建築業界で活躍するために大学で学ぶ方は多いです。
ですが、実際に4年間の建築学科を専攻したあとの就職先や進学先に悩む方もまた多いです。
大学で学んだことを最大限に活かすためには、自分にぴったりの就職先や進学先を決めなければなりません。
建築専攻の学生にはどんな進路があるのか、人気の就職先や大学院に進むと得られるメリットなどをチェックしていきましょう。
建築専攻の進路を考えよう
まずは建築専攻の進路についてです。
大きく分けて就職と大学院への進学の2パターンにわけられます。それぞれの特徴を確認してください。
建築関係の会社へ就職する
建築専攻の大学で学んだことを活かせる建築関係の会社への就職を考える方は非常に多いです。
建築系の大学で指定の科目を履修すれば二級建築士の国家資格が得られるので、就職後すぐに現場で活躍できる人材となれます。
建築会社の多くは求人の条件に一級建築士の資格所持者と限定していることが多いですが、一級建築士の資格取得には実務経験が必要なため新卒採用では一級の資格は必要ありません。大手建築会社に就職できるチャンスでもありますので、この機会を逃さないようにしましょう。
大学院に進まずに就職することで早くから現場でキャリアを積むことができる、思い描いていたライフプラン、キャリアプランの通りに進みやすくなるといったメリットがあります。
建築系の大学院へ進む
大学卒業後建築系の会社へ就職する人が多い中、大学院への進学を選ぶ方も多いです。
大学院ではより専門的で高度な技術を学ぶことができ、さらに卒業後は一級建築士の国家資格が与えられます。
就職活動の際一級建築士の資格を持っているということは大きな強みになります。
その他大学から推薦を受けて就職しやすい、コネクションを作りやすいなど、就職に有利な点が大学院にはたくさんあります。
また、大学院では現場で活躍している建築士のゼミに入れることもあります。就職に有利という理由だけでなく、憧れの建築士のもとで学びたい、教授の建築事務所やアトリエのお手伝いをしてみたいといった理由で大学院に進む方もいます。
建築専攻の学生に人気の就職先
建築専攻の学生にはどんな就職先が人気なのかをチェックしてみましょう。
建築関係の会社が多いですが、不動産業界や建築資材会社への就職を考える方も多いです。
大手ゼネコン
建築業界の中でもとくに人気なのが大手ゼネコンです。建築業界の花形的な立ち位置にあり、ビルや商業施設、空港、道路、橋などの大規模な建築に携わることができます。
地図に残る仕事、そのエリアのランドマークを作る仕事、社会に貢献できる仕事をしたいという方に特に人気です。
大手であれば仕事も安定しており、不景気な建築業界でも長く働き続けられるでしょう。
建築業界の中でもとくに年収が高く、20代のころからしっかり稼げるという点も人気の理由の一つです。
大手ゼネコン会社には海外での活動を進めているところも多く、海外赴任などもあります。そのため建築についてだけでなく語学力もしっかり高めておく必要があります。
ゼネコン会社はどこも非常に人気ですので、その分ライバルも多いです。面接対策、企業研究などを怠らないようにしましょう。
大手ハウスメーカー
住宅を作るのに特化しているのがハウスメーカーです。
ゼネコンのような大規模な建築はおこないませんが、誰にとっても身近な存在である住宅を作ることの方に興味があるという方におすすめです。
ハウスメーカーでは安全で快適な暮らしのためにさまざまな設計や研究をおこないます。そのハウスメーカー独自の構造や素材などを使い、さらに独自のデザインのモデルを設計し、お客様に提供します。
さらに住宅や土地の販売もハウスメーカーの仕事です。設計や施工だけでなく営業のスキルも身に着いていきます。
大手のハウスメーカーは全国に店舗があり、知名度も高いです。有名企業に就職したいという方にもハウスメーカーは人気の就職先です。
一口にハウスメーカーと言ってもそれぞれの企業理念やコンセプトは大きく違います。就職活動の際はなぜそのハウスメーカーでなければならないのかという理由を明確にしなければなりません。
大手デベロッパー
デベロッパーは建築業界というよりも不動産業界のイメージが強いですが、建築を専攻してからデベロッパー会社への就職を目指す方も多いです。
土地の発展、開発をメインにおこない、開発の企画を建築会社に依頼して街づくりをおこないます。
ゼネコンでは大規模な建築に携わることができますが、デベロッパーでは街全体、リゾート地などを自分の手で作っていくことができるというやりがいがあります。
その他、作ったビルやマンションの入居者を探すのもデベロッパーの仕事です。その賃料や売り上げで利益を得る仕組みになっています。そのため、建築や不動産についての知識だけでなく不動産購入や営業スキルなども身に着けていく必要があります。
デベロッパーも大手を選べばゼネコンに次いで高収入が期待できる就職先です。
大手デザイン会社
建築の中でもデザインに興味がある、自分の感性を活かせる仕事をしたい、唯一無二の建築物を作りたいという方に人気なのが大手デザイン会社です。
この場合は施工管理には携わらず、建築物の設計のみに特化していることが多いです。
大手デザイン会社ではランドマークになるような特徴的なデザインを作ることもできますが、商業施設やオフィスなど多くの人が快適に使いやすい建築物のデザインもしなければなりません。
独りよがりなデザインばかりをしていると高齢者や体の不自由な方が使いにくい、建物のそもそもの機能を損なう、周辺の景観を悪くするなどの問題も起きてしまいます。
世界中のさまざまなデザインを見て学び、自分の個性を活かしつつも多くの人に喜んでもらえるような建物のデザインを考えるスキルを身に着けましょう。
建築資材製造会社
建築資材を製造する会社への就職も人気があります。
本当にいい木材を選ぶ、耐久性の高い資材を開発する、デザイン性の高い資材を買い付けるなどの仕事があります。
建築そのものではなく、資材から建築に携わりたいという方におすすめです。
建築業界の中でも資材会社は進路としては比較的知名度が低く、競争相手も少ない就職先です。
建築業界の最先端でバリバリ働きたいというわけではなく、コツコツ堅実に働き続けたいという方にもこのような会社は人気です。
とは言え、大手では業者との取引や最先端の技術を駆使した研究、海外での資材の育成など大掛かりな仕事もたくさんあります。非常にやりがいを感じることができるでしょう。
建築専攻の大学院へ進むメリットは?
建築専攻の大学を卒業して就職するのではなく、大学院に進む方も多いです。
中には最初から大学院に進むつもりで大学選びをしている方も少なくありません。
大学院に進学することでどんなメリットを得られるのかを確認してみましょう。
一つの分野を集中して研究できる
建築専攻の大学では建築についての全般を学べます。建築業系で活躍するため、そして国家資格を取得するためなどに必要ですが、一つの分野に特化しているわけではありません。
その点大学院に進学すれば、自分の興味のある分野のみに特化した勉強ができます。
勉強といっても大学院では現場の手伝いや実際に設計をして発表しあうなど、より本格的な内容になってきます。現場の空気を感じたいけど自分はまだ勉強不足だと感じる、まだ学びたいことがたくさんあるという方に大学院はおすすめです。
一級建築士の資格を取得できる
大学院への進学する最大のメリットは一級建築士の資格が取得できるという点です。
通常は4年制の建築系の大学を卒業した時点で2級建築士の資格が与えられ、その後2年から3年の実務経験を経て1級の受験資格が与えられます。
ですが大学院で学べばその期間が実務経験としてカウントされ、卒業時には1級の資格所持者として活躍できます。
大学卒業後すぐにキャリアを積みたいという方でも、1級建築士の資格を取得してからキャリアを積む方が現場では有利なことが多いです。
とくにゼネコンなどの大規模な建築に携わりたいと考えている方には1級建築士の資格は必須です。
リアルな現場を学べる
大学で建築について学んでも国家資格を取得しても、現場に出なければわからないことはたくさんあります。
大学卒業後いきなり就職してそのまま現場に出ることで、理想と現実のギャップにショックを受けてしまう方や違う業界に転職してしまう方も少なくありません。
一方で大学院では、現場に出て勉強する機会も多いです。教授の持つ建築事務所に出入りできるというゼミもあります。
このように実際の現場に携わりながら学ぶことで理想と現実のギャップを埋め、より自分に合う就職先を考えやすくなるというメリットがあります。
就職先の幅が広がる
大学院に進学することで就職先の選択肢も広がります。
建築系の会社ではいきなり院卒レベルのスキルや知識を求められることも珍しくなく、大学卒では知識もスキルも経験も何もかもが足りません。
新人を育成する環境が整っていたとしても圧倒的に院卒の方が有利です。
就職活動においても、大学卒と院卒がいれば教育コストを省くために院卒を選ぶという建築会社は多いです。
求人の募集要項にあらかじめ「院卒以上」と学歴が限定されていることもあります。
大手の設計事務所やハウスメーカー、ゼネコンへ就職したいのであればやはり院卒の学歴は必要になってくるでしょう。
大学の推薦で就職しやすい
建築業界では大学から企業に推薦してもらえるケースもあります。
建築専攻の教授の中には現在建築業界で活躍している方も多く、推薦状をもらいやすいです。
ですが建築専攻であれば誰でも推薦してもらえるわけではありません。「この生徒ならこの会社で活躍できる、会社の即戦力となる」と認められる必要があります。
このような推薦を受けるためには、院卒レベルのスキルや知識、経験が必要です。院でさまざまな研究をしたり発表をしたりすることで教授に認められれば、推薦を受けて大手企業に就職することも夢ではありません。
志望する就職先が明確であり、かつその大学や院から就職した人がいる場合は推薦を狙って院に進むという方法もあります。
大手への就職は院卒が有利
ゼネコン、ハウスメーカー、デベロッパーなどの大手企業は毎年新卒採用をおこなっていますが、人気が高く全国から数社に応募が殺到します。
その中で有利になるのは知識やスキルが豊富な院卒の人材です。
募集人数が多い企業であれば書類選考の時点で4年制の大学卒は落とされてしまう可能性も高いです。
中には院卒に募集を限定している大手企業もあり、就職活動は非常にシビアです。
働きたい企業が決まっている、どうしても大手へ就職したいという方は、院への進学が必須とも言えます。
就職後の高収入が期待できる
建築関係の会社は、取得している資格によって給料が変わることが多いです。
2級建築士よりも1級建築士の方が大規模な建築の施工管理ができるため、採用してからのコスパがいいというメリットがあり、その分企業は資格手当を出しているためです。
2級の資格を取得してすぐ就職するよりも、院を卒業して1級の資格を取得してから就職した方が最初から高収入を期待できます。
その分院に通う2年間は学費がかかる、4年制の大学卒の人材から2年分遅れを取ってしまうというデメリットもありますが、長い目で自分のキャリアプランを考えれば院卒の方が収入面に関してもメリットが多いです。
大学院に行かない方がいい人は?
大学院に進学することで勉強面においても就職面においてもさまざまなメリットがあります。
では、建築専攻の学生がすべて院に行った方がいいのかと言うと必ずしもそうとは限りません。
大学院に進まず4年制の大学を卒業後就職した方がいいのはどんな人なのかを見てみましょう。
明確なやりたいことがない人
大学院に進む際には自分の興味があること、活かしたいことを明確にしておかなければなりません。
その分野に特化した教授のゼミに入ったり科目を履修したりすることで、より専門的な知識を身に着けられます。
「なんとなく院に行った方が就職に有利そうだから…」という理由で院に進学しても、大学のようにまんべんなく学べる場所ではないので後悔してしまう可能性もあります。
とりあえず専攻したい分野を選んでみたけど自分には合わなかった、就職したい企業と学んでいる内容がミスマッチだったということにもなりかねません。
勉強したい分野が明確でない方は、早めに就職してしまった方が良いかもしれません。
すぐに実務経験を積みたい人
大学院に進むとその2年間キャリアを積むことはできません。
建築系の国家資格の多くは数年の実務経験がなければ取得できないものが多く、早くキャリアを積んでより多くの国家資格を取得して現場で活躍したいという方には不向きです。
就職してからも同年代から遅れを取ることに焦りを感じるかもしれません。
大学院でも現場の空気を感じることはできますが、やはり実際に就職して働いてみないとわからないことはたくさんあります。少しでも早く現場に出たい、実務経験を積んで周囲からの信頼を得たいという方は、無理に院に進む必要はありません。
すでに進路を決めている人
すでに就職したい業界や企業が決まっており、その企業が4年制の大学卒の人材も募集しているのであればそのまま就職してしまう方法もあります。
先述の通り、院卒の人材も多く応募しているような人気の企業であれば書類選考で落とされてしまうかもしれません。面接で自己PRできる結果が少なければ院卒よりも劣った人材に見られてしまう可能性もあります。
その中でも少ない採用枠に残れるという自信があるのであれば、就職活動にチャレンジしてみてもいいでしょう。
もちろん院を卒業していなくても就職できる企業はたくさんあります。企業研究をしっかりおこない、4年間の大学生活で何を学んだか、どんな結果を残したかなどをきちんと企業に伝えることができれば目標の企業に就職できる可能性は十分にあります。
建築系の進路について考えよう
建築専攻の学生の就職先や進学先について解説しました。
大学でしっかり学ぶことで建築業界でより活躍しやすくなります。国家資格も取得できるので、業界で活躍できる人材になりたいという方は進学すべきです。
さらに余裕があるのであれば大学院に進むことをおすすめします。大学院を卒業することで最初から高度な国家資格を取得した状態で働き始めることができ、専門的な知識やスキルが試される場所でも活躍できるでしょう。
就職に有利になるだけでなく自分の興味のある分野を思う存分研究できるというメリットもあります。
自分は大学院に進むべきなのかそのまま就職すべきなのかはその人のライフプランや志望する就職先によっても大きく変わってきます。
自分の進路については早めに考えておき、どちらを選ぶにしてもしっかり準備を進めていきましょう。