建築にはさまざまな仕事がありますが、その中で施工以外で建築に携わるのが建築コンサルタントという仕事です。
建築コンサルタントとはどのような仕事なのか、その業務内容や将来性について解説します。
建設コンサルタントとして働きたい、現在建設コンサルタントとして働いているという方は、将来建築業界で生き残っていく方法も考えておきましょう。
建設コンサルタントの仕事内容
建設コンサルタントとは、工事を発注するクライアントにさまざまなアドバイスをする仕事です。
このとき建設コンサルタントが請け負うのは住宅などの小規模な建築ではなく、道路や橋などのインフラ設備、空港、ホテル、商業施設などの大規模な工事がほとんどです。
大企業や自治体などがクライアントとしてこれらの大規模な工事をゼネコン会社に依頼する場合、建築の知識がないケースがほとんどです。
依頼を請ける側にとっても具体的な指示がなければどう作業を進めていけばいいかわからず、やり取りをスムーズに進めることができません。
そこで建設コンサルタントが役割を発揮します。どれくらいの予算があるのか、どれくらいの規模の工事なのか、周辺にどのような影響が出るのかなどを調査してアドバイスをおこないます。場合によっては事業計画の作成をクライアントに代わっておこなうこともあります。
これによりクライアントとゼネコン会社のやり取りがスムーズになり、クライアントも建築の専門的な知識がなくても納得のいく工事を安心して依頼できます。
建設コンサルタントという名前ではありますが実際の建築作業をおこなうわけではなく、建築作業にいたるまでの工程をサポートするのが建設コンサルタントの仕事です。
空港などの施設の工事、河川や海岸の工事、電力や土木の工事、道路の工事、造園の工事など21種類の部門があり、それぞれに高い専門性が求められる仕事でもあります。
クライアントに代わり計画する
クライアントの「こんな工事をしたい」という漠然な要望を形にするために計画を立てていきます。
工事自体が可能なのか、どんな問題があるのか、予算内でできる工事なのか、そしてどれくらいのスケジュール、工期を予定すべきなのかなどを考えていきます。
これらは建築についての専門的な知識がなければ考えるのが難しく、一般の企業や自治体などには専門家がいません。そんなクライアントに代わって計画を立て、さらにクライアントにさまざまな提案をします。
クライアントが抱えている問題を聞いた上でゼロから工事の内容を計画することもあります。
工事予定地や周辺を調査する
建設コンサルタントが請け負うのは大規模な工事のサポートです。
そのため、工事予定地や周辺の情報収集、調査は非常に大切です。工事をする前に土壌が汚染されていないか、工事をすることで汚染の可能性がないか、さらに工事をして問題がないほど地盤はしっかりしているかなどを確認しなければなりません。
降雨量や積雪量、気温なども調査しておくことで工事のスケジュールを調整しやすくなります。
また、工事予定地だけでなく周辺地域の調査も必要です。工事をおこなうことで騒音や粉じん、振動などの被害が多くなるようであれば工事内容を見直さなければなりません。
工事によって環境を汚染する可能性がある場合、周辺地域の生態系にも悪影響が出るかもしれません。
このようなことを調査した上で、クライアント、ゼネコン会社、さらに周辺住民や周辺の環境に配慮した計画を立てる必要があります。
図面の設計をする
工事の計画、調査が進み、実際に工事の内容が決定したら次に図面の設計もおこないます。
建設コンサルタントが図面を作成することも多いため、建築や製図のスキルは必須となります。一方で大手の建設コンサルタント会社の場合は計画、調査のみをおこない、提携している建築士事務所や設計事務所に設計を依頼するケースもあります。
明確な基準はありませんが、商業施設やホテル、ビルなどの建築物の工事の場合は建築士が設計をおこない、道路や橋、港などのインフラ系の工事の場合は建設コンサルタントが設計をおこなうことが多いです。
建築物の管理をおこなう
工事が始まるまでのサポートをするだけでなく、工事完了後の管理も建設コンサルタントがおこないます。
建築物やインフラ設備が想定通りに稼働しているかを調査し、必要であればメンテナンスや修正の提案をクライアントにおこないます。
道路などのインフラ設備は日々多くの人が利用し、周辺住民の生活に関わる大切な部分です。工事をしたことで逆に不便になっていないか、安全に利用できるかなど、日々点検をおこない、事故やトラブルを防がなければなりません。
建設コンサルタントの現状
建設コンサルタントの仕事は工事のクライアントである官公庁、地方自治体などによって大きな影響を受けます。
公共事業に大きく投資できる状態であれば建設コンサルタントの需要は増しますが、そうでない場合建設コンサルタントの需要は減る一方です。
1990年代の後半には公共事業が盛んにおこなわれ、建設コンサルタントの需要はピークとなりました。ですがそれ以降は公共事業にかけられた費用は低下し続けており、現在はピーク時の半分程度となっています。
現状、建設コンサルタントの仕事は厳しいのが実情です。
建設コンサルタント会社も新規の人材を雇うのを控える状態が続いていました。若い人材の数が少ないまま現在まで建設コンサルタントの仕事が続いているので、人材の高齢化も心配されています。
建設コンサルタントの将来性
建設コンサルタントの将来性について解説します。現状では厳しい状態の建設コンサルタントですが、どのように行動すれば建築業界で生き残れるのかを考えておくことも大切です。
業者の数自体は増加している
建築コンサルタントの需要は低下していますが、建築コンサルタント業者自体は増加傾向にあります。
また、先述の通り人材の高齢化も心配されており、それを解消すべく新規の人材を集める動きもみられています。
建設コンサルタントの業者数が多く数少ない仕事を取り合う形になっているだけでなく、建設コンサルタントを目指す若手の人材も、多くの業者が取り合う形になっています。
インフラ系の工事は数年間で増える
東京オリンピックが開催されただけでなく今後は大阪万博も控えており、インフラや大規模な宿泊施設などの工事は数年間で増加することが予想されます。
この数年間は建設コンサルタントの需要はやや高まるでしょう。
ですが少子高齢化が進む日本において公共工事の予算は削られる一方です。この数年間で、建設コンサルタントとしてだけでなく別の道に進むことも考えておかなければなりません。
別の事業に取り組む必要がある
建設コンサルタントは建築についてのさまざまな専門知識が必要です。そのため、建築に関する国家資格を複数取得している方も多いです。
将来性の低い建築コンサルタントの仕事を続けるよりも、資格を活かして別の建築系の仕事に進むこともおすすめです。
別の事業に参入した建設コンサルタント会社の実例も多く、これまでに培ってきた経験や知識を活かして活躍する道を見出していく必要があります。
建設コンサルタントの仕事や将来性を見極めよう
建設コンサルタントの仕事内容や将来性について解説しました。
建築の知識がないクライアントに適切なアドバイスをして工事内容を決定していくのが建設コンサルタントの仕事です。
公共工事の予算が減少し続ける昨今では建設コンサルタントの需要は低くなるばかりですが、今後も建築業界で活躍したいのであれば建設コンサルタントのスキルを活かせる場所を早めに探しておくことも大切です。