近年、世界的に「SDGs」「サステナブル」「持続可能」といった言葉が注目を集めています。
その中でも、地球環境を守るだけでなく人々が安心、安全に生きるための17の目標を掲げているのがSDGsです。
SDGsを考えた事業を行う大企業は多いですが、中小企業はコスト面や知識の面からなかなか導入しにくいのも事実です。
今回は中小企業でSDGsを導入しにくい理由、そして中小企業でも取り入れられるSDGsのポイントを解説します。
中小企業はSDGsには取り組みにくい?3つの理由
中小企業がSDGsに取り組みにくい理由を3つ紹介します。
SDGsへの取り組みを大々的にアピールしている大企業はたくさんあります。
SDGsのアピールをすれば企業のイメージアップにつながる、若い人材の確保につながるなどのメリットがありますが、充分な資金や知識、人材を補えない中小企業ではなかなか導入を進められません。
現在どんな問題を抱えているのかを把握することで、対策も取りやすくなります。
コストが圧倒的に不足している
SDGsに取り組むためにはさまざまなコストが必要です。
環境に優しい資材の導入にはコストがかかりますし、従来の費用よりも高額になるケースがほとんどです。
社員の働きやすさを高めるためには人件費を上げたり、労働時間をカットしたりする必要があります。
さらにSDGsについて理解するための研修やセミナーにも費用がかかります。
中小企業では目の前の事業に取り組んで従業員に報酬を支払うのが精いっぱいで、なかなか新しいことを始める余裕がないケースも多いです。
アピールするメリットが少ない
大企業がSDGsに取り組んでいることをアピールすると、新規顧客の獲得や同業他社との差別化などさまざまなメリットがあります。
一方で、小規模な経営を続けている中小企業ではアピールすることで得られるメリットが少なく、導入に消極的になるケースもあります。
特に地域密着型で経営している工務店のような中小企業では新規顧客を獲得する必要性を認識しづらいです。
ですが今後の建築の需要の変化に伴い、これまでターゲットにしていなかった層にもアピールすることは大切です。
知識を持つ優秀な人材が少ない
SDGsを導入するためには、地球環境や人材マネジメントなど、さまざまな最新の知識を持つ人からのサポートが必要不可欠です。
人材の少ない中小企業では専門的な知識を持つ人がそもそも社内におらず、導入できないケースもあります。
外部からコンサルタントを招くにも当然コストがかかり、今はそれどころじゃないと後回しにしてしまいます。
中小企業ができるSDGsへの5つの取り組み
建築の中小企業がSDGsを導入するのは難しいですが、比較的取り組みやすい項目を5つ紹介します。
今後の建築業界に求められることでもあるので、ぜひ早めの導入を検討してください。
省エネ住宅、ZEH住宅の建設
省エネ住宅、ZEH住宅に関心を持つ個人も多いです。
省エネ住宅は冷暖房におけるエネルギー消費を抑える仕組みが取り入れられた住宅のことで、断熱性や気密性が高いことが特徴です。冬は暖かく夏は涼しい住宅は、冷暖房の使用を最小限に抑えられます。
ZEH住宅はゼロ・エネルギー・ハウス住宅の略称です。エネルギーを太陽光などで自家発電して消費し、エネルギーの収支をゼロ以下にすることを目的として作られた住宅です。自家発電の設備が整っているだけでなく、限られた電力の使用を最小限にとどめられるような工夫もこらされています。
これらには国が定める基準がありますが、今後も基準は変化していきます。
現在対応していても、今後基準以下になってしまう可能性もあるため、常に最新の技術、情報を仕入れて建設、デザインに活かさなければなりません。
再生可能エネルギーの推奨
太陽光発電など、再生可能エネルギーを推奨することも中小企業にできるSDGsへの取り組みです。
省エネ住宅やZEH住宅は国から補助金が出るケースもあり、これらをクライアントに提案することで間接的にSDGsに貢献できます。
発電装置などに対応した設備を住宅や建築物の建設に取り入れることも可能です。
世界的にSDGsの認知度は高まっており、自身も地球環境に優しい住宅に住みたいと考える方も多いです。
そのような方に適切なアドバイスができるよう、専門的な知識を身に着け、実績を積み重ねていきましょう。
社用車をエコカーに
近年は電気自動車を選ぶ方も増えており、社用車をエコカーにしてSDGsに貢献する企業もあります。
ガソリンの使用量が少ない、充電すればガソリンがいらないなどのエコカーは、今後の環境問題の重要な糸口です。
毎日使う社用車をエコカーにすればガソリンの使用量、二酸化炭素の排出量を大幅に抑えられます。
車の買い替えには大きなコストがかかりますが、国からの助成金なども用意されています。
(出典:「国土交通省「「エコカー補助金」の概要について」)
従業員が働きやすい環境づくり
従業員が働きやすい環境を作ることもSDGsの取り組みの一つです。
SDGsと聞くと環境問題への取り組みをイメージする方も多いですが、17の項目の中には「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」といった目標もあります。
私たち一人ひとりが働きがいを感じながら仕事に従事することで、よりよいサービスが生まれ経済成長にも貢献できます。
建築業界は肉体労働や長時間の残業、年間休日日数の少なさなどが問題になっていますが、これらを少しずつ改善していけば従業員が働きやすい環境になっていきます。
従業員が職場に何を求めているのか、何が不足しているのかを客観的に見極める必要もあります。
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多様な価値観を認める採用
SDGsの10個目の目標「人や国の不平等をなくそう」をクリアするために、多様な価値観を認める採用を行うことも大切です。
建築業界は男性社会ともいわれていますが、建築士の4分の1は女性であるというデータもあり、女性が活躍できる場所も用意する必要があります。
また、外国人労働者を受け入れれば人材不足解消につながるだけでなく、日本の価値観では生まれなかった新しいイノベーションが生まれる可能性もあります。
女性だから、外国人だからと差別したり対応を差別するのではなく、お互いに存在を認め合い、さまざまな考え、価値観を受け入れる姿勢こそが今後の厳しい建築業界を生き抜くヒントにもなります。
中小企業がSDGsを取り入れるためにできること
中小企業とSDGsの関係について解説しました。
SDGsは規模が大きすぎて自分たちには関係ないと思ってしまうようなことも多いですが、一つひとつの目標を見ていくと簡単に取り入れられそうな項目もあります。
建築業界においてヒントになる項目もたくさんあるので、ぜひチェックしてみてください。
中小企業が取り入れられる項目も早速導入して、企業の価値を高めるとともに持続可能な社会作りに貢献しましょう。