営業というのは、お客様の元へ出向いて契約を取ってくるものばかりではありません。
「アポインター」とは”電話営業”のことであり、電話一つでお客様との契約を成立させる仕事のことです。
未経験から採用され、特別な資格も不要、インセンティブ制度が導入されている企業もあり、人によっては多額の収入を得ることができるもの……なのですが、人を選ぶ仕事でもあります。
そして、仕事の種類も様々です。
今回は、そんなアポインターについて、詳しくお話していきたいと思います。
アポインターとは?
概要
個人もしくは法人先へ電話をかけ、営業を行う仕事のことを「アポインター」といいます。
テレフォンアポインターやテレアポの方が、聞いたことがあるという人もいらっしゃるかもしれません。
アポインターの最大の利点は”電話のみで契約までを取り切れる”ことであり、場合によっては後に商品を発送するのみで、会社の営業の方などが顧客のもとへ訪問する必要がない場合もあります。
そして、一口に「電話をかける」と言っても、会社によって仕事内容は大きく異なります。
アポインターの種類
アポインターの種類は、大きく分けて2つあります。
【1.契約までを取り切る】
これは「通信販売」などで広く利用されるパターンです。
例えば、
・携帯電話のプラン提案
・光回線工事の切り替え案内
など、電話のみで契約までを行うパターンのことです。
契約成立後、書類や商品をお客様の自宅へ郵送したり、工事担当の人が訪問するなどに発展していきます。
基本的には、電話内容をデータとして残し、その後は営業や工事担当の部署が依頼を進めていきますが、商品発送の手配などは場合によってはアポインターが合わせて行うことがあります。
これは、特に新規の個人宅へ電話をすることが多いのが特徴です。
【2.アポイントを取得する】
こちらは「訪問販売」をメインとする会社で行われることが多い手法です。
主に、
・自社内で行われているセミナーなどに勧誘する
といった業務を行います。
相手先は個人・法人などコール対象が幅広く存在し、どこに電話をするのかは会社によって様々です。
また、新規・既存どちらの顧客に対しても電話をすることがあります。
「アウトバウンド」と「インバウンド」
アウトバウンド
アポインターがメインとする仕事は、”アウトバウンド=電話をかける”ことです。
個人であれ法人であれ、かけるべき対象が記載されたリスト(名簿)を社内で用意し、勤務時間内でひたすらに電話をかけ続けていきます。
尚、場合によっては、架電先リストを自分で作るということもあります。
自社の商品を販売できそうな会社をホームページなどで確認し、営業電話をしていくパターンです。
ただし、これは精査から自身で行っていくため業務効率があまり良くなく、今では見かけることは少なくなったように思います。
また、アウトバウンドと並行して、インバウンドも対応する場合もあります。
インバウンド
この仕事は、正確には「オペレーター」という分類になります。
例えば、契約内容の質問をしたく問い合わせ電話をした際に「オペレーターにお繋ぎします」とアナウンスが入ります。
インバウンドの仕事は、お客様から掛かってきた電話に対して対応をする仕事のことなのです。
一言で電話対応と言っても、こちらも会社によって形態は様々です。
通信会社や通信販売会社などは、専用のオペレーターを多く雇い、コールセンターという部署で多くのお客様への対応を行っています。
「テレビCMを見て電話をかけた」なども良く見られる光景です。
この際に、オペレーターは顧客が求めている商品だけでなく、定期購入や別商品を勧めるなどの勧誘も行っています。
尚、アウトバウンド・インバウンドともに一日に何十回も電話対応をする必要があることから、インカムを使用して仕事を行うことがほとんどとなります(企業によっては、携帯電話や会社の電話機を使用することもあります)。
顧客管理は専用のソフトを使用する
お客様との電話のやり取りや契約内容をデータとして残す必要があるため、インバウンドやアウトバウンドを行う会社は、専用のソフトを使用して顧客管理を行っています。
通信販売会社であれば、受注管理システムなどを使い、通販業務管理から販促・分析までを行っている場合もあります。
また、近年は営業とアポイント取りが分業されているケースもあり、営業マンとアポインター間の情報共有を取りやすくするために「営業支援システム」が取り入れられることもあります。
この点については、後述で詳しくお話していきます。
分業について
営業マンがお客様の元へ訪問する際、
- 飛び込み訪問
- 事前に電話で訪問日を決めて訪問
という2つの方法が一般的です。そして、このアポイント取りも営業マンが自ら行っていました。
しかし、「電話を掛けている時間を訪問に充てることはできないのか?」という考えの基、営業とアポイント取りを「分業化」させる企業が増加しています。
そして、その際に情報共有を円滑に進めるためのソフトが「営業支援システム」なのです。
例えば、アポインターが顧客に電話を掛け、営業との訪問日程を決めるとします。
そのデータをシステム内に入力し、訪問日・移動手段・かかる時間などを営業マンが随時確認することができるようになるというものです。
もちろん、営業マンが入力したデータを他の部門の人が確認することもでき、社内全体で一つのデータベースを利用して情報を共有することが可能です。
実は、このシステムは1995年頃にアメリカからやってきたシステムです。
ただし、その頃は日本ではあまり認知されておらず、
- 働き方改革
- 業務効率化
この2つが世間的に話題となった辺りから、徐々に世間に浸透し出したとされています。
営業の分業化も、働き方改革が世に浸透し出した頃から取り組まれ始めたものでもあり、時代とともにアポインターの仕事も多様化していると言えるのではないでしょうか。
アポインターの仕事をするには
特別な資格は不要
インバウンド・アウトバウンドのどちらも、独別な資格は一切不要であり、未経験から採用される可能性が高い仕事です。
ただし、この仕事は正社員ではなく、派遣社員などの非正規社員として求人募集がかかる傾向が非常に高くなっています。
そして、就職後に電話のかけ方・話し方などの基本的な研修を行い、早い段階でコール業務を行っていくこととなります。
アポインターの仕事は「習うより慣れろ」という考え方が強く、実務経験を通してスキルアップしていくパターンが多いのが特徴です。
基本給について
非正規社員という立場上、多くのアポインター業務が”時給1100円前後”となります。
アルバイト・パートなど他業種に比べると少しだけ高くなっています。
中には、1400~1800円以上となる場合もありますが、”時給が高い=業務内容が厳しい”ところが多いという印象もあります。
例えば、営業(受注)ノルマが用意されていたり、架電先が少々癖のあるところ……などです。
また、会社によってはインセンティブ制度が導入されているところもあります。
契約(受注)が成立した際に、一定のボーナスが入ることもあり、そのような会社では基本給+インセンティブが発生し収入が高額になる場合も考えられます。
ただし、簡単に受注が取れる会社でインセンティブ制度が導入されることはほとんどありません。
ボーナスが発生するということは、それ相応に「求められるものがあるから」ということです。
もちろん、時給が安いからと言って楽な仕事という訳ではありませんが、もしこの仕事に就きたいとお考えの方は、給与面だけでなく仕事内容もキッチリと確認を取ることをオススメします。
正社員になるには
上記の通り、基本的に非正規社員を採用することから、アポインターやオペレーターで正社員になれる可能性は非常に低いです。
ただし、「スーパーバイザー」であれば、正社員として勤務することも可能になるパターンがあります。
スーパーバイザーとは、事業を成功させるために、スタッフの統括を行う仕事のことです。
例えば、コールセンターであれば、オペレーターの育成(研修)やクレームがあった際の対応、業務管理などを行います。
非正規社員であるオペレーターに、問題があった時の責任を全て背負わせるということはできません。
そのために、スーパーバイザーという監督が必要となるのです。
尚、スーパーバイザーになるための特別な資格というものはありません。
現場を経験し、知識と技術が付いてきた場合に能力や適性を認められ昇格するというパターンが一般的となります。
また、スーパーバイザーはコールセンター以外にも、小売店・飲食店・福祉業界など、様々な場面で必要となる仕事です。
それぞれに専門知識と技術が必要になるため、コールセンターのスーパーバイザーを経験していたから他の業種にも就職できるという訳ではありませんが、色々な仕事内容があるということだけお伝えしておきます。
資格所持者は有利か?
上述で、特別な資格は不要と記載しましたが、関連する資格というものは存在します。
例えば、下表のようなものです。
資格 | 内容 |
コンタクトセンター検定 | 顧客対応で求められる知識・技術など、コールセンターにおける業務の基礎から応用までを学べるもの |
CSスペシャリスト検定 | 顧客対応力、経営戦略、サービス設計に関するノウハウを習得できるもの |
電話応対技能検定 | 電話応対スキルを学べるもの |
MOS検定 | ExcelやWordなど、パソコンのデータ入力について学べるもの |
日商PC検定 | 上記と同じく、ExcelやWordのスキルを証明するもので、より実践に近いスキルを学べるもの |
取得していると、仕事を行う上で役立つ時はあるかもしれません。
ただし、どれも必須ではありません。
確かに電話応対の基礎は学べるかもしれませんが、会社が必要としているのは資格以上に、実務経験の有無です。
また、PC操作に関しても、基本的な入力ができれば特に問題ありません。
会社によっては専用のソフトを使うこともあり、ExcelやWordそのものを業務内で使用することが無い場合もあります。
求人サイトの採用項目にも、基本的に「上記のような資格をお持ちの方を優遇します」という文言を見かけることはほぼありません。
取得しておいて損をすることはないでしょうが、特別有利になるということもありませんので、その点はご注意下さい。
仕事を行う上で大変なこと
この仕事は、基本的に研修やマニュアルが用意されており、初心者でも働きやすいというメリットがあります。
仮にお客様との対応の中で何か困ったことがあっても、マニュアルを見ながら受け答えすることができ、答えられない質問やクレームが発生した際は、現場の責任者に対応をしてもらえる可能性があります。
ただし、同時に”精神的に疲労が溜まる仕事”でもあります。
アポインターであれば、こちらから突然顧客にお電話することになります。
「営業電話か」と判断されれば、ガチャ切りされることもありますし、心無い言葉を投げかけられることもあります。
さらに、会社によっては1日に100件前後も電話しなければいけない場合などもあります。
オペレーターであれば、商品の購入や問い合わせで電話を掛けてくるお客様がほとんどです。
中には理不尽なクレームを言ってくる人もいます。それでも、動揺することなく冷静にお客様の対応に当たらなくてはいけません。
もちろん気分転換に少し休憩を挟んでリフレッシュすることもできますが、慣れるまでの間は少し精神的に大変な仕事と言えるかもしれません。
そして、自社商品に対する知識は必ず身につけておかなくてはいけません。
架電であれ受電であれ、やり取りの中で必ずと言っていいほど質問されます。
その時に即座に答えられないと「こんなことも知らないのか、答えられないのか」と言われてしまい、契約は遠のくばかりです。
すぐに全ての知識を身に付けることは難しいですが、応対の中で質問されやすい内容などを把握しつつ、経験を積んで的確な回答ができるようになる必要があります。
最後に。
この仕事は”声だけで応対するもの”です。
人は、会話に加え・相手の表情や身振り手振りでどんな人かを判断します。
そのため、対面で話をするのが最も理解度を得やすいのですが、言葉だけで相手とやり取りするこの仕事は、それができません。
・声がこもっていて聞き取りづらい、暗い
・感情が言葉に出てしまう
などは、お客様に悪いイメージを与えてしまう代表例です。
この点も、契約が遠のく原因となってしまうため、気付いたら直す癖をつけた方がいいかと思います。
まとめ
初心者でも職に就きやすい仕事ではありますが、その後、様々な試練が待ち受けている仕事でもあります。
ただ、厳しいと感じるのは最初だけであり、慣れてしまえばどうということはありません。
派遣・アルバイト・パートという分類だけでみると、仕事に就きやすく時給も比較的良いため「非正規社員としてある程度収入を得たい」という場合は、経験してみるのも良いかと思います。
中には「苦手意識を持っていたが、経験してみると思ったほどではなかった」というケースもあります。
仕事内容は会社によって様々なので、自分にあった働き方を見つけていきましょう。