建築業界にはさまざまな資格があり、その資格を持っていなければできない業務も多いです。
今回はその中から、「建築基準適合判定資格者」について解説します。
建築基準適合判定資格者とはどのような資格なのか、受験資格や難易度、合格率はどれくらいなのかなど、建築基準適合判定資格者に関する知識を深めましょう。
今後の就職や転職など、建築業界で活躍したい方は、ぜひ参考にしてください。
建築基準適合判定資格者とは?
建築基準適合判定資格者は、建築物を建てる前にその建築物が法律を守っているかを確認できる資格です。
書類を見て、これから建てられる建築物に問題がないかを判断するのが、建築確認申請です。
その後の中間検査や完了検査を経て、最終的に問題のない建築物を作り、人々が安心して利用できるようにすることが目的です。
建築物における知識だけでなく、日々変わる法律のスペシャリストでもあり、幅広い分野における知識が必要です。
建築基準適合判定資格者の資格を持っていなければ審査はできず、建築物を建てられないため、建築業界においてなくてはならない存在でもあります。
建築基準適合判定資格者の受験資格
建築基準適合判定資格者の試験は誰でも受けられるものではなく、受験資格をクリアする必要があります。
一級建築士として、一定の職務を2年以上経験していなければなりません。
受験資格が与えられるのは、以下の3つの業務です。
- 建築の中間検査や完了検査、教育や研究
- 建築行政における実務
- 国土交通大臣が認めた業務
都道府県の建築審査会委員や、教育機関における教授や准教授、住宅性能の評価業務、定期報告の審査や指導、違反建築物の調査などが該当します。
これらの業務を2年以上続けている人の数自体が非常に少なく、建築基準適合判定資格者の受験者、合格者は非常に少ないです。
建築基準適合判定資格者試験の難易度・合格率
近年の建築基準適合判定資格者の合格者数は270人から460人程度で、平均すると250から350人程度。
合格率は、29%から39%程度です。
合格率だけを見ると決して難しくない試験に見えますが、そもそも受験できるのが建築業界や法律に関する詳しい知識を持つスペシャリストのみなので、このような数字になっています。
建築基準適合判定資格者試験の申込方法・費用
建築基準適合判定資格者は、毎年4月ごろに詳細が発表され、8月下旬に試験が行われます。
受付期間は6月中旬までで、郵送による申し込みが必要です。
試験に必要な費用は30,000円で、収入印紙で支払います。
試験は札幌、仙台、さいたま、名古屋、大阪、広島、福岡の7会場で行われます。
建築基準適合判定資格者と建築主事の違い
建築主事は、建築基準適合判定資格者を取得した人がなれる仕事の一種です。
建築基準適合判定資格者を取得した人は、建築主事と確認検査員の2種類の就職先があります。
建築主事は、都道府県や市区町村の役所に勤める公務員です。建築主事になるためには、地方公務員の中途採用試験を受ける必要があります。
民間企業での就職とは違い、仕事内容や給与が安定しており、非常に働きやすいのが魅力です。その分倍率は高く、建築基準適合判定資格者を取得すればすべての人が建築主事になれるわけではありません。
確認検査員は、民間の指定確認検査機関で働く人のことです。民間の指定確認検査機関であっても、多くの建築物のチェックの仕事があり、建築の仕事にはなくてはならない存在のため、仕事がなくなってしまう心配は少ないでしょう。
場合によっては、公務員よりも民間企業の方が給与がいいケースもあります。
建築基準適合判定資格者を取得するメリット
建築基準適合判定資格者の資格を取得するメリットを確認しましょう。
今後も建築業界で活躍したい、建築業界でも安定した仕事に就きたいと考えている方に、建築基準適合判定資格者の資格取得はおすすめです。
昇給や資格手当が期待できる
建築基準適合判定資格者の資格を取得した人にしかできない業務があるため、資格を取得すれば、現在勤務している職場で昇給したり、資格手当を受け取れたりする可能性があります。
専門的な資格を持つ人は少なく、建築業界では若手の人材が不足していることから、有能な人材を引き留めるために昇給、昇格を検討してくれる企業もあるでしょう。
社内を確認し、建築基準適合判定資格者の資格取得者に対する待遇を確認してみましょう。
安定した働き方をしやすい
建築基準適合判定資格者は、建築前の建築物の書類を確認する仕事です。
建築業界になくてはならない仕事であり、常に一定の仕事が期待できます。
民間企業であっても倒産してしまう可能性が低く、業績も悪化しにくいです。
民間企業は同業者との競合はありますが、建築業界においては比較的安定した働き方ができるでしょう。
建築業界や日本全体の不景気について不安に感じている方にも、建築基準適合判定資格者の資格取得はおすすめです。
資格所有者が少なく転職に有利
建築基準適合判定資格者の試験を受けるためには、さまざまな受験条件をクリアする必要があります。
一級建築士の資格を取得したのち、2年以上の実務経験がなければ試験自体を受けられません。
受験条件が厳しく、ここ数年の受験者数を見ても毎年350人程度しか合格していません。
資格取得者が非常に少ないため、就職や転職の際に自分のスキルをアピールするのにも役立ちます。
資格所有者や受験者の少なさから、政府は今後条件を緩和することも検討しています。ルールを確認したうえで、試験に申し込みましょう。
建築基準適合判定資格者の登録手続き方法
建築基準適合判定資格者の試験に合格すればすぐに建築基準適合判定資格者の仕事ができるのではなく、所定の手続きが必要です。
手続きが完了すると建築基準適合判定資格者としての資格が与えられ、専門の仕事ができるようになります。
必要書類を提出
まずは必要書類を用意し、都道府県の窓口に提出します。
書類は公式サイトからダウンロードできます。
窓口は決まっておらず、都道府県ごとにルールが違います。
公式サイトでは、提出窓口も検索できるので、事前に確認しておきましょう。
登録証を受け取る
提出された書類をもとに、地方整備局が内容を確認します。
地方整備局に直接書類を提出することはできないので、注意しましょう。
書類の内容に問題がなければ、登録証が発行されます。
登録証を受け取り、建築基準適合判定資格者としての活動を始めましょう。
登録証は、窓口や郵送で受け取ることができます。
千葉県など、窓口でしか申請や登録証の受取ができないケースもあるので、事前に受け取り方法も確認しておきましょう。
建築基準適合判定資格者申請の書類・費用
建築基準適合判定資格者の申請書類は、公式サイトからダウンロードできるものの他、住民票のコピー、合格通知書や合格証書のコピーです。
地方公務員の場合は、職員証など、公務員であることを証明する書類も必要です。
建築基準適合判定資格者の資格を取得しよう
建築基準適合判定資格者の資格の概要や、難易度、合格率を紹介しました。
建築基準適合判定資格者は誰でも取得できるものではなく、厳しい条件をクリアしたうえで、専門的な知識が必要な試験を受ける必要があります。
取得までは大変な道のりですが、取得後は安定した仕事に就職できる、条件のいい職場に転職ができる可能性が高まります。
将来のキャリアを検討するうえで、建築基準適合判定資格者の取得も検討してみましょう。