AIの導入により建築士の仕事がなくなるのではないか?と不安に感じている方は多いですよね。
建築業界では大手ゼネコン会社を筆頭に、さまざまな業務の自動化が進んでいます。
今後AI技術によって建築業界はどう変わっていくのか、本当に建築士の仕事はなくなるのかについて考えていきましょう。
建築業界がAI技術を導入する理由
まずは建築業界がAI技術を導入する理由を確認し、今後の動向を考えましょう。
労働力を補うためという理由がある一方、無駄な人件費を削減したいという考えもあります。
労働時間を短縮すれば、建築業界に携わる人たちがより働きやすい環境作りもできます。
業界全体の労働人口不足
日本全体で少子高齢化が進み、若手の労働人口の減少は深刻な問題です。
建築業界は肉体労働のイメージから敬遠する人も多く、今後も若い働き手は増えにくいです。
実際に、一級建築士の3人に1人は50代以上というデータもあります。
一級建築士になるまでにはある程度の実務経験が必要なことや、実際には現役を引退している50代以上の一級建築士も数字に含まれます。
ですが、今後も建築士不足は深刻になっていきます。
人手不足を解消するためには、作業時間の短縮ができるAIの導入が欠かせません。
人件費削減
労働人口の減少が懸念される一方で、技術者に支払う単価は年々増加傾向にあります。
企業の規模にかかわらず、人件費は非常に大きなコストの一つです。
AIを導入して技術者への支出をカットすれば、経費削減につながります。
また、作業時間を短縮できれば残業代の支払いもカットでき、本来出社不要な従業員のシフトを調整するなどの工夫もできます。
建築業界の仕事がなくなることはありませんが、少子高齢化が進む日本において建築業界で生き残っていくことは大変です。
少しでも経費を削減し利益を出せるよう、AIを導入するという方法もあります。
労働時間短縮
建築業界は残業時間が長い、休日出社が多いという労働環境の問題がありましたが、働き方改革により規制が厳しくなりました。
労働時間を短縮する、残業時間の上限を守るといったルールの上で従来どおりの作業量をこなすためには、人材を増やすか、作業時間を短縮するしかありません。
人材の確保は上記で紹介したように難しいのが現状です。
そのため、作業にかかる時間を短縮するためにAIを導入することが必須となるシーンも多いです。
設計図の作成や経費の管理、従業員の給与計算など、人の手によらずとも正確な作業ができる部分は、積極的にAIを取り入れる必要があります。
AIが導入されても建築士の仕事はなくならない!
建築業界でAIの活躍が進むにつれて、建築士や建築業界で働く人にとっては「自分の仕事がなくなるのではないか」と危機感を感じます。
ですが、結論から言えばすべての仕事がAIに奪われるわけではありません。
その理由を下記のとおり解説します。
個別の対応が必要なシーンが多い
AIはこれまでに蓄積されたデータをもとに計算や提案をすることは得意ですが、個別の対応や提案は難しいです。
そのため、すべてのクライアントが満足できるようなこまやかな提案は人でなければ難しいです。
特に建築業界は、戸建ての注文住宅からマンション、オフィス、商業施設など、唯一無二のデザインを求められるケースも多く、クライアントの要望に寄り添う提案力が求められます。
誰でもできるような提案ばかりでは仕事を失うかもしれませんが、その中でも「この人に依頼したい」と思える建築士を目指せば、AI技術が発展しても仕事を失うことはありません。
AIが請け負うのは単純作業が大半
AIが請け負うのは、計算や設計、書類作成など、日々の単純作業、ルーティン作業が大半です。
建築業界の労働者は、設計や施工の合間のこれらの膨大な単純作業もこなさなければならず、残業や休日労働の原因になっています。
ですが、AIが単純作業、ルーティン作業を代行してくれれば、その分の時間を建築や設計に集中して取り組めるようになります。
新たなアイデアが生まれたり、よりクオリティの高い作業が可能です。
さらに余裕のある時間で新たに業務を追加したり事業を展開したりと、企業全体の成長にもつながります。
依頼内容の細かな汲み取りは難しい
AIはデータの蓄積から情報収集などが得意で、クライアントからの要望も取りまとめることが可能です。
ですが、細かな取り組みは難しく、曖昧な提案をする可能性もあります。
AIが出した答えをそのままクライアントに提案すると満足できない仕上がりに感じられる可能性も高く、細かい部分を修正していくには人の手が不可欠です。
ただ補うのではなく、よりよいものに仕上げる力が必要です。
大きく変化が起きるまでには時間がかかる
建築業界は高齢化が進んでいることもあり、AIやシステムに抵抗を感じている方も多いです。
中小企業ではAIを導入する資金的なコストも時間的なコストも用意できず、すぐにAIにすべての仕事を奪われる可能性は低いです。
今は準備段階として、徐々にAIに慣れていかなければならない時期と考えましょう。
早めに対策を取っておけば、AIが導入されたときにもスムーズに対応できます。
指導者として活躍を期待することも可能です。
大手建築会社のAI導入事情
実際にAIを導入している大手建築会社の事例を紹介します。
どのような取り組みを行い、どのような成果が出ているのかを確認しましょう。
竹中工務店
竹中工務店は建築業界で非常に有名なスーパーゼネコンです。
2017年からすでにAIを事業に導入しており、社内で独自AIの開発も行っています。
さらに空間制御システムも開発、事業に取り入れ、より精度の高い設計やシステムのもと、精密な建築物を施工し続けています。
今後もAIの研究、開発に力を入れるとして、現在の業務の中でもAIに任せられる作業の70%を削減することを目標にしています。
今後も竹中工務店のAI技術の進歩は確認しておきましょう。
清水建設
竹中工務店と同じくスーパーゼネコンとして有名な清水建設も、AIの開発や導入に余念がありません。
NTTが開発したAIを導入し、目視検査の自動化や溶接作業の自動化、運搬の自動化など、あらゆる作業の自動化を進めています。
目視をAIに行わせることで見落としをなくし、溶接などの危険な作業から従業員を守ることもできます。
今後も自立型ロボットの導入は進められる予定なので、こちらもチェックしておきましょう。
マイダスアイティジャパン
マイダスアイティは、韓国に本社を置く、工学技術用ソフトウェアを開発する会社です。
その支社であるマイダスアイティジャパンは、2017年にCADの技術を開発しました。
構造図を自動で作成するためオペレーターや建築士、設計士の負担を大幅に削減できます。
さらにこのソフトは無料で配布されているため、学生や若手でも使いやすいというメリットもあります。
基本的なCADスキルを身に着けられるので、多くの建築会社で取り入れられています。
AIが活躍する建築業界の今後を考えよう
建築業界のAIの活躍と、建築士の仕事について解説しました。
AIに仕事を奪われるのではないか、と考える方は、建築業界以外にもたくさんいます。
実際に、これまでに多くの仕事がAIや機械に代わられてきました。
建築業界の仕事はAIでも代行できるものが多いですが、まだまだ人の力は必要です。
AIに向けた対策も行いつつ、自分なりのポジションを確立していきましょう。