建築業界にはさまざまな専門資格があります。
今回はその中で、現場には欠かせない建築施工管理技士資格について解説します。
建築施工管理技士はどのような仕事ができるのか、資格取得にどのようなメリットがあるのかを確認し、今後のキャリアに役立てましょう。
建築施工管理技士の仕事内容
建築施工管理技士の資格を取得するとどのような仕事ができるようになるのかを解説します。
現場での仕事に欠かせない建築施工管理技士は、施工計画の他行程や安全、品質の管理など、施工管理としての役割を果たします。
建築現場に欠かせない業務ばかりですので、改めてよく確認してください。
施工計画
現場のスケジュールを組み立てる仕事です。
周辺の状況や天候などを調査した上で最適なスケジュールを組み、適切な業者、人員を配置します。
この段階でミスがあると工事をスムーズに進められず、納期に遅れが出る可能性もあります。
クライアントにとってはできるだけ早く完成させてほしいのが本音ですが、無理な計画を立てると天候の影響や従業員の怪我によって計画通りに進まなくなるかもしれません。
効率的なスケジュールを考えるとともに、クライアントや各業者、従業員ともやり取りをしつつ慎重に決める必要があります。
工程管理
施工計画通りに作業が進むよう、逐一行程も管理していきます。
現場で働く従業員のスケジュールを確認するとともに、資材や機材の手配も行わなければなりません。
規模の大きな工事になると、そのぶん行うべき行程も多くなります。
建築施工管理技士には一級と二級がありますが、一級になるとより規模の大きな工事を担当できます。
その分責任も重たくなり、一つのミスが全体の工期に影響を及ぼす恐れもあります。
安全管理
工事をスケジュール通りに進めるためには現場の安全管理も欠かせません。
従業員が怪我をすると工事自体がストップするだけでなく、人材が不足してしまいます。
企業の信頼問題にも関わるため、より一層慎重に進める必要があります。
品質管理
作業を急ぐあまり工事の品質が劣ってしまうようなことがあってはなりません。
建設後、多くの人がその建築物を安心して使い続けられるよう、品質管理も徹底して行いましょう。
スケジュールを正確に伝えることが安全管理や品質管理にもつながるため、コミュニケーションスキルも重要になるポイントです。
また、作業の漏れやミスが発覚すると作業をすべてやりなおさなければならないため、その都度行程を確認し、ミスがないようチェック、ミスがあれば速やかに指摘する力も求められます。
一級を取得すると制限がなくなる
建築施工管理技士には一級と二級があり、それぞれに対応できる工事の規模に違いがあります。
二級建築施工管理技士は受験資格を満たせば比較的受験しやすく、制限があるもののすぐに施工管理の仕事に対応できます。
一方で一級建築施工管理技士は対応できる工事の制限がなく、オフィス、マンション、商業施設など規模の大きな工事にも対応しなければなりません。そのため受験資格が厳しく、合格率も二級よりは低いです。
建築施工管理技士を取得するメリット
建築施工管理技士の資格を取得すると、さまざまなメリットがあります。
建築業界での今後どのようなキャリアを目指すかによっても取得すべき資格は変わりますが、建築施工管理技士ならではのメリットも確認しておきましょう。
主任技術者や監理技術者になれる
一級建築施工管理技士の資格を取得すると、主任技術者、管理技術者として現場に配置されます。
二級建築施工管理技士の場合は主任技術者として働けます。
工事現場にはそれぞれの人材を配置する必要があるため、一級建築施工管理技士であれば企業にとってはより人材配置をしやすいです。
現場での活躍の幅も広がり、より豊富な工事に対応できるでしょう。
規模の大きな工事に携わることができれば、実績も増えて転職や独立の際にも役立ちます。
企業の経営規模評価が高まる
建築施工管理技士が企業内にいると、経営事項審査で得点が加算されます。
得点が高ければ高いほど技術力が高い企業と評価され、企業の信頼度がアップします。
二級建築施工管理技士は2点加算、一級建築施工管理技士は5点加算です。
企業にとってはより点数を獲得できる方が有利なので、一級建築施工管理技士であれば転職時にも求められる人材となれるでしょう。
資格手当などで報酬がアップする
建築業界では専門的な資格が必要な業務が多く、各資格に対して資格手当が支給されることもあります。
建築施工管理技士はとくに専門性が高く、さまざまな企業で重宝されます。
資格手当も高く、年収アップにもつながります。
責任も大きく大変な仕事内容ではありますが、建築業界でステップアップして高収入を目指すには必須の資格です。
転職や独立起業に有利になる
建築施工管理技士の資格を所有している人は非常に少なく、全国に7000人程度しかいません。
上記で解説した通り建築施工管理技士がいる企業は得点が加算され、できる仕事の幅も広がるため、転職時には多くの企業から求められる人材になれます。
とくに一級の資格を取得していれば、
- 大手ゼネコン
- 大手ハウスメーカー
- 大手デベロッパー
といった規模の大きな企業への転職も夢ではなく、自身のキャリアアップに活かせます。
建築業界の第一線で活躍し続けたい方は、一級の資格取得を目指しましょう。
建築施工管理技士の受験資格
建築施工管理技士は誰でも受験できる試験ではなく、一定以上の条件を満たす必要があります。
一級、二級で受験資格が違うので、受験の予定がある方はこの条件をよく確認してください。
一級建築施工管理技士の受験資格
一級の受験資格は、大学卒、短大卒、高校卒によって違います。
大学で指定の学科を履修後、3年以上の実務経験がなければなりません。また、1年以上の指導監督の実務経験も必要です。
指定の学科を履修していない場合は卒業後4年6か月以上の実務経験が必要です。
短期大学を卒業した場合は5年以上の実務経験、指定学科以外を卒業した場合は7年6か月以上の実務経験がなければ受験できません。
高校卒の場合、卒業後10年以上の実務経験、指定学科以外を卒業した場合は11年6か月以上の実務経験が求められます。
二級建築施工管理技士の資格を取得していれば5年以上の実務経験が必要です。
その他、これまでの経歴や取得している資格によって必要な実務経験は違います。
最初から一級建築施工管理技士を取得する予定であれば、二級の受験はパスしても構いません。
二級建築施工管理技士の受験資格
大学で指定の学科を履修したものは、卒業後1年の実務経験があれば受験資格を得られます。
指定学科以外を履修した人は卒業後1年6か月の実務経験が必要です。
短大卒の場合は実務経験2年以上、指定学科以外を卒業した方は卒業後3年の実務経験が求められます。
高校の場合は卒業後3年の実務経験、指定学科以外の場合は4年6か月の実務経験が必要です。
必要な実務経験も少なく、指導監督の経験も不要なので、規模の小さい工事のみを請け負う場合は二級の取得のみで十分です。
建築施工管理技士試験の難易度
建築施工管理技士の難易度は30%~40%程度です。
難しい資格ではないことがうかがえますが、上記で解説した通り受験には厳しい受験資格があります。
そのため、一定以上の知識があることが前提とされています。
その上で試験対策を行わなければならないため、仕事を続けながらも過去問を解くなどの対策を続けなければなりません。