ひとびとの暮らしに必要なガス。このガスはガス配管工によって施工され、わたしたちは使うことができます。
オール電化が普及されている今、ガスの需要は伸び悩んでいるのが現状ですが、まだまだガスは人々の暮らしには欠かせない存在であることは間違いありません。
ガス配管工は屋外配管から屋内配管まで幅広く手掛けガスにおいてのプロフェッショナルです。
そんなガス配管工ですが、いったいどれくらいの年収が見込まれているのでしょうか。
また、ガス配管を施行するにあたり、どのような道具や工具を使用して配管をしていくのでしょうか。
今回は、ガス配管工に注目し、ガス配管工の収入や施工道具などを中心にご紹介していきたいと思います。
ガス配管ってなに?
ガス配管は、蒸気やガス、水などの配管に用いられる鋼管の慣用名です。
主にSGPと呼ばれる配管用炭素鋼鋼管が使用されています。SGPは非常に汎用性が高く、設計や施工に便利なように特定の寸法が「標準寸法」として定められています。
SGPは圧力が低めの箇所に使われることが多いのですが、逆に言うと高圧力に耐えないデメリットもあります。圧力が1.0MPa以下でのみ使用できるものであるために、状況によって管を変えて対応しなければなりません。
しかし、ガスの使用用途だけで考えた場合、ガスはあまり圧力がかからない場所での使用が多いために先に述べたようなデメリットを避けて使用することが比較的容易です。
外形についてはA呼称、肉厚は呼称サイズ毎に定められた肉厚を示すスケジュール番号と呼ばれる一連の寸法体型が一般的です。
長さにおいては、4000ミリまたは5500ミリが標準で、それ以外の長さは通常では流通していません。
ガス配管の種類にはどんなものがあるの?
ガス配管において、SGP配管用炭素鋼鋼管以外にはどのような配管が使われているのでしょうか。
ポリエチレン管
ポリエチレンは1898年(明治31年)に、ドイツの科学者が偶然発見したもので、ポリエチレン管はこの低密度ポリエチレン樹脂を押し出し成形によってパイプの形にしたものです。
国内で生産が開始されたのが1953年(昭和28年)で、このポリエチレン素材は耐候性や耐薬品性を持っていて、その性能は変化することは無いと言われています。
使用用途についてはガスはもちろんのこと下水道やプラントの薬液配管などにも用いられています。
被覆鋼管
被覆鋼管は、JIS G3452の配管炭素鋼鋼管の外側に被覆を施した配管材のことで、これは硬質塩化ビニル巻き付けたもののことです。
たとえば埋設管にする場合、そのまま埋設してしまうと腐食や金属成分で電食などが発生してしまう恐れがあるので、それを防止するために被覆鋼管を使用します。
フレキ管
フレキ管はフレキシブル管の略で、主に建物内部に使用する配管です。
従来の配管よりも柔らかいために屋内の取り回しが容易で扱いやすいのが特徴です。
材質は波状になったステンレス管と塩化ビニルの被覆でできていて、柔らかい分長い距離を継ぎ手を使わずに施工できるのがメリットとなっています。
さらには、フレキ管は、美観にも優れているため、天井裏や壁内部、床下などに配管できます。
配管工はどんな仕事をするの?
配管と配管の種類がわかったところで、それを取り扱う配管工はいったいどのような人たちなのでしょうか。
配管工は、建築業における職種のひとつで、水道管やガス管などの管(鋼管など)を取り付ける工種のことです。
主に給排水設備やガス設備、空調設備などの建築設備分野で必要とされています。
配管工としての技能は、配管技能士として公的にはかることができます。これ以外にも配管継ぎ手に必要な溶接の技量や資格などを持つことでより高度な配管工となります。
服装としては、作業服、作業ズボンで業務を行う人が多いです。
手袋は軍手もしくは皮手袋を着装することもあります。保護具としては安全ヘルメット、安全帯、安全靴を身に付けます。
ガス配管工の収入はどれくらいなの?
では、配管工の収入においてはどれくらいなのでしょうか。下記に配管工の平均年収を示しますので参考にしてください。
出典:キャリアガーデン https://careergarden.jp/
上記平均年収を見てみると、配管工の平均年収は約467万円で、男女別ではおよそ200万円の差がありますが、これは女性の配管工が著しく少なく、データとして不足しているのが影響しているそうです。
2010年でいうと、厚生労働省発の統計によれば年収約400万円だったものが、近々では約470万円となっているので、上昇傾向が続いています。
これは、配管工の需要に対して供給が間に合っていないという現状があるからだと思われます。
その要因としては配管工の高齢化による後継者不足での人手不足が挙げられます。
こうした中で、工務店や設備会社は人員を確保するため、求人に対する条件を引き上げており、そのことが配管工の平均年収の引き上げにつながっていると言えます。
さらには生涯年収では配管工は高い傾向にあります。
配管工は学歴不問であり、若い人では10代から仕事に就く人もいます。
普通サラリーマンでは60歳から65歳が定年となりますが、配管工においては自分の技量次第で70歳以上になっても働き続けることが可能です。
そういう意味では、他の職業よりも働く期間が長いため、生涯年収が増えるというわけです。
よってサラリーマンよりも生涯年収は高いということが言えます。
ガス配管工の道具は何を使っているの?
ガス配管工だけではなく、配管工としてはいったいどのような道具や工具を使用しているのでしょうか。
コンベックス
コンベックスは工作用につくられた巻尺のことで、計測部には薄い金属製で断面が湾曲しているのが特徴です。巻き取ることのできる柔軟性とともに、直立性を確保しています。
配管工はこのコンベックスを用いて配管を施す場所の寸法や配管そのものの寸法を測っていきます。
ドライバー
ドライバーは、配管の支持金具などの取り付けに使用します。
モンキーレンチ
モンキーレンチは、ボルトをつかむ部分(あご)の幅をギヤによって自由に変更できるレンチの一種です。
配管工では配管の継ぎ手などは六角ボルトやナット類を使用する場面が多々あります。そんな時に重宝するのがこのモンキーレンチです。
水平器
水平器は、水準器とも呼ばれ、物の表面に密着させて水平、または鉛直に対する物の角度や傾斜を確認する道具です。レベルとも呼ばれることがあります。
配管に傾斜が必要な時や、鉛直が必要な時にこれを使います。
とくに支持金物を設置するときには垂直設置する場合が多く必須アイテムとなっています。
プライヤー
プライヤーは、ペンチよりも開坑範囲を大きく取るためにピボットと呼ばれるジョイント部がスライド機構となっている工具です。
大きなものを挟む場合、ピボットを握り方向にスライドさせることで、先端部分が大きく開きます。
モンキーレンチとは違って掴む部分に凹凸があるため、物を掴みやすく、配管のような丸い物でも容易に掴むことができます。
パイプレンチ
パイプレンチは、パイプを挟んだり回したりするための専用レンチです。パイプの径によってさまざまなサイズがあります。通称「パイレン」。
歯の部分は深い溝となっていて、丸いパイプをしっかりと咥えて回すことができます。パイプレンチを使用するとパイプに無数の傷がつくので、主に傷がついても構わないような水道管や蒸気管などに使用されます。
また、傷をつけてはいけないパイプには歯が樹脂でカバーされているウォーターポンププライヤーやベルトレンチなどが使われます。
バンドレンチ
バンドレンチはラチェット(動作方向を一方に制限するための機構)タイプになっていて、吊りバンドに多い10ミリと13ミリの両口タイプがあります。
また、レンチを回す際に配管に干渉しにくいように口が長く設けてあります。
パイプベンダー
パイプベンダーは、管専用の工具で、管を扁平することなく曲げるための工具です。
ベンダーを使用することで管を滑らかに扁平することなく曲げることができます。
パイプベンダーには、手動・電動・油圧の種類があって、現場で配管施行途中で急な干渉物などがあった場合、このパイプベンダーを用いて形状を曲げ、管を干渉外へ逃がし施工していく場合などに使われます。
パイプカッター
パイプカッターは、カッターホイールと呼ばれる周囲が鋭いくさび形の円盤状の刃を、パイプに食い込ませた状態でこのパープカッターを回転させて切断する工具です。
現場での細かい部分のパイプ切断などに用いられます。
リーマー
リーマーは配管を切断したりした際に配管の内側に残ったバリなどをこのリーマーをつかって除去します。
バリが残ったままフラッシング(試運転)をしてしまった場合、その先に精密機械などがあったときにはその機械の故障や不具合の原因になりかねません。
よってこの道具(工程)は非常に重要な役割を果たしています。
バイス(万力)
バイスは、パイプをふたつの金口の間に挟み込む工具で、パイプの成形や加工などの作業に用いられます。
パイプの場合、主な使用用途は切断などの固定として用いられ、作業中にパイプが動いてしまっては具合の悪い仕上がりになってしまいます。
そうならないためにもこのバイスを活用してしっかりと固定し、パイプを加工していきます。
ガス配管工のやりがいって何?
ものづくりに携われる楽しさ
ガス配管は基本的に隠れたところに施工されます。
しかしそれだけに限られたスペースの中に配管を収める能力が必要になってきます。頭の中で完成図をイメージすることや配管レイアウトがイメージできることが重要になってきます。
そうした中においていかにうまく配管することができるのかを常に考え創意工夫を凝らして施工することはものづくりのひとつとして非常にやりがいを感じることができるでしょう。
必要不可欠な設備を導入できる
建築物等においてガス配管というのはなくてはならないものです。
そうした配管を施行することは社会に大きな貢献をしていると同時に必要不可欠な設備を導入しているのだと誇りを持つことができるでしょう。
一生ものの技術が身に着く
ガス配管工も一種の職人と言えます。なにも知識のない状態で施工することはできません。材料の知識、道具の知識、長年培った腕、そういったものが一生役に立つものであることは間違いありません。
また、転職する際にも配管工の技術があれば優遇される場合もあります。
感謝の気持ちをもらえる
ガスに限らず配管において、不具合や故障が起きた時には素人ではなかなか修繕するのは困難です。
そんな時にプロフェッショナルとして対処することができれば感謝の気持ちを伝えられ、この仕事にやりがいを感じることができるのではないでしょうか。
かたちに残る
配管は基本隠れたところに施工されます。しかし確実にそこには配管があるのです。
自分の施行した配管がなかなか見えないところにあっても「ここの建物の配管は自分が施工した」という誇りを持つと同時に今後の仕事の自信にもつながっていきます。
毎回新しい発見がある
配管は同じレイアウトというのはありません。現場ごとに毎回仕様が変わっていきます。
マンション、工場、戸建て住宅、配管施行のやりかたはさまざまです。もちろん思いがけないトラブルもあるでしょう。
しかしそれをクリアしたとき得も言われぬ達成感を感じ取ることができます。よって毎回新しい新鮮な気持ちで施工に従事することができます。
プライベートに活用できる
配管は目に見えない隠れたところに施工されているのが一般的で、法に抵触しない範囲の簡単なリフォームなどにはその技術を活用して施工することができます。
そういう意味では無駄に業者に頼む費用を節約することも可能です。
独立することも可能
配管工として技術をしっかり身に付ければ独立することも可能です。
もちろん独立するには技術以外にも必要な知識はありますが、最短で約3年で独立する人もいるそうです。
技術を突き詰めた配管工の成せる技は見事で、ほかの仲間たちから一目置かれる立場になる人もいます。
まとめ
これまでガス配管工についてご紹介してきました。
ガス配管というのは見えないところにレイアウトされるのがほとんどで、完成したときには隠れてしまいます。
しかしそれだけにやりがいがあるのも事実です。
技術をとことんまで身に着けるもよし、ある程度技術を磨いて独立するもよし、配管工は実に多様な将来性を秘めている職種だと思います。
実際には過酷な場所での仕事が多い職業でもあります。
屋外での施工では、夏は猛暑にさらされ、冬は極寒の環境下で仕事に従事しなければなりません。
この厳しい環境の中でも、ものづくりに対して強い興味を持っている人にとってはその厳しさよりもやりがいや達成感を感じる方が上であると思っている方もたくさんいます。
今後配管工に転職を考えている方も、現在配管工で今後の仕事の取り組み方を模索している方も、この記事を通してなにか感じ取っていただければ幸いです。