建築業界は労働人口の減少や戸建て住宅の需要の減少などさまざまな問題を抱えていますが、その中でも注目を集めているのがリフォーム業です。
2022年の市場規模は6.5兆円で、今後も成長が期待されています。
今リフォーム業界が注目を集めている理由と、今後リフォーム業界で活躍するために役立つ資格を紹介します。
リフォーム業界が注目を集めている理由
建築の中でも今リフォームが注目されている理由を3つの観点から解説します。
空き家問題解消のため
日本では人口が減少する一方で、都市部に人口が集中しています。
地方では誰も住んでいない、誰も管理していない空き家が目立ち、2018年には全住宅の13.6%が空き家になっているというデータが出ています。
(出典:総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」)
1958年から空き家の数は年々増え続けており、今後もこの傾向は変わらないと予想されています。
手入れされない空き家は老朽化し、倒壊の危険性が高まります。
不法侵入、放火など、治安の悪化にもつながり、景観を損ねるという問題もあります。
リフォームを行い住みやすい住宅にすることで新しい入居者を集めれば、このような空き家問題の解消にもつながります。
高齢化、介護のため
日本は人口全体の高齢化が深刻です。
高齢者が増えるにつれて、在宅での介護の必要性も高まります。
現状のままの住宅では介護をしにくいため、介護用にリフォームを検討する方も増えています。
高齢者が安全に過ごせるよう手すりをつける、介護用のトイレや浴槽にする、玄関を広くするなどのリフォームがあります。
今後も介護用リフォームの需要は高まり、高齢者が暮らしやすい、家族と共生しやすい家づくりを考えていかなければなりません。
リノベーション需要が高いため
近年、リノベーションの需要も高まっています。
古い空き家や古民家を安く購入し、リノベーションを行う方がコスパのいい家づくりができることも多いです。
リフォームは古くなった建物を新築に近い状態に回復させることを意味し、リノベーションは古い建築物をより価値の高い建物にすることを意味します。
二つには明確な違いがありますが、似通った作業が多いのも事実です。
リフォームと同時にリノベーションも手掛けられるようにスキルを磨けば、より現代の需要にマッチした提案ができるでしょう。
リフォーム業界で働くには資格は必須?
リフォーム業界で働くために専門の資格は必要ありません。
ですが、建築業界で必須の資格はある程度必要です。
また、建築業界はリフォームや新築に関わらず、経験と知識が大きくものを言う世界です。
資格だけを取得するよりも、現場での経験を積んでいくことも大切です。
リフォーム業界で活躍できる国家資格
リフォーム業界で活躍するために必要な国家資格を3つ紹介します。
これらは必須ではありませんが、転職や独立開業の際には大きなアピールポイントになります。
規模の大きなリフォームはこれらの国家資格がなければできないものも多いです。
建築士
建築業界で活躍するなら建築士の資格はマストです。
大規模な建築に携わるには1級の資格が必要ですが、戸建てのリフォームなら2級の資格でも十分対応可能です。
とは言え、2級の資格を獲得するためには国が指定する条件を満たす必要があります。
高校卒業後7年間の実務経験を積む、または4年生の大学を卒業すれば、2級の試験を受験できます。
マンション管理士
マンション管理士はその名の通り、マンションの管理、維持に関するアドバイスを行う仕事ができる国家資格です。
似た資格に管理業務主任者資格もあり、いずれかの資格に合格していると片方の資格で5問分免除されるという特徴もあります。
一方でマンション管理士の難易度は非常に高く、合格率は7%~9%程度です。
難易度が高い分資格取得者も少なく、資格や専門知識が必要な業務への転職には非常に有利です。
造園施工管理技士
造園施工管理技士は庭づくりのスペシャリストに与えられる国家資格です。
2級の試験を受験するには1年以上の実務経験が必要ですが、取得後は主任技術者として活躍できます。
1級の資格を取得するとさらに監理技術者として活躍できます。
空き家などのリフォームでは、荒れ果てた庭を手入れする必要もあります。
よりリラックスできる、特別感を楽しめる庭つくりができれば、リフォーム業界でも活躍できるでしょう。
リフォーム業界で活躍できる民間資格
リフォーム業界で活躍できる民間資格もたくさんあります。
民間資格の取得は必須ではありませんが、リフォームに役立つ知識があることを主張できるものも多いです。
下記の資格もぜひ取得を検討してみてください。
住まいアドバイザー
住まいアドバイザーは住宅購入を検討している方に対してアドバイスができる資格です。
リフォーム会社だけでなく、ハウスメーカーなどでも活躍できます。
ローンや税金、登記など専門的な知識が必要ですが、難易度は高くありません。
公式での難易度は公開されていませんが、通信講座などを受講すれば1日30分程度の勉強時間で合格圏内に入れます。
インテリアプランナー
インテリアプランナーは建築業界だけでなく不動産業界や家具の販売、企画など、さまざまな場所で活躍できる資格です。
民間資格ではありますが設計製図制作など難易度の高い試験も含まれ、出題範囲も広いためしっかり勉強する必要があります。
建築の知識やデザインの知識、経験があれば比較的チャレンジしやすい資格です。
今後建築業界、リフォーム業界で活躍するために役立つ資格ですので、早めの取得を検討しましょう。
キッチンスペシャリスト
キッチンスペシャリストは水回りのリフォームや新設のアドバイスを行える資格です。
独占的な資格ではありませんが、キッチンリフォームに悩む方にとっては専門資格を持っている人に相談した方が安心だと考える方も多いです。
キッチンはリフォームの中でも人気がある場所なので、キッチン、水回りに関するリフォームの知識は身につけておいて損はありません。
キッチンスペシャリストの難易度は40%程度ですが、こちらも製図などの知識が問われます。
リフォームスタイリスト
リフォームスタイリストはリフォームに特化した知識を持つ人に与えられる資格です。
ハウスメーカーやリフォーム会社の営業職の方が取得するケースが多いですが、建築士として活動している方にもおすすめです。
リフォームについて的確なアドバイスを行い、依頼者の生活をより豊かにすることを目的としています。
1級では建築の専門的な知識も求められるため、これまでの知識、経験が役立ちます。
合格率は1級でも60%程度と、難しい資格ではありません。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは高齢者、障碍者が暮らしやすい住まい、施設づくりを提案する人に与えられる資格です。
福祉関連の用具のアドバイスだけでなく、住宅設計、リフォームなどの知識も必要です。
今後高齢化が進む日本において、介護に適した住宅づくり、リフォームの需要は高まることが予想されます。
また、介護施設、病院の設計、リフォームに携わることもでき、仕事の範囲が広がります。
3級から1級があり、1級は合格率が10%以下になることもあるほど難易度が高いです。
リフォーム業界で活躍できる人材を目指そう
リフォーム業界は今後の日本の建築を考える上で見逃せない存在です。
少子高齢化、空き家の増加により、リフォームの需要は高まっています。
今後も建築業界で活躍し続ける人材を目指すためにはリフォームの知識もあると非常に役立ちます。
今回紹介した資格も参考に、よりリフォームの知識を深めていきましょう。