建築業界の中でも大手企業には海外での仕事をメインにしているところもあります。
今、日本の建築業界において海外は非常に重要な市場です。
今後も長く建築の仕事を続けたい、より大きなやりがいのある仕事をしたいという場合、海外進出を視野に入れる必要があるかもしれません。
今回は建築業界と海外進出の関係、建築業者が海外進出を狙うべき理由、さらに海外進出を考える際に気を付けたいポイントなどについて解説します。
建築業界の海外進出の現状を確認しよう
建築業界の中には海外進出に成功している企業はたくさんあります。
中には売り上げの7割以上を海外からの依頼に頼っている企業もあり、今後も海外進出を始める建築業者は増えていくことでしょう。
日本国内では、東京オリンピックや大阪万博などで一時的な好景気が見込まれます。
ですが長い目で見ると少子高齢化などの問題もあり、今後も不景気が続くことが予想されます。
一方、建築業界は戦後から海外進出を徐々に進めています。リーマンショックなどの影響で一時期は打撃を受けた建築業界ですが、現在は東南アジアを中心に市場を拡大し、年間で1兆円を越える受注額が続いています。
建築業者が海外進出を狙うべき理由
日本国内では建築業は今後も非常に厳しい状況が続くことが予想されます。そこで視野に入れてほしいのが海外進出です。
今こそ建築業者が海外進出を狙うべき理由を紹介します。
現状維持のままでは今までのように仕事を得続けるのは難しいとお考えの業者の方は、ぜひ参考にしてください。
国内での依頼は減少する
日本国内では建築業界の市場は一時的に盛り上がることはあっても、高度経済成長期のように需要が高まり続けるということはありません。
少子高齢化や所得の減少により、新しく住宅を建てたい、都心のマンションに住みたいと考える人は少なくなり、今ある建築物を少額のリフォームやリノベーションで維持しようと考える人が増えるためです。
また、依頼数が少ない中で多くの建築業者が仕事を取り合うことになり、受注の費用を安くしたり工期を短くしたりといったサービスをしなければ仕事を勝ち取れなくなっています。場合によっては仕事を請けても赤字になってしまう業者もあるでしょう。
このような現状を打破するには、国内での仕事にある程度見切りをつけ、海外に進出する必要もあります。
発展途上国での需要が高い
日本から海外に進出している企業は、タイ、ドバイ、インドネシアなど、東南アジアをターゲットにしているところが多いです。
東南アジア以外でも発展途上国は今後も住宅だけでなく宿泊施設、観光施設、商業施設などの需要がどんどん高まり、建築業者の仕事もたくさんあります。
一方で日本はこれらの需要は落ち着いてしまっているので、目指すなら今後も需要が高まり続けることが予想される発展途上国への進出です。
日本の建築技術は地震や津波などの天災に強く、デザイン性にも優れているため、海外でも高く評価されています。これも、日本の建築企業が海外で受け入れられている理由の一つです。
中小企業は融通が利く
海外に進出している企業はほとんどがゼネコン会社などの大手企業です。
ですが、中小企業こそ海外進出には適しています。
大企業と違い意思決定がスムーズで、海外進出だけでなく仕事を受け入れるか受け入れないか、さらに規模を拡大するか撤退するかなどの判断を即座にできます。
小規模な仕事から着々と事業を拡大できるというメリットもあり、損失や投資を最小限に抑え、賢い経営ができるでしょう。
建築業者の海外進出を失敗させない対策
建築業者が海外進出をする際は、さまざまなリスク管理が大切です。
一度にかかる投資額が大きい分、失敗したときの損害は莫大なものになってしまいます。
どのような対策をしておくべきなのかを事前によく確認しておきましょう。
海外の法律を学ぶ
当然ですが、国によって法律は大きく変わります。
進出する国を決めたら、その国の法律を一からしっかり学ぶ必要があります。
建築についての法律だけでなく、現場の作業員を守る法律、輸入、輸出に関する法律、税金についてなど、一つの仕事を得るだけでも膨大な知識が必要です。
海外の法律に詳しい専門家と契約を結ぶなどの方法もあります。
海外の市場調査をおこなう
進出する国の市場調査をおこなうことも大切です。
どのような建築に需要があるのか、どんな人が日本の建築業者を利用するのか、さらに物価や費用、政治的な状況なども確認しておく必要があります。
これに失敗すると思うように仕事が得られなかったり、得られたとしても思うほどの利益を上げられなくなったりしてしまいます。
現地のことは海外からは見えにくいです。現地で生活する専門家に協力を仰ぐことも大切です。
さまざまなリスクを想定する
海外では、日本国内では想定できないような出来事が起こるのは日常茶飯事です。
ストライキ、デモ、テロといった問題から、現地ならではの文化の違いも大きいです。
日本では問題なく進められる作業でも、ちょっとしたことでクレームが入ったり事故につながったりしてしまいます。
これらのリスクを想定して対策を練るには莫大な知識やコスト、さらに手間もかかります。ですが万が一のトラブルが起きた際迅速に対応するためにも、想定できる事態はすべて想定して対策を考えておきましょう。
現地でのパートナーを探す
海外進出の際には、現地でのパートナーの存在が重要です。
法律や政治状況の把握はもちろん、現地のクライアントや業者とのやりとりなども、現地のことをしっかり理解している人がいるのといないのとでは大きな違いがあります。
どのようにしてパートナーを見つけるのかも重要なポイントです。現地の人材を紹介してくれるサービスもありますが、仲介手数料が高い、信頼できるパートナーを紹介してくれるとは限らないなどの問題もあります。
パートナー選びは慎重に、じっくり時間をかけて見極めるようにしてください。
失敗した際の撤退方法を考えておく
当然ですが、海外に進出した建築業者がすべて成功するわけではありません。
どんなにリスク管理をして現地調査をしていても、失敗するときは失敗してしまいます。そんなときにどのような対応を取るかは非常に重要です。
大きな損失が出ているのに対策も取らずにだらだらと現地で仕事を続けていると、どんどん損失が増えて取り返しのつかないことになってしまいます。最悪の場合、企業全体に悪影響を及ぼす可能性もあります。
海外進出をしたものの思うように成果が出せなかった場合も想定して、事前に撤退方法も考えておきましょう。
どれくらいの損失が出たら、どれくらいの期間で成果が出せなかったら撤退するかという目安を決めておくこともおすすめです。
中小企業はこのような判断も速やかにできるため、損害を最小限に抑えられます。
業界の動向を把握しつつ海外進出を目指そう
建築業界で進む海外進出について解説しました。
海外進出を進める大企業は多いですが、判断が速やかにできる中小企業も海外進出には適しています。大企業がターゲットにしていない客層や地域を見つけることで、海外でも活躍できるでしょう。
海外進出にはさまざまなリスク管理や対策が必要です。焦らずじっくり時間をかけて、海外進出の準備をしていきましょう。