建築業界への就職や転職の際に、どの規模の企業を選ぶかは重要です。
建築業界の中でも花形と呼ばれるゼネコン、求人が多いハウスメーカー、それぞれの特徴からその違いをチェックしてみましょう。
就職先を選ぶのに一概にどちらがいいとは言い切れません。自分がどんな仕事をしたいかによってしっかり見極める必要があります。
ゼネコンからの人気の転職先も紹介しますので、今後のキャリアプランの参考にしてみてください。
ゼネコンとハウスメーカーの違いを確認
まずはゼネコンとハウスメーカーの違いを確認しましょう。
ゼネコンとハウスメーカーは工事の規模だけでなく年収や施工のデザイン性などにも違いがあります。
自分にはどちらが合っているのかを考えつつ、その違いをチェックしていきましょう。
工事の規模が違う
ゼネコンとハウスメーカーの大きな違いは工事の規模です。
ゼネコンは空港や道路、橋、トンネルといった、大規模な工事をおこなうことが多いです。多くの人々の生活に直接影響するような工事も多く、社会貢献度も高いです。
新たに地図に残るような工事をするだけでなく、古くなった施設の改修や歴史的建造物の修復をおこなうこともあります。
また、学校や病院といった公益施設、大型の商業施設やテーマパークなどの建築に携わることも多いです。
一方でハウスメーカーはその名の通り戸建ての住宅や小規模のアパート程度の建築の仕事がメインです。ハウスメーカーによって特色が大きく違い、一口にハウスメーカーと言ってもデザイン性重視、安全性重視、注文住宅メインなどの特徴があります。
ハウスメーカーの一件ごとの売り上げは数千万円程度ですがゼネコンの場合は一件の依頼で数億円を売り上げることも少なくありません。
また、クライアントもゼネコンの場合は大企業や国が多いですが、ハウスメーカーは個人がメインです。
このように工事の規模に大きな違いがあります。大規模な建築に興味があるのか、戸建て住宅の建築に興味があるのかをまず考えましょう。
年収に差がある
ゼネコンとハウスメーカーは年収にも大きな違いがあります。
ゼネコンの平均年収は600万円から700万円、大手のゼネコンになると800万円台になることもあります。役職についたり、スーパーゼネコンと呼ばれる最大手のゼネコン会社であれば1000万円以上の年収も夢ではありません。
一方でハウスメーカーの年収は400万円から500万円台がほとんどです。
これは依頼を請ける仕事の規模にも関係しています。
ゼネコンは一件一件の契約金額が大きく、その分高収入につながりやすいです。また、ゼネコンは全国各地、さらに海外からの依頼も請けられる体制が整っています。幅広い地域で活躍できる場所があるため、安定して仕事を得られ続けます。
一方でハウスメーカーは地域密着型のことが多いです。全国展開しているチェーンのハウスメーカーであっても一店舗ごとに対応できるエリアは限られているため、仕事の幅が広がりにくいです。
少子高齢化に伴い戸建て住宅を購入する人も減少する可能性があり、給与だけでなく賞与も上がりにくくなっています。
一件一件の規模が違うため出世しても役職についても、ハウスメーカー勤務の方がゼネコン勤務の方の年収を越えるのは難しいでしょう。
同じ一級建築士の資格を持ち、同じように現場監督など責任の重い仕事をしていても勤務先の規模が違うというだけで年収に差が出てしまいます。
デザイン性が違う
ハウスメーカーの場合、そのハウスメーカーがデザインした戸建て住宅を販売するのがメインです。中には注文住宅の依頼を受け付けているハウスメーカーもありますが、基本的な耐震構造や省エネ構造などは変わりません。
一方でゼネコンの場合は大型商業施設やテーマパーク、これまでになかった橋の建築など、一からデザインを考えるものが多いです。東京タワーやスカイツリーなど、名称を聞いてすぐに形状が浮かぶような独自性のある建築物に携わることができます。
どちらも建築ではありますが、ハウスメーカーはどちらかというと完成した建築物をいかにスムーズに販売するか、多種多様なモデルデザインの中からどれがクライアントにぴったりなのか提案するかといった点が重視されます。
ハウスメーカーの仕事が向いている人
ハウスメーカーの仕事が向いているのはどんな人なのかについて紹介します。
クライアントに寄り添う親身な仕事がしたい、自分のペースを大切にしたい、転勤や出張の少ない仕事をしたいという方にはハウスメーカーが向いています。
親身な仕事がしたい
ハウスメーカーではクライアント一人ひとりに寄り添う親身な仕事ができます。ゼネコン会社のように大規模な建築工事は多くの人の手が加わる分、作業も効率重視になりがちです。利便性が高く最新の建築技術を駆使した建築物に携われる一方で、遊び心の無さがつらくなってしまう方もいます。
一方でハウスメーカーの場合はお客様のライフプランや家族構成、その地域ならではの悩みや楽しみ方に対応した提案ができます。
「広々としたリビングが欲しい」「子どもの成長に合わせて間取りを変えられる家が欲しい」「省エネでエコな家に住みたい」など、クライアントによって家に求める条件は違います。
そのような方一人ひとりにぴったりのプランを提案したり、一緒に考えていくこと自体に仕事のやりがいを感じる方にハウスメーカーの仕事はぴったりです。
自分のペースで仕事をしたい
ゼネコンと比較するとハウスメーカーでは自分のペースで仕事をしやすいです。
ゼネコンではすべての業務が効率化されており、次々に入って来る仕事を淡々とこなさなければなりません。年末や年度末などの繁忙期には複数の案件を抱えることもあり、残業や休日出勤も必須の場合もあります。
ハウスメーカーでも忙しいことには変わりありませんが、ゼネコンよりも従業員一人ひとりのペースに応じた仕事ができます。契約数やクライアントなどからの評価によって賞与や待遇が変わることもありますが、その分自分の実力を早く評価されやすいというメリットもあります。
ゼネコンだけでなく大手企業では未だに年功序列のシステムが崩されていないところが多く、どんなに有能な建築士でもどんなに高い契約を取ってもなかなか出世しにくいというデメリットがあります。
ゼネコンでもハウスメーカーでもチームワークは大切ですが、ハウスメーカーの方が少人数で作業を進められます。自分のペースを大切にしたい、早く出世したい、反対にプライベートの時間を確保しつつのんびり仕事を続けたいという方にもハウスメーカーがおすすめです。
転勤の少ない仕事がしたい
ゼネコンでの仕事は転勤や出張が多いです。全国各地、さらには海外からも仕事の依頼が入ります。
遠方でも現場を管理する人間は必ず配置しなければならないので、その場合は長期間出張しなければなりません。建築物が完成するまで数か月家に戻れないということも珍しくありません。
また、支社や本社への転勤も多いのがゼネコンの特徴です。家族がいるのに転勤が多いと子どもの転校回数やパートナーの転職回数も増やしてしまいます。単身赴任という方法もありますが、家族と長期間会えないのは耐えられないという方も少なくありません。
ハウスメーカーでは基本的にその店舗に就職したらその店舗での仕事を続けることになります。昇格したり役職についたりして本社勤務となることもありますが、現場で活躍したい建築士であればこのようなことにはほとんどならないでしょう。
店舗ごとに対応エリアも限定されているので、ごく近いエリアのみでの仕事がメインです。わざわざ外泊、長期間の出張などをすることもなく、毎日家に帰ることができます。
ゼネコンの仕事が向いている人
次にゼネコンの仕事が向いている人の特徴を見てみましょう。
ゼネコンははやり高収入を得られるという魅力がありますが、その他にも他とは違う建築に携われる、最新の技術を身に着けられるなど、自身の成長につながるポイントもたくさんあります。
高い年収が欲しい
高収入はゼネコンの魅力の一つです。
建築業界でもずば抜けてゼネコンの年収は高いです。
難易度の高い建築士の国家資格を取得したのであれば、その資格を活かしつつ最大限の収入を得たいと考える方も多いでしょう。
大手のスーパーゼネコンは年収1000万円を越えることも多く、人気が集中しやすいです。その分ライバルも多く、ただ資格を持っている、建築のスキルがあるというだけでは選ばれません。
英語力や提案力など、ゼネコン会社によって求められるスキルは違います。しっかり面接対策などをおこない、理想の収入を得られる企業への就職、転職を目指しましょう。
唯一無二の建築に携わりたい
ゼネコンでは他にはない唯一無二の建築ができます。
ハウスメーカーの場合はすでにデザインが決まった戸建て住宅の建築がメインです。建築士として成長したい、デザイナーとして活躍したいと思っている方にとっては物足りない仕事になってしまうでしょう。
その点ゼネコンは一からデザインや構造を考えていく必要があります。何もないところから建築物を考えていくのは非常に大変で、自分一人ではできないこともたくさんあります。ですがその分一つひとつのステップをクリアしていくごとに大きな達成感を味わえます。
多くの人の印象に残る、その地域のランドマークになるような建物、地図に残る仕事、地域に貢献できる仕事がしたいという方にはゼネコンがおすすめです。
最新の建築に触れていたい
ゼネコンは建築業界の花形でもあり、周囲も建築のプロばかりです。技術が高いだけでなくさらに良い素材や技術の研究にも余念がなく、最新の情報を入手しやすい環境も整っています。
建築士として活躍する上で、日々進化していく技術を常にキャッチし、自身の仕事に還元することはマストです。さらに自分で研究したり、自分でデザインしたりと、自分自身が建築業界の中心となって活躍することも可能です。
ハウスメーカーでは常に確立された技術を真似る、本社や子会社が新しく開発した技術や構造、素材を取り入れるといった程度ですので、なかなか最新の情報や技術を得にくいです。
建築業界の最先端を走り続けたいという方にもゼネコンの仕事はおすすめです。
ゼネコンからハウスメーカーへの転職
ゼネコンは建築業界の中でも人気の高い就職先ですが、中には自分自身が持つ素質や理想の働き方とゼネコンの在り方がマッチせず転職を検討する方もいます。
ゼネコンで働いたという経歴や資格、スキルはどんな転職先に役立つのかを見てみましょう。
ハウスメーカーも一長一短
一般的に激務と言われているゼネコンから、安定した働き方を求めてハウスメーカーへの転職を検討している方もいます。
ですが、ハウスメーカーならゼネコンよりも緩い働き方ができるというわけではありません。人材不足のハウスメーカーや人気エリアのハウスメーカーに就職するとその仕事内容はゼネコンと変わらないくらい多くなります。
一件一件の仕事の規模が小さいため、ゼネコンよりも多くの案件を同時に抱えなければならないこともあります。
がんばればその分だけ評価されやすいのもハウスメーカーの特徴ですが、反対にがんばらなければ昇格や昇給のチャンスも少なくなります。ゼネコンのように年功序列でほぼ自動的に昇給するというシステムはありませんので注意しましょう。
なんとなく仕事が楽そうだから、小規模の仕事がしたいからといった理由で安易にハウスメーカーを選ばないようにしてください。
不動産業界への転職が人気
建築業界から不動産業界への転職も人気があります。
建築についての知識が豊富にあるため、不動産について正しい知識で対応できます。
不動産の売買、営業に役立つだけでなく、自社物件の建築やメンテナンスにもゼネコンで身に着けたスキルは役立ちます。不動産業界もブラックな企業が多いと言われることが多いですが、大手を選べば福利厚生が安定しています。大手ゼネコンで勤務したという経歴があれば大手不動産会社への転職も有利になるでしょう。
営業職は選択肢が豊富
業界に関係なく、営業職への転職を考える方も多いです。
ゼネコンでは多くの人とコミュニケーションを取らなければなりません。取引先だけでなく現場の職人や地域住民とも関わる機会が多く、時に説得したり時にリーダーシップを取ったり、慎重に交渉に進んだりといった仕事もたくさんあります。
このような仕事で培ってきたスキルは営業にも大いに役立ちます。
どのようなジャンルでもコミュニケーションスキルを活かした営業の仕事はおすすめですが、とくにハウスメーカー、地域の工務店、ホームセンターや資材メーカー、不動産会社などでの営業ならゼネコンで得た知識や経験をよりしっかり生かすことができるでしょう。
公務員の中途採用を狙う
ゼネコンから地方公務員を目指す方もいます。
公務員になると国からの公共事業の入札、申請、さらに企画や設計などの仕事ができまう。現場での仕事は少なくなる一方、デスクワークが多くなります。ゼネコンでの現場のハードな仕事に耐えられないという方にも公務員への道はおすすめです。
さらに公務員は残業も少なく、休日出勤もほとんどありません。年収は低くなってしまいますが、その分プライベートな時間を確保できるといったメリットもあります。
公務員の中途採用はよくおこなわれていますが、採用枠は少なく激戦となります。地方公務員の試験に合格するだけでなく求められる人材になることを目指して、着実に実績を積むことも大切です。
WEB業界への転職も増えている
ゼネコンからの転職先として近年注目を集めているのがWEB業界です。
世界的にネットの普及は急加速しており、クライアントも情報収集にネットを利用しています。
どんなに腕のいい建築士や職人を抱えている建築会社や不動産会社などでも、ネットでより多くの人に高く評価されなければ仕事につながりません。反対に、技術が低かったり新しくできたばかりの会社であってもWEBでのプロモーションがしっかりできていれば仕事を得られます。
そのため、WEBディレクター、WEBマーケティング部門の人材を募集している建築会社や不動産会社はたくさんあります。
大手ゼネコン会社で働いた実績をWEBでのプロモーションやサイト作成に役立てられます。
デスクワークメインの仕事となりますが、転勤や出張のない仕事がしたいという理由でゼネコンからの転職を検討している方におすすめです。
ゼネコンとハウスメーカーの違いを確認しておこう
ゼネコンとハウスメーカーの違いについて解説しました。
どちらも建築業界の中で人気の就職先ですが、仕事内容はかなり違います。
年収やステータスだけでなく、自分に合った働き方ができるか、自分のキャリアアップに役立てられるかをよく考えて就職先を選びましょう。
せっかくゼネコン会社に就職できても、自分の素質と合わなかったり思い描いた働き方ができなかったりした場合は転職も検討しなければなりません。
次にどんな働き方をしたいか、そしてこれまでに培ってきた知識や経験を活かすことはできるかを考えて最適な転職先を見つけてくださいね。