建築の仕事は専門的な知識や現場での経験が求められます。
ですが人が喜ぶ家を作る、人が集まる建物を作る、人が喜ぶ施設を作るといった建築の仕事は夢がありますよね。
一度は別の道に進んだもののやっぱり建築に携わる仕事がしたいと思ったとき、異業種からの転職は可能なのでしょうか。
今回は異業種から建築業界への転職について、その難易度や転職前におさえておきたいポイントについて解説します。
異業種から建築業界への転職は可能!
結論から言えば、異業種から建築業界への転職は可能です。
建築の仕事は確かに専門的な知識が必要な仕事が多く、国家資格がなければ対応できない仕事もあります。
ですが、誰もが最初からスキルを持っている、資格を持っているというわけではありません。
当然4年制の大学を卒業し新卒で建築業界へ入った人材と比べればハンデはありますが、がんばり次第で活躍できる人材を目指すことができます。
とくに建築業界は人材不足が進んでおり、職人の高齢化や若手の人材が集まらないといったことに悩んでいる建築会社も多いです。そのため未経験でも積極的に採用し、丁寧な教育をおこなっている会社はたくさんあります。
自分のやる気と会社との相性が合えば、働きながら日々成長を実感できることでしょう。
異業種からのおすすめの職種
異業種から建築業界への転職は十分に可能ですが、その場合はどの職種を目指せばいいのでしょうか。
建築の仕事と言っても国家資格がなくても働ける職種はたくさんあります。
これまでの自分の経験を活かせる仕事や自分の理想の働き方に合った仕事を見つけましょう。
販売・営業職
異業種から建築業界への転職でおすすめの職種の一つが販売職、営業職です。
一見建築とは関係ないようにも見えますが、建築の仕事にとって販売、営業は非常に大切です。
その会社が建てた住宅や建物を売ることで会社の利益となりますし、住宅や建物の建設の契約を取ることで会社に新しい仕事をもたらします。
直接建物作りをするわけではありませんが、クライアントと一番近い距離でやりとりができます。クライアントの悩みに寄り添って適切な提案をしたり、クライアントの喜ぶ顔が見られたりといったやりがいを感じられるでしょう。
また、過去に異業種で販売や営業の経験があるという方ならチャレンジしやすいというのも魅力の一つです。
建築の販売や営業は一つひとつの取引金額が高額なので小売りのようにはいきませんが、それでもこれまで培ってきたスキルを建築業界に活かすことができるでしょう。
施工管理職
施工管理とは、工事のスケジュールを決める工程から建物の完成までをすべて管理する仕事です。
現場責任者、現場監督とも呼ばれる仕事で、建築の仕事と言えばこのような現場で活躍する仕事をイメージする方も多いでしょう。
建築業界未経験でいきなり施工管理の仕事ができるわけではなく、まずは現場での実務経験を積む必要があります。
施工管理を任せられるようになるには2級、または1級の建築施工管理技士、土木施工管理技士などの国家資格を持っている必要があります。ですがこれらはいずれも実務経験がなければ受験資格が与えられません。そのため未経験可としている求人も多いです。
建築現場では施工管理技士を1名以上配置することが法律で定められています。建築会社では一人でも多くの有資格者を確保しておきたいため、資格取得に向けて積極的にサポートしてくれる会社も多いです。
資格の取得によって資格手当が給付されたり、勉強会や資料を配布してくれるなどのサポート内容にも注目してみましょう。
設計職
設計職は、建物の内装や外観を設計するだけでなく構造、土台となる部分の設計、空調設備や照明、配線などの設備を設計する仕事です。
建築についての高度な知識が求められるだけでなく、設備、配線などの知識も必要です。
クライアントが希望する通りの内装や外観を提案するのはもちろん、ぼんやりとしたクライアントのイメージからより的確な、求められる以上のデザインを提案しなければならないという難しさもあります。
中途採用の場合は建築士や構造設計一級建築士などの資格を持っている方が有利で、経験者が優遇されることがほとんどです。
ですが戦術の通り建築業界は人材不足が続いているので、熱意やこれまでの経験をしっかりアピールできれば設計職への転職も夢ではありません。
まずは施工管理職を目指し、その上で設計の仕事にもチャレンジしてみるなどの流れもおすすめです。
設備工事職
建物の電気やネット、ガス、空調、照明、水道などの設備を作るのが設備工事職の仕事です。
建築において建物を作るのは大切ですが、それだけでは人が生活をしたり仕事をしたりはできません。
電気、ネット、ガスなどの設備があることで建物が完成し、そしてその設備のクオリティによってその建物の使いやすさが左右されます。建築において非常に大切なポイントとなることでしょう。
施工管理や設計のように目で見える部分ではありませんが、丁寧な仕事が求められます。
どの分野を取り扱うかによって必要資格も変わります。空調設備などをおこなう場合は電気工事士、管工事施工管理の資格。水道設備をおこなう場合は給水装置工事主任技術者や水道技術管理者の資格などなど。
未経験からいきなりチャレンジするのは難しいですが、働きながら資格取得を目指す方法もあります。
事務職
建築の仕事の中でも無資格で働けると人気なのが事務職の仕事です。
書類作成や従業員の管理などデスクワークが中心です。
建築についての専門的な知識は求められませんが、建築業界ならではの書類作成などもあるのである程度知識を持っておくことは大切です。
請求書の作成などお金に関する仕事も多く、一件一件の取引金額が大きな建築会社にとってミスは許されません。
建築業界未経験でも事務職の経験があるなら比較的採用されやすいでしょう。
異業種からの転職の前に身に着けたいスキル
異業種から建築業界への転職を目指すにはさまざまなスキルが必要です。
建築に関する専門知識の他、すでに持っているスキルをより高めておくこともおすすめです。
資格などの建築関連以外で身につけておきたいスキルについて解説します。
スケジュール管理能力
建築現場では非常に細かいスケジュールが組まれています。
このスケジュールを守らなければ納期が遅れたり次の業者へのバトンタッチができなくなり、現場で働くスタッフ全員に迷惑や負担がかかるどころか最悪の場合違約金が発生します。
現場では思わぬ事故や天災などで工事がストップしてしまうこともありますが、それでも人為的ミスを減らしてスケジュール通りに工事を進めることは最優先です。
スケジュール管理能力を高めること、優先順位を決めて動けることは建築現場においても大切なスキルです。
また、施工管理をする上では現場のスケジュール管理、工期のタスク管理などもおこなわなければなりません。
どれくらいの期間で、どれくらいの余裕をもって、どれくらいの費用で工事をおこなうのかということをバランスよく考える必要があります。
製図ソフトの扱い・製図スキル
設計の仕事をする上では製図ソフトの扱いや製図スキルは必須です。
最近はCADソフトで簡単にデータから製図をすることもでき、専門的な知識がなくても勉強ができます。
現場の仕事であっても、営業や事務の仕事であっても簡単な製図をしたり製図を読み取る力が必要なシーンもあります。
製図には特別な国家資格はなく、ソフトさえあれば簡単に練習できるので、転職前にある程度の操作方法を身に着けておきましょう。
コミュニケーション能力
建築の仕事は決して一人ではできない仕事です。
営業や販売スタッフがクライアントと打ち合わせをして新しい仕事を持ってきて、設計スタッフが要望に合う建築物の設計をおこない、施工管理や現場のスタッフがそれをもとに協力して一つの建物を作り上げていきます。
現場では同じ作業をするスタッフ同士の連携や、違う会社のスタッフとの連携、情報共有も大切です。
高いコミュニケーション能力や協調性が求められます。ワンマンで仕事をするよりチームで仕事をするのが好きという方は、さらにその得意を磨いていきましょう。
報連相を意識する、普段から積極的にコミュニケーションを取る、些細な変化にもすぐ気づくといったことが、現場の仕事では大切になってきます。
建築士の資格は大学に入り直さなければならない?
建築の仕事と言えば建築士の国家資格を取得しなければならないものが多いです。
建築士の資格を取得していれば転職でも有利になりやすく、クライアントからの信頼も得やすいです。
ですが建築士の国家資格は4年制の大学に入らなければ取得できないと思っている方も多いのではないでしょうか。今から大学に入り直す時間もお金もないという方も多いでしょう。
ですが建築士の資格は4年制の大学だけでなく3年制の専門学校、2年制の専門学校に通うことでも取得可能です。
働きながら学校に通うのは大変ですが、今後建築業界で活躍えきる人材になるためには無駄な時間ではありません。
卒業後は必要な実務年数を積み、1級の建築士の試験を受けることもできます。
働きながら資格取得を目指せる
短期大学や専門学校に通う時間も惜しい、お金がない、働きながら学校に通うのは非現実的という方は、働きながら資格取得を目指すという道もあります。
国が指定する建築分野を学べる学校に通わずに建築士の資格を目指す場合、7年の実務経験が必要です。
建築について一から現場で学びたい、スキルを身に着けながら資格取得を目指したいという方におすすめです。
時間はかかってしまいますが、建築業界で長く働き続けたいという考えがしっかりあるのであればこちらの方が現実的です。
建築士以外にも役立つ資格はたくさんある
建築士は建築業界の中でももっともメジャーな国家資格です。ですがそれ以外にも建築に役立つ資格はたくさんあります。ほとんどは国家資格ですが、中には民間資格もあります。
民間資格は国家資格よりも受験難易度が低く、大学や専門学校に通っていなくても受験、合格、資格取得ができます。
有名な民間資格で言えばインテリアコーディネーターやCAD利用技術者試験、ハウスクリーニング士、防犯設備士などがあります。
建築検定を受けるために勉強することで建築の知識も身に着けることができます。
建築業界に転職したいものの国家資格を取得する余裕がないという方はこのような民間資格で知識を身に着けたり、転職時にアピールしたりしてみてください。
異業種から建築業界への転職の注意点
異業種から建築業界へ転職する際にはさまざまな点に注意する必要があります。
右も左もわからないまま飛び込んで後悔することのないように、慎重に転職活動を続けていきましょう。
登録された建築士事務所を選ぶ
建築士の資格を取得するためには定められた年数だけ実務経験を積む必要があります。
この実務経験というのはどこに勤めていてもいいというわけではなく、都道府県知事に登録をしている建築士事務所でなければなりません。
建築士事務所と銘打っていても、中にはきちんと登録をしないまま活動を続けている悪質な事務所もあります。このような事務所に就職してしまった場合実務経験にはカウントされず、働いた年月が無駄なものになってしまいます。
建築士事務所が登録されているかどうかはネットで簡単に調べることができますので、求人に応募する前にきちんと確認しておきましょう。
建築士を目指すなら20代の内に
建築業界に携わりたいという方の中で、本格的に国家資格である建築士の資格を取得したいという考えがあるのであれば、20代の内にスタートを切ることをおすすめします。
4年制大学をストレートで卒業した方は卒業後すぐに一級建築士としてのキャリアをスタートさせており、それだけでも大きな遅れとなっています。
30代から勉強をスタートして長い年月をかけて建築士の資格を取得したとしても、その頃にはすでにキャリアを積んでいる建築士が活躍しており入るすき間もない状況になっているかもしれません。
建築業界に転職したい、建築士の資格を取得したいとお考えの方は、少しでも早く資格取得に向けて動き出しましょう。
応募条件が緩すぎる求人に注意する
建築の仕事は知識やスキルを求められる仕事が多く、求人の応募条件にも「○○資格所有者」「実務経験〇年以上」「○○経験者優遇」といったことが書かれているものがほとんどです。
未経験からの転職が難しい仕事もありますが、だからといって「未経験可」の求人に飛びつかないようにしましょう。
未経験可の求人でもしっかりサポートしてくれる会社もありますが、中には誰でもできる簡単な仕事や肉体労働ばかりを押し付けて使えなくなったらすぐに切り捨てるような会社もあります。これではスキルが身に着かず、建築業界で活躍する人材にはなれないでしょう。
とにかく応募条件が緩すぎる、大量に募集している、長期間募集しているといった求人には注意して、よく仕事内容や会社の評判などを調べた上で応募するかを検討しましょう。
育成制度の整った会社を選ぶ
建築業界は人材不足が続いており、今後も回復の兆しは見えていません。
そのため、建築会社は一人でも優秀な人材を確保して育成することに注力する必要があります。
将来を見据えた有能な会社では従業員の育成制度が整っていることが多いです。
定期的に勉強会を開催している、資格取得のサポートをしているなどです。
未経験であってもこのような会社に就職できれば、働きながらいい環境で学び続けることができるでしょう。
建築業界はブラックな企業も多いですが、このようなサポートや育成制度の整った会社は従業員のことをよく考えているので、残業が少なかったり無理な働き方を押しつけなかったりと、長く働きやすい環境が整っています。
企業の口コミや評判も調べる
企業の求人だけでなく、その企業の口コミや評判も調べることは大切です。
建築業界では有名なブラック企業であっても、業界知識がないと求人ページに書かれてあることだけを鵜呑みにして応募してしまう可能性もあります。
結果許可を得ていない事務所で働いたり、劣悪な労働環境の元で働かされたりといったトラブルに巻き込まれるかもしれません。
転職サイトには企業の口コミや評判をチェックできるものもたくさんあります。
さらに実際に建築業界に身を置いている人からの話を聞いたり、企業のブログなどで社内の雰囲気をチェックしたりして企業研究をしましょう。
未経験だから、知識がなかったからという理由があっても、ブラック企業に入社してしまうとまた転職活動に時間を割かなければなりません。建築業界に飛び込んですぐに活躍できる人材になるためには、企業選びが大切です。
異業種から建築業界で活躍できる人材に
異業種から建築業界に転職する際のポイントや注意点などを紹介しました。
建築業界は特別なスキルや資格が必要な仕事が多く、いきなり飛び込むのは難しい職種もあります。
ですが人材不足が続く建築業界は一人でも多くの人手を確保したいのが本音です。
自分がやりたい仕事を見極めて、そして企業からの需要や育成制度などを見極めて、自分にぴったりの仕事、企業を見つけましょう。
これまでの経験を活かしたり自分の特性を活かしたりして活躍できる仕事は、建築業界にたくさんありますよ。