業務などもあり、専門的な知識が必要です。資格を所有している、事務の経験がある、建築業界の経験があるなどの人を採用できるようにしましょう。
女性が働きやすい環境を考えよう
女性が働きやすい建築業界の環境について紹介しました。
建築業界では男性の比率が高いですが、今後は女性の働き方についてもよく考えなければなりません。
女性が働きやすい環境を整えれば優秀な人材を集めやすくなり、会社全体の成長にもつながることでしょう。
女性が長く働ける会社を目指し、設備や制度、業務形態を見直していきましょう。