建築会社は全国各地さまざまな場所にあります。
個人経営の小規模な会社から全国、海外に支店があるような大規模な企業までその規模もさまざまです。
建築会社への就職を考える際、知名度や実績、企業理念といった点に注目して就職活動をおこなうのは大切ですが、それだけでなくその会社がどこを拠点に経営を続けているかも重要です。
都心部をメインに仕事を請けている建築会社、郊外をメインに仕事を請けている建築会社、就職するならどちらがいいのかを考えていきましょう。
建築会社に就職するなら都心部と郊外のどちら?
建築会社は都心部に集中しており、じっさいに仕事も都心部の方が多くあります。
より多くの人材を確保するために給与や待遇などがいい建築会社も多く、建築業界への就職をお考えの方の中には都心部での就職を検討している方も多いでしょう。
ですが近年は郊外の住宅需要も高まっています、
とくに新型コロナウイルスの影響を大きく受けた昨今は、リモートワーク、在宅勤務という働き方も珍しいものではなくなりました。
会社から近い都心部に住む必要がなくなり、郊外でゆっくりと暮らしたい、安い金額で大きな家を建てたいと考える方も増えています。
また、土地開発が予定されている地域では今後住宅の需要だけでなく観光施設や商業施設、宿泊施設など大きな建築物の仕事の増加も見込まれます。
都心部の建築会社だから一概にいいというわけではなく、郊外にも目を向けてみることをおすすめします。自分の理想の働き方や譲れないという条件と照らし合わせて、最適な勤務先を選びましょう。
都心部の建築会社のメリット
まずは都心部の建築会社で働くメリットを4つ紹介します。
都心部の建築会社は大手の会社が多い、大規模な仕事を得やすい、働くにあたって待遇のいい会社が多い、さらに転職しやすいといったメリットがあります。それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
大手の建築会社が多い
都心部には大手の建築会社が集中しています。全国展開している建築会社、海外での仕事も豊富な建築会社もあります。
大手のゼネコン会社に就職したいと思っている方は都心部での就職となることでしょう。
大手の建築会社は安定しているのはもちろん、給料が高い、従業員にとって働きやすい環境が整っている、最新の技術を学んだり研究に携わったりできるといったメリットがあります。
大手への就職はライバルも多く非常に厳しい道のため、新卒採用を狙ったり充分な経験とスキルを積んで中途採用を狙わなければなりません。大手へ就職、転職することを考えて最初から都心部での就職しか考えていないという方も多いでしょう。
大規模な仕事が多い
都心部では常に大きな仕事がたくさんあります。
宿泊施設、マンション、商業施設、テーマパークなど、大手のゼネコンや大規模な建築会社が受けるような仕事が多いです。
住宅ではなくこのような大規模な建築の仕事に憧れている、ランドマークとなるような建築物に携わりたいという方は都心部での就職がおすすめです。
地方でも大規模な建築の仕事がないわけではありませんがその数は圧倒的に少ないです。あったとしても都心部の大手の建築会社に仕事を取られてしまって地方まで回ってこないことも多いです。
条件がいい建築会社が多い
建築業界は東京オリンピックの影響で一時的に景気が回復したものの、長期的に見ると人材不足が続いています。日本全体の少子高齢化に伴い働き手が少なくなっていることはもちろん、職人の高齢化も問題となっています。
そのため、人が多く集まる都心部の建築会社ではより優秀な人材を確保するために条件をよくしているところが多いです。
同じ仕事内容でも別の会社の方が給料が高い、年間休日が多い、新しい技術を学ぶ環境が整っているなど、生活を安定させるためだけでなく建築業界で活躍し続けるために必要なスキルを身に着けることもできるでしょう。
実際に、青森県、秋田県などの地方での施工管理職の給料と東京都の施工管理職の給料を比較するとその金額は2倍弱にもなるという結果も報告されています。
地方で働いていたもののよりよい待遇を求めて都心部への転職を考える方も多いです。
転職しやすい
都心部には建築会社がたくさんあるため、転職したいと思ったときにも豊富な選択肢の中から選ぶことができます。
地方の場合はその土地に数件しか建築会社がないことも多く、転職しにくい、転職できたとしても成長できないといった問題があります。
ですが都心部であれば近くのよりよい条件の建築会社への転職を検討しやすいです。わざわざ引っ越したり通勤ルートを考えたりする手間や費用も省けると言うメリットもあります。
都心部の建築会社のデメリット
次に都心部の建築会社のデメリットを解説します。
都心部は人気の大手建築会社が多く、その分求人倍率が非常に高いです。仕事が多い分残業も増えやすく、負担に感じてしまうことも。大手ゼネコン会社などでは出世のための競争も苛烈です。建築のことを考えたいのに余計な人間関係などがストレスになってしまう可能性もあります。
これらに気を付けて、都心部への就職を考える際は慎重に企業を選ぶようにしてください。
求人倍率が高い
都心部の大手の建築会社はまず求人倍率が高いというデメリットがあります。
建築会社も多い分、同じように建築業界への就職を目指している方も多いです。
国家資格を取得している、建築の大学を卒業している、さらに建築業界での実績があるといった方でも、同じような条件を揃えたライバルと比較された結果落とされてしまうかもしれません。思うように就職活動が進まず、希望する条件の会社で働けない可能性も。
とくに海外でも事業をおこなっている大手ゼネコン会社などを目指す場合は建築の知識や技術だけでなく語学力なども求められます。
大手の建築会社は事務や営業、販売など建築の国家資格を持っていなくてもできる仕事の募集もしていますが、こちらも経験者が優遇される傾向にあります。
残業などで激務になりやすい
都心部ではマンションやビル、宿泊施設など大規模な工事が非常に多いです。ですが建築会社同士で仕事を取り合っているのが現状のため、案件を獲得するために無理な工期を提案していることもあります。
現場で働く従業員にそのしわ寄せが来て、無理な工期に間に合わせるために残業や休日労働をしなければならないという可能性も。
書類作成、資料作成、打ち合わせや出張などに膨大な時間を費やすこともあり、激務になりやすいです。
もともと建築業界は残業が当たり前という風潮があり、ブラックな企業も多いです。実際にその建築会社で働いている人、働いていた人の口コミをチェックして、ブラックなのか激務の分高待遇なのかなどを確認しておく必要があります。
出世争いに巻き込まれる可能性も
大手の建築会社、とくにゼネコン会社には向上心の高い人材が集まりやすいです。数少ない役職を巡って出世争いが勃発することも少なくありません。
建築の仕事が好きという気持ちだけで続けるのは難しいことも多いです。
上司や部下との人間関係に悩んだり、感じなくてもいい劣等感を抱えてしまったりして、建築の仕事自体がつらくなってしまう可能性もあります。
建築業界の花形としてバリバリ働きたいのか、自分の好きな建築の仕事だけを続けたいのかをよく考えましょう。
郊外の建築会社のメリット
では次に、郊外の建築会社のメリットを見てみましょう。
郊外の建築会社は仕事が少ない、生産性が低いといったイメージがありますが、郊外の戸建ての需要は伸びています。より建築の仕事に没頭しやすい、顧客に寄り添う仕事ができるなどのメリットもあります。
自分の働き方についてだけでなく、現在の日本の状況や人々の価値観の変化を察知して就職活動に取り入れることも大切です。
郊外の戸建て需要は伸びている
近年、さまざまなメディアで「田舎暮らし」が取り上げられることが多くなりました。定年退職して田舎でのんびり暮らしたいと考える方や、ほどよく通勤に便利な郊外に家を建てたいという若い世帯が増えています。
都心部で高い金額を出してマンションを購入するよりも郊外の方が高い満足度を得やすかったり、物価も安いため暮らしやすいといったメリットもあります。
そういった点から郊外の戸建ての需要も伸びつつあります。都心部のように大型施設の建築の仕事は少ないですが、住宅の建築をメインに働きたいと考えている方にとっては郊外も十分将来性は高いと考えることができます。
顧客に寄り添った提案がしやすい
郊外にはもちろん大手建築会社やハウスメーカーのチェーン店舗もありますが、個人経営の建築会社、小規模な建築会社も多いです。
そのような建築会社ではよりクライアントのニーズに沿った提案をしやすいです。
例えば、大手ハウスメーカーの場合はある程度決まったデザインの提案しかできませんが、個人経営であればクライアントの理想の暮らしをヒアリングしつつ住宅をデザインしていくことが可能です。もちろん大手ハウスメーカーでもこのような注文住宅の依頼を請けることはできますが、それよりもさらにこだわりの家作りに携わりたい、マニュアル通りでない家作りを楽しみたいという方におすすめです。
リモートワークや在宅勤務が増えた昨今は、自宅にワークスペースや書斎を作りたいと考える方も増えています。家族の形も多様化しつつある現代において、従来の価値観に囚われない家作りは非常に大切です。
比較的自由な経営体制の会社が多い
郊外の小規模な建築会社は自由な経営体制の会社が多いです。
大手のように縛りもなく、一つの許可を得るまでにいくつもの課の許可をもらわなければならない、上司の顔色を窺わなければならない、余計なことを言えないということもありません。
少ない人数で仕事を回しているので、スピーディーに許可を得られる、役職がつくのも早いといったメリットもあります。
もちろんその建築会社の社風にもよりますが、新しい考え方を柔軟に取り入れてくれるような会社であればよりよい働き方を目指して個人も会社自体も成長していくことができるでしょう。
郊外の建築会社のデメリット
では、郊外の建築会社で働くデメリットをチェックしてみましょう。
郊外の建築会社は人材が集まりにくい、仕事自体が少ない、さらに転職しにくいといったデメリットがあります。自分のキャリアプランを考えた上で郊外での働き方は自分にあっているのかをよく考えてみてください。
人材不足が続いている
建築業界では深刻な人材不足が進んでいます。建築業界全体への汚い、きつい、危険という印象は根強く、少子化が進む日本においてますます若い世代の働き手を得にくい状況です。
さらに先述の通り郊外の建築会社に比べて都心部の建築会社は従業員への待遇がいい会社が多いです。
地方で働いていたものの待遇の悪さに嫌気が差して都心部の建築会社に転職してしまう人材も多いです。
郊外の建築会社に就職するとこのような人材不足の中で働かねばならず、一人で何人分もの仕事をこなしたり、営業や経理、事務などの仕事も兼任したりしなければなりません。
当然激務になりやすく、心身に支障をきたしてしまう可能性もあります。
仕事が少ない、得にくい
郊外では戸建ての需要が高まってはいるものの、都心部と比較すると仕事の数自体は圧倒的に少ないです。
建築会社も少ない仕事をこなしつつ従業員の給料や資材の調達費などをまかなっている自転車操業状態のところも多く、倒産の危険性がつきまといます。
万が一倒産してしまった場合はそのエリアでの再就職も難しく、結局求人倍率の高い都心部で転職活動をおこなわなければならなくなる可能性も高いです。
安定して働きたい、順調に出世したいと考えている方にとっては避けたいポイントとなるでしょう。
転職がしにくい
上記の通り、郊外では転職しにくいというデメリットがあります。
そのエリアにもともと建築会社が少ないため、選択肢が少なかったり双方の関係が悪いと転職に不利になる可能性もあります。
仕事が少ないのでそのエリアで独立しても新たに仕事を得ることができず、結局ギリギリの状態で経営を続けなければならなくなるかもしれません。
別のエリア、都心部へ転職する場合は住む場所自体を変える必要もあります。引っ越し費用をまかなうことはもちろん、物価の高いエリアで生活しなければならないというデメリットもつきまといます。
郊外に転職するなら抑えておきたいポイント
郊外の建築会社への就職をお考えの方は、事前にある程度のポイントをおさえておきましょう。
郊外と一口に言ってもその種類は多種多様です。本当にアクセスが悪く住民の高齢化が進んでいるようなエリアでは新しい仕事を得にくいため、せっかく就職できても将来的に長く働き続けられません。
これから若い世代が多く移住するような、通勤通学にある程度便利なエリアで考えるのがおすすめです。郊外での暮らしに注目が集まっている今、都心部への通勤通学のしやすい駅が近くにあるエリアは需要が高まっています。
また、自分自身も通いやすい場所を選びましょう。ある程度アクセスがよければ、転職を考える際も別のエリアを検討しやすくなります。
都心部でバリバリ働きたいのか、郊外でゆっくりクライアントに寄り添う仕事がしたいのかによってどちらで働くべきかも変わってきます。
出世したいのか、独立したいのかも重要なポイントです。都心部の大手建築会社でスキルや経験を身に着け、実績を積んでから需要の高そうな郊外で独立するという方法もあります。そのためにはどんな肩書きが重要なのか、どんな人脈を作っておく必要があるのかも考えましょう。
このように自身のキャリアプランもしっかり考えておくと、今どの道に進むのが一番効率的かが見えてくることでしょう。
都心部と郊外、自分に合う働き方を見つけよう
都心部の建築会社と郊外の建築会社、どちらに就職するのがいいのかについて紹介しました。
都心部は仕事が多いというメリットが、郊外は戸建ての需要が高まっているというメリットがあります。
双方のメリットとデメリットを比較して、自分の理想の働き方に適した方を選ぶようにしましょう。
また、近年は雇用という働き方に縛られない時代です。この建築会社に就職したら安心ということはありません。将来転職をする、独立する、フリーランスになるなど、キャリアプランを立てておくこともおすすめします。