インターネットなどの普及によって、今や情報が溢れかえっている時代。
昔に比べ近年では情報の収集が非常に安易にできる時代になってきました。
その情報伝達技術の進歩はめまぐるしいものがあります。
住宅においては、情報伝達は決してインターネットだけとは限りません。
テレビや電話、インターホンまでもがわたしたちに情報を与えてくれるツールとなっています。
その情報伝達においてなくてはならない存在が電気通信工事です。
電気通信工事があるからこそわたしたちはあたりまえのように情報を収集することができます。
情報伝達技術はこれからもすさまじい勢いで発展していくでしょう。
ではその電気通信工事とはいったいどのようなものなのか。
また混同されやすい電気工事との違いとはなんなのかをご紹介するとともに、電気通信工事にまつわる種類やそれらに携わる資格などをご紹介していこうと思います。
電気通信工事とは何か
電気通信工事は、電気工事のひとつとして建設業に関わる28業種の中に含まれています。
仕事としては複数ありますが、主にネット回線の配線工事と機器の設置や、電話回線の機器の設置、建物への通信配線の引込工事などが挙げられます。
ネット回線の配線の取りまわしなどは「自分でできるのでは?」と思う方も多いと思いますが、これがオフィス規模になってくると電話機やOA機器、複合機など通信に必要な機器が多数存在しそれに伴って必然的に配線も多くなってきます。
ですので、こういった場合には専門の施工業者に依頼するのが一般的です。
また、これらを行うには電気工事はもちろんですが、こういった電気通信工事にも国家資格が必要になってくる場合があります。
「電気工事士」や「通信電気工事担任者」といった国家資格です。
もちろん無資格でも行えるものはありますが、仮に無資格で工事をした場合、内容によっては法律で罰せられる場合があるので注意が必要です。
電気通信工事の種類
では次に、電気通信工事にはどのような種類の工事があるのか見ていきましょう。
【LAN工事】
まず「LAN」とは、範囲内にあるコンピュータや通信機器をケーブルや無線電波などで接続し、お互いにデータのやり取りができるようにしたネットワークのことで、銅線や光ファイバーなどで接続したものを「有線LAN」。電波などを用いた無線通信で接続するものを「無線LAN」と言います。
LAN工事はその有線LANや無線LANなどを用いて機器に接続する工事のことを言います。
一般的には、パソコン、プリンター、通信機器、セキュリティー機器などのネットワークを構築するための配線工事を行います。
他にはアパートやマンションのwi-fi設置工事やネットワーク機器の設定も行います。
【携帯電話基地局工事】
携帯電話基地局は、携帯電話という端末と直接電波のやり取りをして交信するのが基地局で、電話網などの間の中間にあり通信を中継する役割を持っています。
その携帯電話基地局の配線やアンテナの設置をする作業になります。
ビルの屋上や鉄塔など、比較的高所での作業になってきます。
【放送設備工事】
放送設備はわたしたちの生活の中では欠かせないものです。
学校の校内放送、病院やオフィス、工場など情報の伝達には必要不可欠なもので、このような放送設備の機器を設置し、配線をして使用可能にしていきます。
中には緊急放送設備などわたしたちの生活の中で非常に重要な設備の工事もありますので、やりがいを感じることができる工事です。
【テレビ共聴設備工事】
建物内でテレビを見るために配線を行う工事です。
テレビ電波の受信アンテナを設置する工事もあります。
集合住宅やマンションへの地デジ放送受信の設備や、山間部に住む人たちの電波障害エリアにおいて、共同受信施設などを構築する仕事もあります。
一言で電気通信工事と言っても様々な工事の種類があり、よく見てみるとわたしたちの暮らしに欠かせないものばかりだということがわかると思います。
それだけ電気通信工事というのは重要な役割を担っているわけです。
電気通信工事に関する資格
では、電気通信工事に関わる資格とはなにがあるのでしょうか。
【工事担任者】
工事担任者は、公衆回線やCATVなどの通信回線に接続する端末設備の接続や、配線工事の施行や監督するための国家資格です。
管轄は総務省となっています。
昭和60年(1985年)の電気通信事業法の施行と同時に制定されました。
具体的な仕事内容は、例を挙げると通信業者の光ファイバーにパソコンや電話機などのOA機器の接続。企業内のLAN構築や、家庭内においてはインターネットを介して音楽や映像配信、防犯システムなどのサービスを実現するために光ファイバーに端末設備などを接続します。
工事担任者の資格は主に7つの種類があります。
「AI種」と「DD種」に分かれていて、それぞれ第3種から第1種まで存在します。
また、「AI・DD総合種」という資格もあり、これは工事担任者の中で最高のランクの資格となっています。
工事担任者としてすべての工事に対応することが可能です。
AI第1種~第3種…主にアナログ設備を取り扱うことのできる資格です。(一般的な電話機やホームテレフォンなど)
DD第1種~第3種…主にデジタル設備を取り扱うことのできる資格です。(光回線など)
AI・DD総合種…AI1種とDD1種の両方の工事範囲を含んでいて、全ての端末接続工事を工事担任者として対応することができます。
【電気通信主任技術者】
電気通信主任技術者は、事業用の電気通信設備の工事や、その維持、運用に関する事項を監督させるために、電気通信事業者によって選任された人たちのことを言います。
管轄は総務省となっていて国家資格です。
昭和60年(1985年)の電気通信事業法の施行と同時に制定されました。
この資格は電気通信関係の資格の中では比較的難易度は高めで、非常に幅の広い知識を必要とされています。
電気通信主任技術者には2つの種類があり「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」と分かれています。
- 伝送交換主任技術者…電気通信事業の用に供する伝送交換設備及びこれに付随する設備工事、維持及び運用の監督
- 線路主任技術者‥電気通信事業の用に供する線路設備及びこれらに付随する設備の工事、維持及び運用の監督
とありますが、どちらにせよ現場を維持・監督する立場にあるので責任も大きいのは間違いないでしょう。
しかし、資格を持っていると給与面で優遇されたり、再就職に有利になるなどメリットも大きいので取得して損はないと思います。
【電気通信工事施工管理技士】
電気通信工事施工管理技士は、日本の施工管理技士国家資格のうちのひとつで、国土交通省が管轄になっています。
国家試験は一般財団法人全国建設研修センターが実施しています。
この資格は1級と2級に分かれていて、いずれも電気通信工事において、主任技術者として施工計画を作成し、現場の工程管理や安全管理などの工事施工に必要な技術的管理業務を行います。
また受験資格もあります。
「1級」
・大学及び専門学校(高度専門士)卒業後実務経験3年以上。もしくは指定学科以外卒業後、実務経験4年6ヶ月以上。
・短期大学及び高等専門学校及び専門学校(専門士)卒業後実務経験5年以上。もしくは指定学科以外卒業後、実務経験7年6ヶ月以上。
・高等学校及び中等教育学校及び専門学校(高度専門士と専門士を除く)卒業後実務経験10年以上。もしくは指定学科以外卒業後、11年6ヶ月以上。
・2級電気通信工事施工管理技術検定合格者で、合格後実務経験5年以上。「2級」
・大学及び専門学校(高度専門士)卒業後実務経験1年以上。もしくは指定学科以外卒業後、実務経験1年6ヶ月以上。
・短期大学及び高等専門学校及び専門学校(専門士)卒業後実務経験2年以上。もしくは指定学科以外卒業後、3年以上。
・高等学校及び中等教育学校及び専門学校(高度専門士と専門士を除く)卒業後実務経験3年以上。もしくは指定学科以外卒業後、4年6ヶ月以上。
・その他実務経験8年以上。
参考:一般財団法人全国建設研修センターHPより
http://www.jctc.jp/exam/dentsu-1
http://www.jctc.jp/exam/dentsu-2
このように、電気通信工事管施工理技士は受験資格も厳しく難関ですが、取得すれば通信インフラの構築や保守、維持にわたる施工や管理を行うことができ、給与面でも優遇され、さらには自己のスキルの証明にもなるので、再就職の際に非常に有利になると思います。
【電気工事士】
電気工事士は電気工事の作業に従事するために発電や変電、送電などの電気工作物の工事に関する専門的な知識と技術を持っている人で、国家資格です。
管轄は経済産業省となっています。
この電気工事士の資格でも一部電気通信工事のしごとができます。
たとえば、インターホンの設置工事や、アンテナの設置工事、防犯カメラの設置工事などを行うことができます。
工事を請け負うに際して電気通信工と電気工事との境界が混同されがちなので、できることなら両方の資格を取得し、どちらの工事もできるようにしておくと仕事の幅が大きく広がることは間違いないでしょう。
このように電気通信工事に関わる資格はたくさんあります。このような資格を取得して自分のキャリアアップを目指してみるのもいいかもしれません。
電気通信工事のやりがいと工事需要
電気通信工事は、情報通信やインターネット回線など、人々の生活に欠かせないものです。
その設備に関わり構築していくことで、人々の生活を豊かにし、安全性も高めることができます。
それらの工事からは非常にやりがいを感じることができるでしょう。
そして、常に最新の電気関係の技術に触れられることも大きな魅力のひとつです。
自分の施行した工事で人々の暮らしに便利さを供給することが目に見えてわかりますので、施工完了後の達成感はひとしおでしょう。
しかし、時には屋外での工事もあります。
高所での作業も多く、夜間などの工事も頻繁にあります。夏は猛暑にさらされ、冬は極寒の環境下で仕事をしないといけません。
それに耐えうる体力と精神力も併せ持たなければこの仕事に就くことは難しいでしょう。
また、些細なミスが設備の不具合に直結しますので、非常に繊細な仕事であるとともに緊張感をもって仕事をしなければなりません。
さらには、常に最新技術で行われますので、日々の勉強も怠ることのできない職種です。
この仕事に就くためには、過酷な環境で耐えうるだけの体力・精神力と、常日頃の勉強の努力を維持することが電気通信工事に携わる者の務めであると言えます。
工事需要においては、2011年の東日本大震災の復興工事に伴って電気工事の需要が高まると同時に電気通信工事の需要も高まりつつあります。
また電気通信工事施工管理技士が2019年度より新たに制定された背景には今後の仕事量の増加に伴って、専門的な技術者の不足が懸念されていて、その技術者を確保することが背景のひとつとなっています。
また技術者の高齢化も進んでいて、建設業界では人手不足が問題化されてきています。
先に述べた通り電気通信工事は過酷な環境下での仕事、また高所などによる危険作業も伴うことで、悪いイメージが影響して人材の確保が難しくなってきています。
また後継者不足も大きな課題となっています。
特に中小企業ほど後継者を見つけることは難しく、常に人手不足の状態が続いているそうです。
そしてなにより第5世代移動通信システム(5G)の普及が決まっているので、これによって欠かせないのが基地局の新設です。
このように電気通信工事の分野においては、工事需要は高まっているものの人材不足が懸念されている状態となっています。
まとめ
今回、電気通信工事についてご紹介させていただきました。
通信技術はこれからさらに飛躍し、様々な情報伝達技術が生み出されていくことでしょう。
もはやわたしたちにとって情報伝達技術は暮らしに欠かせないものとなっています。
しかし現在のところ電気通信工事において需要はあるにもかかわらず人手が不足しているのが現状です。
この現状を打破しなければ電気通信業界が停滞し、技術も進歩しない状況になってしまうかもしれません。
この仕事は決して楽な仕事ではありません。
過酷な環境下での仕事もありますが、しかしその分仕事をやり通した達成感は非常に大きなものを自分に与えてくれます。
この記事を通じて「電気通信の仕事に携わってみたい」「電気通信工事について勉強したい」「いろいろな資格を取得したい」と思う方が少しでも多く現れてくれることを願ってやみません。