建築の仕事は世界中で必要とされており、インフラが十分に整った日本やアメリカでも、その技術は日々進化をとげています。
本記事では、日本とアメリカの建築業界の違いを解説します。
働き方や環境、仕事の受発注の仕組みなど、どのような点が違うのかを確認しましょう。
今後海外で建築の仕事がしたい、海外と取引のある企業に転職したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本とアメリカの建築業界の規模
日本とアメリカの建築業界の規模の違いを解説します。
日本
日本の建築業界の規模は、約62兆円です。
多数の業界のなかでも非常に大きな規模を占めており、今後も一定の需要は見込まれます。
少子化や高齢化が進み、インフラもある程度整っているため今後大幅な成長は期待できませんが、改築などでの需要は残っています。
また、日本はゼネコン会社が多く、その他の建築業者はゼネコンから仕事を下請するスタイルが一般的です。
アメリカ
アメリカの建築業界の規模は137兆円です。
日本と比べると倍以上の規模をほこっており、今後も都市の開発や地方の発展で大きな需要が見込まれます。
アメリカは日本とは違いゼネコンが他の業者に仕事を発注するケースはほとんどありません。
それぞれの分野に専門の会社があり、担当の仕事をこなしていきます。
日本では建築業界の働き手不足が深刻ですが、アメリカでは人口も多く、人材不足は日本ほど深刻な問題ではありません。
日本とアメリカの建築業界の働き方
日本とアメリカでは、建築業界の働き方にも大きな違いがあります。
日本
日本の建築業界は、きつい、汚い、給料が低いの3Kと呼ばれることもあり、労働環境が悪いとされるケースが多いです。
なかでも長時間労働や休日労働は深刻な問題でした。
建築業界などの劣悪な労働環境を改善すべく働き方改革が始まりましたが、建築業界には中小企業も多くまだ浸透していません。
働き方改革によって労働時間を調整することで仕事に遅れが出る、人材が不足するなど、悪循環に陥ってしまうケースもあります。
そもそも建築業界の求人は、年間休日日数が他の業界と比べると少なく、残業もあって当然の風潮が強く残っています。
働き方改革に関する法律が整理されつつあることからやや改善に向かっていますが、深刻な人材不足が解消されているわけではありません。
アメリカ
アメリカの建築業界は労働組合に加入している労働者が多く、労働環境が守られています。
万が一時間外労働や危険な仕事が続く場合は、労働組合がストライキを起こして仕事を中断することも珍しくありません。
また、労働組合によって時間外労働や休日労働をする場合は高い賃金を支払うよう義務付けられており、事業主としても時間外労働や休日労働を避けたいと考えることが多いです。
限られた人材を使って、時間外労働、休日労働をさせないためにどう仕事を効率化すればいいかを考え、DX化も進んでいます。
DX化には初期投資も必要ですが、アメリカは日本の倍以上の規模をほこっているため、最新技術を取り入れやすいという特徴もあります。
日本とアメリカの建築業界の給与
日本とアメリカの建築業界の給与の違いを解説します。
日本
日本の建築業界の給与の平均は、402万円です。
すべての業種の平均値が372万円なので、建築業界は平均よりも30万円ほど高い収入を得られる計算です。
一方で、建築業界の給料は企業規模や職種によって違いが大きく、ゼネコンなど大手であれば高収入を得られます。
中小企業などでは受けられる仕事の規模が小さく、その分給料にも反映されにくいのが現状です。
給料が高い仕事は危険な内容が多い、非正規での雇用が多いなどの問題も残っています。
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
アメリカ
アメリカの建築業界の年収は、579万程度です。
アメリカの全業種の平均年収が886万円なので、アメリカの建築業界の年収は平均よりも低いことがわかります。
日本の建築業界の年収と比較するとアメリカの建築業界の年収は170万円ほど高いですが、物価が高くインフレが続くアメリカで暮らしていくのは精一杯という声も少なくありません。
建築の仕事が多い都市部に住む場合、生活費に苦しむのは日本と同じです。
日本とアメリカの建築業界の技術
日本とアメリカの建築業界の技術の違いも見てみましょう。
アメリカはとくに最先端の技術を多く取り入れており、日本だけでなくほかの国はアメリカの後追いをしている状態です。
最新技術を取り入れれば作業が効率化でき、人材不足をカバーできます。
人材不足が深刻な日本でも、アメリカの技術を取り入れる動きは進んでいます。
3Dプリンター技術
3Dプリンター技術を使うことで、建築に使う資材や部品などのパーツを大量生産することが可能です。
大型の3Dプリンターがあれば、建築物そのものを出力することもできるといわれています。
人件費がかからず、現場での危険な作業もなくなるため、今後建築業界でも3Dプリンターの活用は盛んになっていくでしょう。
一方で、莫大な初期費用が必要になることがデメリットです。
BIM
BIMを用いることも、作業の効率化に貢献します。
BIMはBuilding Information Modelingの略称で、建築設計に使用されるソフトウェアのことです。
建築業界で使われる設計のソフトウェアといえばCADが有名ですが、BIMは設計、計算のほかに施工や管理情報など、実際の建築現場に必要な情報をすべて管理できます。
完成した3Dのモデルをベースに建築を進めるため、完成イメージを他の業者やクライアントと共有しやすいのが特徴です。
また、設計後のミスによる手直しの手間も省け、作業を大幅にカットできます。
BIMはアメリカで生まれた技術で、政府がBIMの導入を推奨しています。
その結果、アメリカげは現在約7割の企業がBIMを使って作業を効率化できるようになりました。
ドローン
アメリカではドローンを使った建築も進んでいます。
近年、ドローンを使って建設したサッカースタジアムが完成したことも話題となりました。
スタジアムのような大規模な建築は、上空から撮影したデータがあると設計を行いやすくなります。
設計ミスも少なくなり、コストの大幅なカットにもつながっています。
日本の建築業界は海外にも通用する?
日本が今後アメリカのようにトップを目指すのは難しいでしょう。
少子化や労働人口の減少などが今後も続き、日本の建築業界の景気は低迷が続くと予想されています。
ですが、日本の技術を東南アジアなど、発展途上国に役立てることは可能です。
発展途上国はまだインフラ整備が進んでいない国も多く、日本から人材を派遣しやすいことからも開拓の余地は十分にあります。
また、海外から若い人材を呼び、技術を伝承しながら人材不足を補う動きも進んでいます。
日本は地震が多く、耐震性の高い建築技術が世界からも評価されています。
古くから伝わる技術も残っているため、これらをどう海外にアピールし、進出していくかが今後の課題でもあります。
日本とアメリカの違いから建築業界を見てみよう
日本とアメリカの建築業界の違いを解説しました。
日本とアメリカでは業界の規模が大幅に違い、労働環境や賃金にも差があります。
いきなりアメリカのように好待遇で効率的な環境を作るのは難しく、日本ならではの良さもあることは事実です。
今度どのように海外の技術を取り入れるか、そして日本の技術を伝えていくかが、建築業界の課題の一つです。
以下の記事では、さらに詳しくアメリカと日本の建築業界の違いを解説しています。
海外の文化をいきなり日本に持ち込むのは難しくても、どのような違いがあるかを把握し、参考にできる点を取り入れていくことは大切です。
海外の建築業界への転職を検討している方も、ぜひ参考にしてみてください。