住宅の第一印象を大きく左右し、その住宅に住んでいる人の気持ちを豊かにしてくれる造園・外構は建築業界の中でも非常にやりがいがある仕事です。
造園・外構は見た目のデザイン性だけでなく防犯性を高めたり室内に差し込む日差しを確保したりとさまざまな役に立ちます。
造園・外構にこだわる方も多く、住宅を建設する業者とは別に造園・外構の専門の業者に依頼をする事例も増えています。
そんな造園・外構の仕事に携わりたいと思ったとき、どんな資格やスキルが必要なのかをチェックしてみましょう。造園・外構の業者として独立するためにおさえておきたい基本的な流れについても紹介します。
造園・外構に必要な国家資格
造園・外構の仕事をするにあたって必ず取得しなければならない国家資格はありません。
ですが造園・外構に関連する国家資格はたくさんあり、これらを所有しておくことで就職や転職が有利になります。
これまで造園・外構の仕事は未経験でも経験年数が浅くても、国家資格を勉強することで仕事に役立つ知識を身に着けることができます。
国家資格は業者だけでなくお客様が業者を選ぶ際の基準にもなります。信頼される職人になるために、国家資格を所有しておくことも忘れないようにしてください。
造園施工管理技士
造園施工管理技士は住宅や公園、庭園、屋上、道路などの緑化工事をおこなう技術者を育成するための国家資格です。
資格には1級と2級があり、1級を所有していると自治体からの造園工事依頼を受けることができます。大規模な工事ができる分得られる利益も高くなるため、造園・外構業者では1級の造園施工管理技士の資格を所有している職人が多いです。
しかし2級、1級ともに受験には条件があります。とくに1級の場合は3年から10年以上の実務経験が必要なため、取得したいと思ってもすぐに取得できるものではありません。
試験内容は学科試験と実地試験があり、それぞれ60%以上の得点を取得する必要があります。
土木施工管理技士
土木施工管理技士の資格を取得すると、土木工事の現場で工事の管理をおこなえるようになります。
スケジュールの作成から資材の品質管理、予算の計算、従業員の安全管理など、しなければならない仕事は多岐に渡ります。
土木工事の中っでも道路などの公共工事の現場を任されることが多いですが、その中で公園や庭園などの造園工事を請け負うこともあります。
造園・外構の道に進みたいという方よりは、建築業界で幅広く活躍できる人材になりたいという方におすすめの資格です。
土木施工管理技士には1級と2級があります。2級は主任技術者として、1級は監理技術者として現場で働くことができ、請け負える仕事の範囲も変わります。1級の取得には長い実務経験が必要ですので、まずは2級を取得して、現場で経験を積みながら1級の資格取得を目指す方が多いです。
バルコニー施工技能士
バルコニー施工技能士はバルコニーを建設する際に必要な知識やスキルを求められる国家資格です。常に雨風にさらされる屋外のバルコニーは劣化しやすく、放置すると暮らしの安全性を脅かしてしまいます。
安全に、快適にバルコニーで過ごせるように建設する技術だけでなく、既存のバルコニーの安全点検をおこなうスキルも求められます。
試験では実際にバルコニーの点検をおこなう問題も出題され、現場での知識や経験が役立ちます。
バルコニー施工技能士の試験を受験するには基本的に3年以上の実務経験が必要です。大学や専門学校などで指定された学部を修学している場合は実務経験の年数が短縮されるケースもあります。
造園・外構にあると便利な民間資格
造園・外構の仕事をするにあたっては、建築の基礎的な知識からデザインの知識など、豊富な知識が求められます。お客様の理想の外構を提供するために役立つ民間資格もたくさんありますので、国家資格と合わせてこれらもチェックしておきましょう。
エクステリアプランナー
エクステリアプランナーは公益社団法人日本エクステリア建設業協会が主催する民間資格です。
外構全般の技術、知識が求められる試験内容になっており、デザイン性が高く快適で安全な外構を提供できるように育成してくれます。
2級と1級があり、2級は受験にあたっての条件はありません。業界の経験がなくてもしっかり勉強をすれば受験、資格取得ができます。
一方で1級は建築士や建築工事コンクリートブロック工事士などの資格を所有していなければならないという条件があります。これらの資格取得には実務経験が必要ですので、まずは2級を取得してからコツコツ1級受験に向けての準備をしていきましょう。
1級は住宅の外構の設計や工事全般についてのより踏み込んだ知識、2級は外構に関する基礎知識が求められます。
このエクステリアプランナーの資格も、5年ごとの更新が必要です。
建築コンクリートブロック工事士
建築コンクリートブロック工事士は公益社団法人日本エクステリア建設業協会が主催している民間資格です。
外構、エクステリアを考える際に防犯面や安全面の観点からブロック塀を希望する方は多いです。しかし公共工事でない場合はブロック塀の検査がなく、悪質な業者に依頼すると倒壊のリスクが高まります。
建築コンクリートブロック工事士はそんなリスクを回避し、より安全なブロック塀を提供するために考えられた資格です。
難易度はそれほど高くありませんが、5年ごとに更新しなければなりません。
また、建築コンクリートブロック工事士の資格を取得するとエクステリアプランナー1級やブロック塀診断士などの資格を受験する権利が認められます。
ブロック塀診断士
ブロック塀診断士は公益社団法人に骨クステリア建設業協会が主催する民間資格です。
現在建てられているブロック塀の診断をおこない、危険な箇所がある場合は適切なメンテナンスをおこないます。
講習を受け、その後の試験を受けて合格点を出せば資格が与えられる比較的難易度の低い資格ではありますが、建築士の資格や造園施工管理技士、エクステリアプランナー、建築コンクリートブロック工事士などの資格を所有していることが受験条件にあります。
ブロック塀について、建築についての基本的な知識が求められますので、現場で経験を積み知識を身に着けた上で受験しましょう。
DIYアドバイザー
近年はホームセンターでさまざまな本格的な道具や資材を購入できるようになっただけでなくDIYに関する書籍や動画なども人気があり、気軽にDIYにチャレンジできるようになりました。外構も自分でDIYしたいと考える方もいますが、やはり安全性、見た目の美しさを求めるなら業者に依頼する方が安全です。
DIYアドバイザーの資格を取得していれば、お客様にDIYについてのアドバイスができるだけでなく、より工夫を凝らした外構工事ができるようになります。
DIYはおしゃれなインテリアやエクステリアを作るだけでなく、補強、メンテナンス、改善の意味合いも強いです。外構工事をしたら終わり、ではなく、DIYの観点からどのようなお手入れ、メンテナンスが必要か的確なアドバイスをするとお客様にも喜んでもらえるでしょう。
DIYアドバイザーの難易度は低く、仕事だけでなく私生活にも活用できる知識がたくさんあります。外構についての知識を深めたいという方はぜひチェックしてみてください。
造園・外構に役立つスキル
造園・外構の仕事をするにあたってどんなスキルが役立つのかを紹介します。これらのスキルは働きながら習得することもできますが、元から備わっていれば転職や就職の際にアピールすることができます。
とくに造園・外構の経験がない方は、下記のようなスキルを持っているか確認してみてください。
重機の運転スキル
造園や外構の工事には重機の運転スキルが必要です。
重機の運転にはそれぞれ専用の運転免許証を取得する必要がありますが、建築業界で働いた経験がある方なら取得している方も多いでしょう。
業界未経験の場合は働きながらでも取得しましょう。多くの資材を現場まで持ち運ぶ必要があるため、重機の免許証を持っていなくても乗用車の免許証は必須となっている求人がほとんどです。
CADを操作できるスキル
CADとは設計図を作成するソフトのことです。
従来設計図は手書きが一般的でしたが、近年はこのCADを使ってよりスピーディーに、正確に設計図を作成するのが主流になりつつあります。
CADを導入している造園・外構業者は多いので、基本的な操作方法だけでも抑えておくようにしましょう。
CADに関する資格もいくつかあります。基礎知識を身に着けるためにも資格の取得を目指してみてもいいでしょう。
コミュニケーションスキル
造園・外構の仕事は職人技のイメージも強いですが、より良いエクステリアに仕上げるためにはコミュニケーションは欠かせません。
お客様と入念に打ち合わせをして理想の外構を決めたり、ときにはぼんやりとした希望をヒアリングした上で的確なデザインを提示したりしなければなりません。
メーカーと取り引きしたり、現場で他のスタッフと役割分担をしたり、さまざまな場面でコミュニケーションスキルが求められます。
造園・外構の仕事は一人でできるものではないので、仲間と協力して仕事を達成するのが得意な方におすすめです。
集中力
外構の工事は住宅の建築工程の中でも最後の仕事になる傾向があります。先に住宅を仕上げてから外構工事に入るため、場合によってはスケジュールがギリギリになってしまうこともあります。常に屋外での作業となるため暑さ、寒さ、雨や風との戦いになることも。
そんな厳しい環境の中でも仕事をやりぬく集中力が求められます。
スケジュールを組み立て、タスクを整理し、急な予定の変更にも臨機応変に対応できる、そのようにして仕事をこなしてきた経験がある方はぜひ面接の際のアピールポイントにしてください。
デザインのスキル
造園・外構の工事は建物の設計や建築のように正確な仕事が求められますが、さらにプラスしてデザイン性、遊び心なども求められます。
住宅の外構はお客様が毎日出かけるとき、帰ってきたときに目にする場所です。丁寧に、かつ美しい仕上がりにすることで、お客様の活力になったり、リラックスさせられたりします。
ただ基礎知識を学んで満足するのではなく、デザインについても詳しく学ぶ必要があります。トレンドのデザイン、定番のデザイン、それぞれのデザインの心理的効果の違い、お客様の要望を叶えるだけでなくより満足してもらえるこだわりのデザインなどを追及していきましょう。
外構工事の経験がなくても、インテリアなどのデザインやコーディネートをしていた経験がある方なら十分アピールポイントになります。
造園・外構の業界で独立するまでの流れ
造園・外構業界ではその需要の高さから独立開業する方も多いです。多くの人に求められる造園・外構の会社を目指すためには何から始めればいいのでしょうか。
実際に独立するまでの流れについて解説します。
造園・外構業者で経験を積む
造園・外構について学び、必要資格を取得したからといってすぐに独立できるわけではありません。
実績も人脈もなければ仕事を得ることができず、すぐに立ち行かなくなってしまいます。
まずは造園・外構工事の実績が豊富な会社に就職し、経験を積むケースがほとんどです。
住宅の工事、公共施設の工事、大型施設の工事など、自分は将来どんな造園・外構工事会社として独立したいのかを考えた上で、それに合う実績が豊富な会社の求人を探しましょう。
働きながら工事の知識や経験だけでなく経営のノウハウや人脈の作り方などを学び、独立に向けての準備を進めます。
造園・外構関連の資格を取得する
造園・外構業界で独立するなら一つでも多くの資格を取得することをおすすめします。
造園・外構関連の資格には国家資格も民間資格も多くありますが、中には実務経験や他の資格を取得していなければならないなどの条件があるものも。
条件が厳しければ厳しいほどその資格を取得している職人への信頼度も高まります。反対に独立した際に何の資格も無いようではお客様から信頼してもらえず、仕事につながりません。
実績を積み重ねるだけでなく、信頼されるための資格取得も目指しましょう。独立後は自分の言動一つで仕事が左右されます。資格取得の際に学んだことが意外な場面で役立つかもしれません。
仕事を得る先を見つける
独立後、待っていたら勝手に仕事が舞い込むようなことは滅多にありません。自分からどんどん仕事を見つけていく必要があります。その点では造園・外構の独立は建築のスキルだけでなく営業のスキルも必要と言えるでしょう。
建築業者から下請けの仕事を得る、ホームセンターやハウスメーカーと提携して仕事を得る、自身のデザイン力や実績をアピールして個人から仕事を得るなど、さまざまな方法があります。
下請けや提携の仕事を得ると定期的に安定して収入を得やすくなりますが、すでに競合他社が契約している場合はなかなか入り込む余地がありません。
安定して仕事を得るにはどうすればよいかをしっかり考えてから独立開業に踏み切る必要があります。
自分の得意なジャンルに特化する
造園・外構工事と一口にいっても、さまざまなジャンルがあります。働きながら自分の得意なジャンルを見つけて、それに特化した会社を作ることを目指しましょう。
物置きの設置やカーポートの設置は比較的簡単にでき単価も安い分、たくさんの仕事を得やすいです。
他にも門や門扉、フェンス、バルコニー、ウッドデッキ、テラス、造園など、さまざまなジャンルがあります。
もちろんすべてを丁寧に正確にこなすことも大切ですが、小規模の会社の場合は何か一つに特化していた方がう依頼を受けやすいです。自分が得意な分野、より自分の才能を発揮できる分野は何かを考えながら、そして日々新しい知識や技術を身に着けながら働きましょう。
造園・外構の将来は厳しい
造園・外構工事に必要な国家資格、あると有利な民間資格、さらに役立つスキルなどについて解説しました。
造園・外構にこだわる方は多く、独立する職人も増えていますが、造園・外構業界自体の将来は厳しいと言われています。少子高齢化によって人口が減少し、新築住宅を建てたいと考える若者が少なくなってきていることが原因です。
一部の人だけに重要がある造園・外構ですが、選ばれる職人、選ばれる会社にならなければあっという間に淘汰されてしまうことでしょう。
厳しい業界の中で生き残っていくためには他の造園・外構会社と同じことをしているだけでは不十分です。
メンテナンスに特化して新築住宅を建てる人以外にも注目してもらう、独自のデザイン性をアピールして「この人に手掛けてほしい」と思わせる唯一無二の存在を目指す、公共工事などの大規模な工事も請け負える資格を取得するなどの工夫が必要です。
独立する際も十分準備をしなければなりません。「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、キャリアプランをしっかり立てていきましょう。