建築現場での事故は避けたいものですが、危険な作業を伴う現場では万が一に備える必要があります。
今回は、建築現場で事故が起きたらまず何をすべきなのか、正しい手続き方法や注意点を解説します。
手続きを間違えたり手間取ったりすると、従業員に負担がかかり、工事が遅れてしまう可能性もあります。
迅速に対応できるよう、現場での事故に備えておきましょう。
工事現場で起こりやすい事故
まずは工事現場で起こりやすい事故を確認しましょう。起こりやすい事故に備えて安全確認を怠らないのも、現場の作業員にとっては大切です。
基本的な日々の確認も忘れないようにしましょう。
足場からの転落
足場からの転落は、工事現場で起こる事故の中でも34%と非常に高い確率で起こっています。
高層ビルでの作業はもちろん、一般的な戸建ての住宅での作業であっても、落ち方が悪かったり、下に機材などがあると思わぬ大事故につながります。
足場での作業は安全ベルトを着ける必要がありますが、慣れているから、これくらい大丈夫だからと油断していると事故を起こしてしまう可能性があるので注意しましょう。
重機に巻き込まれる
ダンプカーなどに巻き込まれたり、挟まれたりといった事故も多く報告されています。
建築現場では特殊な重機を扱うことも多く、安全確認を怠って作業をすると近くで作業をしている作業員に気づかず、大事故を起こしてしまう可能性があります。
足や腕などが巻き込まれれば大きなけがになるだけでなく、体が巻き込まれることで一生涯の大けがを負ったり、最悪の展開になったりするかもしれません。
資材で体を傷つける
建築現場では木材や金属などの資材も多く使われ、これらで体を傷つけてしまうケースもあります。
指を切ったり、体がこすれたりといったけがは、残念ながら日常的に起こりやすいです。
とくに慎重に作業をしていても避けられない場合もありますが、軍手をはめる、正しい方法で取り扱うなど、作業員全員が危機管理を高く持つことも大切です。
落下してきた資材にぶつかる
高所で作業していた作業員が落とした資材や機器にぶつかるといった事故もあります。
とくに、高層ビルでの作業の場合、ほんの小さな落下物でも、あたりどころによっては最悪の結果になるケースも考えられます。
高所で作業している真下では作業をしない、持ち物にはベルトをつけるなどの対策も必要です。
工事現場で事故が起きたらすべきこと
工事現場での事故は避けたいものですが、どんなに安全対策をしていても事故が起こってしまう可能性は十分にあります。
万が一事故が起きたときに何をすればいいのか、いざというときのために確認しておきましょう。
まずは作業員の現状確認
まずは作業員の現状を確認します。応急処置ができる場合は適切な処置を行いましょう。
救急車を呼ぶ
現状確認と同時に救急車を呼びます。どのような状態かを報告し、迅速に対応してもらいましょう。
深刻な場合は、作業員の家族にも連絡する必要があります。
二次被害を防ぐ
現場での事故で防ぎたいのが、二次被害です。
重機が暴走したり、足場が崩れたりなど、一つの事故でけが人が増えたり、現場での作業が難しくなったりする可能性もあります。
現場の現状を把握し、周辺を立ち入り禁止にする、作業員を避難させるなど、被害が拡大しないように注意を払います。
事故の被害が大きく深刻な場合は、警察や労働準監督署に報告する必要もあります。
原因究明と事情聴取
その後すぐに、警察や労働基準監督署による原因究明と事情聴取が始まります。
虚偽の報告は違法行為となるため、何が原因で事故が起きたのか、現場はどのような状況だったのかなどを正確に報告しましょう。
労働基準監督署へ報告
工事現場で起きた事故は、労働基準監督署へ報告しなければなりません。
けがをした作業員の休業日数が3日以内の場合は、3か月に1度の定期報告で行えますが、休業日数が4日以上ある場合は事故発生後すぐに報告を行いましょう。
報告の手順は以下のとおりです。
労災指定病院での受診
けがをした作業員は、労災指定病院で受診します。受診の際は労災事故であることを必ず報告しましょう。
受診の際に、「療養補償給付たる療養の給付請求書」を提出するケースもあります。この報告書の提出が間に合えば、治療は無償で受けられます。
労災指定病院で受診しなかった場合は、いったん医療費を支払ったうえで、医療費用請求書を労働基準監督署に提出して費用を受け取ります。
全額支給されるまでに時間がかかってしまうため、迅速に対応するためには労災指定病院で治療を受けるようにしましょう。
死傷病報告書を提出
けがをした作業員を雇用している事業主は、死傷病報告書を労働基準監督署に提出します。
作業員の休業日数が4日以上続く場合は、速やかに報告書を提出しましょう。
休業日が3日以内の場合は、3か月に1度ある定期報告で報告書を提出します。
休業補償給付を請求
けがをした作業員の休業日数が4日以上ある場合は、休業補償給付金が給付されます。
給付金は、平均賃金の8割です。また、給付金を受け取るまでの3日間は待期期間なので、すぐに給付金を受け取ることはできません。
その間は、作業員を雇用している事業主が平均賃金の6割を作業員に対して支払う義務があります。
再発防止について話し合う
労災にまつわる手続きが完了してから、再発防止について話し合います。
事故の原因を明確にして、注意すべき点、連絡網、責任の所在などを明らかにしましょう。
翌日以降、同じ事故が二度と起こらないように、作業員、雇用主全員が強く意識する必要があります。
再発防止について話し合った内容は、現場にいた作業員だけでなく全体で情報を共有しましょう。
工事現場の事故でやってはいけないこと
工事現場で事故が起きた際にやってはいけないことを紹介します。
工事現場ではさまざまな業者が同時に作業をすることもありますが、責任の所在を明らかにし、正確な情報を報告しなければなりません。
万が一虚偽の報告があったり、責任逃れをしたりした場合は、違法行為とされ、業務停止命令が下る可能性もあります。
責任を押し付けあう
工事現場で起きた事故の責任は、統括安全衛生責任者が負うのが一般的です。
安全衛生責任者や、管理技術者が責任を負うケースもあります。
そのほか、現場管理人も労災事故の責任者となることもあります。
万が一の事故の際に責任を押し付けあって対応が遅れることのないよう、責任の所在は明確にしておきましょう。
責任者は、事故が起きたら迅速に対応し、ほかの作業員の避難や救急車の手配などを迅速にしなければなりません。
日々の安全管理も現場の責任者の仕事です。
虚偽の報告を行う
工事現場での事故は、速やかに、正確に労働基準監督署に報告しなければなりません。
虚偽の報告をすると、違法行為とみなされ、刑事罰が課せられます。
過去には、元請け業者が書類送検された事例もあります。
工事現場で事故が起きると損害賠償を支払わなければならな、作業が中断するなど、事業主の負担が大きくなってしまいますが、だからといって虚偽の報告をすると取返しのつかない事態になってしまうため、正確な報告を行いましょう。
工事現場での事故は迅速な対応が大切
工事現場で事故が起きた際は、迅速に対応することが、作業員の命を救うためにも、その後円滑に作業に戻るためにも大切です。
労働基準監督署への報告など、事業主が行うべきことは多数ありますが、いずれも迅速に、正確に作業を進めましょう。
落ち着いて正しい対応をするために、事前に一連の流れを確認しておくことも忘れないようにしてください。