2015年に国連が発表したSDGsは、持続可能な社会を作るための17の目標を指しています。
地球観光の保護や人権の尊重といった面が注目を集めていますが、SDGsに取り組んでいることをアピールすることでビジネス面でも大きな影響があります。
今回は建築業界におけるSDGsについて、どのような項目をクリアできるのか、そして建築業界がSDGsを意識することで得られるメリットを紹介します。
建築業界が意識できるSDGsの項目
建築業界が意識できるSDGsの項目を紹介する前に、今一度簡単にSDGsの17の項目を紹介します。
- 1 貧困をなくそう
- 2 飢餓をゼロに
- 3 すべての人に健康と福祉を
- 4 質の高い教育をみんなに
- 5 ジェンダー平等を実現しよう
- 6 安全な水とトイレを世界中に
- 7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
- 8 働きがいも経済成長も
- 9 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 10 人や国の不平等をなくそう
- 11 住み続けられるまちづくりを
- 12 つくる責任、つかう責任
- 13 気候変動に具体的な対策を
- 14 海の豊かさを守ろう
- 15 陸の豊かさも守ろう
- 16 平和と公正をすべての人に
- 17 パートナーシップで目標を達成しよう
このようにSDGsにはただ地球環境を守るだけでなく、人権を尊重し、すべての人、生き物が、限りある資源の中で豊かに暮らすことを目標とした項目が集められています。
規模の大きな項目、複雑な項目もありますが、建築業に取り入れられる項目もたくさんあります。
その中でも特に意識してみてほしい、
- ゴール6 安全な水とトイレを世界中に
- ゴール7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- ゴール8 働きがいも経済成長も
- ゴール9 産業と技術革新の基盤をつくろう
- ゴール11 住み続けられるまちづくりを
上記の5つの項目を詳しく解説します。
ゴール6 安全な水とトイレを世界中に
日本では清潔な水、トイレは当たり前にあるように感じられますが、世界ではそうでないところも多いです。
水道がない地域で暮らしている人は世界に20億人、トイレがない地域で暮らしている人は世界で5億人弱いるとされています。
不潔な水は生活にも大きな影響を与え、感染症などの拡大にもつながります。
また、トイレがないとゴミが道端に捨てられ、きちんと処理されないまま汚水が流れる、女性や子どもが性被害に遭う可能性が高くなるなどの問題もあります。
建築の大手企業の中には、貧しいエリアに清潔なトイレを用意したり、給水活動に貢献している企業もあります。
ゴール7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
建築業界が意識しやすいのが7つめの目標「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」ではないでしょうか。
太陽光発電装置、蓄電池システムをあらかじめ完備した住宅は日本でも非常に人気があります。
地球環境に優しいだけでなく、発電した電気を使えるので電気代やランニングコストが抑えられるというメリットもあります。
世界で電気を使えない人の数は7億人以上にも上りますが、日本でエネルギーを作り出す技術が発展すれば、その技術を恵まれない人たちの元へ届けることが可能です。
再生可能エネルギーを利用すれば環境汚染の問題も改善できます。
日本では住宅だけでなく、街全体で再生可能なクリーンなエネルギーを使用する地域も誕生しています。
ゴール8 働きがいも経済成長も
建築業界は労働面においても改善点がたくさんあります。
8つめの目標である「働きがいも経済成長も」では、労働環境の改善だけでなく業務の効率化、従業員一人ひとりの満足度の向上、それに伴うモチベーションアップ、生産性アップ、経済成長が期待できます。
建築業界は「キツい、汚い、給料が安い」の3Kと呼ばれることもあり、肉体労働や厳しい上下関係のイメージから敬遠する若者も多いです。
少子高齢化が進む日本では今後優秀な人材の確保がどんどん難しくなっていくことが予想されますが、働きがいのある企業であることをアピールできれば人材確保もしやすくなります。
建築業界を希望する若者にとっても、SDGsに取り組み従業員のことも考えている企業は選びやすく、入社後も長くその企業に貢献したいと思えるでしょう。
ゴール9 産業と技術革新の基盤をつくろう
建築業界は常に最新技術が生まれており、「産業と技術革新の基盤をつくろう」の項目をクリアしやすいです。
自然災害が多い日本では、耐震性や耐久性など、優れた建築技術を持っています。
この技術を世界に広めれば、洪水や地震などの被害を多くの地域で抑えることが可能です。
最新技術の導入にはコストがかかりますが、知識や技術が広まればその分コストも低くなっていき、より多くの建物、国でも使用しやすくなります。
人々がより安心して生きられるよう、常に最新の技術を追い求め続けることは建築業界における大きな目標です。
ゴール11 住み続けられるまちづくりを
建築業はただ家を作るだけでなく、街全体をつくることも意識しなければなりません。
日本は自然災害が多く、倒壊した建物は再び立て直す必要があります。
できるだけ強い建物を建てることで立て直しにかかるコストを抑え、資金を用意できない人々を事前に救えるようになります。
また、バブル期に建てられたまま放置されている空き家、空きマンション、廃墟も多く残されています。
これらは倒壊や放火、不法侵入などの危険性があり、早急に改善しなければならない深刻な問題です。
アクセスが不便な地方は過疎化が進み、人口減少による廃村、合併なども進んでいます。
街全体を住みやすくするだけでなく、アクセスをよくする、コミュニケーションを取りやすい街の構成を考えるといったことも、建築業界が取り入れられるSDGsの目標です。
建築業界がSDGsを意識する3つのメリット
建築業界がSDGsを意識することで得られる3つのメリットを解説します。
企業のイメージアップにつながる
SDGsに貢献していることをアピールすれば企業のイメージアップにつながります。
建築企業の中にはホームページや資料でSDGsに関する取り組みを大々的にアピールしている企業もたくさんあります。
先進国は発展途上国をサポートする役割がありますが、SDGsに関する活動が認められれば広報活動にも役立ちます。
顧客に選ばれやすくなる、取引先に選ばれやすくなるといったメリットが期待できます。
持続可能な社会作りに貢献できる
限りある資源を大切に使い、持続可能な社会を作っていくことは人間の今後の大きな課題です。
大量生産、大量消費の時代は終わり、これからはすべての人が平等に生きやすい世界を作っていく必要があります。
1つの項目でもSDGsに貢献できれば、小さな取り組みでも社会の役に立っている実感が持てます。
とくに建築業界は社会貢献の面も大きな業務がたくさんあります。
より満足度の高い仕事ができれば、従業員の働きがいもアップし、より生産性を高めていくことも可能です。
若い人材の確保につながる
クリーンなイメージの企業は若い人材に選ばれやすく、労働力の確保につながります。
建築業界の労働者の3分の1は55歳以上というデータがある通り、建築業界は深刻な人材不足に悩まされています。
若手の人材に選んでもらうためには、SDGsなど最先端の取り組みも行っている企業であることをアピールしなければなりません。
今後さらに難しくなっていく人材確保の対策のためにも、どんな取り組みができるか考える必要があります。