建築業では、現場の安全や管理体制を維持するためにさまざまな書類を作成しなければなりません。
これらの書類のことを安全書類、またはグリーンファイルといいます。
今回は安全書類とはどんなものなのかといった基本的な点から、書類の種類や保管方法などについて解説します。
安全書類は保管期間を守らないと、場合によっては処罰される可能性もあるので注意してください。
建築業の安全書類とは?
建築業では、元請け業者が下請け業者に仕事を依頼するシーンが多いです。
その場合の責任は元請け業者が負わなければならず、管理体制に問題があるとトラブル、事故、工事の中断につながってしまいます。
それを防ぐために、下請け業者が元請け業者に提出するのが安全書類です。
安全書類は労務安全書類やグリーンファイルと呼ばれることもあります。企業によって呼び方は微妙に違うので注意してください。
安全書類の書式
安全書類は法律でこうしなければならないという決まりはありません。
企業によってテンプレートが決まっている場合もあります。
元請け業者がテンプレートを作成し、下請け業者にそれに従って記入してもらうというケースも多いです。
また、地域や事業者によって書式がまったく違うというケースもあり、書類を作成する際に混乱を招いてしまいます。
全国建築業協会では全建統一様式というテンプレートを用意しているので、書式がわからない、とくに書式を指定されたわけではないという場合はこのテンプレートを使用するといいでしょう。
必要事項が欠けていないか確認したい場合は、建築業の安全書類の作成ができるグリーンサイトを利用するのもおすすめです。
グリーンサイトでは書類のテンプレートを利用できるだけでなく不備の確認もできます。提出や保管もこのグリーンサイトだけででき、書類の管理が楽になります。
安全書類の保管期間
安全書類の書式は決まっていませんが、保管期間は建設業の法律で明確に定められています。
この安全書類は原則5年間保管しなければなりません。
施工体系に関連する書類は工事が終わってからも10年間保管しなければならず、他には完成図の書類やクライアントとの議事録なども同様に10年間の保管が義務付けられています。
工事の依頼を請ければ当然それだけ書類の数も増え、管理が難しくなります。
この安全書類は紙面でなければならないという決まりはありませんので、上記で紹介したようなサイトを利用したり、PDFで保管しておくといいでしょう。
建築業の安全書類の種類を確認
建築業の安全書類にはさまざまな種類があります。
労務安全に関連する書類、人員や関係会社に関連する書類、施工体制に関連する書類のそれぞれの違いを確認しましょう。
労務安全に関する書類
労務安全に関連する書類は、現場の作業や重機の管理、作業員の管理に関連する書類のことです。
事故が起きた際に現場での管理に問題がなかったかを確認するために必要なのが安全ミーティングの報告書です。
現場では衛生管理や指導をおこなう計画を事前に作成しなければなりませんが、その年間計画を記載したものが安全衛生計画書です。
現場で使う機械などを管理するために必要なのが持込機械等使用届です。持ち込む機械によって、書類だけでなく車検証などと一緒に提出、管理する必要があります。
現場にはさまざまな車両が出入りします。この車両の管理をするのが工事通勤用車両届です。工事に必要な車両だけでなく通勤に必要な車両についても管理する必要があります。
火を扱う工事をおこなう場合は火気使用願も作成、提出しなければなりません。どんな工事で火を使用するのか、どんな作業をおこなうのかを明確に記載し、そのための安全対策も考える必要があります。
人員や関係会社に関する書類
現場の作業員や、その他の関連する会社についての書類もたくさんあります。
現場で誰が働いているかを管理するのが作業員名簿です。氏名だけでなくいつ勤務したか、どこで何の作業をしているかなども徹底的に管理する必要があります。さまざまな項目を用意する必要があるため、事前にテンプレートを用意しておくことで作業を効率化できます。
外国人の作業員がいる場合、外国人建設就労者現場入場届出書が必要なケースもあります。技能実習などに関係しない外国人の作業員の場合はこの書類の作成、提出は不要です。
下請けを何度も繰り返しているような現場の場合、どの作業をどの業者がおこなったか、どの範囲まで責任を負うのかがあいまいになってしまいます。万が一の事故やトラブルに迅速に対応するために必要なのが下請負業者編成表です。二次以上の下請けをおこなう場合は作成しなければなりません。
施工体制に関連する書類
工事をおこなう業者を管理するのが施工体制に関連する書類です。業者の管理や業者同士のやり取りをスムーズにするために必要です。
依頼した工事の元請けや下請けに関連する業者をすべて網羅したのが施工体制台帳です。代表者、責任者、住所、連絡先などをすべ適才し、いつでも連絡が取れるようにしておきます。
下請けの企業に対して元請けの企業が作成しなければならないのが施工体制台帳作成通知書です。
他には、下請けの業者の作業内容を分担したのが施工体系図です。どの業務に誰が携わっているのかを一目で確認できるようにしなければなりません。
安全書類に記載しなければならない事項
安全書類のフォーマットは自由に決められますが、記載しなければならない事項はある程度決まっています。
抜けがあると書類として完全ではなく、万が一の際不備が生じてしまう可能性もあるので注意してください。
事業所と代表者の氏名
ほとんどの安全書類では、事業所と代表者の氏名は記載が必要です。
どの書類であっても記載することが多いので、あらかじめテンプレートに記入しておくといいでしょう。
作成日
書類を作成した日付も必要です。
作成した日と提出した日を分けて記載するケースもありますが、一般的には提出した日で構いません。
書類を書き直す、内容を追加するなどの場合はその都度新しく書類を作成する必要があります。
日付を変えないまま内容を変更したりすることはできないので注意しましょう。
元請け業者の情報
元請け業者の名称や代表者の氏名、所在地、連絡先などを記載します。
代表者は現場の代理人でも構いません。
万が一トラブルなどがあった際にすぐ連絡できるよう、そして責任の所在がすぐにわかるようにしてください。
下請け業者の情報
元請け業者が書類を作成する場合はこの下請け業者の情報は必要ない場合もあります。
下請け業者の場合はその業者の情報を記載してください。
二次以降の下請けをおこなっている場合もすべての情報を記載しなければならない書類が多いです。
雇用者の情報
作業員の名簿には、雇用者のさまざまな情報を記載しなければなりません。
氏名とフリガナ、どんな業務を担当するのかといった職種、その職種の中での役職、雇用した年月日、さらに何年の経験があるかなどを記載します。
作業員名簿では作業員の安全管理もおこなう目的があります。長時間労働や危険な作業が続いていないかなども把握できるようにしましょう。
安全書類を保管していないと処罰される!
建築業の安全書類は上記の通り原則5年間は保管しておかなければなりません。
これは法律で定められていますので、違反すると処罰の対象になります。
安全書類の保管期間は原則5年ですが、書類の内容、工事の内容によってはそれ以上の期間の管理が必要です。
提出を求められた際スムーズに書類を用意できるように、クラウドソフトなどで管理しておくこともおすすめです。
また、建築業には他にも重要な書類がたくさんあります。紛失したり内容を間違えたりすることで後々大きな問題に発展する可能性もあります。書類のそれぞれの役割や保管方法についてはしっかり認識しておきましょう。
建築業の安全書類と同様に大切な建築業許可証についても、一緒にチェックしておいてください。