業者が工事を請け負う際には工事請負契約書を作成しなければなりません。
不正を防いだり、あとからトラブルになるのを防ぐために工事請負契約書は必ず必要です。
この工事請負契約書には何を記載するのか、どうして工事請負契約書が必要なのか、さらに工事請負契約書を作成する際の注意点などをチェックしましょう。
工事請負契約書の記載事項
工事請負契約書にはかならず記載しなければならない14の項目と、工事によって追加で必要な8の項目があります。
それぞれの内容について解説します。
すべての工事で記載が必要な14項目
①まずは工事をおこなう目的を明記しましょう。
次に②そのためにどんな工事が必要かを明記します。
③工事に追加、変更があった際にどう対応するか、④工事中に追加料金や損害が発生した場合にクライアントと業者のどちらが何割負担するか、⑤その工事をおこなうことで第三者に被害が及んだ場合の負担割合を記載します。⑥その場合の第三者への対応、説明などもどちらが何をおこなうかを明確にしておく必要があります。
⑦工事が完了した際の引き渡し方法、⑧工事が完了してからの支払いについて、さらに⑨違約金についても明確に記載します。⑩工事後にトラブルが発覚した際の責任の所在も確認してください。
⑪契約を解除された場合の責任対応、支払いについて、⑫反対に業者から契約を解除する場合の対応についても明記しておきます。
また、⑬この契約の権利は第三者に譲渡できないことも工事請負契約書に記載しておかなければなりません。
最後に、⑭契約書に記載していないトラブルが発覚した際にはどのように解決するかの方法も記載し、双方で納得のいく結果を出せるようにしてください。
工事内容によって変わる8項目
工事によって①工事名、②工事をおこなう場所、③工事の期間、④工事をしない日や時間帯、さらに⑤請求する金額、⑥支払い時期、支払い方法、⑦調停人、⑧その他の項目の8つを記載します。
上記の14項目は工事内容に関わらず一定でも問題ありませんが、この8項目は工事によって書き換える必要があります。
テンプレートを作成し、この部分だけを書き換えるようにするといいでしょう。
工事請負契約書の必要性
どうして契約の際に工事請負契約書を作成する必要があるのかについて解説します。
工事の内容をあらかじめ明確にしておくことで、クライアントと業者の意見の食い違いを未然に防ぐことが可能です。
契約書に不備や漏れがあると、クライアントの都合のいいように追加工事を依頼されたり違約金を請求されたりする可能性があります。
工事内容を明確にする
工事請負契約書には工事内容を明確にするという目的があります。
工事の内容があいまいだと、クライアントが期待した工事をしなかった、業者がおこなった工事がクライアントにとっては望まないものだったなどのトラブルに発展してしまいます。
それによって追加料金が発生したり工期が伸びた場合はさらに深刻な問題になる可能性があります。
どちらかに不利な契約を防ぐ
工事請負契約書で工事内容や責任の所在を明確にすることで、クライアントと業者、どちらかに不利になる契約を防げます。
工事請負契約書の内容に不備があると、思わぬ点で責任を背負わされたり余計な業務が増えたりしてしまいます。
なかなか料金を支払ってもらえない、契約内容を後から変更されて負担を強いられるなどのトラブルを防ぐためにも、工事請負契約書には細かな点まで明確に記載するようにしてください。
工事請負契約書作成時の注意点
工事請負契約書を作成する際の注意点について解説します。
下記の点に注意し、契約書に不備や漏れがないようにしてください。
工事請負契約書は無料のテンプレートなどもありますが、それを取り入れる際は内容をよく確認しておくことが大切です。
違約金を明確にする
クライアントの都合や工事の状況などで違約金が必要になった場合、業者の都合で工事が遅延してしまった場合は、工事内容や事業の規模に応じた違約金を設定しなければなりません。
「違約金は〇円」とすると工事の規模によって割合が変わってしまうので、「工事の料金の〇%」という風に割合で指定するのがおすすめです。
業者の都合により工事が遅延した場合は年5~6%にしなければならないという決まりがあるので注意してください。
工期の延長期間を明確にする
建築の工事は、トラブルや天候の都合などでどうしても遅れてしまう可能性があります。
その際にどれくらいまで延長できるかを明確にしておきましょう。
この期間内なら違約金が発生しないという猶予を設定しておかなければ業者の負担が大きくなってしまいます。
クライアントの承諾がなくても工事請負契約書に延長期間の記載があれば業者が期限内まで延長することができます。
追加請求の方法を明確にする
工事の内容によっては追加で資材や人材が必要になったり、期間延長によって追加で費用が発生することは珍しくありません。
そんなときに追加請求をきちんとできるよう工事請負契約書に記載する必要があります。
追加請求についてはクライアントから承認されなければ請求できないことになっています。
工事請負契約書には、請求金額について、請求方法についてなどを明確に記載しておきましょう。
第三者への対応を明確にする
工事内容によっては、騒音や作業員の対応によって近隣住民からクレームが来る可能性もあります。
工事内容を説明したり、工事内容を見直したりしなければなりません。
ですが法律上では、クレームが来たから工事期間を延長するといったことは認められません。どうしても工事の時間を減らして工事期間を延長する場合は業者が違約金を支払わなければならないので注意してください。
工事請負契約書にはクレームの対処、説明、責任の所在を明確に記載しましょう。
正確な工事請負契約書を作成しよう
工事を請け負う際に作成しなければならない必要な工事請負契約書について解説しました。
工事の内容を明確にし、クライアントと業者が平等な立場で工事を進めるために必要なのが工事請負契約書です。
正確な内容の工事請負契約書を作成し、余計な負担やトラブルが発生することを防ぐことが大切です。
かならず記載しなければならない項目はたくさんありますので、事前にテンプレートを作成しておきましょう。
建築業が業務をおこなう上で作成しなければならない書類は、工事請負契約書の他にもさまざまな種類があります。その中の一つが工事経歴書です。こちらは工事の契約をおこなう以前に、工事の許可を得るために必要なものです。工事経歴書とはどんなものなのか、何を記載する書類なのか、工事請負契約書と一緒にその内容を確認してみてください。