建築業界にはさまざまな仕事があります。
建築と聞くと専門的な学校を出ていなければならない、国家資格を持っていなければならないというイメージもありますが、中には専門的な知識がなくてもチャレンジできる職種はあります。
その一つが事務職です。
建築業の事務職はどんなものなのか、仕事内容や向いている人、さらに建築業の事務の将来性などをチェックしてみてください。
建築業の事務の仕事内容
まず、さまざまなジャンルで活躍する事務職の中でも建築業の事務職にはどんな違いがあるのかを紹介します。
建築業の事務は一般的なイメージがある事務の仕事の他にも、建築業だからこその会計を担当したり、現場での事務をおこなうことも。
専門的なソフトを扱う場合もありますので、募集要項をきちんと確認しておきましょう。
一般的な書類作成や来客対応
他の業界と同じような基本的な事務作業は必ずしなければなりません。
従業員や取引先、支店や本店などから来たメールをチェックする、適切な返信をするだけでなく、書類の作成、提出などもあります。
来客がある場合は適切に引き継ぎ、応接室の準備や清掃などをおこなうこともあります。
その他にも備品の管理、経理、総務の仕事を任せられることも。
従業員の少ない建築会社の場合は事務員がさまざまな仕事を任されることが多いです。
人事採用、面接対応など、採用に携わる仕事にチャレンジできるケースもあります。
専門的な知識が必要な会計業務
建築業の事務スタッフは、先ほどご紹介したような仕事だけでなく経理業務も請け負うことがほとんどです。
経理の経験があったとしても、建築業界の経理は他とは少し勝手が違うので最初は覚えることが多く大変かもしれません。
完成工事高など、建築業界ならではの専門用語をたくさん覚え、的確に使用しなければなりません。
建築業界の経理スタッフとしてのスキルをアピールするための資格はたくさんあります。転職前に、または働きながらこのような資格の取得にチャレンジすることもおすすめです。
現場の仮設事務所での作業
建築業の事務スタッフはその建築会社の事務所や本社で作業をおこなうことが多いですが、ときには事務スタッフも現場で働くことがあります。
とは言っても建築の作業をおこなうわけではなく、現場の仮設事務所で事務作業をおこなうというものです。
現場にいても基本的におこなう仕事は変わりませんが、その他近隣住民への対応や作業員の管理、対応などもおこないます。
事務所から現場が遠い場合や、迅速に対応しなければならない仕事が多い場合はこのようなこともあります。
基本的にスピーディーな作業が求められるので、的確にスムーズに仕事を処理する能力が求められます。
覚えることが多く、事務を経験していても最初は戸惑うかもしれません。ですが今後建築業界で働き続けたいのであれば役立つ経験ができるでしょう。
建築業の事務で役立つスキル
事務職は無資格でもおこなえるため簡単に見えますが、オールラウンドなスキルが必要な仕事です。
建築業の事務ではどんなスキルがあればよりスムーズに仕事ができるのか、また求められる人材になれるのかについて解説します。
建築業の事務へ転職したい方は、下記のようなスキルを身に着けておくことをおすすめします。
一般的に求められる事務のスキル
建築業の事務でも基本的な仕事は一般企業の事務職と変わりません。
メールや書類の作成、電話対応、備品の管理、事務所内の簡単な清掃など、他の業界であっても事務の経験があれば役立つことでしょう。
建築業の事務はその基本的な事務スキルにプラスアルファでおこなわなければならない仕事がたくさんあります。
そのため、まったくの未経験の方には覚えることが多く大変かもしれません。
また、パソコンのスキルは基本的にあるものとしてみなされます。まったく扱えないという方はパソコンスキルを磨くことから始めましょう。
CADなど専門的なスキル
建築業の事務ではCADのスキルが必要な場合もあります。
CADとは「Computer Aided Design」の略称で、コンピューターを使って設計図を作成するソフトのことです。
設計図は以前は手書きが当たり前でしたが、このCADの普及によって設計図の作成がより簡単に、スピーディーに、そして正確なものになりました。
CADソフトは基本的なスキルさえ身に着ければ誰でも簡単に扱うことができます。
そのため設計図の作成を事務員が担当することもあります。
受け取ったデータをソフトに入力するだけで設計図を作成できるので専門的な知識は必要ありませんが、正確に入力しなければ正しい設計図にならず建築の業務に影響が出ます。
簿記などの会計スキル
建築業の事務は会計を担当することも多く、簿記などの会計スキルも役立ちます。
簿記の資格は4級程度であれば比較的簡単に取得できます。
建築業以外にもさまざまな業界でもこの知識は役立ちますので、取得しておいて損はないでしょう。
他の業界の事務で会計の経験がある、簿記の知識がある程度ある方も建築業の事務への就職、転職は有利になるでしょう。
建築業の事務で役立つ資格
建築業の事務で役立つ資格について紹介します。
建築業の事務に必要な国家資格などはありませんが、これらの資格があると仕事に役立てることができるだけでなく就職や転職にも有利です。
事務職はどの業界でも人気の職種です。他の応募者より自分をアピールするにはこのような資格があると有利です。
他の業界でもアピールしやすい資格もありますので、積極的に取得するようにしましょう。
日商簿記
簿記の資格の中でも知名度や信頼性が高いのが日商簿記検定です。
この業界だけでなく、大手から中業企業、さらには独立、開業する際にも役立ちます。
4級では基本的な簿記のスキルが試されます。ある程度勉強していれば、また仕事で会計を担当しているのであれば比較的簡単に取得できるでしょう。
建築業界で活躍するためには2級以上の資格取得がおすすめです。
2級では工業簿記が登場し、建築業の事務職として働く上で必須の知識を学ぶことができます。
2級の合格率は30%未満、1級の合格率は10%未満と非常に厳しい検定ではありますが、きちんと勉強して対策を取りましょう。
建築CAD検定
建築業の事務はCADを取り扱うことも多いです。
建築系の専門学校や大学ではこのCADを学べる環境も整っていますが、素人の場合はソフトを扱うのに苦手意識がある方も多いかもしれません。
ですがきちんと学べば専門的なスキルがなくても簡単にCADを取り扱うことができます。
スキルを身に着けるために勉強をするのであれば、同時に資格取得も目指しましょう。
CADの民間資格はたくさんありますが、その中でもおすすめなのが建築CAD検定です。
建築の図面を作成することの特化した検定であり、すぐに現場で使えるスキルを身に着けることができます。
3級から取得が可能ですので、基本的なスキルを身に着けたい方は3級を、ある程度知識がありもっと実践的なスキルを身に着けたい方は2級、準1級の取得を目指しましょう。
CADのソフトを自分のパソコンにインストールすればどこでも実際にCADを使いながら勉強ができますよ。
宅地建物取引士
建築業界で活躍したい方が取得を目指すのが宅地建物取引士です。
土地、または建物の売り買い、取引ができるようになります。
こちらは国家資格であり取得のための難易度も非常に高いです。
ですがこの資格があれば建築について、不動産について詳しく知れます。今後の転職の際にも役立ちます。
建築会社だけでなく不動産会社にも宅地建物取引士の需要は高く、就職や転職を有利に進められるでしょう。
建築業経理検定
建築の会計業務に特化しているのが建築業経理検定です。
建築業の経理は他の一般的な経理とは勝手が違うことが多いです。
会計の経験があっても建築業界へ転職するとなると覚えなければならないことはたくさんあります。
この建設業経理検定では基本的な簿記のスキルから、建築業界ならではの知識、スキルも試されます。
一般的な商業簿記と建築業で求められる簿記の知識には紛らわしい点もありますが、この建築業経理検定ではその曖昧な部分もきちんと理解するスキルが必要です。
建築業の事務に向いている人の特徴
建築業の事務は人気の職種ですが、向いている人と向いていない人がいます。
人気の仕事、年収が高い仕事、周囲に自慢できる仕事などを選ぶより、自分に向いている仕事を見つけることが、長く安定して働き続けるには大切です。
建築業の事務は自分に向いているのかを今一度確認してみましょう。
プライベートの時間を確立したい人
建築業の事務は基本的に残業は少な目です。
月末に書類や経理業務が長引くなどの可能性はありますが、他の職種と比較すると許容範囲内と言えるでしょう。
会社によってはきちんと残業手当がつくところも多いです。
また、土日など休日がきちんと決まっている会社がほとんどです。
そのため、プライベートの時間を確立したいという方には建築業の事務は最適です。
メリハリをつけて働きたい方だけでなく、家事や育児と仕事を両立したい方にもぴったりです。
アルバイトや派遣などチャレンジしやすい雇用形態で事務スタッフを募集している建築会社も多いため、ぜひチェックしてみてください。
正確な作業が好きな人
事務職は正確な作業が求められます。
備品の管理や会計業務など、少しのミスが会社にとって重大な損失につながる可能性もあります。
また、建築業の事務はCADソフトを使って設計図を作成することもあります。この設計図の作成にも正確な作業が求められます。
自分の感性や感覚を頼りに仕事がしたいという方にはこのような正確で緻密な作業は苦しいものになるかもしれません。
また、数字を何度もチェックしたり、一日中パソコンに向かって仕事をすることになります。
このような仕事よりもクリエイティブな仕事がしたい、体を動かす仕事がしたいという方にも建築業の事務は不向きと言えるでしょう。
建築業界に携わりたい人
建築業界に興味がある、将来も建築業界で働きたいという方にも建築業の事務はおすすめです。
建築業界は国家資格が必要な仕事がたくさんありますが、事務は資格がなくてもチャレンジできます。
そのため、まず事務から建築業界を知り、自分にこの業界は向いているか、建築業界の中でもどんな仕事をしたいか、自分に合っているかを考えることができます。
学校に通いながら、社会復帰を目指しながら建築業の事務のアルバイトや派遣にチャレンジし、その上で将来を考えるのもいいでしょう。
もちろん正社員として働くのもおすすめです。
資格を取得することでできる仕事の範囲が増えれば、昇給や昇格の可能性も高くなります。
同じ会社に努めながら別の職種にチャレンジすることもできるでしょう。
建築業の事務に将来性はある?
建築業の事務の将来性について考えてみましょう。
建築業の事務の年収はどれくらいなのか、建築業の事務、ひいては建築業の将来性はあるのか、生き残っていくためにはどんなことをする必要があるのかについて解説します。
建築業の事務の収入
DODAの平均年収ランキングによると、事務職の平均の年収は329万円程度です。
(出典:DODA「平均年収ランキング」)
建築業であっても事務職の給与はあまり変動しない傾向にありますので、こちらを参考にしてみていいでしょう。
ですが建築業の事務はCADでの設計図の作成や現場での事務などもおこないます。そのためプラスアルファで手当てが出る可能性も。
その他、資格を取得することで給与がプラスされる、残業手当が出るなどの場合もあります。
就職、転職を考える際はこのような給与面、待遇面もきちんと確認しておきましょう。
人工知能などに取って代わられる可能性も
昨今、事務業務に役立つ多くのソフトや人工知能が登場しています。
事務スタッフはある程度は必要ですが、以前よりも人数をカットしている会社は少なくありません。
建築業の事務に必要な簿記のスキルも、ソフトがあれば問題なくおこなえることが多くなりました。
ソフトがあれば資格を所有している人を採用する必要もなく、作業時間を短縮できるためより多くの仕事を一人の事務スタッフに任せられます。
CADのスキルも建築業の事務には必要ですが、最近は安い料金で設計図の作成を請け負ってくれる個人やアルバイト、企業も多くなりました。そのため事務スタッフにはCADのスキルを求めない会社もあります。
このように、一般的な事務スキルを持っているだけでは今後ソフトや人工知能に仕事を取られてしまう可能性があります。
大きな企業ほどソフトなどを導入するスピードが速いので、安定して働き続けたい、大手で働きたいという方には苦しいかもしれません。
業種によっては将来性は低い
建築業界は東京オリンピック開催に向けて一時期は需要が高まりましたが、今後その需要は低迷していくことが予想されています。
日本は少子高齢化が続いており、マイホームを購入したいと思う若者も減少傾向にあります。そのため建築自体の需要が少なくなっているのです。
オフィスビルや商業ビルなどの建設も、少子高齢化、人口の減少によって需要は低くなっていくでしょう。
建築業界全体の需要が低くなっていますが、業種を見極めることで長く働き続けられる可能性は高まります。
例えはリフォーム、外壁塗装など、現在ある建物を長く使い続けるために必要な作業をおこなう業種は今後も需要が続くでしょう。
働きながら資格を取得するのがおすすめ
今後も長く建築業の事務として働きたいのであれば、現状に満足せずスキルアップを目指すことが大切です。
無資格のままだと戦術の通りソフトや人工知能に仕事を取って代わられてしまう可能性があります。
よりその会社の利益になることを考え、資格を取得することが大切です。
一般的な事務作業だけでなく宅地建物取引士などの資格があれば別の仕事を任すこともでき、会社にとっては余分に一人採用するコストを省けます。
別の職種にキャリアアップすることもでき、さらに収入アップも目指せます。
異業種への転職、より条件のいい仕事への転職も可能になり、自身に還元できるでしょう。
建築業の事務の仕事にチャレンジしてみよう
建築業の事務の仕事内容や将来性などについて紹介しました。
事務職は人気の仕事ですが、建築業界の事務は他の事務とは勝手が違ったり、任される仕事が違ったりします。
そのため、より専門的なスキルや知識が必要です。
自分に建築業の事務は向いているのか、将来どんな仕事を続けたいのかなどを十分に考えた上で就職や転職に踏み切りましょう。
建築業の事務を続けるには、民間資格や国家資格を取得してスキルを磨く、アピールすることも大切です。自分に役立つ資格はどんなものなのかを考えてみましょう。