少子高齢化の影響を受けてさまざまな業界で人材不足が問題となっています。建築業界も例外ではありません。
建築業界ではとくに若手の人材が不足しており、高齢の労働者が多いという問題も抱えています。
若者が建築業界から離れる理由に「3K」という総称があります。キツい、汚い、危険と言われる労働環境を完全しなければ人材を確保できません。
一方で、近年はその3Kのイメージを払拭するために新3Kという考えも推進されつつあります。建築業界における新3Kとはどんな考え方なのか、そしてどのように導入すればいいのかを考えていきましょう。
3Kの意味と現状を確認
建築業界における3Kとは、「キツい、汚い、危険」という労働環境を指します。一部が「給料が安い」に置き換わることもあります。
この考えは1980年代、バブルで建設業界が好景気だった頃に出始めたもので、現在でも根強く浸透しています。
どの企業を選んだとしても建築業界では多少なりともこの3Kに当たる業務があり、それだけで建築業界に対してマイナスなイメージを持つ人も多いです。
本人だけでなく周囲からの印象も悪く、家族に止められて建築業界へ進むことをやめてしまう若者もいます。
建築業界では若手の人材不足が深刻であり、技術を継承できる人材がなくこのままでは倒産してしまうという建築会社も少なくありません。若手の人材を確保するためにはこの3Kのイメージを払拭し、よりクリーンな労働環境を作る必要があります。
新3Kの意味を確認
3Kの言葉通りキツい、汚い、危険な業務が多く人材離れが進む建築業界において、労働環境を改善して人材を確保するためにさまざまな取り組みがおこなわれています。
その中の一つが「新3Kの導入」です。
新3Kは「給与が適正、休暇が取れる、希望が持てる」の3つのKを意味しています。
それぞれの内容について、建築業界にどのような影響をもたらすのかを詳しく解説します。
給与が適切
適切な金額の給与を受け取ることは労働者にとって当然の権利ですが、建築業界、とくに現場の仕事では給与が業務内容に見合わないと感じられるケースも多いです。
大手の建築企業の現場以外の業務であっても、時間外労働が多く時給に換算すると最低賃金を下回るということも珍しくありません。
建築業界は納期に間に合わせるために時間外労働や休日労働を強いる現場も多いですが、この時間外労働に対する割増賃金が適切に支払われないことも問題になっています。
業務内容に見合う適切な給与を支払うために、勤怠管理を適切におこなう、給与形態を見直す、資格やスキルによって特別手当を用意するなどの工夫が求められます。
給与が適切になるだけでも仕事に対するモチベーションは大きく変わります。適切な金額が受け取れて、安心して生活できることがわかれば、建築業界にも多くの人材が興味を持ってくれるでしょう。
休暇が取れる
建築業界では労働時間の長さ、休日の少なさも問題になっています。
納期に間に合わせるためには長時間の残業、休日出勤が当たり前という考えの会社も多く、休めない状況にストレスを感じて離職してしまう人材も少なくありません。
建築業界全体の人材不足により、一人あたりにおける業務の負担が増えているのも原因の一つです。
働き方改革が建築業界でも進みつつあり、週休二日制を導入する企業は増えています。一方で、中小企業、人材が不足している企業では週休二日制は現実的ではなく、今後の大きな課題となっています。
建築業界のすべての企業で週休二日が当たり前になれば、ハードな業務内容であってもしっかり休めるというイメージが強くなり、建築業界の印象もよくなるでしょう。
希望が持てる
日本は少子高齢化が進んでおり、今後新築戸建ての需要は低下していくことが予想されます。
都市部の開発も進み切っており、発展途上国のように次々に大型の建築の仕事が舞い込むことも期待できません。
将来性の低さから建築業界に希望を見出せない人材は非常に多いです。
これからの建築業界を生き残るために、その企業がどんな工夫をしているかは非常に重要です。
新築戸建ての需要が下がる分、現在住んでいる住宅をより快適にするためのリフォームやリノベーションの需要は上がっていく可能性が高いです。
インフラ関連の工事は需要がなくなることはなく、メンテナンスなどでも常に需要はあります。
さらに海外進出を進めている企業もあります。今後発展していく国であれば建築の需要も高く、今後も長く建築業界で活躍し続けられるでしょう。
将来に希望が持てる企業であれば、優秀な人材も集めやすくなり、企業のさらなる発展につなげやすくなります。
建築業界が新3Kを導入する方法
建築業界では新3Kを導入しようという動きがありますが、なかなか進まないのが現状です。
新3Kを導入することで人材を確保しやすくなるだけでなく従業員の離職を防ぐ、従業員の生産性を高める、企業の業績を上げられるなどのメリットがあります。
どのように新3Kの導入を推し進めればいいのか、その方法の一部を紹介します。
業務の効率化を図る
新3Kの導入において業務の効率化は非常に重要です。
人材が不足しているといっても、現状のまま新しく人材を雇用したところで問題は解決しないかもしれません。
業務に無駄があるとそれだけで人件費をロスしてしまいます。
現在の業務をすべて把握し、二度手間になっている部分、必要以上に手間や時間をかけている部分はないか確認しましょう。
業務を効率化することで労働時間が短縮でき、従業員に休暇を与えやすくなります。
業務に対するストレスが低減されることで従業員の働くモチベーションを上げることにもつながり、働きやすい環境を維持して離職率を防げます。
ペーパーレス化を進める
建築業界ではいまだに手書きの書類や図面などが多いですが、これらを作成するのは非常に時間と手間がかかります。
人為的なミスも発生しやすく、建築現場の作業がストップしてしまうことにもつながります。
書類を確認するために事務所に出向かなければならない、書類を見せるために出張に行ったり書類を送るのに数日かかったりという問題もあります。
書類をペーパーレス化することでこれらの問題を解決できます。書類や図面を簡単に作成できるソフトも多く、作業時間の短縮につなげられます。
クラウドソフトで書類を共有すれば出張や郵送の時間もかからず、リモートワークもしやすくなります。
安全管理、衛生管理を徹底する
汚い、危険といった印象を払拭するためには安全管理や衛生管理が重要です。
従業員を守るためにはどんな点に気を付けなければならないのかを今一度確認し、必要であれば安全のための装備を強化する、トラブルに備えた訓練を徹底するなどの方法があります。
建築の現場の仕事では汚れる作業はどうしても必要です。ですが汚れて当たり前という風潮が強いと不潔で不衛生な印象を払拭できません。
作業着を多く用意する、事務所で洗濯できるようにする、消毒や清掃を強化するなどして、衛生管理も徹底しておこないましょう。
建築業界に新3Kを浸透させよう
建築業界に浸透しているネガティブな3Kというイメージと、今後導入することが推奨されている新3Kという考え方について紹介しました。
建築業界は労働環境が劣悪なイメージが強く、とくに若手の人材離れが問題になっています。
日本の建築業界を担う若手の人材を一人でも多く確保するためにも、新3Kを導入することは大切です。
労働環境を改善するにはまず現状を把握することが大切です。さまざまな業界の中でもとくに年間休日日数が少ないと言われている建築業界について、その実情と理由、改善方法について解説しています。下記の記事も参考にしてみてください。