建築業界では国家資格を持っていないとできない仕事がたくさんあります。
その中でもとくに役立つのが建築士の資格です。
建築士資格があればさまざまな建築の仕事ができるだけでなく、他の資格も取りやすくなる、違う職種、違う業界への転職もしやすくなります。
ですが、建築業界は景気が悪く、将来性も危ぶまれています。建築士資格を持っているから安泰というわけではありません。
建築士の資格を活かして建築業界で生き残るために必要なスキルを紹介します。
一級建築士でも建築業界は不安定
建築の仕事はたくさんありますが、景気がいいとは言えず、不安定な状況はこの先も長く続くことが予想されます。
一級建築士の資格は国家資格の中でも受験条件や試験内容が厳しく、非常に難易度が高い資格です。
取得している人口が少ない分需要も高いですが、それだけでは食べていけないかもしれません。
どうして建築士資格を持っていても将来が危ぶまれているのか、その理由を解説します。
建築の需要が減少している
少子高齢化が進む日本では、新築の戸建てやマンションの需要はどんどん下がっていきます。建築の仕事の需要は、少子高齢化が止まらない限り下がり続けると言えるでしょう。
インフラ工事や老人ホームなどの施設の建築の需要、リフォームやリノベーションの建築の需要などはありますが、高層ビルや宿泊施設をどんどん建てるような好景気は当分戻って来ることはありません。
新築の需要が低下する分、改修、改築などの需要に注目し、必要であれば新しい事業にチャレンジすることも大切です。
AIに仕事を取られてしまう
建築業界だけでなく、さまざまな業界でAI技術が取り入れられています。
AIがさまざまな業務を人に代わっておこなってくれるので、業者側からすると人件費の大幅な削減に役立ちます。
建築士にとっても、余計な仕事をしなくていい分業務を効率化できたり、やりたい仕事に集中できたりといったメリットがあります。
一方で、建築士の需要自体が少なくなってしまうため就職や転職のハードルが高くなってしまいます。
AIにできない仕事を見つけて、AIにできないスキルを身に着けることが今後生き残るためには大切です。
BIMに仕事を取られてしまう
BIMはBuilding Information Modelingの略称です。
三次元のデータをパソコンで処理でき、完成図が一目瞭然になるだけでなくコスト管理やスケジュール管理などが一気に効率化できます。
AIとは違い建築業界のみで進んでいる技術ですが、仕事を取られる可能性があるのはAIとも同じです。
BIMを取り入れることで業務を効率化できれば建築士の仕事は一層進めやすくなりますが、その分人にしかできない仕事は何かをしっかり見極める必要があります。
建築士が建築業界で生き残るために必要なスキル
建築士が建築業界で生き残るためには、資格があるだけでは不十分です。
他の建築士にはないスキル、機械にはできないスキルを身に着け、建築業界で生き残る方法を探していきましょう。
ヒアリングスキル
建築士は、クライアントや業者とさまざまな打ち合わせをします。
相手が何を伝えたいのかを正確に読み取り、さらによくなる提案をすることは、AIなどの技術にはできません。
ヒアリング能力を高め、相手の満足度を高めるようにしましょう。
満足度が高く、相手が気持ちよく取引できるような建築士であれば、リピートしてくれたり指名してくれたり、口コミで新しいユーザーを紹介してもらえたりします。
ヒアリング能力はもともとのスキルではありますが、話し方教室などで改善していくことが可能です。今からしっかりヒアリング能力を高めるためにできることを考えておきましょう。
幅広いジャンルの実績
建築士としてより多くの仕事を獲得するためには、どの建築士に仕事を依頼するか迷っているクライアントに対して実績を提示する必要があります。
大きな実績や、クライアントが依頼したい内容と似ている実績がある建築士になら依頼や相談もしやすいです。
また、今後需要が低下する建築業界では、実績が少ない建築士は淘汰されていく可能性があります。少しでも多くの依頼を請け続けるためには、幅広いジャンルの実績がある方が有利です。
戸建て、オフィスビル、商業施設、テーマパーク、公共施設など、「この依頼をしたい」というクライアントに興味を持ってもらえるような実績作りを心がけましょう。
豊富な人脈
建築業界では人脈も非常に重要です。
強い人脈があれば元請けの仕事をたくさん得ることもできますし、資材などを特別な料金で購入できることも。人からクライアントを紹介してもらえることもあります。
デジタル化が進みさまざまな仕事がAI技術などに取って代わられようとしていますが、人と人とのつながりはAIに生み出すことはできません。
建築業界で長く働き続けるためには、少しでも広い人脈を作っておくことを意識しましょう。
新しい技術を理解する
建築業界でもAI技術の投入が進んでいます。
高齢者が多い建築業界ではAIはおろか書類のデジタル化やリモート会議などに抵抗がある方も多く、昔ながらのやり方にこだわっているケースも多いです。
ですがそれだと作業効率が悪くなり、結果的に仕事を逃してしまうことにもつながります。
例えば、リモートでの対応ができるようになれば特定の地域以外の仕事も得やすくなりますし、書類の管理や作成をデジタル化することで建築士やその他の従業員の負担を大幅に軽減できます。空いた時間にさらに別の仕事を請けることも可能です。
その他、建築業ならではの技術も日々進化しています。新しい技術は積極的に取り入れられるよう、常にアンテナを張り、日々勉強する姿勢を忘れないようにしてください。
元請けの仕事を取る
建築業では下請けの仕事が非常に多いです。元請けから仕事をもらうことで収入を得られますが、下請けは二次、三次と下がるにつれて利益が低くなります。
元請け業者がより安く、早く仕上げてくれる業者を見つけた場合は依頼をしてもらえなくなる可能性も高く、非常に不安定です。
この先も長く建築業に携わり続けたいのであれば一つでも多く元請けの仕事を探すことが大切です。
元請けだと高い利益を得られるだけでなく、たくさん仕事を請けてもその仕事を下請けに回して経営を続けやすいです。
売り上げを拡大し、より安定した仕事を続けることができるでしょう。
元請けの仕事を多く得るためには信頼される建築士になる必要があります。上記で紹介したように、幅広いジャンルの実績を積んでいくことも忘れないようにしましょう。
開拓されていない業界を見つける
従来の新築戸建てやマンションの需要は、少子高齢化が進むにつれて少なくなっていきます。
現状のままでは仕事がどんどん減り、大手の建築士事務所しか生き残れません。
小さな建築士事務所やフリーランスの建築士が生き残っていくためには、まだ建築業が参入していない、または参入している業者が少ない業界を見つける力が必要です。
老人ホームやリノベーション、リフォームはもちろんのこと、外構や駐車場などの設計、デザイン、建築もおすすめです。
また、建築業で積んだ経験やスキルを活かしてライター、コラムニストになる建築士も多いです。
建築士資格を活かして長く活躍しよう
国家資格である建築士を持っているのは、建築業界では強みになります。
ですがそれだけでは、今後の厳しい建築業界を生き残っていくのは難しいでしょう。
建築業界は今後も不景気が続き、自ら仕事を探し、開拓しにいかなければなりません。
自分にしかない、他の建築士にはないスキルを身に着けて、これからの仕事に役立てましょう。
建築士の資格があれば、建築業以外の業界への転職も視野に入れられます。不動産業や公務員、製造、管理など、自分の第二のキャリアを考えてみてください。建築業以外の仕事でスキルを活かしたいと思っている方は、下記の記事も参考にしてみましょう。