家は、一生に一度の買い物ともいわれるほど大きな買い物です。
数千万円の買い物で失敗しないために、注文住宅を依頼する際の建築士の見極めは非常に大切です。
どんなに優秀な建築士でも、口コミ評価の高い建築事務所でも、自分と相性が悪ければ満足のいく注文住宅を建てることはできません。
建築士との相性の見極め方や、トラブルに巻き込まれないためのポイントなどを解説します。
建築士との相性を見極める7つのポイント
理想のデザイン、理想の間取りなどがあっても、建築士を選び違えると理想通りの注文住宅にならないかもしれません。
注文住宅を依頼する際はいきなり一つの事務所に依頼するのではなく、複数の建築士をピックアップしてその中から自分に合う建築士を選ぶことをおすすめします。
比較するためにはどんな点に注目すればいいのか、7つのポイントを紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
実際に建築士にあって相談する
まずは実際に建築士に相談すること。
公式サイトやネットの口コミを見ても、実際の建築士との相性は見えてきません。
直接建築士と会話して、その人柄を確認しましょう。
高圧的な態度を取られる、こちらの要望を聞こうとしないなど、最初の段階で少しでも違和感があった場合はその後も意見の食い違いやトラブルを引き起こしやすいです。
新型コロナウイルス感染防止の観点から、気軽に人と対面できない日々が続いています。近年は、そんな方に向けてウェブ上でビデオ通話ができる建築士事務所やデザイン事務所も増えています。
気になる事務所がこのようなシステムを導入しているのであれば、住んでいる場所から少し距離があっても気兼ねなく相談できます。
話しやすい建築士かどうか
建築士のスキルや実績も大切ですが、それ以前に人としての相性を見極めることも大切です。
なんでも気兼ねなく相談しやすいかどうかを考えましょう。
家づくりはほとんどの人が初めてであり、簡単にやり直しはできません。
こちらに知識がないことを前提として、一から丁寧に解説してくれる、不安な点をすぐに解消してくれる、こちらの意見を聞き入れてくれるなど、人として信頼できる人物かどうかを見てください。
一方的に説明されるだけでなかなかこちらから話し始められない、こちらの意見をすべて否定されるなど、なんとなく話しにくいと感じたら、今後修正したい点や改善したい点があったとしても提案できず、妥協してしまうことになるかもしれません。
その建築士の実績や作風、デザイン
次にその建築士の実績、作風、デザインなどを見てみてください。
建築士や建築士事務所のホームページには過去の実績が掲載されていることがほとんどです。
住みやすい快適な住宅が欲しいのか、スタイリッシュな住宅が欲しいのか、デザイン性の高い住宅が欲しいのかなど、どんな住宅を求めるかによっても相性のいい建築士は違ってきます。
デザイン性の高い住宅を求めているのに普遍的なデザインが得意な事務所に相談してしまうと、中途半端な仕上がりになったりこちらから提案しない限りデザインを工夫してくれないなどのトラブルが発生しやすくなります。
現実的な費用で依頼できるか
その建築士に依頼する費用についてもあらかじめ確認しておきましょう。
注文住宅はどうしても費用が高額になりがちです。
デザインにかかる費用だけでなく資材料や人件費などもかかります。
さらに、このデザインも取り入れたい、あのデザインも取り入れたい、とオプションを増やしていくことで簡単に当初の予算を超えてしまいます。
住宅は一生に一度ともいえるほど大きな買い物ですが、現実的な範囲内に収められるかどうかを考えてください。
人気の建築士やデザイン事務所はデザイン料だけでも高額になるケースが多いです。最初の時点で予算を告げて、その範囲内での提案をしてくれる建築士を選ぶのもおすすめです。
さまざまな提案をしてくれるか
注文住宅はこちらの要望を取り入れたデザインに仕上がるのが大きな魅力ですが、建築の知識が乏しいとすべてを実現するのは不可能です。
ですが不可能な提案をしてしまったときに「この方法はどうですか?」と提案してくれる建築士と、ただ否定するだけの建築士がいます。
こちらの足りていない部分をさまざまな提案で補ってくれる建築士を選べば、当初予想していたよりもさらによい注文住宅を作ることができるでしょう。
好みのデザインに合う素材や、ドアや手すりなどのちょっとした素材、デザインの工夫などをしてくれる建築士を選ぶこともおすすめです。
こちらの要望を聞き入れてくれるか
注文住宅はフルオーダーのものとセミオーダーのものがあります。
セミオーダーはあらかじめいくつか用意されているデザインを自由に組み合わせられるというもので、フルオーダーよりも気軽に、そして安価に購入できるというメリットがあります。
注文住宅ではこのセミオーダーを取り入れているところも多いです。
セミオーダーを選ぶ場合も、建築士はこちらの要望をきちんと取り入れてくれるかどうかは大切です。高いオプションのものばかり勧めてくる、こちらの要望を無視してどんどん話を進めてしまうような建築士に依頼していては、理想の家づくりはできません。
クライアント視点で家づくりを考えているか
建築士としてではなく、クライアントの視点で家づくりを考えてくれるかどうかを見てみましょう。
建築士は当然建築の知識が豊富で、さまざまな建築方法を選ぶことができます。
ですがクライアントはほとんど建築についての知識がありません。そのため、建築士から考えればありえないような提案をしてしまうこともあります。
そんな提案をバカにしたり頭から否定したりするのではなく、クライアントに寄り添ってできる範囲のことを提案してくれるような建築士を選ぶべきです。
デザイン性だけでなく、実際に住む人のことを考えられた家を作ってくれる建築士かどうかを見極めましょう。
建築士のタイプによって選ぼう
どんな注文住宅を依頼したいかによって、選ぶべき建築士も変わります。
それぞれの建築士の特徴をしっかりと抑えて、自分に合う建築士を選びましょう。
普遍的な提案をしてくれる建築士
注文住宅と聞くとデザイン性が高くスタイリッシュな住宅というイメージがある方も多いですが、シンプルで普遍的なデザインの注文住宅もたくさんあります。
一見すると他の住宅と変わりませんが、細部にその家族が住みやすい工夫がされている、温かみのあるデザインの家を手に入れられます。
普遍的なデザインは飽きることがなく、長く住み続ける住宅にはぴったりです。
シンプルな中にどんな工夫をしているのか、どんな点が他の建築士とは違っているのかをよく比較してみましょう。
個性的な提案をしてくれる建築士
せっかく注文住宅を依頼するのであれば個性的なデザインを提案してほしいという方も多いです。
自分の大切にしている世界観を実現してくれる建築士、他とは違う斬新なデザインを楽しめる建築士などを探してみてください。
スタイリッシュだったりデザイン性が高かったりする住宅でも、本当に質のいい建築士に依頼すれば住みやすさも考えたデザインを提案してくれます。
また、近年は一般的なデザインではなく和風建築のデザインを取り入れたデザインも人気です。
外観だけでなく和室、土間、中庭、縁側など、昔ながらのデザインの住宅に住みたいという方も、和風建築が得意な建築士を探すことをおすすめします。
ライフスタイルを考えた提案をしてくれる建築士
近年は働き方や家族の在り方も多様化しており、従来の普遍的なデザインであれば暮らしやすいというわけではなくなってきています。
一つひとつの家族の形を重視して、それぞれの家族が暮らしやすいデザインを提案してくれる建築士を選びましょう。
共働きの家庭、夜遅くまで働いている家族がいる家庭、高齢者と一緒に暮らしている家庭、子供がたくさんいる家庭など、それぞれの家庭にとって何が大切なのかを考えたデザインを考えてくれる建築士がおすすめです。
建築士を選び間違うことで起こるトラブル
注文住宅を選ぶ際に建築士を選び違えると、さまざまなトラブルの原因になる可能性があります。
自分は関係ないと思わずに、起こりうるトラブルを確認しておきましょう。あらかじめトラブルの可能性を理解しておくことで、未然に防ぐことができます。
デザイン性重視すぎる住宅になる
デザイン性の高さが人気の建築士に依頼すると、デザイン性だけを重視した住宅になってしまう可能性があります。
収納が極端に少ない、生活動線を考えられていない、冷暖房が効きにくい、外から生活している様子が丸見えなど、最初はおしゃれに見えても住んでみると不便なことだらけ…という住宅を押し付けられるかもしれません。
注文住宅の場合は打ち合わせを何度も繰り返して完成に近づいていくことがほとんどですので、その都度設計図やデザインをチェックして生活のしやすさについても考えておきましょう。
注文住宅の意味がない住宅になる
シンプルなデザインを求めすぎるあまり、また建築士から何の提案もないあまり、最終的に他の住宅と似たり寄ったりな仕上がりになってしまう可能性もあります。
それだとせっかく注文住宅を依頼した意味がなくなってしまいます。
「注文住宅」という響きにとらわれず、既存のデザインの住宅を選ぶのも一つの方法です。
どうしても注文住宅がいい場合は譲れない条件、家族の意見などをまとめた上で建築士や事務所を選ぶようにしてください。
費用が高額になる
あれもこれもとオプションをつけていくと、予想していた費用の何倍もの費用に跳ね上がってしまう可能性があります。
デザインに合う素材や塗料を選ぼうとするとその分費用は高くなりますし、浴室やキッチンなどにこだわることでさらに費用は上がります。
すべての要素をプラスしていくのではなく、こだわりたい部分はこだわり、そうでない部分は安く抑えるなど、バランスを取ることが注文住宅においては大切です。
あらかじめ決めておいた予算の中でどんな風に工夫ができるか、自分だけでなく建築士と一緒に考えていきましょう。
要望とまったく違う住宅になる
注文住宅の打ち合わせの段階でこちらの要望を明確に伝えていないと、理想とまったく違う住宅ができてしまう可能性があります。
「モダン」「アジアン」「レトロ」など、言葉一つを取っても感じ方は人それぞれです。イメージや雰囲気だけでなく、実際の建築物やデザインなどを建築士と共有して完成を目指していきましょう。
内装や外装の素材、塗料も、サンプルだけを見たときと実際に一面に使われたときでは感じ方が違うケースも多いです。実際にその素材や塗料を使ったデザインを見せてもらい、仕上がりをイメージしながら作り上げていくことが大切です。
注文住宅づくりで失敗しないためのポイント
注文住宅づくりには建築士選びも大切ですが、こちらもさまざまなポイントを押さえておく必要があります。
建築士とのコミュニケーション、図面やモデルの確認、作業現場の見学など、できることをすべておこない、最高の住宅を手に入れられるようにしましょう。
コミュニケーションをしっかり取る
建築士とのコミュニケーションはしっかり取りましょう。
大手の建築士事務所やデザイン事務所は、打ち合わせは営業担当者がおこない建築士とはほとんとかかわる機会がないというケースも多いです。この場合はスムーズに作業が進められるかわりに、こちらの要望がまっすぐ伝わりにくいといったデメリットがあります。
できれば建築士と直接やり取りできる事務所を選び、何度も打ち合わせを重ねて意見をすり合わせていきましょう。
ちょっとした日常会話や世間話からも得られるヒントはたくさんあります。
建築士はそんな会話の中から、よりクライアントに満足してもらえるデザインを提案していきます。
ただ打ち合わせを重ねるだけでなく、しっかりコミュニケーションを取って親交を深めていくことを意識してください。
自分の理想、意見はしっかりと伝える
自分の理想や意見はしっかりと建築士に伝えましょう。
「こんな感じ」「ああいう雰囲気で」とあいまいな表現では建築士にきちんと伝わらず、理想通りのデザインにならない、デザインをやり直すなど、手間がかかってしまいます。
また、建築士の高圧的な態度や営業スタッフのトークに押されて不要なオプションをつけてしまうという方も多いです。
いらないものはいらないと断る力、自分の理想と違うと伝える力も注文住宅づくりには必要です。
図面やモデルをよく確認する
打ち合わせの段階で図面やモデルはその都度きちんと確認しましょう。
どうせわからないからと適当にチェックしていると、不便に感じたりデザイン性に欠けると感じたり、狭く感じる、寂しく感じるなどの仕上がりになってしまう可能性があります。
近年は3Dモデルなどを用いてよりわかりやすく説明してくれるところも多いので、わかりにくい点はその都度質問してより具体的に説明してもらうようにしましょう。
一度作業に入ってしまうとやり直しはほぼ不可能ですし、デザインの修正にも費用がかかってしまう可能性があります。
問題があると感じたら早い段階で修正に取り掛かれるようにしてください。
費用の上限を決めておく
注文住宅を依頼する際はある程度費用の上限を決めておくことも大切です。
注文住宅は当初予定していた費用もりもオプションなどで高くなってしまうことがほとんどですが、上記で説明したように足し算を引き算を上手におこなって調節するのがポイントです。
おすすめされるオプションをすべてつければその分贅沢な住宅を手に入れることができますが、結局使わない機能や不便な配置、現実的でない素材や設計の住宅で暮らさなければならないのは意外と大変です。
また、高額なローンを一生かけて返し続けなければならないという不安もあります。
ライフプランも考え、無理なく返済を続けられる金額はどれくらいかをよく確認した上でデザインを考えていきましょう。
建築士選びは慎重に!理想の注文住宅を作ろう
建築士との相性、選び方について紹介しました。
注文住宅は一世一代の非常に大きな買い物の一つです。
失敗したからと言って簡単にやり直せるものではなく、その後の暮らし方や家族の在り方にも大きく関わってきます。
後悔することのないように、建築士選びの段階から慎重になりましょう。
今回解説したポイントも踏まえて、自分の理想の住宅作りに貢献してくれるのはどんな建築士かを考えてみてください。
無料の相談や見積もりの段階で複数の建築士、デザイン事務所を比較することも重要です。自分の中で譲れない部分を尊重してくれる、クライアント目線で考えてくれる理想の建築士を見つけましょう。