建築業界で働く人材は高齢化が進んでいます。それに伴い、シニア世代の転職も珍しいものではありません。
定年を迎えてもまだ建築業界に携わりたい、新しいこと、今より大きなことにチャレンジしたいといったシニア世代の転職について解説します。
建築業界ではシニア世代の転職は有利とされていますが、その理由は何なのか、そして転職をする際にはどんな問題があるのかについて見ていきましょう。
建築業界のシニア世代の現状と将来性
建築業界は申告な人材不足に加えて、人材の高齢化が問題になっています。
現在、建築業界で働く3人に1人が55歳以上であるというデータも出ており、今後も若手の人材が増える見込みはなく、平均年齢はこのまま上がっていくことが予想されます。
日本全体の少子高齢化や不景気の影響により新築住宅や公共事業の件数も減少しており、建築の仕事は減っていく一方です。
ですが建築の業者が減っているわけではなく、少ない仕事を多くの業者で奪い合っていかなければなりません。そんな中で人材不足は一刻も早く解消しなければならない問題です。
建築の仕事は少なくなっても完全になくなることはありません。新築よりもリフォームやリノベーションなどに力を入れ始めている業者も多いです。
多くの建築の業者は年齢に関係なく人材を募集しており、シニア世代でも転職はしやすいと言えるでしょう。
建築の転職でシニア世代が有利な理由
建築の転職ではシニア世代も有利と言われています。
他の業者ではシニア世代の転職は不利と言われていますが、どうして建築業界ではシニア世代が人気なのでしょうか。
その理由として考えられるポイントを紹介します。
経験やスキルが豊富にある
建築業界では専門性の高い知識やスキル、豊富な経験が求められます。
シニア世代が若手に勝る大きなポイントは、この経験やスキルが豊富という点です。
学校では学べない現場で活かせる知識を持っているというのは、即戦力を求める企業にとっては非常に魅力的です。
建築に関する国家資格の中には、一定年数以上実務経験を積まなければ取得できないものもあり、このような点も若手よりシニア世代の方が有利と言われている理由の一つです。
ヒアリングやコミュニケーション能力が高い
シニア世代は建築に関する専門知識やスキルが豊富なだけでなく、人間力の高さの点からも転職に有利です。
これまでに多くのクライアントや業者と接してきた経験があるため、取引の方法や譲れる点、譲れない点の判断などが正確です。
クライアントや取引をする業者にとっても、若手の人材より経験豊富なシニア世代の方が相談しやすい、信頼しやすいという点もあります。
さまざまな経験を積んできたシニア世代だからこその懐の大きさで、周囲と円滑にコミュニケーションを取れるのもアピールポイントとなります。
定年退職後にできる仕事の求人も多い
建築業界にはさまざまな仕事があり、定年退職後のシニア世代でもできる仕事がたくさんあります。
施工管理や事務や販売、営業、若手の人材の育成などの求人も多く、シニア世代に人気を集めています。
働く意欲があっても、シニア世代になると若手の頃のように体力が続かなかったり、作業に時間がかかったりしてしまいます。このような体力面の問題は自分ではどうすることもできません。多くの人が協力して働く建築現場では事故の危険性を高めるシニア世代の採用に消極的である可能性もあります。
そんな場合は、現場ではなく別の形で建築業界に携われる仕事を探してみるのもおすすめです。建築業界の仕事であれば、これまでの経験や知識を活かした働き方ができます。
そもそも若手の人材が少ない
建築業界は若手の人材が非常に少なく、若手の人材が欲しいと思っていても思うように集められないのが現状です。
ですが仕事は続けなければならず、一人でも多くの人材を確保する必要があります。
そのため、必然的にシニア世代でも転職しやすい状況になっています。
中小企業から大手企業へ転職する、建築業界でもまったく別のジャンルに転職するといった場合は若手の方が有利ではありますが、そうでない場合はシニア世代でも問題なく転職活動を進めることができるでしょう。
建築の転職でシニア世代が注意すべきポイント
建築業界ではシニア世代も転職しやすいですが、転職を考える際にはいくつかの点に注意しなければなりません。
今後も長く働けるように、現状と将来性を見極めた転職先を探すことが大切です。
AIにはできない技術を身に着ける
近年、AIによってさまざまな仕事が代行されています。今後90%以上の仕事はAIに奪われる可能性があるという研究結果も出ており、今後の働き方を考える上で非常に重要なポイントです。
せっかく転職に成功しても、その作業ができるAIが開発されればその人の仕事はなくなってしまいます。
AIにもできる単純作業の仕事ばかりではなく、人間にしかできない仕事のスキルを身に着けておくことも大切です。
クリエイティブな仕事、プランを臨機応変に変更する管理能力、クライアントとスムーズにやり取りをするコミュニケーション能力などは重要です。
建築の経験が豊富だから、資格を持っているからと安心せず、日々新しいことを学ぶ姿勢を大切にしましょう。
新しい価値観も受け入れる
建築業界は55歳以上の、バブルの時代を経験した層が多いです。この層は会社のために尽くす、仕事を何よりも優先するといった価値観が強いです。
ですが近年はさまざまな価値観が生まれており、ライフワークバランスを考えた働き方、育児や介護をしながらの働き方、男女平等の働き方が浸透しつつあります。
年齢を重ねれば重ねるほど新しい価値観、自分と違う考え方は認めにくくなり、頑固になってしまいがちです。
いつまでも建築業界で活躍したいのであれば、自分と違う価値観、考え方を否定せず、さらに自分の価値観を後輩に押しつけるようなことはせず、多様性を認めることが大切です。
自分と違う考え方でもより良いと思う考え方があれば自身にも取り入れ、常に新鮮な考え方ができるように頭を柔らかくしましょう。
体力や精神力は客観的に捉える
建築業界は体力が必要な仕事が多いです。細かい作業を長時間続けるには精神力も必要になります。
年齢を重ねるとこのような体力や精神力が衰えるのには抗えません。
自分はまだまだ働けるというやる気だけではどうしようもないことも多いです。
このときに自分の体力や精神力の衰えを無視して働き続けると、思わぬミスをしたり作業を遅らせてしまう可能性もあります。ちょっとしたミスが大事故につながるかもしれません。
建築の現場は一人で進められるものではなく、多くの人と協力して作り上げていくものです。
自分の体力や精神力は客観的に見極め、少しでも不安があるようなら現場での仕事ではなくサポートやデスクワークの仕事を探すなどの転職方法も検討しなければなりません。
シニア世代の建築業界での転職を考えよう
建築業界のシニア世代の転職について解説しました。
シニア世代が多い建築業界では、転職も比較的有利に進めやすいです。
ですがそれはシニア世代の経験や知識を期待してのことです。シニア世代で転職をお考えの方は、しっかりアピールできる実績や資格があるかどうかを考えましょう。
また、転職後も長く建築業界で働き続けるためには頭を柔らかくすること、自分の能力を冷静に見極めることなども大切です。